生きるためには働くしかない(3)
シズクと歩くこと数十分。
森を抜けた先の平原。柵を隔てた『ドイル』についた。
向かう途中、シズクとはかなり打ち解けた。
日本語は通じるのに、日本を知らないという謎現象。
日本語をしゃべっているように思うが実は違うのかも?
日本ってのは近くの名のない小さな村ということにし、そこからやってきた。と、いうことにした。
敬語だが、必要ないらしい。この世界だと、方言に近いらしい。
元の世界じゃあ堅苦しくて仕方なかったから、気を使わないでいいのは楽だ。
気になる先の水の塊については、やはり、この世界には、『魔法』が存在するらしいかった。
『魔法』についての知識は正直わからない。というか。シズクの言っていることが理解できない。
「いい? 魔法は、魔素を流して、体を動かして!あとは読むだけ!」
「…? 魔素?読む?って何を? 」
「本よ。持ってるでしょ? 」
「いや、持ってないな 本を読んだら使えるのか? 」
「違うわよ 使える魔法が本に書いてあるの。」
と、人を小バカにする目。いじられている。
その後も結局、わからずじまい。
俺の理解力がないのか、はたまたシズクの説明力がないのか。
それと。
あの犬っころについては、名前はコボルト。いわゆるモンスターらしい。
この世界では、魔族、モンスターは区別されていることも分かった。
魔族とは知能があり意思疎通が図れる。
モンスターは、知能は個体差があり、意思の疎通は取れない。
そして、ベタな異世界転系の話とは異なり、対立関係にない。
「次!どうぞ」
ドイルの関所?だろうか。
「薬草採取から戻ったわよ」
とシズク。動きにくそうな大き目の鎧をきた男。金髪がよく目立つ。
「お、シズクちゃん!お帰り~。あれ?こちらの男性は?」
「森で、コボルトなんかに襲われてたの。ニホンから来たそうよ。」
「ニホン? 聞かない町だね。ステータスカード見せてもらえるかな」
「すてーたすかーど?」
「持ってるわよね? これよこれ」
免許証サイズのそれ。もちろんポケットを漁っても出てくるわけない。
「落としたのかい? 身分が証明できないと…」
「落としたっていうか、持ってないし、見たこともないな」
瞬間、シズク、金髪の兄さん。他二人の見張りの者。関所で待っていた者の視線を集める。
あれ、これまずい感じですかね。
「来てもらおう。シズクちゃん君も来るかい」
「もちろんよ」
身分が証明できない、謎の男。
これ、日本なら逮捕なのでは?