Prologue
真っ暗な闇の中,血色よりも濃い赤色の眼光が見える。
その赤色から漏れる明白な殺意を少女は直感する。
しかし,殺意を放出するその怪物とは違って,少女の心の中に炎はもう残っていない。
怒りと敵対感は,すでに自分も仲間の最後と変わらないという絶望に飲み込まれた。
残酷に死んでしまった仲間の姿が脳裏から消えない。
互いの命をかけて戦った栄光の戦闘ではなく,それは一方的な虐殺だった。
たった一撃。
彼女の大切だった仲間たちはただ一撃,怪物の鉄槌が空気を切るその瞬間の一撃で,世界からその存在が消し去られた。
形も見分けがつかないほど残酷で... 無惨に。
目の前のこのむごたらしい怪物に比べ, 彼女はただ弱弱しい存在。
力のない弱い者に復讐というのは妄想にすぎない。
歯が立たない。
それを悟る瞬間,彼女からは一抹の戦意も残っていない。
彼女と怪物の距離は縮まり,その怪物が右手に持っていた巨大な撤退の輪郭が見えるほど近づいた。
少女は...誰が助けてくれ...と思わない。
絶望のあまり彼女は早く死んで悪夢のような現実から逃れたいと思っている。
近くにあった死体の胸に刺さった短剣が彼女の姿をあらわした。
壁面に上半身を斜めにもたれてゐるその死体は右側の半身はほとんど形がわからなかったが,少なくとも他の半でも残っているという点で,肉の固まり水準で粉砕された他の死体に比べて正常だ。
少女は右手で堅くその死体の胸を押さえながら左手で引っ張った。
かなり古い死体なのか血は流れない。
剣の刃から取っ手まで採ってみたら良い短剣だったと思われたが,今は血と錆でごった返す。
しかし,依然として何かを突くには十分だ。
しっかりしないやわらかい何か。
例えば•••首とか•••
少女は自暴自棄の悲しげな笑みを浮かべた。
青く染まった銀髪を首の後ろのあたりに移しながら,白い首筋にその端剣を当てた。
短剣のさびた剣身から流れる涼しさと臭いが 鼻をつく。
"痛いかな...痛いだろうね..."
しかし,死を体験しなかった少女は,その巨大な撤退を受け,脳水を噴き出す一瞬にして,感じられる苦痛を恐れた。
死ぬ瞬間と方法は自分が決めたい。
軟弱い者の最後のあがき。
刺す。
固く決心した少女が首筋に着く直前のその短剣を見下ろすと,焦点外の領域で見えた何かのため,彼女は体とともに思考回路は停止する。
彼女の下半身と向かい合っているその死体。
その死体に何か, 常識的でない変化が起きている。
確かに。
周辺に散らばった血と肉片などから見ると,死というものに確実に到達したその死体は,なぜか蘇ろうとしていた。
土をぬって伸びてくる春の日の芽のように,盛り上がっていた骨はどんどん早く伸びて,やがて肉までくっつきながら,その遺体の右側の半身は徐々に本来の形を取り戻す。
そして身体に広がっていた大小の傷も回復,いや消滅になる。
少女はあまりにも驚き,奇怪な光景に足を運んで,元の位置に座ってしまった。
目線が同じになった少女は,その死体のようではない死体と目が合った。
"や........."
かなり長い間語っていないようで,声は乾いた砂漠のようにかなり分かれている。
"はい...?"
短剣を握った両手を胸に集め,少女は声の震えを最大限抑制しながら,苦労して口を開いた。
"お前...."
彼女の恐怖は, 人間のような死体のため, 化け物に出会った時とはまた違うやり方で極度に到達する。
"水やパンはあるか…? お腹が空きすぎるね…"




