第3話 偏差値12のテロリストとおかしすぎる秋羅
「おらぁ!静かにしろ!」
テロリストの中の部下と思われる厳つい男が威勢よく、声を上げた。
襲撃してきたテロリストは、合計四人。四人全員には銃が持たれている。三人は人質の携帯電話等を回収している。そんな中、一人中央に仁王立ちに近い形で立っている男が居た。
美香はそいつが絶対リーダーと決めつけた。
なお、人質は殆どの人が叫びながら外に逃げて助かったため、現在この中にいるものはテロリスト含め、僅か十三人しか居ない。ちなみに美香もその中の一人である。
「団長何でこんな人質は少ないんっすかね。」
「いや皆の前で『テロリストだぞぉ!!』って叫んだらそりゃ全力疾走で逃げるでしょ。」
細身の男が言い、美香が聞こえないようにつっこんだ。美香の予想は見事に当たった。
「しっかし暇だなー。」
「おいうるさいぞ。黙ってろ。」
テロリストはペラペラと雑談らしき話をしていた。すると団長と呼ばれた男が突然ズカズカと出てきた。
「あー知っての通りお前らは人質だ。分かるか?」
「これで分からない人間が何処にいる。」
美香は 馬鹿なのか、 と思い、大きな声で言ってしまった。
「………そこのお前。」
「は、はぁい……(やばいやっちゃたのかな…)。」
美香は団長もどきに呼ばれ、間抜けな声で返事した。
殺されるのではないか、 と美香は少しビクビクしながら団長もどきを見ていると、
「え、嘘だろ!?分からずにそこに突っ立ってると計画してたんだけどなぁ。」
「え?……………。」
予想外の発言に美香は目をぱちくりさせて、呆然としている。
「いやー。プラン1は失敗だな。よし。プラン2だ。あ、俺らは日本改新軍だ。このクソッタレな国に革命を起こすため、この光景を国会に見せつける。俺が団長だ。」
急に説明口調になった団長もどきー団長は自らを「日本改新軍」と名乗った。
発言から見て、この現在の国の状況にに不満を持っているそうだ。
「俺は、この国が嫌いだ。政治家も、そう名乗ってるだけで、何にもしていない。だから、俺はこの国を変える。」
「んな大袈裟に言わんでも………。」
誇らしげに言う団長を美香は小さく突っ込んであげた。
すると団長は、いきなりそこに居た男を掴んで、男の頭に銃口を向けて、
「どうだ!見ろ!俺は殺す覚悟で来てるんだ!そこの女!見ろ!何にも言えないだろ!」
「うん。別の意味で何も言えない。」
美香は別の意味で何も言えなかった。すると、団長に掴まれた男がいきなり団長の腕を捻じ、くぐり抜けて、団長より2m距離を置いて、たった。
「な、何事!?まさか悪の翼が!?」
意味不明な言葉を発した団長は一瞬焦りの表情を見せた。すると、男は、
「たくっ、いきなり掴むなよ。痛いじゃないか。」
聞き覚えのある声。世間でいうイケボな声。男は深く被っていた帽子を取った。
そこからは金髪の髪が見えた。美香は誰なのか一瞬で分かった。
「お、美香じゃん。昨日ぶりかな?」
そこには、秋羅が居た。
「オメェ……俺の首絞めを良くも易々と抜けやがって……。マジ許さん。」
団長は、あっさりと団長の技をすり抜けた秋羅に対し、怒りを顕にしている。
しかし、秋羅はずっとニヤニヤ笑っている。
「ねぇ。秋羅君。さっきからめっちゃニヤニヤしてるけど、それ気持ち悪いからやめて。」
美香は秋羅に、嫌そうな顔をして言った。秋羅はちょっとガッカリした。
しかし、すぐに表情を明るくさせて、団長に向かって指さして、こう言った。
「お前は………偏差値12だろ!」
秋羅の決めゼリフ(本人がそう思ってるだけ)は虚しく響いた。
「…………は?」
美香やその周りの人達も固まっているかのように動かない。
「………こいつ何言ってんだ。」
細身の男が低いトーンでそう言った。
誰もが訳の分からない秋羅の発言に対し、別の意味で衝撃を受けたはずだ。
だが、そんな状態の中、一人本当の意味で衝撃を受けた人物がいた。
「……何で分かったあぁぁぁぁぁ!?」
「いやお前も馬鹿か!」
団長だった。
「………何故………分かった………。俺は………今まで………隠してたのに……クソッ!何でこんな金髪ひょろひょろ自己中KY男に!」
「悲しむのは良いけど俺のことそこまで酷評しないでね?俺だって傷つくからね?あと、馬鹿だね(嘲笑)。」
秋羅は一人悲しみに浸っている団長に、最後に無慈悲な言葉でとどめを刺した。
「うっわこれは団長に同情するわ………私もこんな奴に言われたら悲しむよ…………。」
「美香さん。そこは共感しなくても良いでしょ……。」
しかし、現在この中には、秋羅以外全員団長に同情していた。
「もうなんだこれ。あ、団長警察があと30分でここ来るっす。」
「な、何っ!クソッ!何でこんなことに!それはいつ分かった!?」
「25分前っす。」
「何で今のタイミングで言う!?それじゃあと5分で来るじゃん!」
「あ、偏差値12でもその計算は出来るんだ。………ふっ。」
「それ位出来るわ!あとお前さらっと鼻で笑ったろ!」
秋羅と団長と細身の男のやり取りはカオスに似た何か。美香は頭が痛くなってきた。
「じゃあ、あと5分間お前の頭脳……IQを試してもらう。」
いきなり秋羅は団長に常識クイズをしようと言った。しかしここで問題が。
「IQって何?」
団長はIQを知らなかった。流石の秋羅も固まるしかなかった。
「ちょちょちょ!?団長!IQ知らないんっすか!?常識ですよ!常識!」
細身の男が慌てて団長に、IQの意味を伝えた。他の部下も呆れたのか、短くためいきをついた。
「………分かった。要するに俺の頭超いいっーーー!度なんだな。」
「もうそれでいいです。」
細身の男は面倒くさくなったようだ。
「……良いかな。さぁ、行くよ。」
「上等だ。かかってこい!」
いつの間にかテロリストを忘れてる団長。もう本当のカオスになった。
「行くぞ!薩長同盟の架け橋となった人物は?」
「坂本龍馬ぁ!」
なんと正解した。
「何っ!正解しただと!薩長同盟知ってるとは!」
「驚く場所が違うけどまぁ当たり前なんでなぁ!これ位は正解しないとな!」
団長は誇らしげに言った。なお、美香はこの二人を暖かく(少し呆れ顔で)見守った。
「よし!次だ!世界で一番面積が小さい国は?」
「沖縄県ぇぇん!」
「え…………。」
秋羅は息を詰まらせた。他の皆も唖然とした。
「え、何。沖縄だろ?一番小さいの。」
警察が来るまで、あと三分。