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BRIEFING:31 基礎魔法

実にお待たせ致しました。

墓場より舞い戻って参りました。

カレン・アルファノーツとの邂逅から2日、勉強も手に着かない有り様だった。

恋とか、そういうんじゃないんだ。

ただ、鮮烈だった。

そう言えばあの人の歌を初めて聴いた時に近いかも。


俺が元の世界で好きだったアイドルグループがいた。

元々歌は余り興味なかったんだけど、下校中のCDショップですれ違い様に耳に入った曲が、いや。

“彼女“の声に、意識を全部持ってかれた。

気付いたら買い漁ってた。

後日恭介に聞いたら今日本最強のアイドルユニットって熱論されて、さらには“彼女“の話もしてくれた。

アルファノーツ不動のセンター、華峰 佳音。

リズムゲーとアクション洋画が好きで、アイドルの在り方は硬派そのもの。

アルファノーツのユニットとしてしかテレビや雑誌には出ず、アイドルの進路の一つのバラエティーや女優コースを全否定していた。


そんな彼女が突然スキャンダルを抜かれたとかやらでセンターを下ろされ、暫くして自殺した。

突然の訃報で、アルファノーツのメンバーも驚きつつ、彼女の分も歌います、としつつ精彩を欠いたアルファノーツはそのまま表に浮かぶ事は余りなくなってしまった。


「なーんか、引っかかりを感じるんだよなぁ・・・」

「どうしたの?最近変だよクウガ」

「いやこうさ、魚の骨が歯に引っかかってるみたいな」

「ちょっと下品じゃないかな?」

「え、そうなの・・・ごめん」


魚の骨が歯に引っかかる、どうやらそれは下品らしかった。

確かに余り良いものではないわな。


「悪い悪い・・・」


アルファノーツという名字。

佳音とカレン。

まさか、オレと同じ地球人?

あり得る話だ。まさか異世界転移がオレだけなはずはない。

でも見た目が違うよな、あんな鮮やかなピンクレッドな髪ではなかったし。

やっぱり別人?まあ、異世界なんだしにた人がいてもおかしくないよな。


そうこうしてるとミランダ先生が入ってくる。


「静粛に、授業をはじめますよ・・・さて、簡単におさらいからしましょう

魔法には基礎魔法と属性魔法の二種があります。

ではその二つの差を・・・リズリットさん、説明して下さい」

「基礎魔法は属性によらない魔力その物によるイメージの変換です。

効率・内容のどれもが属性魔法に劣りますが誰でも使用出来るのが利点です。属性魔法は詠唱と呪文とイメージに加え各人の属性による能力の付与の形で完成するため同種の魔法であっても属性により名称が変わり意図する効果が変わります」


立ち上がりすらすらと説明するリズリット。

意外だな、色恋サイコーかと思ったけど結構努力家なのカモ。


「はいありがとうございます。その通りです。

ご存知の通り私の授業ではその基礎魔法を教えますが、基礎魔法とは属性魔法の下地にあります。

属性魔法を学び磨く為には基礎魔法をしっかり修め魔力の操作を行う必要があります。

皆さんは前学期でその基礎魔法の理論を学んでき、ある程度の基礎魔法を会得したことでしょう」


あはは、オレ全く知らないや。


「ですが、皆さん自分の得意な基礎魔法ばかりを学んでしまっていると思います。

自分の属性に近い基礎魔法の方が負担は少ないですからね。

そこで今回は上級生にも協力してもらいグループを作り基礎魔法を教えあって貰います。

苦手な基礎魔法を会得する事で思いもよらない属性魔法を会得する事もありますから」


言うと同時に上級生が入ってきた。

あ、あれはフューリだな。

ズボン履いてるけど、あれ、男装なんだよな・・・。

・・・男装女子・・・イイな・・・。




「まずは挨拶だな、オレはジャン・アレクサンドラ・ル・パガトリアだ。学園では爵位等有ってないようなもの、気軽にジャン先輩と呼んでくれ!」

「・・・フューリ・ティルノス、同じく過度な敬称はいらない」


筋肉隆々で制服がパッツンパッツンなさっぱりした赤髪の先輩とフューリが自己紹介してくる。

チームを分けて作ったところで自己紹介になったのだ。


「私はサリア・フランシスですわ、よろしくお願いいたしますの」

「フリオ・クルトリアッス!しゃッス!」

「カトル・ルブレフです、よろしくお願いします」

「あま・・・クウガ・アマギです、よろしくお願いします」

「よし、挨拶も終わった事だし実演といこう!得意な基礎魔法とそれ以外に焦点を当てるぞ」


ぽへー、とする。

火を起こしたり微風を吹かす分かりやすく属性魔法の前段階を魔法から、鍵を開けたり光を放ったりといった魔法等様々だった。

中でも興味を引かれたのは・・・


「次は『強化(グレド)』だ・・・ティルノス」


ギィン!と構えた木の盾にフューリが産み出した小さな氷の刃の群れが襲う。

さくん!と木の盾に刺さりあっという間に歴戦の風格になってしまった。


「これに強化(グレド)を施すと・・・ティルノス、頼む』


再度襲う氷の刃の群れだが、それは今度は全て刺さらず弾いてしまった。


「こんな感じで質や能力を上げることが出来る、無機物版の『増加(ブースド)』だな・・・欠点としては魔力の消費が見合わない多さの事と効果時間の短さだな」


説明の中ひょこり近付くフューリ。


「あの時最後あなたの武器にした魔法」

「ああ、あれって風の魔法とかじゃないのか」


静かに頷くフューリ。

あの時のM1911は反動に耐えられず破損したけど・・・それだけの威力だったっと事だよな。

旨くやれば今度マギアエッジライフルがなくてもやれるか・・・?


「ティルノス、随分丁寧だな。無関心なお前が珍しいじゃないか」

「彼は基礎も把握していない、事故を防ぐには丁寧にならざるを得ない。」

「男なら怪我して学ぶモノだろう?」

「ジャン、君はもう少し安全意識を持つべきだ」


わあ、両極端だなぁ・・・。


「強化、か・・・」


あの時の感覚。

間違いなく、あれは、あの感覚は“殺す“衝撃だった。

御せるのか?オレに・・・。


「色々見てきたな、では練習をしてもらうぞ」

「指導後それぞれ二人ずつに模擬戦をしてもらう・・・いいね、ジャン」

「勿論だ、そうだなア―――」

「クウガ、こっちに」


遮るように声をかけてくるフューリ。


「全く目端の利く奴め」

「何のこと」


呆れた様子のジャンにしれっとしているフューリ。

全くもう仲のいいこって・・・。


「とぼけるな・・・ではフリオ、キミは俺だ」

「ッス!」


選ばれたのはカトルだった。

どんな魔法を使うだろう、敵意のない“訓練“は新鮮だな。

楽しみの中、オレはフューリに着いていった。


「クウガ、あなたは何を学びたい。土の近法でなければ問題ないわ」

「フューリ、また言葉女ぽいぞ?」

「あなたしかいないから問題ない、知ってるなら息抜きに利用させてもらう」

「利用て」


相変わらず強かな奴め。


「とりあえずバフ系は一通りやりたいよな・・・」

増加(ブースド)?」

「そそ、増加(ブースド)強化(グレド)加速(アクセル)とか」

「土とは余り関係が無いしその数は・・・・まあいいわ、解った。期待させてもらう。

後は『操作(キネクシス)』は覚えておくと楽、非常に軽いものや密度や薄いものを動かせる」


何か含んだ感じのフューリはそういうと風を吹かして見せてくれた。

涼し・・・あれ、なんかいい匂い・・・

解った、前に背負った時のフューリの匂いだ。

爽やかでライムみたいな・・・あの時の柔らかさ・・・


「考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな」


必死の形相になることで意識を逸らす。

だって、健全な男子高生よ?

見た目良い性格悪くない女の子の“オンナ“を意識したらしかるべきはしかるべきだろう!?


「クウガは何故そう百面相が得意なの?」

「好きではしてません!」

「そう?」


失礼な。


「・・・いいけど、それじゃあ練習」

「オーライ、よろしく頼むよフューリ」


そして授業が始まる。

様々に手解きをされ、たまに女の子らしいとこにどぎまぎしてしまう。


「クウガ、魔法が無い世界という割には器用なのね」

「え?」

「普通、そんなに複数の魔法を同時に覚えようとすると失敗する」

「そうかな・・・?」

「魔法と魔法の区切りが甘く混じる、そのためごっちゃになって失敗する」


あれか?ゲームの呪文みたいにイコールで繋がってるからか?

そういう意味なら俺は確かに徳だな。

イメージするという行為が常だからな。


「素直に感心する」

「あ、ありがとうよ」


笑んだ顔に胸が弾む。

やっぱり中性的な美少女だ、マリアとはまた違うベクトルで可愛いよな・・・。


「それでもまだまだ粗削り、もっと洗練しなければ」

「なかなか酷なこというなあ!」

「集中が疎かになりがち、もっと意識を集中すべき」

「そりゃ・・・すまん」


仮にもスナイパーがそんな評価を受けたんじゃ形無しだ。

何とかせにゃ。


「そう言えば組み合わせたりは出来ないの?」


ふと思い立ちフューリにそう問う。

魔法を組み合わせてより強力に、よくある話だ。

しかしフューリは渋い顔をする。


「出来る・・・けれど相応に難しい。

両手で違う文章を綺麗に書きながら完成した物を合わせたら一枚の作文にするようなもの。

私も2属性を少ししか出来ない。」

「いや出来るんかい」


すげーなこの先輩。


「しかし、そっか、可能ではあるのか・・・案外やってみたら出来たりして」

「クウガの魔法の修練速度はかなりのモノ、でも流石にそれは自惚れが過ぎる。」

「試すのはただじゃん?」

「言っておくと失敗した場合不発で終わるならいい方、最悪魔力が無くなるまでの巨大な魔法として暴発し死ぬ」

「死ぬの!?」

「魔力が無くなった状態で魔法が直撃、しかも下限が無ければそうなる」

「た、確かに・・・」


そうだ。

この魔法は兵器だ。

命もその気なら簡単に奪える。

この左腕の断面傷が疼き、“忘れるな“と伝えてくれる。


「ありがとな」

「そんな先の話より今は目の前の基礎魔法に集中」

「はい、先生・・・」


肩を落とすオレを薄く笑み、教えてくれる。

教師として実に優秀だ。

将来女王としてもだけど、教師の道もアリだと思う。

・・・もうちょっと身長伸びると良いね・・・先生・・・。


「まだまだだけど・・・そろそろ時間、頑張って」

「出来ることはやったさ!」


よっし、と拳を手のひらに打ち付ける。

どこまでやれるか解らないが、やってやる・・・!

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Next Bullets for 『BRIEFING:32』

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