BRIEFING:29 銃声
突如となく、赤い髪の男から言われた「避けろ」という言葉。
私はラウィニアは彼に退け、といったのだ。
なのにもかかわらず妙な長い杖のような物を担いで?いや、抱えて戻ってきた。
後ろでごちゃごちゃと何かをしたと思ったら、唐突にこれだ。
訳も分からず、とぼけた様な返事を返した記憶はある。
――――――だが、私はその後に恐怖した。
魔法以上とも思えるこの力は、果たしてこの世に残してよい物なのだろうかと。
・・・・私は、その日の日記に、そう書き記した。
忘れる事の出来ない出会いであるだろう、その日の衝撃を忘れないために・・・。
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トリガーを引くとファイアリングピンが撃ち込まれるように走る。
そうして装填されている"それ"を叩くことで、閃光が走り、銃身から"小さなマギアエッジが"飛んでいく。
ライフリングによって回転し、精度を安定ながら凄まじい速度で飛翔し、その額に吸い込まれるように直撃する。
"銃声"は多くの人間が火薬の爆発による物だと誤解していると思う。
正解はすこし違う。
火薬の爆発・燃焼によって発生したエネルギーによって弾丸が高速でバレルから押し出される。
この時、一緒に押し出される空気が生じる"音"が銃声なのだ。
だからこそ、そのエネルギーを純粋な魔力に変えても発生する。
"この音が鳴ったなら、誰かが死ぬという死を伝える、轟音が。"
「ひゃっ・・・・」
「っ・・・・!」
その音に身を竦ませるメイドに、その子を庇うようにする女騎士。
それを傍目にボルトを引き出すと、次弾を装填し押し戻し発射姿勢を再び取る。
一度でダメなら、二度だ。
《クウガ、いけるヨ》
発射に必要な爆薬・・・・ではなく、魔力を俺から通して、クロムによって薬室に送り調整―――――"成型"される。
それを再び起爆させ、マギアエッジを、銃弾を打ち出す。
再び、轟音が鳴り響く。
全てを切り裂くように。
そして、一直線に。
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「すみません!誰か居られますか!?」
礼儀知らずな入り方ですが、緊急事態なのだから許してほしい。
飛び込んだ私リエルはノックもせずに教務室に飛び込んだ。
ありがたいことに、普段の行いが功を奏したのでしょう、咎める方はおらず何方も少しピリッとした表情になるだけでした。
「魔術戦技の担当の先生はおられますでしょうか?!」
「メイザース教諭は今授業の準備で居られないが、僕で良ければ」
ピリッとした表情の中、一人だけのほほんとした表情のアルベール・メイザース教諭がそう申し出て下さった。
「アルベール先生・・・はい、お願いします、多分、喧嘩だと思いますので」
「そうだ、レオ君、ヘンリエッタ君、私一人では心許ない。
ちょうど居るし手伝って貰えないかな?」
「・・・俺は構わない」
「僕も。争い事なら、周りに被害が出る前に止めないとね」
私は目を見開き、驚きと畏怖で即座に頭を下げた。
彼の伝統と歴史有る大国、アーティフィシャルとリヴェルタニア。
二大国の第一王子達が争いを止めようと力を貸すのだ。
言ってしまえば猫の喧嘩に獅子が出てきた様なもの、恐れ多く頭が上がらない・・・。
というか、まともに顔を見てもいいか分からないくらい、雲の上の方々だ。
「それで、どこかわかるかい?」
「えっと・・・それは・・・」
クウガさんに聞いていなかった。
しまった、とんだ失敗だ。どうしよう。
失敗の余り、頭が凄まじい勢いで思考を早めている中だった。
まるで落雷のような音が鳴り響いた。
「なんだ、今の音は」
「まさか、クウガさん・・・?」
「何?クウガが関わっているのか?」
「は、はは、はい、教職員を呼ぶ様、クウガ様に仰せつかりまして」
「ヘンリエッタ、急ぐぞ」
「ああ、レオさん、急ごう」
白と黒の王子が走る。
クウガさんと聞いて、目の色を変えた気がする。
王子様にとっても、大事なご友人なのだろう。
どこか嬉しそうなアルベール先生と一緒に。
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膝から座り込み天を仰ぐ化物
やったのだろうか。
にしても、肩と手に苦痛と共にじーんとした痺れが強い。
チャージした魔力をクロムが強化し、それを単純なエネルギーとして瞬間的に解放する事でマギアエッジ自体を弾とする、言わばマギアエッジライフルは成功だが・・・
このリコイルは正直厳しい。
ちゃんと構えてこれとか、大分ヤバいな。
まあ、実銃撃ったことないからこれが本物クラスかもしれないが。
「クウガ!大丈夫か!?」
「クウガさん、一体何が」
モノクロ王子様ズがアルベール先生とリエルと一緒に来る。
その瞬間化物が動き出し爪をレオとヘンリエッタに向ける。
杖を抜く二人を傍目に即座に最後の弾を装弾し、横合いから額の石に向かって照準を合わせ、引き金を絞る。
雷鳴にも似た甲高い轟音が鳴り響き、倒れ伏す音だけがその後に響く。
額の石は砕けており、身体がみるみる縮み変わる前に戻っていた。
この位の距離なら出っ張った部分だけを狙う位余裕だ。
ふうっ、と息を吐き、カキンッと金属音を鳴らしボルトを引く。
「な・・・なんだ、それは、クウガ」
「ん?ああ、コイツか・・・」
よってきたレオに、少々瞑目し、答える。
「これが本当の“銃“、オレの故郷で最も簡単に、確実に人命を奪える兵器だ」
「銃・・・」
「では、クウガさん、貴方は今彼の命を・・・」
「ごめん、ヘンリエッタ、奪わないように工夫はしたつもり・・・これも試作品だから本当の本物みたいな殺傷力は無いはずだけど・・・」
「そうですか・・・」
クロム、どうなんだ?
《脈動に息もしてル、気を失っただけだネ》
そっか、良かった。
「ふむ、息も有りますし、呼吸もしていますね。
急激な変化に耐えられなく気絶しただけでしょう。
医務室に運びましょうか」
「あ、ならオレが」
そうして背負う。
単純にいたたまれなかった。
そうだ、どう取り繕うと、俺は銃口を人間に向けて引き金を引いた。
明確に、だ。
もしかしたら死んだかもしれない。
だって銃は、元来、須く「効率よく傷付け、命を奪う為の道具」だから。
担いだ身体は、重かった。
「・・・担ぎ方を知らないのか」
肩を組むようにして担いだ彼を難儀して運ぶ姿を見て、女騎士が片方を担ぐ。
「ラウィニア・ウィンザルフ、リヴェルタニアの騎士だ」
「天城 空牙、よろしくラウィニアさん」
「・・・・・すまない、助かった」
「気にしないでくれ、俺は、何か特別したわけじゃないから・・・」
「お前が手を出したのは私を見かねてだろう、それ位は理解している」
「で、でも、俺は」
「うるせえ!!」
怒って殴られた、ええ・・・・。
「ってて・・・・」
「ふん・・・人の礼は黙って受け取れ」
「君が居たのですね、ラウニー」
「はっ、殿下、私が居ながらに大変申し訳無く」
「ラウニー?」
「ああ、彼女の愛称として僕が呼んでいるんです、ラウィニアだから、ラウニー」
「ははぁ、なるほど」
・・・ん?
「騎士って、そのまま?」
「ああそうだ、私はリヴェルタニアの騎士だ。そう説明しただろうが」
口悪いなこのちんまい騎士。
「ところで、よく分かったな、あれが魔獣石を使っただったと・・・」
「偶然だよ、偶然、ほら、いかにもー、な感じで額に有ったし」
「・・・・・・・」
うっわ、じぃっとみられてる。
ちんまい女騎士だけど、こうしてみられると照れる・・・訳がない。
だって、さっき一瞬出た素が・・・ねえ?
「なんだ、その目は」
「いや、何でもないけど」
「ケドとはなんだ、ケドとは!」
襟元を無理やり掴まれぐいんぐいんされる。
「あわああわああわああわあ!」
「ら、ラウニー、仲がいいのは結構なんだけれども、報告をしてくれるかな?」
「は、殿下、失礼いたしました。」
「あだあ!」
振りながら急に手を離すもんだから突き飛ばされたように離される。
尻もちをついて彼女を見上げる形になる。
「え、ええと」
「対象は恐らく魔獣石を使用し、魔境獣になった物と思います、交戦により彼が魔獣石を破壊しこれを鎮圧いたしました。
これから意識が回復次第魔獣石を対象に渡した存在を尋問し、追跡致します。」
「あー、うん、はい」
「なんかすごい適当じゃない返事」
というとラウィニアは凄い形相で睨んできた。
「あはは・・・・いつもこんな感じなんですよ。ラフニー、彼は僕の友人ですからそういう顔はダメですよ」
「は、失礼致しました」
言葉とは裏腹に不服そうなしかめっ面をしてる。
ううむ、身長は小っちゃい癖に・・・・。
「ごめんなさい、クウガ、彼女腕は確かなんですが、ちょっと・・・・ね」
「あ、はい・・・大丈夫だよ」
「ふん・・・・しかし、その武器、学生の身には過ぎた代物ではないのか」
「あ、ええと、試作で・・・その、ぶっつけ本番だったんだよね・・・」
「な、なな、なに・・・?ぶっつけ本番・・・?試作品だと・・・・・」
へなへなと座り込む。
「そんな物を実戦に持ち込むな!!愚か者ーっ!!」
キーンってきた!!
「暴発して貴様が死んだり私が死んだらどうするつもりだったんだ!!?」
「いやいや、多分きっとだいじょうぶだって」
「曖昧な言葉でまやかすな愚か者!!」
「あう、その、ごめんなさい・・・」
「ふん!貴様の様な粗忽者を、我が君の友とは認めん!精々我が君の足を引っ張らんことだな!!」
キンキン声で一通り怒鳴り散らすとくるりとヘンリエッタに向いて
「お目汚しを失礼いたしました。それでは我が君、失礼いたします。」
と、騎士らしく傅いて行ってしまった。
なんつー・・・嵐みたいな奴だ、リズリットとも違うタイプ。
「・・・・すいませんね、クウガ」
「・・・・気にしてないよ、ヘンリエッタ・・・・」
一つ分かったことがある。
どんな世界でも、金髪美少女はツンツンで、かかあ天下になりやすいってことだ。
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