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10. 計画発動

 それから一週間後のことだった。

「治癒術士の到着はまだか!?」

「旦那様に連絡を……!?」

レイアさんの出産が始まった。

「お嬢様、屋敷内をうろつかないで下さい」

執事の言葉に神妙な顔で頷き、部屋に籠った。

 ま、屋敷内は歩き回らないよ?

 あくまで、屋敷内はだけど。屋敷の外は彷徨き回るけど。

 出産早々レイアさんに心労をかけることになって良心が咎める。きっと帰ってきたとき恐ろしい目に遭うだろうけど、今は考えない。

 後先考えない行動って、子どもの特権だと思うんだ!

 せっかく異世界来たんだし、冒険してみたいと思うんだ!

 厨二心が疼……なんでもないです。はい。


 兎に角、今まで準備していたものを全て纏めて小袋に入れ、変幻魔法を使う。

 一週間あったから空も飛べるようになった。カラーリングが今の自分のままでいいのが楽だから鴉になる。

 前回の敗因は翼が小さすぎたこと。魔獣の図鑑でみた空を飛べる魔獣はどれも大きな翼を持っていた。思えば鴉だけでなく鳥という鳥を観察したことがなかったことに気付かされた。反省した。ついこの間ウィングド・ユニコーンを見たばかりだというのに翼の目測を誤ったところが悔しい。

 鴉になると両手が無くなってしまうのが不便に感じる。紐付き小袋は嘴でつまむしかないし。首からかけると羽を動かしにくいのだ。

 部屋の中を確認する。

 見られてはいけないものは特に出ていない。机の上に、一週間くらい旅をしてくる旨を書いた手紙も忘れず出してある。

 さて、出掛けますかね。


 床を蹴って宙へ飛び上がる。

 その時風魔法を使って補助をしておく。そよ風程度のものだけど。風に乗ったところで翼を羽ばたいて高いところにある窓から外に出た。猫の時よりも比較的脱出が楽だ。もっと早くからこうしていれば良かったと思う。

 空に出てからも兎に角上昇する。魔法を避けなきゃいけないから大変だ。

 ここ数日観察していて分かったことだが、あの魔法の壁は完全なる物理防御だ。強風に煽られて壁に叩きつけられた鳥が、なかなか可哀想なことになっていた。現に今も、少し離れたところの家で飼われているという鳩が、ポワポワとぼんやりしながら飛んできて、

「ップーーーーッ!!」

ぶち当たって落ちていった。野生の鳥は当たらないし、あの鳩はぶつかるのは三回目。平和ボケした可哀想な鳩である。

 馬鹿な鳩を笑ってばかりではいられない。落ちた後の鳩は

「ブプー……」

ガクッと、身体から力が抜け、目をクルクルと回して気絶した。可哀想に。俺の脱走が原因の一端を担っていると思うといたたまれない。……まあなんだ、強く生きろよ。

 鳩の様子を見ながら上空でホバリングしていたが、屋敷の中の慌ただしさが外にまで波及してきた。魔法の上を飛び、無事に敷地の外に出る。少し離れた林に飛んでいって、一休み。なんか、胸筋とか上腕二頭筋とか、背筋とか、上半身の筋肉メチャクチャつきそうだ。実際問題ここのところ毎日練習していて、筋肉痛が酷かった。人間の身体でも。比べものにならないほど飛べる距離も伸びたし、ひょっとしなくても筋肉がついているのだろうが。……嫌だよ?そうは言ってもルーナって公爵令嬢なのに、メチャクチャ鍛えられた逆三角形の上半身とかになったら泣くよ?ドレスを着たら(筋肉で)はち切れんばかりの胸元とか、嫌だからね?何その視覚の暴力。絶対嫌だ。

 休憩しつつ考える。

 ルネに習った式は猫や人の姿でも使えるが、どっちにしろ空を飛ぶのだから鳥の方が良さそうだ。と言うか、昼間に空を飛ぶなら鳥しかない。町の中の行動は猫だが、移動は鴉だろう。魔法で補助をするからそんなに力はいらないが、余り速く飛んだり翼を動かさずに飛んだらそれこそただの鴉でないと気付かれてしまう。姿消しを使うのは日中だと危ない。相手に認識されないと言うことは俺が全部避けないといけないと言うことだからだ。その気がなくても攻撃が飛んでくることもある。見えないって怖い。見えなくしているだけでそこに存在するから、例えば鳥の群れが突っ込んできたら俺はひとたまりもないだろう。

 だから一番安全なのは、本物の鳥のように振る舞うこと。精霊には怪訝に思われてしまうだろうが、精霊は基本、人と分かるものには不干渉だから。

 あとはこの一週間で妙に筋肉がつかないことを祈る。


 しばらく休憩した後に、再び飛び立ってトローラ山を目指す。

 やっぱり魔法って楽だ。立場さえなければどこまでも自堕落な生活を送ってしまいそうな気がする。

 眼下に広がる景色は長閑で、田舎とは言ってもコンクリートに満ちあふれた地元を思い出して、ああ、異世界だなぁ、と改めて思う。

 フェリティアの町はそこそこ大きい町なので中心部は石畳だったが、目に入る町は基本的に舗装のされていない赤土のままの道だ。家々も煉瓦造りや木造のものが殆ど。町の外は畑の他に、森や牧草地のようなものが広がっている。

 森の木々は俺が見慣れたものと似ている。種類は違うが、たぶん似た特徴を持つものなのだろう。気候もこの辺は温帯っぽいし。離れたところに家畜がいるし、牧草地もたぶんそれなんだと思う。

 流れる川は勿論河岸の工事などしてあるわけが無く、むき出しだ。幅の広いゆったりとした流れは見慣れないが、もっと規模の大きいものになれば船も通れそうだ。知らないけど運河などもあるのだろうか。

 平和そうで何よりだ。

 途中、腹が減ったので大きめの町で食糧を補給することにする。

 まずは町の上を周回して、女性の服装がどんなものが多いかを確認する。この町は首元まで詰まった白い服に、上からカラフルなワンピースを着ているパターンが多そうだ。

 近くの木立に降り、式を解く。そして今度は三十歳くらいの女性の姿になる。

 髪の色はモスグリーン、瞳の色はネイビーで、顔立ちは……レイアさん付きの侍女三人を掛け合わせた感じでいいか。昔会った商人の真似で紅髪に碧眼にすれば、これなら別人に見えるだろう。

 当然服装や道具類もどうにかする。作り出すのは不可能だけど、服装は変えないと困るし。ここまで来ると変幻と言うより幻惑といった方が正しいか。

 服装は、襟の詰まった白い服に焦げ茶色のワンピースを重ねたもの。足首より少し上くらいの丈で、足は皮の靴をイメージ。それも履き潰したような草臥れたもの。頭には日本手ぬぐいでほっかむりを。なんかかぶってるのはかぶってたけど、何をかぶっていたのか分からないから知識の応用。……ばれない、よね?

 で、手には大きなバスケット。中が見えないように布をかぶせてある。

 お金は今は銀貨しかないから、仕方なく銀貨。疑問にもたれるかもしれないが、背に腹は代えられん。一つだけを震える手で差し出せば大丈夫じゃね?

 問題ないか見て、町に向かう。この式、声は変えられないから注意が必要だ。動物は身体の大きさや作り自体違うからそれに合わせて作り替えているが、人だとそこまで変える必要がないから身体の器官とかはそのままに、身体だけ大きくして色を変えている。だから動物だと自然に鳴き声を出せるが、人間の姿だと器官がそのままだから声が同じなのだ。

 林から出れば町はすぐそこだ。

 この姿が服を含め魔法によるものだとばれないことを祈って、町への道を急いだ。


 町の中の、商店が建ち並ぶ通りに来ている。

 ちょっとくらいなら店に入ったりしてもいいだろう。と言うか好奇心に負けた。

 まず入ったのは鍛冶屋。理由はなんとなく目についたから。とても適当だ。

 中は閑散としている。店の奥にカウンターがあるだけで、商品の展示は殆ど無い。あるのは大きな盾や鍋ばかりだ。ディスプレイでしかないだろう。売り物を展示していないのは盗難防止のためか、鍛冶屋という特性故か。

「おや、見ない顔だね。旅人かい?」

出迎えてくれたのは恰幅のいいおばさん。オレンジ色の髪に赤い瞳で、鶯茶色の格子模様のワンピースを着、上からエプロンを掛けている。

「そうなんです。ここからだいぶ離れた村なんですけどね」

なんちゃっておばさんトーク。愛想笑いを乗せた口先だけのかるーい言葉だ。

「そうかいそうかい。それで、この後どっちの方へ向かうんだい?」

「フェリティアの方です。――ところで、ここじゃどんな物を売ってるんですか?」

あんまりどこに行くとかは聞かないで欲しい。ボロが出るから。

 話を逸らそうとしたらあからさますぎた気がするけど……経験不足かな。仕方ないか。

「何が欲しいんだい?」

けれどそこに目を瞑ってくれたおばさんは、優しいんだか、商売したいだけなんだか。まぁ、後者だろうな。

「ナイフがね。かなり使ってたから、新しいのが欲しかったんです。小型の動物を捌くやつ。買うの忘れてたんですよ」

一瞬包丁と迷ったけど、ナイフにした。魔獣の素材を集めようとは思わないけど、いつか集めるときが来るかもしれないから、その時に使える物がいいと思ったのだ。それに、包丁よりは持ってても言い訳できそうだし。

「見るからに筋肉ついてなさそうだしね。小型なら……これでどうだい」

差し出されたのは刃渡り十五センチほどのナイフだ。柄は木製で、同じく木製の鞘がついている。恐らくハンティングナイフってやつだ。柄は細めで握り込みやすく、刃は緩く反っている。ルーナでもギリギリ扱えるくらいか。実際に持ってみても、想像よりも軽く、練習すれば長時間握っていられそうだ。

「握ってみてどうだい?」

「大丈夫そうです」

「そりゃあ良かった」

満足そうなおばさん。うん、俺も気に入った。これにしよう。

「いくらです?」

フェリティアの町で入った飯屋では、一食に付き大体銅貨五・六枚だった。朧気な記憶では、確か小銅貨と大銅貨、小銀貨と大銀貨、小金貨と大金貨があったはずで……。あのとき見たのは確か大きい方の銅貨だったから、大銅貨一枚で大体百円くらいか。そうすると小銀貨二・三十枚くらいか?いや、待てよ。ルーナの買い物の時に小金貨は大銀貨十枚だって習って、大銀貨は小銀貨十枚だったような。そうすると小銀貨二・三枚か?

「小銀貨一枚と半銀貨一枚にまけてやるよ」

何しろ刃物なんて滅多に売れないからね、なんていって、ガハハハハと豪快に笑っているけど、相場はいくらなんだ?まあ、いいか。

「じゃあ、これで」

差し出したのは小銀貨二枚。良かった。大銀貨以外にも持っていて良かった。商人に頼んで小銀貨でおつりを貰ったことがあって良かった。

「ハイよ。それじゃ、半銀貨のおつりだね。まいど」

商品と一緒に先程より小さい銀貨を渡される。ふーん、これが半銀貨ねえ。

「ありがとう」

「大事にしとくれよ」

「勿論です」

そう言って豪快に笑って会話して、少し話を聞いた後に店を出た。


 今度は雑貨屋さんに向かう。さっきのおばさんに聞いた店だ。

 おばさんが言うには、この辺りには腕のいい職人が多いらしく、質のいい生活雑貨が揃っているそうだ。

 他の店と比べたら雰囲気が沈んでいるような気がするが……客層が落ち着いているだけか?

「いらっしゃい」

中は小ぎれいな感じで好印象。空気が涼しい。出迎えてくれたのは先程とは打って変わってほっそりとした若いおばさん、と言うよりお姉さんくらいの年齢の人だ。

「こんにちは」

壁や棚に、物が溢れんばかりに積まれている。イメージ通りだ。

 売り物も雑貨屋と言うことで多種多様。

 不思議な形の金属の細工物や、食器、陶器っぽい物もある。

 その中の一つに、見覚えのある物があった。

「これは……」

なんでまた、こんな物が。

「こちら、最近入った商品なんです。デザインが斬新でしょう?」

「そうですねえ」

お姉さんが営業スマイルで進めてくれているのはリュック型の革製の鞄。色は真っ赤で、箱形で……どこからどう見てもランドセルだった。

「とても丈夫で、長持ちするんですよぉ」

うん、知ってる。扱いが雑な小学生が、六年間使っても壊れないって品質保証付きなんだろう?かつての愛用者だった俺が言うんだから間違えないよ。

「この辺りの伝統的な物なの?」

「ええ、これと良く似たものはこの地域に伝わっておりました。ですが、このように綺麗な発色のものは今まで無かったんですよ」

「へえ」

転生者でもいるのかと思っていたが、まさかの自然発生だった。

 やたらとランドセルを売り込んでくるお姉さんを何とか撒いて、店を出るのに十分近くかかった。


 だいぶ寄り道したが、そろそろ昼飯を買いたい。

 店で食べるのはハードルが高いので、弁当の露店にする。

 何件か並んでいる中で、一番人が並んでいる店を選ぶ。久方ぶりの買い食いだし。旨いものを食いたい。

「何にするかね」

愛想のいいおじさん。五十代くらいだろうか。

 パンが主体のお店のようだ。黒パンや白パン、硬そうなものややわらかそうなもの、発酵してあるふっくらしたものから無発酵の薄いものまである。それに野菜や肉を挟んだサンドイッチみたいなものが数多くある。

「量が少なめの物がいいんだけど」

なんてったって五歳児ですから。

「角ウサギの黒パン挟みは?」

「じゃあそれを二つ」

勿論、昼の分と夜の分だ。夜にはトローラ山につけるからね。

 そして、この世界、平気で魔獣を食べる。肉食の物も、だ。

 曰く、食料が潤沢とは言えない中で、生きていく上で必要だからだそう。なんとなく現代日本の人間としては倫理観的にアウトっぽい気がするが、基本、市民に出回る魔獣って、市街地だと微妙なところだけどこの位森に近いところだと自分たちでとった物だから、そんなに強い個体なわけもなく。よっぽどのことがなきゃ人を食べた個体にであうことはないそうだ。

 良かった。

 大丈夫と言われても細かいところまで気にするA型ステレオタイプな日本人の血が騒ぐのだよ。

 角ウサギって言うのは割とポピュラーな魔獣だそうで、正式名称は別にあるけれど通称してそう呼ばれているらしい。人を襲うが肉は食べず草食で、臭みの少なく軟らかい肉が特徴なんだって。外見はそのまんま角が生えたウサギらしい。

 あ、因みに、魔獣やこの世界の生活の詳しい話は、大体シャディーに聞いたものだ。

 この話も、普通の人間は云々と言って、知り合った当初から教えてくれていた。

 ありがたや、ありがたや。

「ほらよ。合わせて六メルスだ。おまけに薄焼きも入れといてやる」

「それはありがとう。これで頼むよ」

薄い油紙のような紙に包まれたパンを受け取る。中を覗くと本当に薄い無発酵のパンが入っている。ラッキー。まあ、もう昼時も終わるくらいだからだろうけど。

「四メルスのおつりだ」

渡されたのは大きめの銅貨四枚。

 と、言うことは。要するに、大きい銅貨一枚が一メルスで、半銀貨一枚は十メルス。で、小銀貨はまさか二十メルスと言うこともないだろうから、百メルスか。

 そういやこの世界、チップとか無いのか?

 俺がそこそこでかい金でしか払っていないせいか?

 またシャディーに聞いてみないと。自分が精霊は人間には興味を持たないとか言ってたくせに、何故か市民の暮らしには詳しいからな。

 どうせこの旅の間で会いに行く予定もあるしねぇ。


 その後は乾物屋と革製品をメインで置いている雑貨屋に行った。乾物屋では干し肉と干した果物、硬く日持ちするパンを買った。旅人のためにおいてある商品で、一年くらいは日持ちするそうだ。そして、雑貨屋では水を入れるための革袋としっかりしたなめし革を買った。言わずもがなの水を携帯するための物だ。考えてみたら今まで、水を持たないで移動していたって事で。沸々と恐怖心が沸き上がってくる。携帯食料の殆ど無い状態で旅なんてしたくないし。水筒みたいな物は無くて飲みにくくてしょうがないけど、テンション上がってる。いや、ちょっと憧れていたのもある。異世界って感じじゃん?

 町の外れには共用の井戸がある。ここの水を拝借する。さっき買った革袋にたっぷり入れて……重いです、はい。五歳児には重労働だった。すぐに風魔法でアシストして、辛うじて持てている。危なかった。

 腕の筋肉の限界が近いのと用事が済んだと言うことで、いそいそと町を出て、森の中に隠れる。

 どうせじゃここで昼飯食っちまうか。

 移動するのが面倒くさい。ここは森のかなり端っこだからよっぽどの事がない限り、人を恐れる魔獣や魔物はやってこないだろう。この辺は道に面しているからな。

 言い換えば魔獣・魔物ではなく、人間に気を配らなければならない。

 家出中(?)に人に見つかるってちょっと堪えるからね。

 我が身が引き起こしたお馬鹿だから甘んじて受け入れるが、やはり本来の姿を隠しての生活は鬱陶しいったら無い。人の気配に敏感になるって嫌なもんだ。

 ま、何はともあれいただきますかな。

 この世界では魔獣を食べると言ったが、それは一般階級でのことで、裕福な商家や貴族階級以上はよっぽど貧乏な下級貴族以外は食べるために育てられた肉を食べている。だから、実は初魔獣肉だったりする。

 十五センチくらいの長さがあるコッペパン型の黒パンは少しぱさぱさしていてやや固め。目が詰まってぎっしり重い。しっかりしているから食べがいがありそうだ。

 はさんであるのは薄く切って焼いた角ウサギの肉と葉物野菜、意外にも果物だ。

 葉物野菜と言っても量はほんの二・三枚で、薬味と思った方がいいかもしれない。葉の先がギザギザと尖って肉厚なこの葉は、薬草の一種で肉の臭み消しによく使われるものだ。サラダにも使われるが、肉料理に合わせることが多いらしいし。

 果物は、肉汁と合わさってソースのようになり、調理してから時間が経つと肉が硬くなってしまうが、それを緩和する効果があるものだ。酢豚に入れるパイナップルみたいな感じ。

 この世界は基本、味付けは塩のみ。調味料は貴族階級以上の物になる。香辛料も高価なので、果物とか、薬味にもなる香草・薬草で味にバリエーションをつけているようだ。田舎に行くと伝統的な調味料があるらしいからこの限りではないけど。

 野性味溢れるワイルドな料理って事だよね!……ちょっと違うか。

 じっくり観察したところで一口食べてみた。

 ……かみ切れない。そもそもでかいし、口に入りきらないし。

 二分ほど奮闘して、漸く口の中に入った。が、口の中に入ってからも大変だ。咀嚼していると顎ががくがくなる。関節が痛い。三分くらい飲み込むのにかかった。

 味は結構おいしい。噛みしめている間に旨味がジュッと出てくる。魔獣肉だからと身構えたが、普通のウサギと何ら変わらない味だ。好みは分かれると思うが、俺は好きだ。

 美味いからと頑張って食べていたが、量が多い。一番小さい物だったはずだが、半分くらいであえなくギブアップ。残り半分は夜にでも食べよう。……もう一個買っちゃったけど。

 満腹のまま移動をしたら脇腹が痛くなりそうだから少し休む。その際、良さそうな薬草とあまり見たことのない香草があったので奮って採取。ついつい歩き回っていたら脇腹が痛くなると言う本末転倒ぶり。悔しかったからすぐに出発した。

 目的地・トローラ山はあと少しだ。

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