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異世界へ転生する

 一瞬の激しい痛みがあったあと、暗闇に閉じ込められているように体を動かす事すらできない状態になっていた。柱に今も押しつぶされているのか、体が圧縮されていくような感覚に陥る。全身に力が入らず目を開くことさえもできない状態でどれくらいの時間が経っているだろうか。ずっと感じていた圧縮されていくような圧力は慣れてしまったのか圧迫感はもう感じず、何時間も何時間も時間が過ぎ、体感的には数ヶ月以上経っている気がする。


(健は助かったのかな……)


 この現状を何とかするでもなく、だらだらと時間だけが過ぎていく。いや、まぁ、体が動かない以上何かできるわけでもないのだが。


(あぁ、暇だなああああああああいいいいい痛っってぇぇぇ)

 頭が押し潰されるような圧力とそれに伴う頭蓋骨を割れるような痛み。何これ死ぬの!?時間差で死ぬのかよ!殺すならさっさと殺せよ!!

 圧力は頭の先から爪先へと移っていく。


「※※※※※」


 は?なんて言った?



 ○○○○○


 ええ、それがかれこれ10年も前の話ですよ。この国、いやこの世界にノアと言う名前として産まれた。今自分で考えても何が起きているのかわからない。産まれてすぐは外国人の家庭で産まれて前世の記憶を引き継いだ〜とか、考えたけど絶対に違うと今では言い切れる。だって、父さんや母さん達が日常的に魔法を使い、ゴブリンやオークが日常的に小さな村を襲っているのだから。その上うちの家庭は単眼娘モノアイをメイドとして雇って居るのだから。確実に異世界。最初は単眼娘モノアイの姿にかなりギョッとしたが、慣れてみると大きくまんまるな瞳に長いまつげ、小顔可愛い条件がこれだけ揃っていて可愛くないわけわない。

(地味にスタイル良いし……)

 それはさておきメイドも居てなかなか裕福な家庭ではあるようだ。家はなかなかに広いし、友達数十人位呼んでパーティー出来そうだ。こっちの世界に友達はいないがな……

 父さんと母さんはほとんど実験室と称した見たこともない道具が散乱した部屋に一日中籠もっている。聞くと魔法を使った研究をしているらしい。産まれてすぐは魔法が使えるとわくわくしていたが、残念な知らせを5歳の頃された。俺には魔法を使う為の魔力が無いそうだ。正確には魔力を貯める器のようなものを持っていない。どんな生物でも少量は持っている魔力を俺は全く持っていないらしい。正直凹む。何だってんだよ……せっかく魔法のある世界で……

「また、魔力が無いことを落ち込んでいるのですか?」

 単眼娘モノアイのアインだ。21歳。メイド服が良く似合う。スリーサイズは多分上から……

「人のスリーサイズを勝手に想像するのはお止め下さい」

「アインこそ俺の心を覗き見るのは止めてくれないか?」

 単眼娘モノアイであるアインは目がいい。ただ、それだけではない。その目は相手の心を読み壁の向こう側を透視する。

「旦那様から面倒を見るようにと仰せつかっているのです。そう簡単に目を離せません」

 いつもは黒いアインの目の色は心を読む時だけは青く光り何もかも見透かしてくる。記憶を覗くのではなく、今考えている事を覗けるだけで深層心理などはわからないらしいが……

「心を読むのを止めて貰えるだけでいいんだけど……」

「まぁ、坊っちゃんの考えている事なんて能力を使わなくてもわかりますけどね」

「じゃ「じゃあ、今考えている事を当ててみろ。」」

 俺のセリフにハモらせたあと、

「そして、スリーサイズは教えません」

 考えが完全読まれていた。そして、今のアインの目は“黒い”。

「……完敗です」

「わかればいいです」

 産まれてこのかた、アインにほとんど勝てたことがない。こいつ無敵すぎんよ。

「まぁ、私にだって普通にできないことや困ることだってあるんですけどね」

 私にとっては旦那様や奥様の方がよっぽど無敵で素敵です。そう昔を思うような表情で付け加える。

「研究で出たお金の殆どを研究に回し、その潤沢な資金で新たな技術や商品を開発する。それも商人が捌き切れないない位の速度で。それでも、旦那様や奥様は自分には関係ないとでも言うように、研究を続け世にいろんな物を出していきました。世界の魔法技術の最先端、いえ、その先を行っています。今や社会はあのお二人の技術無しにはとても回りません。世に出していない技術もあり、国家と戦争しても勝てるのでは、何て噂すらされています」

「その話何度も聞いたよ。ところで、今日の夕食は何?」

 この話は始まると長いのでアインには悪いけど話を変えさせてもらうが、それとは別にいい匂いがキッチンの方から匂ってくる。

「今、シチューを煮込んでいるところです」

 アインは普通に料理が上手い。両親はアインがこの家に仕え始めてからずっと家事を任せて研究に没頭しているが食事だけは必ず一緒に取ることになっている。あの研究オタクの両親が寝るとき以外でほぼ唯一と言っていい、研究以外に費やす時間だ。

 そんな事を考えているとその二人の足音と大きな喧騒が聞こえてくる。

「ーーだからその防御術式では魔力効率が悪いと言っているのよ!!」

「この術式以上に効率の良い術式を組み立ててから言って貰おうか」

「だから、魔力消費量なら他の術式を重ねた方がマシって事よ」

「それこそ、実践的じゃないな。その術式を組み立てるまで相手は待ってくれるのか?」

 いつも通りの夫婦喧嘩だ。最大火力を重視する父さんと魔力効率を重視する母さんでは、考え方が違うらしい。なんでこいつら結婚したんだよ。って思って直接聞いて見たら声を揃えて……

「こいつとの子供が見たかった」

「この人との子供が見たかった」

 僕は実験動物モルモットじゃありません!!まぁ、人体実験されたりしたわけじゃないし、普通に両親してくれて……ないわ。普通に家事とかアインがするし、会話も食事のとき以外しない。うん、これじゃあ、普通の子供グレるぞ。

 金髪碧眼で白衣姿でどことなく理系顔っぽい父さんのアウプ・ウークルと金髪碧眼で白衣姿で理系顔っぽい母さんのエフィシィ・ホーグ二人は貴族の位を一応持ち、家名があるが、姓を統一していないのだ。当然、俺は家名を継いでいない。何故なら姓を統一する時大変大きな戦争(夫婦喧嘩)があったからだ。その戦争(夫婦喧嘩)のせいで地形が変わり、軍隊まで出て来たそうだ。魔法で元に戻したそうだが、その戦争(夫婦喧嘩)を見た軍隊の人が言うには国家間の戦争かと思ったそうだ。

「旦那様、奥様、夕食の用意ができました」

「ん?あぁ、わかったよ」

「そうね、この話は夕食の後にしましょう」

 喧騒はいつものようにアインのその一言で言い合いは終わる。

 食卓の定位置に座り夕食を取る。この時にメイドであるアインも一緒に食事を取る。メイドが一緒に食事を取るのは御法度だそうだが、一緒に食べたいと俺が両親にねだったら、普通に許してくれた。そっちの方が効率的で良いと母親は特に喜んで歓迎してくれた。

「あ、そうだノア」

 父さんはシチューを浸したパンを口に咥えながら急に尋ねられる。……関係ないがいつになっても「いただきます」を言わずに急に食事を始める感覚に慣れない。野球で言ったらプレイボールの合図無しに投手が球を投げてるようなもんだよね?

「何?父さん」

「お前だったら手に入れられるかもしれない魔導具があるんだ」

 手に入れられる?どういうこと?

「魔導具?どんなの?」

「意思を持つ魔導具だ」

「意思?」

 魔導具は魔力で動く道具、それに意思があるってそんなはずが!!?……いや、驚いた振りしたけどそれってすごいの?

「もしかしてあの魔導具のことかしら?」

「あの魔導具の性質上魔力を持たないノアと相性が良いだろ?」

 グサ!!子供が気にしている部分を平気で踏み入るところってどこの親も変わんないのか……

「それは良い考えね。たまには、良い事言うじゃない」

 ん?なんか危ない事させられる感じ?出来れば、そんな危ない橋は渡りたくないなぁ……よし、やんわり断ろう。

「父さんと母さんが取りに行けばいいんじゃないの?」

「いや、お前じゃないと駄目なんだ。そいつは、周りの魔力を吸い取り、吸い取った魔力で攻撃してくるんだ。つまり、吸い取る魔力のないお前にしか出来ない事なんだ」

「それって、魔力を空っぽにしてから取れば……」

「もう試した。が、あそこの遺跡では魔力がすぐに回復するようになっているんだ。まぁ回復する速度よりも吸い取る速度の方が早いのだがな」

 で、俺の出番というわけか……魔力の器が無いからな……てか、そんな事するんだったらアインにセクハラしていた……

「旦那様、奥様、ノア様が、私のスリーサ「喜んで引き受けましょうお父様!お母様!」」

 両親にセクハラをバラすのはあかんよ!!半ばアインに脅されて渋々その魔導具を取りに行くことになった。



 ○○○○○


 夕食の後、家の飛空艇で三時間もうすぐ夜の12時です。何も今日取りに行かなくても……てか眠い。夜更かしは体に良くないんだぞ!!

「よし着いたぞ。アイン、操縦は任せた」

「行ってらっしゃいませ」

 えっ飛空艇何処かに着陸させないの?まだ、飛空艇浮いてるよ?

「よし、行くわよノア」

「え、ちょとおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 飛空艇から急に飛び降り始めた。2度目の死を覚悟した。が地面に衝突する直前体がふわっと浮く。

(死ぬかと思った……)

 飛び降りた先には、周りが木で囲まれボロボロで汚い遺跡があった。

「ちょっと、もうちょっと前から浮遊の魔法使いなさいよ!」

 後から遅れて降りて来た母さんが父さんに文句を言っている。

「この程度、何万回やっても失敗しないさ」

 いや、母さんの言う通りもっと前から使って?怖いから。

「失敗の問題じゃないの!」

 流石だ母さん言ってやれ!

「それじゃあ、魔力効率が悪いって言ってるの!!」

 あっれー?そっちー?

「だが、こっちのほうが早かっただろ?時間的にこっちのほうがメリットが大きいはずだ。それに僕の魔力量の1%も削れていないじゃないだろ?」

「それも数秒でしょ、あなたの魔法の使い方は荒いのよ。急に高出力の魔法を使うよりゆっくりと低出力の魔法から高出力の魔法を使った方が効率がいいの知ってるわよね?」

「ねぇ、その話あとどのくらいで終わる?」

「「ノアはさっさと遺跡に行きなさい!」」

「……はーい」

 なんか辛い……


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