BRIEFING:32 気に入られて、気に障る。
「ではこれよりクウガ・アマギとフリオ・クルトリアの模擬試合を始める。杖を手に礼」
杖・・・杖!?
そう言えば、俺杖なんてないよ!?
仕方がないのでそのまま頭を下げる。
「そう言えばクウガは杖は持ってなかったよな・・・魔法はいいのか?」
「基礎魔法ならなくてもなんとかなる、大目に見てジャン」
「随分と肩を持つじゃないか・・・言っておくが今回は主目的は魔法だ。マギアエッジの使用は禁止するからな」
「はい!」
半身に開き、徒手の構えをする。
杖を構えるフリオ。半身間合いが遠いか。
「はじめ!」
弾かれる様に駆け出す。
「はっ!」
「んぐ!?」
一瞬身体の動きが緩慢になり、その隙に避けるフリオ。
「授業だし魔法戦だからな!手加減はしないが許せよ!石弓!」
石で成形された矢が一方的に撃ち出される。
着弾部が大きく爆ぜて抉れる。質量弾を撃ち出すという事については銃に近い者があるな。
どちらかというと至近距離版【神の杖】かしら。
想定規模も推定威力も全然違うがそんなものだろう。
「しかし、このままじゃだめだな・・・・!」
「逃げてばっかりじゃ戦いにならないぞ!まさか魔力切れで終わりなんてチャチな決着を狙ってるんじゃないだろうな!」
煽る声に答える必要はない。そもそも属性魔法だから早々に魔力切れ、なんてことにはならないだろう。
その為、たっぷり撃ってくれたおかげで生み出された土煙に紛れ姿を暗ます。
「くっ、どこだ!どこへ消えた!!
避けながら何となくわかってきた。
魔法の発声は自己暗示じみたイメージの強化、そして杖は集中力の補佐だ。
向けるべき対象を見定める、照準機の役目なんだ。
狙うべき方向へ集中を向ける役目。
白紙に点を置くと集中する理論だな。
さて、そんな相手に対してオレがとるべき勝利の方法はなんだ?
物理は駄目、接近戦も基本的には駄目だろう。そもそも魔法を搔い潜って接近戦にもつれ込むには余りにもリスクが高すぎる。
「そらそらそら!!このまま僕の判定勝ちか!?マケルド王子を退けたといっても異郷の武器がなければ何もできないか!」
撃ち込むことで起きる砂煙に気付いたのか何もせずに叫ぶフリオ。
その言にはオレもかちんと来た。
やってやるよ。
そうして調べ続け、場を把握する・・・あったあった。
ヤツの石弓が着弾出砕けた破片。
「そこにいたか・・・・観念したか!クウガ・アマギ!」
「さーな、でも、一矢ぐらいは報いらないとな。恨むなよ!!」
矢の切れ目に破片を放り投げ、一気に踏み込み、破片を蹴り上げる。
その瞬間に小石を強化し、脚力を増加し、足の挙動を加速する。
僅かな力のぶれを操作で整える。
そして放たれた小石は魔法に劣らない充分な凶器として成立するはずだ。
「いけよッ!!」
「は?」
パァン!!という轟音と共にすさまじい速度で襲い来る石!
そしてそれはオレの仮説が証左と言わんがばかりにフリオを襲いその腹部に突き刺さる!
「ご・・・ぶ」
うずくまるように崩れ落ち倒れるフリオ
当たった瞬間何かパリンパリン聞こえたけどなんだろうか。
「そ、それまで!クウガの勝ち!」
宣言をしてフリオに駆け寄るジャン先輩。
魔法で治し、顔色が戻るフリオ。
「だ、大丈夫か?」
「あ、あぁ・・・何を・・・されたんだ?今・・・」
「えと・・・」
先程の説明をするとなんか、今までと違う雰囲気。
そう、ヒかれてる。
「クウガ、自分がなにを言っているのか、そして何をしたのかわかってる?」
「え、いや・・・まずかった・・・?」
「マズいとかでない、あの刹那にどれだけ同時に魔法を行使したの・・・クロム・・・は今は外してるみたいだし」
「同時ではないよ、単純に取っ掛かりを急いだだけだから」
「クウガ、お前どれだけイメージがしっかりしてるんだ・・・」
まさか、妄想癖を疑われてる?これ。
「滅茶苦茶だよ本当に・・・」
起き上がったフリオがそう話す。
「わりぃ、大丈夫か?」
「ああ、模擬戦だし気にすんな、かなり俺も煽ったしな・・・にしてもすげえな・・・どれだけ魔力有るんだよ」
「い、いやぁ・・・あはは・・・」
俺もわからん。
そもそもそんなに燃費悪いのか。
「クウガ、あなたは魔力の測定はなさってないのかしら?」
「測定・・・」
サリアがそんな事を言ってくる。
確かにそういうの有っても可笑しくないよな。
「いや、したことないな・・・」
「でしたらあなたはどちらで・・・いえ、見出されたのですものね。特例、ですかね」
輝く金髪を揺蕩わせ考えるサリア。
異世界は皆見た目は綺麗だな?
“中身“は・・・まあ、人それぞれだ。
「どちらにせよあなたは異端者ですわ、能力も考え方も・・・私は」
そっとよるサリア。
ふわっとフローラルな香りが花を擽る。
「そんなあなたを魅力的に思いますわ」
「さ、サリアさん?」
「む・・・」
さらにぐいとより・・・あああ!綺麗なお顔が近い!
クラウンハーフアップって言うんだっけ?
三つ編みを後ろで結んでるのも相まってマリア以来の好印象のお姫様感が・・・。
「サリア、ですわ。あなたは敬称を着けないでくださいまし」
「口調は一応王族の皆さんも許容してくれてるけどそれ」
「サリア、ですわ」
「はい・・・」
無理矢理気味だが、嫌みじゃない。
美少女だからか?
いいなぁ・・・。
「・・・」
背中にささるフューリの視線が痛い痛い痛い。
「貴方、かなりモテるのね、意外だな」
「あの、寒いです、フューリ先輩」
「フューリ」
魔物を前にしてる様な冷たさで紡ぐ言葉に芯から凍えそうになる。
そこに声をかけるジャン先輩。
「お前でも嫉妬するんだな!」
嗜めようとするのかと思ったら違ったよこの人。
「いやあ、俺はお前がそういった普通の男らしい感情を見せたことがあまりなかったから色々勘ぐっていたんだが」
そりゃ男じゃないしな、何なら王女様だよ。迫害されてるけど。
「お前の心を見れてよかったよ、うんうん」
深く首肯するジャン先輩。
分かった、この人バカだ。
「どうだ!今日飯でも―――――」
「遠慮する」
即殺である。
「しかし、凄いな、クウガ・・・・まさかクウガのいたとこはみんなそんなに魔法が使えるのか・・・?」
「そ、そんなことないよ。みんな使えないさ。オレも急に発現したから」
「マリア王女やレオ王子なんかはお前を神の使徒ノアの再来の様に仰ってるからな・・・・その内色々あるかもな」
何それ初耳。
「いやいやいやいや!?どうやったらオレが神様の使いになるんだよ!?」
白々しい目で見てくるフューリ。
というかもう目で語ってくる。
”結婚式をぶち壊してくる異世界人が違うとでも”と言いがちな目である。
たしかに。
というかなんでそんなフューリはオレを睨むんだ。
「あらあら、後輩に嫉妬は醜いですわよ、フューリ先輩?」
知ってか知らずか、煽るサリア。
「さ、サリアさん?あの、余り煽らないで」
「サリアですわ」
「サリア、あの」
「敬語」
「・・・・・煽るの、止めた方がいいんじゃないか」
何度も食い入るように中断しては人の唇に人差し指を立てる。
なんだこれ、計算付くか?
だとしたらその計算は大正解だよクッソ!可愛いじゃねえの!!
「生憎、これは嫉妬じゃない―――――――授業を妨害するというのならば僕にも考えがあるというだけだ」
いやいやめっちゃ怖いが!?
「分かりましたわ・・・・仕方ありませんわね」
ため息と主に離れてくれるサリア。
た、助かった・・・・・・・・・・・。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――
大嘘だ。
私は間違いなく今、嫉妬していた。
もしくは、焦燥に駆られていた。
クウガを僕が口説かなくてはいけない。が、なんだ、あのサリアという子は。
あんなにぐいぐいぐいぐい、む、胸を押し付けて、はしたない!
貴族の令嬢なんだから慎みを持つべきだ。
それに、クウガもそれにデレデレしちゃって。
・・・・・・・・やっぱり、クウガも胸が大きいほうがいいんだろうか。
でも、私には無いし・・・・。
ため息が出る。
くそ、私がこんな思いをしてるのも全部全部全部君のせいだ。
責任取って君は私に口説かれるべきだと思う。
そうすればあの宰相を黙らせて、私が女王になる、そうして排除してクウガを王に迎えるんだ。
そしていつか、彼の世界に行く・・・・・・
あれ?
もしかして、私
本当に彼の事を、好きになってしまったの?
ただ、目の前の光景に疼くだけでその答えは問いかけてもその胸の内からは帰ってこなかった。
――――――――――――――――
Next Bullets for 『BRIEFING:33』
――――――――――――――――




