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常識を学習する

「……美味しい」

取ってあった宿で両手いっぱいに焼き鳥を持ち頬張る魔導書幼女が全裸であったのは過去のこと、今やアインに白いワンピースを着せられている。

(あーあ、真っ白のワンピースがタレでベットベトじゃんこれはアイン怒ってるんじゃ……)


「いえ、その程度で怒る私じゃありません。むしろ、その程度で怒ると思われてる方が心外です」

青い目をしたアインの怒りは結局俺へと向かう。というより俺のこと怒りたいだけじゃね?えっ、マジ?俺のこと好きなの?早く言ってよ~。大丈夫、俺はそういうプレイもウェルカム!!

「馬鹿なこと考えるのはおやめください。旦那様と奥様から、伝言を預かっているのですからちゃんと集中してお聞きになってください」

「はーい」

……可愛い

「で、では、お二人からの伝言ですが、この街に学校があるから坊っちゃんには、学校に行けだそうです」

アインってセクハラしても恥ずかしがらないけど可愛いとかは顔真っ赤にして照れるんだよな。早口になってて可愛い。

「いい加減にしなさい」

「いい加減にします。すいませんでした」

顔を真っ赤にしながら涙目でアインが懐からナイフを取り出して構えた。これはザクッといかれる奴や、この世界滅多に人が死なない。というか回復魔法の存在のせいで腕くらい切り落としてもすぐに治せるから折檻にはちょうどいいとか……もちろん出血多量で死なないレベルでね。

「……私だってそこまでしませんし、涙目でもないです……すんっ……」

可愛……これ以上は本気で刺されるな。

「えっと、学校だっけ?……学校?…………学校……えっ、ムリ」

は?何でそんな苦行をわざわざ。

「何でもそこにいる、子供を縄で縛って引っ張っていたそうな?」

「違うって!あれには事情が!ほら、俺の考えてることわかるんだから本当だってわかるだろ?」

「すいません、もう魔力が切れました」

「た、タイミング悪!!」

青い瞳は黒い瞳へとだんだん変わって行く。魔導書が魔力を吸ったんだな……制御してもらわないと……

「……その詳細を要求」

焼き鳥を食べ終わった魔導書は、新しいワンピースに着替えたのかきれいな服になっている。顔がすごく怒っている。

「いや、な。まだ俺には、お前を本のまま持ち歩くのに苦労するわけで……すんません」

本デカいんだよ。もっと小さくなっとけよ。……体弱い俺が悪いのかも知れんが

「そもそも坊っちゃんは常識というものを知らない訳ですし、そろそろ常識を身に着けてはどうでしょう?」

「いや、常識なんか無くても人として大事な志と言うものを持ってるし、そして常識に囚われた人間になっては両親のような立派な人間には……」

「セクハラ坊っちゃんが立派なことを言うようになりましたね。それにその御両親は学校で常識を身に着けてその上で世界を担うお方になっておられますよ」

(あー言えばこう言う女だ)

「坊っちゃんに言い負かされるほど私は甘くありません」

いつか言いくるめて涙目にさせて「許して下さいお願いします」って土下座させたい。……いや、ニーソックス履いてもらって踏んでもらいたい気もする。その上で蔑まれたい。別にMってわけではないけどね……なんかこう、あんじゃん?あ、むしろ、蔑まれるんじゃなくて、涙目で嫌がった顔してくれてもいいんですよ?「うぅ……何で私がこんなことにっ……」みたいな?

……心読まれない状況が楽しい。もっと本人アインの目の前で変態的な妄想したい。

「坊っちゃん、心が読めないからと言ってニヤニヤしながら私の事を見るのはおやめください」

おっと能力使わなくてもある程度は読めるんだったな……まぁ、それでも俺の妄想暴走は止まらねぇ!!

「入学届の控えです。あと、『家に帰って来ても入れないので、帰ってくるな。あとのことは自分で何とかしなさい』だそうです。魔導書は持っていてもよいそうです。その代わり色々データ集めとしての近況報告をして欲しいとのことです。あと……」

アイン……ハァハァ……

「……では、帰ります」

「えっ!?話全然聞いてなっ……」

「自業自得です」

「ちょ、ま」

「では」

そそくさと深めにフードを被り宿から出て行ってしまった。

「うん、遊び過ぎた。反省はするが後悔はしない。かなり楽しかった!」

「……馬鹿」

聞こえなーい

「あ、そう言えば名前!なんて呼んだらいい?なんかある?」

「……試作品984148139」

「今度からグリって呼ぶことにするな」

なげぇよ。寿限無か。魔導書のことグリモワールって言ったり、グリモアって言ったりするしいいよな。

「……了解」

「学校か……家も探さないとな」

賃貸とかってあるのかな?寮とかに住むのもいいけど……一軒家がいいなぁ。

「……昼食の用意」

「もう食う気かよ」

さっき焼き鳥たらふく食ってたろ。



○○○○○


学校……登校……十年振りだな。二度とすることはないと思っていたけど。そして、不良達に絡まれるなんて夢にもお思わなかった。

「おい、肩ぶつけておいて、シカトかよ」

(メ、メンドクセーー!)

こいつらくたばればいいのに。十六、七歳くらいの4、5人の群れた不良ゴミ達に絡まれる。

「おい、なんか言えよ」

「謝罪なら要らないから安心してよ」

お互い様ってことでね。

「ちげーよ、テメーが謝るんだよ」

「いや、でも横に並んで歩いて、その上前を向いて歩いてなかったら人にぶつかるのは当然だよね。そのことを踏まえて俺だけが悪いと?」

ただでさえ悪かった不良達の目つきがより悪くなった。

「……てめぇここの生徒じゃねぇな?」

「そうだけど何?」

「ここのたった一つのルールを教えてやる…………」



「強い奴が正義なんだよ」

一番前に居た不良に蹴飛ばされる。けど、思ったより痛くない。

「……撤退を推奨」

グリが蹴り飛ばされた俺を見下ろしながらそんなことを言う

「俺もそう思う」

ケンカよくない。ダメ基本的に。

「ちなみに、魔法で何とか出来たりは?」

すぐさま立ち上がりグリの手を引き、校舎の中へと猛ダッシュで逃げる。後ろに不良の罵声や追いかける足跡が聞こえる。

「……可能」

「だよね~出来ないよ………えっ、出来るの!?」

じゃあ、逃げなくていいじゃん。ケンカしようぜ。

「……『睡眠スリープ』は単体にしか使用出来ない。『集団睡眠グループ・スリープ』は制御が困難。アレ(・・)が永眠する可能性あり。他の複数戦を想定とする魔法も同様」

「やっぱり、逃げで」

犯罪ダメ絶対。



○○○○○


「ハァハァ……な、何とか撒けたみたいだな」

「……極度の疲労。運送を要求」

グリの表情は変わっていないが余程疲れたのか、もたれかかられおんぶを要求される。

「はいはい、おんぶですね」

なんか、奴隷根性というか……下僕体質というか……

今なら良いパパになれる自信がある。

「まぁ、どうでもいいけど。おっ、ここで入学手続きすればいいのか?」

理事長室と扉に書いてある。多分手続きする場所は違うな。でも、挨拶は大事だよな。あわよくば代わりに手続きして貰えたらなんて打算もあったりするんだけどね。

「こんちわー」

「ばかーーーーーー!!!!」

ドアを開けたと同時に服がはだけた女の人が叫びながら飛び出してきた。

顔にくっきりとビンタの跡をつけた、裸にYシャツ姿のお姉さん系の女性がいた。包容力がありそうで、ビンタ跡さえなければ姉にしたいランキングで一位は免れないだろう。

「女の子の前で別の女の子の話をすると嫌われるようね」

胸を両腕で支えるように組んで独り言を呟くブロンドヘアーの女性からは中身の残念な匂いがする。と、取り敢えずは挨拶だ。

「あのー」

「それ以上この部屋で喋らないで」

前言撤回。こんな姉要らねぇ。

「ん?魔法が拒絶されるわね……なら……」

「……受身の体勢へと移行を推奨」

おんぶされたグリに耳を引っ張られる。

「イタタタッ、どういうこ……」

何かに引っ張られるように後ろに倒れそうになる。

「って床が!!」

床が部屋から俺のことを追い出すように傾いている。おんぶしたまま後ろに倒れまいと踏ん張るが、バランスを崩し前のめりに倒れて廊下へと滑り落ちてしまう。

「馬鹿ね。床じゃなくて。建物ごとよ」

優雅に空中に椅子を浮かせながら紅茶を淹れている。

横を見てみると、他の生徒達も壁にピタリと張り付いた者や浮遊の魔法で浮いている者も居る。酷い者は窓から落ちている生徒もいる。

「二度と来ないでね。あ、後ろの娘は別よ。遊びに来てね」

扉がゆっくりと閉まると。ゆっくりと建物も元の位置に戻っていく。

「なんだったんだ?建物ごと傾けるなんてあきらか異常だろ!!」

「そこの少年!!理事長室に入ってはいけないと習っていないのか!!ちょっとこっちへ来なさい!!」

じ、事務手続きしたいだけなのに……



○○○○○


「失礼いたしました!!」

パパーンとママーンの名前入りの書類を見せたらさっきまでかんかんに怒っていた大人達がきれいな手の平返し。……ちょっと気持ちいい。

「理事長も悪気があってあんな事をしたわけでは……あの今回の件はどうか穏便に……」

「いや、別にいいんですけど。何か理事長先生にしてしまったんでしょうか?」

なんかあそこまでされるとむしろ自分に原因があるんじゃないかって疑うよね。

「いや……それが……彼女……昔、男の人に酷い振られ方をしたとか…………」

「…………」

 まさかの男嫌いとは……俺関係ないだろ?俺がセクハラしたから無理とかならともかく、お前男だから出ていけだぁ?他人の事を良くも知らないうちから嫌いですスタンスとは……教育がなってないな。

「あのー、形だけで結構ですので入学試験を受けて頂きたいと思っているのですが」

「入学試験って何?」

「一週間後、教師と一対一の決闘形式の模擬試合です。魔法に武器に何でも使って頂いて構いません。もちろん教師側は蘇生出来るように身体の5割以上を消し飛ばすような魔法は使いませんのでご安心下さい」

蘇生する条件は

・死亡後二十四時間以内であること。

・肉体の5割以上が無くなっていないこと。

の2つが基本的な条件だ。そもそも蘇生させれる人が少ないらしいけど……

「それって誰が相手をしてくれるんですか?」

「一応こちらで、選抜させていただこうと思っていたのですが……誰か希望があれば出来る限りお応えしまずが」

そんなの決まってるじゃないか。アイツ(理事長)だよ。

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