完璧な作戦会議を
「情報が足りないのじゃ!」
アルカはバン!と大理石のテーブルを叩くと、頭を抱えた。
「はあ·····お嬢。いい加減諦めたらどうだ? 俺らだけでも世界征服なんて余裕だって。なぁ?」
「私はアルカ様の仰ることが絶対です。それが従者の務めですから」
カタマヴロスは「へぇ」と肩をすくめた。
「そうじゃ! 人の街·····正規ルートならこれしかないのじゃ!」
アルカは妙案を思いついたとばかりに目を輝かせた。
「お嬢·····街に行くのか? そんな人外魔力ダダ漏れじゃ無理だろ」
「むう·····少し待っておれ」
「アルカ様、私もお供を」
「いらん。すぐ戻る」
そう言うとアルカは、下の階へと続く階段へ向かった。
◼◼◼
退室してから数分後、アルカはほくほく顔で何かを持って現れた。
「ほれ! これを見てみろ」
「あん·····? 何だこれは」
アルカが2人に差し出して見せたのは、紫色の宝石がはめ込まれたペンダントだった。
「〈封魔の祈り〉――封魔石と呼ばれるレアな宝石で作られた古代級魔道具じゃ。これを身につけるとじゃな·····」
ふっと、アルカの魔力が一瞬にして消えた。
「な? すごいじゃろこのアイテム!」
「アルカ様、流石でございます!」
ドヤ顔でポーズを決めるアルカと、それを尊敬の眼差しで見つめるオーレイン。
「あのよぉ·····それ、すごいけど魔法使えなくなっちまうんだろ? 攻撃はどうすんだ?」
「ぬっふっふ·····心配ご無用! そこでスキル〈開発者権限〉の出番じゃよ」
「あー、あの職業制限武器も使えるようになるやつか。そんな強力なスキルどうやって覚えたんだか」
「まあ、細かいことは置いておくのじゃ。これで魔力問題は解決と。さらにこれだけではないぞ!」
アルカは2人に少し離れるよう指示すると、スキルを唱えた。
「〈開発者権限―アイテムBOX〉」
アルカが手を伸ばすと、目の前の空間が水面のように「とぷん」と波を立ててその手を飲み込んだ。
「ほう·····本当に面白いスキルだ」
カタマヴロスは腕組みをしてそう呟いた。
「あったのじゃ」
アルカはよいしょっと声を上げつつ、その不思議な空間から大きな鎧を引きずり出した。
「アルカ様·····これは?」
「これは〈歴戦の錆びた鎧〉と呼ばれる超級魔道具じゃ。一切の魔力が使えなくなる代わりに筋力と体力を大幅に増加させる。まあ、錆びてるから素早さが下がってしまうがの。重戦士向け装備じゃ」
不思議そうな顔で尋ねるオーレインに、アルカは得意気に答えた。
「カタマヴロス、お主が装備せい」
「俺がか!?」
「そうじゃ。お主も禍々しい魔力が溢れ出ておるぞ。あとは大剣でも担いでおけばそれっぽく見えるじゃろ」
「しょうがねぇな·····それこそお嬢が装備すればよかったんじゃないのか?」
「ふっ…身長が足りなかったのじゃ」
それは威張って言うことなのか?
カタマヴロスは、どうでもいいことに悩んでしまうタイプだった。
「続いてオーレインよ。お主の役目についてじゃが」
「何なりと」
「進展があるまではカストロ・リュクスの防衛兼、情報の整理に当たってもらう。ある意味最も重要と言える役目じゃ」
「承知致しました」
オーレインはうやうやしく頭を下げた。
「さて――改めて潜入調査の目標確認を行う。敵対可能性のある戦力の確認。そしてこちら側に取り込める有望株の発見。目標に支障をきたしかねない者は迅速に始末するのじゃ」
「了解っと」
「我が主の仰せのままに」