BRIEFING:27 新しい出会い
「・・・」
部屋で俺は壊れたM1911を出来る限り直して眺めていた。
「旧来の武器独特の金属ボディなのが救いだったな・・・。
グロッグの方を持ってきていたら砕け散ったかもしれないぜ・・・」
先日の一件で、俺は自分の武器としていたものの非力さを改めて知った。
このままじゃ、誰かを守るどころか自分一人生き残れない。
しかし、マギアエッジ位しかまともには使えないし・・・どうしたものか。
「とりあえず・・・バッテリーチェックするか・・・」
バッテリー切れは即死に繋がるからな・・・残量確認は大事だ。
「ふう、まだ大丈夫か・・・・でも」
何とかしないと。
ガスも前回ので一本使っちまったしな・・・・。
「ガスといえば」
クローゼットに立て掛けてあるKar98kを手に取る。
コイツは、カート式のガスライフルだ。
美羽の贅沢な趣味に合わせた奴だ、クッソ、お嬢様はこれだから。
羨ましい俺にもください。
あ、そう言えば、たしか・・・・・あった。
取り扱い分解説明書。
手入れは大事だ、くそう・・・・。
分解し手入れを始めるとドアをノックする音がする。
「クウガ?いる?」
エミィだ。
珍しいな。
「居るよ」
「入るわよ」
入ってくると
「ねえ、あんたって学校の中身ってちゃんとみた?」
「え?」
「アンタ、教室しか行ってないでしょ?」
「え、あ、そうだな」
「そんなんじゃあマズイんじゃない?」
「え、そ、そうかな?」
溜息を付きながら、半目で睨み付けてくる。
「いい?アンタって新参者な訳じゃない?顔を売って置いて損はないんじゃない?」
「そうだけど」
「だってあんた、今のところあれよ?辺境で見つかった魔法の使える得体の知れない一般人よ?」
「え?俺そんななの!?」
「そう、だからこそ、顔を売りに行くわよ!はい支度する!」
「は、はい!!」
パンパンパンと手を叩き、背中を押され、ついぴんっと背中を伸ばして外に出される。
出がけにクロムと手当たり次第にハンドガンを取って。
しかし、確かに、こうしてみると俺は何も知らないな。
休日に学校を歩く、というのもなんか新鮮だな。
このマギステルガーデンは中心に首脳部である学園があり、その周囲に町ができ、賑わいを得ている。
先日フューリと行った居酒屋もそこにある。
学校区画色々存在するようで、色々見てて楽しい。
「というわけで、本日は職員区画にやってまいりました」
ここは職員や、教師が生活する場所だ。
その為、色々な施設がそろっている。
教師は忙しい為、日用品や雑貨、服飾から飲み屋まで充実してある。
また、休日は生徒にも開放されている、らしい。
最も、間違いを避ける為にここに来るためには制服でなきゃいけないらしい。
ここら辺は、あまり周りにあるわけではなく芝生と教員寮が立ち並んでいる。
一通り見たし、俺は今日は制服じゃない。怒られるのも嫌だし、次へ行くか。
「あの、お止め下さい・・・!」
「いいじゃないか?なぁ」
そんな時、寮壁の裏から声がする。
裏に入り、そっと覗いてみるとメイドの子が男3人に囲まれてる。
確かあの制服のネクタイの色、下級生だよな。
「こんな所で働いて、あんな爺の面倒なんてバカバカしいだろう?
僕のお手つきになればうちの家付きのメイドにしてやってもいいんだぜ?」
「こ、困ります・・・私は・・・」
「バァカ、お前に拒否権はないんだよ。オイ」
「はい」
「はい・・・・あ、俺達もいいっすか?」
「仕方ないな、僕が済んだらな」
「そうこなくっちゃ」
「だ、誰か!誰かあ!!」
「この時間、ここら辺には誰も来ないんだ、寮は防音遮音の魔法がかけられてる。なあに、痛くなんてしない。大丈夫さ、僕はこう見えて経験豊富だからね」
んー。
思いっきり見てるんだよなあ。
さて、要はお偉いさんと取り巻きの婦女暴行の現場に出くわしたって事か・・・。
今、武器は出る直前に引っ掻けた愛用のFN5-7だけだ。
数に不利だし、護らなきゃいけない。
でも――――――――。
「行くしかないよな男の子ォ!!」
ざっと踏み出して、銃を構える。
「動くな!」
「な・・・・なんだ、見ない顔だね、新しい小間使いかな?」
「いーや、ここの生徒だよ、見逃せなくってね!」
「はあ?お前みたいなやつが」
「ニブル様、コイツ例の奴ですよ」
「ああ、例の未開の地の野蛮な編入生か」
そういえばそういう設定でした。
「野蛮人に注意される滑稽な文明人様?何をなさっておいでですか?」
「貴様には関係ない、さっさと立ち去れ」
「た、助けて下さい!!」
しっし、と手を振る奥で声が出る。
「だ、そうですが」
「貴様、いい加減にしろ。僕は侯爵家だぞ!」
居丈高に家を自慢する。
「だったら相応の振る舞いをするのが筋だろう」
「き、貴様・・・」
顔を真っ赤にしだした。
そしておもむろに杖を取り出し
「無礼者に、一つ教えなきゃいけないようだね。
平民が侯爵家に口答えする事の罪を!」
「嫌がる女の子にナニしようとして言えた台詞かよ、反吐がでる」
取り巻きも杖を抜き、俺は改めて銃を握る。
その時
《どうしたノ?クウガ》
「え?あ、クロム?」
なんか、頭に響く声がした。
《今はクウガの魔力を伝っテ話してるヨ?取り込みチューみたいだからネ》
うわ、便利。
《デショー?何かトラブル?》
だから心読むなって・・・。
嘆息しながらも、まあいいか、と続ける。
こうして魔力伝えて会話してる時だけな?
《ウン!で、ナニナニ・・・ふむふむ、ヒドい人間だね!倒すノ?》
まあ、出来たらな。
《じゃア、トモダチのクウガに力、貸す!》
「へ?」
気の抜けた声と共に、まるで一緒にだれかと銃を握るような感覚が右腕に起きる。
「そもそもなんだい、その変な玩具は・・・オイ」
「はい・・・ぶちのめしてやるよ」
大柄の男が近付く、ワザとゆっくりか。
ならば、と、ゆっくりと照準を眉間に向ける。
「オイ」
「なんだ野蛮人」
「失明しても恨むなよ」
「は?」
引き金を絞ると乾いた破裂音と共にBB弾が出、相手を悶絶させる・・・はずだった。
ガウンッ!と爆発音に似た破裂音が鳴り響き、その瞬間に大柄の男がのけぞり、地面に仰向けで倒れる。
「・・・」
「・・・」
静寂が支配した。
オイクロム!?
《強化の魔法だヨ?大丈夫彼も死んでないヨ、気絶だネ》
本当だろうな・・・
《龍嘘付かなイ!》
まあ、生きてるなら最大限利用しよう。
「まず一人」
「き、貴様、何をした!」
「は?お仕置きだバカ、それに敵に手の内曝す奴がいるかバカ、少しは考えろバカ」
「きき、貴様」
もう一人がバッと不意をうつように飛び出した。
即座に胸部目掛けて撃つ。
「かっ・・・」
胸を押さえ、膝を付き、うずくまる。
容赦はかけたらダメだ。
歩いて近付き、髪を掴み顔を上げさせる。
「ゆ、許し」
「ダメだ」
額に当て、打ち出す。
掴んでいた髪が何本か抜け、地面に音を立て仰向けに沈む。
「さて」
「こ、このっ!」
杖を振ろうとした瞬間に手を撃つ。
甲に当たり、ぴゃっ・・・と悲鳴を上げ杖を落とし、尻餅を付く侯爵。
「そもそもなんだ?その!」
杖を踏み
「変な、玩具、はッ!」
ゆっくり力を入れ、踏み割ろうとする。
「ぼ、僕の杖!止めてくれ!頼む!」
にっこり笑って言うと、銃を向ける。
「因果応報、これがお前がして来た報いだ」
乾いた音が、静寂に響き渡った。
倒れた侯爵を外目に、メイドに声をかける。
「キミ、大丈夫?」
「え、は、はい・・・私は、大丈夫です」
深緑のような深い緑の、雰囲気がおどおどしている娘だ。
背も小っちゃいが、こう、美少女って感じの子だ。王族や貴族みたいな華美じゃないとこがそそられたのかもしれない。
「わ、私、リエル・アルフォンスと申します」
「俺は天城 空牙、よろしくリエル」
「め、めめ、滅相もございません、私ごときが貴方様のような魔法使いとよろしくなど・・・」
うわぁ。
思わず声が出そうになった。
久々のテンプレートだよ、コレ。
全くさあ・・・。
「俺は、平民だからそういうのいらないよ、普通に仲よくしよう」
「え、しかし・・・」
「俺がいいって言ってんだから、ほら、さっさと行こうぜ」
「あっ・・・」
強引に腕を引いて歩き出した。
《やったのネ!》
ああ、サンキュー、クロム。
心の中で礼を言う。
「あの、せ、折角ですから、その、寄ってってください」
「んー、わかった」
送った先で引き止められる。
送り狼みたいだが、まあいいか。
小屋のようだが、どうやら色々な細工物や道具等を作るのか。
「おう、なんだ、そのガキは」
「おじいちゃん、彼が私を助けてくれたの!」
背の小さいじいさんが俺を見るといきなり暴言を吐いた。
「そうかそうか、まあ座れや坊主」
事情を聴くとドカッと座りガハハと笑いそうな爺さんは告げる。
こう、ドワーフのイメージまんまな感じだ。
「俺っちはダイガンっつーんだ、この工房の親方だな」
「工房、スか?」
「おうよ、マジックアイテムの修理とかだな」
「マジックアイテム・・・マギアエッジとか」
「おうともよ、お前さん、壊れたマギアエッジでもあるのか?」
「いや、無いけど・・・」
ドアが開いた気配がし、凛とした声がする。
「頼もう、ダイガン氏は居られるか」
長い金髪に水色の目だが、キツそうな印象を受ける。
見た目からして、まんま女騎士って感じだ。
「なんだ?」
「仕事を頼みたい、この槍を研ぎ直して頂きたい」
「見せてみろ」
立ち上がり、槍を受け取る。
華美な装飾はないが、ふつ、と空気が切れ、不思議と惹かれるようなパルチザンだった。
「スゲ・・・」
「私の家に代々伝わる宝槍だ」
「通りで・・・」
「通りで、とは、なんだ?」
「いや、あまりそーゆーの解んねえんだけどさ、見てて惹かれるなと」
「そうか、で、どうだろうか」
「ああ、構わねえが、こりゃ魔鉱だな?」
「そうだ、産地は我が祖国リヴェルタニア、輝鉱石になる」
「分かった、一週間掛かるがいいか」
「構わない、よろしく頼む」
そういうと出て行った。
最後まで凛とした人だなあ。
「すまねえな、ええと」
「空牙です、天城 空牙」
「クウガ・・・おお!お前か!転入してきた奴ってのは」
「ああ、はい、多分そうだと思います」
「興味あったんだよ、どんな奴かってなあ、ほーん、ふーん、成程なぁ」
なんか、じろじろ見てくる。
「まあ、ともかくだ、うちの孫が世話になったな、この通りだ」
「いや、そんなやめてくださいよ!?特に何かしたわけじゃないんですから!」
「何かしたわけじゃない、だと・・?」
「そうですよ、通りがかって、それで偶然何とかしただけで」
「そうそう!凄かったんだよ!ぱーんっ!って!」
「あれは、まあ、魔法っていうか玩具っていうか」
「どういうこった、よくわかんねえよ」
「ええと、これの事ですね」
ゴトッと、音を立ててFN5-7を置く。
「なんでぇ、コレは」
「これは銃っていう俺のせ・・・故郷の武器を模した玩具っすね」
「玩具ぁ?」
「そっす、それを強化して撃ってた、って感じで」
「おめえさん、強化なんぞ使えるのか」
「え?」
「強化といやあ、古代呪文の一つでよ、たしかさっきの嬢ちゃんの国のリヴェルタニアが御国元じゃなかったか」
まじかよ・・・・・・・・・
確か、古代呪文って、各国に存在する石碑の中に存在する古の魔法で、石碑の解読が進むにつれて明らかになった魔法だけど未だに大部分が不明っていうマジでよくわからない魔法、だよな。
で、解読の元になった国に、その魔法を独占もとい、許可を出す権利が与えられる、らしい。
授業ではそんなことを言ってたはずだ。
ツーことは、フューリ、”得意じゃない”って言いながらさらっとそんな物使ってたのか・・・・ホント、恐ろしい子・・・。
「ちょっと弄ってもいいか?」
「あ、はい」
手に取り、色々眺めるダイガンさん。
「・・・・まるで工芸品だな、本当にこいつが玩具なのか?」
モノクルみたいな眼鏡で観察しながら、見て、そういった。
「あ、そういえばこれと似たようなのって、直せたりします?」
「何とも言えねえなあ、俺っちにだって」
「まあ、そうですよね、異国の文化ですし・・・」
そういったとたん、目を吊り上げた。
「何だとこの野郎!俺っちは天下無敵のダイガンだ、俺っちに直せない物なんかねえ」
そういう親方を見て、俺はニンマリ笑うとともに、思った。
あ、この人、腕は確かだけど――――――扱いやすい人だ。
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Next Bullets for 『BRIEFING:28』
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