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5. お母様

文量は大体、6400文字~8000文字の間で変化します。

ちょっと差が出てしまうのはご容赦ください。

 ヘルメスさんが部屋から退出して、再び一人きりになる。

 ……なんだか、とても濃い一日だった気がする。まだ終わってないけど。

 だいぶ日も傾いたこの時間、家庭教師の授業もなくて自由時間だ。

 ルーナ的には、いつもこの時間は大体勉強してる。おおふ、まじめだねえ。もっとも、余り習ったこととは関係のないことばかりのようだけど。必要ないから趣味に費やすって……やらなくても出来る天才マジ羨ましい。俺とか、そうは言っても宿題は勿論、予習復習+αで自主学習もしてたからな。――勿論、弟と妹の見本になるようにだよ?当たり前だろ?反面教師になんて、ならなくてすむならなりたくないっすから。

 完全に余談だが、俺自身は小学校時代歯磨きカレンダーが全部埋まった人種だ。ラジオ体操カードも同様。取り敢えず、こんなんからは想像もつかないだろうけど先生に褒められる超優等生だったのだ。

 転生したあとも、やっぱりいい子ちゃんっぽい。ルーナ、性格には問題あっても誰が見てもわかる優等生だったかんじだし。


 さて、目が覚めてからあんまりゆっくりしてらんなかったから気付いてなかったけど、改めてルーナの私室は広い。とても広い。具体的には(月夜)の部屋(六畳間)四個分くらいか。

 きっと侍女が掃除をしていてくれるんだろうけど、それにしても綺麗に整って子どもらしさがまるでない。

「よっと」

よく見るとこれまたとても大きなベッドだった。俗に言うキングサイズ。しかも天蓋付きのお姫様仕様。カーテンがふわふわと周りに掛かる、女の子の夢と憧れの結晶ってやつ。

 これで色が白やピンクでレースとかフリルとかチュールとかリボンがたっぷり使われてたらさすがに俺的に辛かったけど、どうやらルーナの好みではなかったらしい。

 今使われているカーテンは深い瑠璃色で、薄い青色の飾り気のないレースカーテンが幾重にもなっている。所々には大人っぽい金色の刺繍が入れられていて、フリルやリボンは使われていない。余りこの年頃の女の子らしくない、が、ルーナの顔立ちからするととても似合っている色味でありデザインだ。そう考えると、ルーナ自身は自分に何が似合うのかしっかり理解しているということか。

 対照的に服は淡色系が多く、さらにフリフリフワフワでとても女の子っぽい。これはどうやらレイアさんの好みだったようだ。

 似合わないわけではない。自分で言うのもなんだが、これはかなりの美少女に入るレベルの顔だ。当然、ある程度は着こなせる。ただ、淡色系よりは濃色系、それも、鮮やかな原色がより似合うというだけ。

 この部屋自体は、ルーナの趣味で構築されているようで、黒・白・青・金色で統一されている。ありがたい。

 家具などを一通り見ながら部屋を歩く。

 本棚の前で足を止め、何冊かの本を手に取り、椅子に腰掛けると、一冊ずつそれを開いた。


 一冊めは、この世界の地図が載っている本。

 ルーナ知識と擦り合わせて確認していくと、ハルメイア王国は大陸の東側半分を占めていて、北には氷河が、南には熱帯雨林が、西には地球で言うエベレスト級の山脈が、南西部には砂漠があるらしい。地形的にも山間部あり平野部ありの何でもありな国だ。国土が広いって凄い。

 広い国土の西の端。海から離れた内陸地にあるのが、王都・ハルメルク。西をチェンバロック山脈に、東をトルネリク平野に、南をポーラザス湖に囲まれた、大陸一の都である。

 隣国との国境線になっているのが西の大山脈であるチェンバロック山脈。何故国境に近い場所に王都があるのかというと、建国の祖の両親が戦死したのがこの地だったからだそう。そこに一族(つまり王族)の墓を建て、代々そこを守護しているのだとか。ま、この時代の技術だと山脈は越えられないから危なくはないんだけど。

 温帯に属し、気候は温暖で四季に近いものがある。住みやすいように発展を重ねてきているため、自然に溢れたいい都市だ。

 今度は俺が今暮らしているアルテミシア領のページを読もうか。

 アルテミシア公爵領は、東の端、海に面した土地だ。北は王家直轄領の大森林地帯に接し亜寒帯の気候で、南は亜熱帯の気候という、南北に大きく広がった、一国に匹敵する広大な領地である。

 こちらも自然豊かで、領内の風土は本当に様々。

 大森林地帯――地球で言うところの針葉樹林とその更に北にあるツンドラの気候帯の地域――に接する北側は、食料自給率は低いけど鉱山があり、それをいかした産業が根付いている。また、領内で一番酪農が盛んな地域でもある。

 南側は、豊かな土壌にたくさんの土着生物が存在し、加工前の原料生産が盛んだ。この辺りは食料自給率百パーセントをキープしている。

 北とも南ともつかない真ん中らへんは、穀物や野菜、薬草などの作物生産が主流だ。また、南と北、両方から流れてくる独特な物品を用いて加工している。魔物や魔獣なんかを素材にした家具や装飾品は、王宮にも献上されている。

 言わずもがな、臨海部は漁業が盛ん。あとは、水性の魔法薬の素材を養殖しているところもある。それにプラスして、隣の大陸との貿易を行っている。領地が広いのはそれが原因だろう。

 その昔、沿岸部は丁度真ん中のところで二つの領――旧アルテミシア領と旧テミサテナ領に分かれていた。

 テミサテナ家は侯爵家で、建国来王家の信頼も篤い家であったそうな。しかし、そんなある日、貿易で得た利益をちょろまかしていたことが発覚。家は即刻取りつぶしとなった。

 で、その後に残った場所をどうするかってなったときに、暫定的にアルテミシア家が治めることになったらしい。王家としても突然重要な土地が手元に戻ってきても困ったのだろう。長い年月を経て、アルテミシア家が功績を挙げるたび少しずつアルテミシア領になっていき、半ばなし崩し的に現在の広大なアルテミシア領が出来上がったのだ。

 アルテミシア領の特色としてもっとも顕著なのは、魔法薬産業だ。

 どういった理由かは定かではないが、古くから治癒魔術師が多かったらしい。さらに、他の地域よりも薬草や素材が集まりやすい土地柄が、王国各地から治癒魔術師を集めたようで魔法薬産業が興った。

 それで、能力の均一化を図るため、領内で治癒魔術師として活動するためには、許可証が必要になった。許可証を得るためには試験があり、基準に満たなければ治癒魔術師専門の育成機関(独自のもの)での研修が義務付けられている。

 そうするとさらに治癒魔術師が集まってくるから、今やここで作られた治癒魔法薬が王国全土に出回っている。大体シェア八十%くらいだ。

 ……今見ているのは決して教科書の類いではなく、実はルーナが自主学習に使ったノートなんだが……ルーナ、無駄にスキル高ぇ。


 二冊目は魔物や魔獣について書かれた本。こっちはちゃんとした教科書だ。と言っても、習っているわけではなく、愛読書といったところだけれど。お祖母様くださったらしい。

 同じものに思えるかもしれないが、魔物と魔獣には明確な違いが存在する。

 この世界では、全てのものが魔力を有していると考えられている。例えば机もそうだし、カボチャもそうだし、猫も、犬も、とにかく全てが魔力を有し、だからこそ全てのものを対象に魔法が顕現出来るという考え方だ。

 生物にとっては言わば魔力とは生命力のようなもの。人間には魔法を使えない者もいるが、実はそう言う人間でも魔力は持っている。魔法を使うには意識的に魔力を体外に出すという動作が必要になるのだが、それに関して人によって得意不得意があることが、魔法を使えない人間がいる理由だ。

 人は意識的に魔法を使うが、他の生物の中には種族として固有の魔法を使用するものがいる。一般的に魔法生物と呼ばれているそれの中で、獣型のものを魔獣と呼ぶ。魔獣の中には先天的なものと後天的なものがいるが、基本普段目にする魔獣は先天的なものである。後天的に魔獣になるには周囲にかなり高濃度の魔力が満ちていることが必須条件となる。そんなところ滅多にないので、先天的魔獣を見ることが多い。因みに、先天性のものの方が知性を得る割合が高く、討伐は厄介なこととなる。

 それに対して魔物は、本来生き物でないものが魔力によって生物のようになったものをさす。有名どころではスライムとかだね。或いは死霊(アンデッド)やミイラもこの括りになる。

 ルーナさん、何故か魔獣や魔物の勉強がお好きだったようで。仮にも公爵令嬢がそれでいいの?ねえ?そしてこれを誕生日に贈ったばあさんも大丈夫なのか?


 三冊目は、今回の大本命、ルーナさんの愛着が最も強い本。こっちも教科書だ。二冊目同様、祖母から贈られたらしい本である。

 内容は――。

 と、ページを捲ろうとしたところでノックの音が部屋に響いた。

「ルーナお嬢様、お夕食の時間です」

扉の外から控えめに声がかけられる。

 おおふ、気がついたら日が傾いておる。時刻は大体午後六時くらい。部屋にはいつのまにか魔法灯がついていた。集中してたから気づかなかった。自動点灯だから人が入ってきたわけではないが、ちょっとマズイ。

「はい、今いきます」

声量控えめで、落ち着いた雰囲気を大事に。何度も注意されていたようだからね、心意気を見せたろうじゃないか。

 本を元の位置に戻して部屋の外へ出る。

「待たせてしまってごめんなさい。行きましょう」

待っていたのはマキナだった。少し会釈してにっこり笑顔。精一杯の対応をするけど、自信ないな。

 お嬢様だから、あんまり謙っても怒られるし、横柄すぎても怒られる。その兼ね合いが難しい。もっと言うと、どうしても上から目線の物言いになるわけだから、言葉尻一つ一つに気を配らないと高慢ちきというか高飛車な感じになっちまうし。この位なら大丈夫かな?

「はい、かしこまりました」

特に何も言われなかったけど油断してはいけない。この後が最大のミッションだから。フレンチっぽい何かのフルコースだから。


 食堂へ着くとレイアさんとヘルメスさんもすぐに来て、夕飯が始まる。

 一応、ルーナ知識に基づくと、フレンチのフルコースのテーブルマナーと同じらしい。つっても、日本人に求められるより遙かにレベルの高い所作を求められるから、何の気休めにもならない。ルーナもまだ余り自信がないみたいだし、俺もフランス行っても決して恥かくことはないレベルにはしてあるけれど、どんなもん何だか。

 俺の人生十七年間で、初めて食べるようなおいしい食事の数々。開始から十五分経ったが何も言われないところを見ると合格、だろうか。いつもならここら辺で訂正喰らうんだが。

「ルーナ」

レイアさんに名前を呼ばれる。来た?ついに来た!?怒られちゃう!?

「はい、お母様」

声は、死ぬきで震わせなかった。声帯震わして、喉震わさず。鉄則鉄則、声帯は喉にあるなんて野暮なこと言ってくれるなよ?

「随分と食事のマナーが上達してきましたね。あなたは元々、覚えているのに自信なさげだったので出来ていないように見えていただけですからね。堂々とするようになったことは良いことだわ」

微笑みと共に、今までにないような褒め言葉が。うおお、ルーナ感激ィ!!事実小躍りしてるルーナさんがいますなあ。うむ、意外に可愛いところもあるもんだ。

「ありがとうございます」

丁寧に。お礼ひとつとっても気を抜けないのが貴族らしい。

 しかし、自信、ねえ。確かにルーナは完璧至上主義者的なところが多々あったからな。たいそう息がつまったことだろうと思う。完璧であることに拘り、常に完璧であるかどうかを気にして、完璧であろうとする。自分とは常に疑う存在であり、誰の言葉も信頼せずに自ら本質を見抜かなくてはいけない。いっそ同情すらしてしまう。神経質で、デリケートで、張り詰めたいとみたいに脆い。ルーナの高飛車はそんな不安の表れだったのかもしれん。知ったような口をきくと本人に殴られそうだからやめておくが、貴族子息子女の歪みってこういう所からも来るんだろ。

 俺、実は緊張って言葉を実感したことほとんど無いんだよね。強く願うものに対する努力は惜しまなかったし、そうしていれば大抵のものを得ることが出来た。『努力は人を裏切らない』って言葉は当然のことだったし、結果の伴わない努力なんてないと思っている。思うようにいかなくても、努力すればするだけ、力と経験値は必ずつく。

 そんなに長いわけではないけど、この生活だってそこまで問題に感じてはいない。割と、常識が通じるところがあるし、結構元から知識として身につけていた部分もあるし。うん、全く問題ない。なるようになるとしか思っていないといっても良い。

 それが堂々としているってとられるんだから、世界と立場が違うと色々違うんだって実感する。

「それでね、ルーナ。お話があるのだけれど」

「はい、何でしょうか」

にこにこ笑顔のままお母様は続ける。だが、俺は悟られないように身構えた。何だか、嫌な予感がする。幼い弟や妹に、『空を飛びたい』とか、『魔法を使って』とか言われた時みたいな、ギクリとする感じ。

「あのね、お義母様がルーナに用事があるそうなの。明日、訪問する予定になっていますから、心得ておきなさいね」

「はい」

あれ?良いことだった?かなり嬉しいんだけど……。

 レイアさんにとってのお義母様――つまり、俺にとっての祖母に関しては前にも少し説明したと思う。そう、先王の妹君にして王国屈指の治癒魔術師で、ルーナに魔獣や魔物の本など物騒なものを与えたあの人だ。噂に聞くと厳しい人らしいが、ルーナにはとても甘かった。それは初孫と言うことともう一つの理由があるのだが、まあそれはおいておくとして、ルーナもまたこの祖母のことを下手をしたらヘルメスさんやレイアさん以上に特別に思っていた。

 つまり、とてもとても嬉しいんだけど……可笑しい、俺の勘が外れたのか?

「あともう一つ、あのようなことがあってまだ心配ですからね、今晩は私と一緒に休みましょう。頭を強く打った後は何があるか分からないと言いますもの。そう何日もする事は出来ませんが、責めて今晩くらいは見守ることにしましたからね」

……外れてくれていたらどれほどよかったか。終わった。

 つまり、いつもルーナさんがしているあれ(・・)が出来ないって事じゃないか。

 俺の意識になってから初めてだったのに。大人しく読書くらいしかできなかったし、結構楽しみにしてたんだが。

 おまけに、レイアさんと寝所を共にするって?

 冗談じゃない。やってられっか。

 ルーナとしての記憶があるから別にレイアさんが美人だからどうのこうのって訳じゃない。たださ、俺、今十七歳なんだ。

 俺、今十七歳なんだよ(・・・・・・・・)

 高校二年生が、寧ろルーナの記憶から自分の母親と認識している人と一緒に寝るって、何その拷問。どうしよう、俺絶対死ぬ。いろんな意味で絶対死ぬ。たぶん、今も死んだ魚の目をしていることだろう。

「お母様と一緒に休めるとはとても嬉しいです。ご心配、ご迷惑をおかけしまして申し訳ありません」

それでも、出来る限り頑張ってハッピースマイル八百円。因みに心理状態によって値段は上下する。本当に余談だが。

「そう、そう言ってもらえると嬉しいわ」

ふふふ、と口元を隠して笑うレイアさん。穏やかな笑みの中で、目だけが笑っていない。チッ、気付かれたか。たぶん、『口先でしか言っていないわね。本心は嬉しくないって事かしら?』って所だろう。

「はい、本当に嬉しいですし、楽しみですわ。とても興奮していますし、お母様とご一緒させて頂いた記憶がありませんからとても緊張してもいます。今から寝付けるか心配です。お母様にご迷惑をおかけしなければいいのですが」

意訳すると『いえいえ、本心からですよ。ちょっと色々思うところがあるだけですから。まあ、何があるか分かりませんが、こっちは関知しませんから』である。……そのつもりだから。そう聞こえなくてもそのつもりだから。大体俺、こういうのマジで慣れてないから。無理だから。

「あらあら、それもそうね。ただ寝るだけのつもりでしたけど、あんまり眠れないようなら少しだけ夜更かししましょうか。普段余り話せませんからね。ルーナの最近のことなど、ゆっくりお話ししましょうね」

ひぃいい!!目が、目が語ってる!『まあ、そう言うことにしておきましょうか?そういえば、なかなかゆっくり話をする機会もなかったし、丁度良いですね。あんまり寝付かないようなら話してもらいますよ?』みたいな?マジで怖ぇえ。さすが、生粋の貴族にして王国第二位の権力を持つ公爵家の奥様、年期が違う。俺なんかじゃまるで相手になんねえ。

「それはなおさら楽しみです。いっそう眠れなくなってしまいますよ?」

こうなったら自棄だ。『望むところじゃねぇーか』ってんだよ。

「ふふふ、それは困ったわね。でも冗談よ。ちゃんと寝るのなら何も言いません。安心して寝て頂戴ね」

目元に籠もっていた強い力が和らいで、ふわっとはにかむレイアさん。ちゃんと目でも笑っている。んー、辛うじて大丈夫だったようだね。良かった良かった。

「はい」

ふふふ、と俺もはにかむ。それでも警戒は緩めんが。大丈夫、弟や妹のことを考えれば自然に笑えるはずだ。ブラコンシスコン舐めんなし。家族愛は経験値を埋めるはずさ。

 その時、ずっと黙っていたヘルメスさんが、

「何だろうね。取り敢えず、食事の時に戦闘するのはやめて欲しいと言うか何というか……いや、それより、ルーナも恐ろしい人間に仲間入りしたと言うか。うん、我が娘ながら末恐ろしいものがあるね。ホント、誰に似たんだかねえ……。はあぁ……」

とか、小声で呟いていたが、俺は知らん。レイアさんに(視線で)射殺されそうになってたんだけど、ちょっといい気味。ふ、イケメンが残念になっていくのは同じ男として小気味よい物があるからな。

 ん?性格悪い?

 ふはは、悪くて何がいけないってんだ。あ、勿論俺もちょっとだけ、そうちょっとだけ強めのプレッシャーかけたけど。そのくらいは許容範囲だろう、なかなか失礼な物言いだったし。


 それから先は、特に何事もなく万事和やかに食事は終わった。

 最後までずっとおいしかったです。役得役得。もうね、やばいね。取り敢えず俺、真剣に料理の勉強がしたくなってきた。

 俺の世界的に言うとフレンチっぽい。なのに、なんか素朴な感じもして、食べてて妙に気張らずにすんだ。有り難かったし安心したけど、それでもやっぱり、日本人だから日本料理が食べたいという俺の我が儘がある。なんとなく懐かしさを感じさせる味だから余計にそう感じるのかもしれない。味噌汁と白飯、だし巻き卵と肉豆腐、カボチャの煮付けが食いたい。いっそこの世界の食材で元の世界の料理を作れるようになりたい。でも、暫くは無理か。

 異世界転生モノによくある『飯テロ』ってやつに、よく似たことになると思う。(ルーナ)の立場でそれをやれば、金儲けにも直結してしまうと言うのは簡単に考えられる。勿論狙ってる訳じゃない。ただ日本食が食べたいと言うだけだ。それが俺の立場だと必然的に周りを巻き込まざるを得ない。下手したら内政チートじゃん?別に現時点ではやるつもりないからさ。

 それはさておき。

 問題の戦いを引き起こした俺とレイアさんが一緒の部屋で眠るって言うのは、普通に行われた。

 開始十分で、俺は深い、海より、マリアナ海溝より深い眠りに落ちた。

 ……ああ、うん。俺が自然な速さで熟睡したって言うのもあるんだけどね。特に何を聞かれるわけもなく。俺のメンタルポイントに致死級のダメージを残しても、禍根は残さなかったから大丈夫、大丈夫。……大丈夫?かな?

 ……ははははは、取り敢えず、グッナイ!ってことで。

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