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プロローグ

連載はじめました。

誤字脱衣は発見次第すぐに訂正します!


コメントとか感想は気軽にどうぞ!


薄暗い雲が覆う空。

昼間だというのに、光が殆ど差し込んでいない。

その雲は明らかに不可解な雲だった。


その雲の下の草原を、馬に乗って走る一人の男がいた。

黒いローブのようなものを被り、右手には大層な剣を持っている。


「リアル!もっとスピードを出せ!」


『これ以上は無理だ…俺だって全力でやってんだよっ!』


男は馬に話しかける。馬もそれに答える。

傍から見れば奇妙な光景である。

男は小さく舌打ちをすると、後ろを見る。

100mほど離れたところに、黒いギュークに乗った魔族軍の姿が見えた。


「くそっ…なぜ魔族軍が…。」


『それよか今は逃げることが先だろマヌケ!』


馬は声を上げて男を叱った。

男は唇を噛み締め、前に向き直った。

右手に剣を持っているため、身体が安定せず、上下に揺られる。


「リアル…これからどこに行くつもりだ?」


『サルマンが人間を召喚したはずだ…選ばれし勇者ってやつだよ。』


「サルマンが…?」


男は眉を潜めながら前に進む。

リアル…という名の馬は馬特有の息を吐きながら走る。

リアルが足を踏み出すたびに、草原の草が千切れたり抜けているのが分かる。

男は再び後ろを向いた。

先ほどより、僅かではあるが魔族軍との距離が縮まっている…。


「ダメだ…距離を詰められている…このまま真っ直ぐ行ったんじゃ追いつかれるぞ!」


『ちっ…しょうがねぇ。森の中に入るぜ!』


真っ直ぐ走っていたリアルは、そう声をかけると、脇道に逸れるようにして移動。

すぐ脇の森の中に入って行った。

ギュークに乗った魔族軍も、それを見過ごすことなく、森の中へと入る。



森の中は、木々が邪魔して先ほどよりも明らかにスピードが落ちていた。

だとしても、それは魔族軍にとっても同じこと…男はそう考えていた。

しかし、男はすぐに、自分の考えが浅はかだったことを身をもって知ることになる…。


『おいタルシス!スピードが出ねぇ!邪魔な草木を斬ってくれ!』


「そ、そんなことができるか!俺は魔導師だぞ?」


『ふざけんなお前…じゃないとすぐにでも魔族が――――』


リアルが何かを叫びかけたその時だった。

背後の木々が、突然の爆風で折れ、吹き飛んだのだ。

タルシスとリアルの背後の木々は、裸の状態になっていた。

10mほど後ろには、ギュークに乗った魔族軍。


「なっ…こいつら木々を破壊して進んできたのか…。」


『森の中なんか入るんじゃなかった…。』


二人は今更ながら森の中に逃亡したことを後悔していた。

しかし、クヨクヨと後悔をしている時間は無い。


「…しょうがない。リアル、俺を下ろしてくれ!」


『はぁ?何言ってんだお前!』


「その…サルマンが召喚した勇者とやらには…お前の力が絶対に必要だ……鳥になって早く逃げろ!」


(リアル)の耳元で、思いっきり叫ぶと、タルシスはリアルから飛び降りた。

リアルはそれにいち早く気付き、その場で急ブレーキを掛ける。


「おい!止まるなリアル!早く行け!」


『……ちっ、このマヌケが…!』


リアルは小さな声でそう言うと、身体を光り輝かせた。

その直後、馬の姿だったリアルは、羽を広げた状態ならば1mはあろう巨大な鳥に変化した。

タルシスは鳥になったリアル目がけて剣を投げる。

リアルはそれを(くちばし)でうまく咥えると、木々を避けて空高く舞い上がった。


ギュークに乗ったゴブリンのような黒い魔族たちは、リアルを逃がすまいと、弓矢を構え、放った。

しかし、空に放たれた弓矢は、炎によって焼き尽くされる。


「よぉ…クソ魔族。俺は魔導師だぜ?弓矢なんか通すわけねぇだろ!」


そう言って、タルシスは右手の掌を魔族たちに向ける。

目を瞑り、そして開けた。

すると、掌からは巨大な炎が吹き上がり、魔族たちを襲う。


「ガァァァアァァァアア!!」


魔族たちは奇声を発して焼き尽くされた。


「思えば…お前ら如き、俺が最初から相手してりゃ良かっ――――」


勝ちを確信していたタルシスは、異変に気付き、左脇腹を抑えた。

顔を顰めながら脇腹を見る。

脇腹には、黒くて細長い剣が突き刺さっていた。


タルシスが魔術を使ったことによってできた火の海。

そこから剣は飛んできて、タルシスの腹に突き刺さったのだ。


血が滲み出る。腹が熱くなってきた。意識も徐々に遠のく…。


「クソ…なんだよこれ…。」


「一瞬だけ、勝った気になれたか?」


背後から声が聞こえた。

タルシスはその声の驚き、眼を見開いて後ろを振り向く。

そこに立っていたのは、奇妙な仮面を被った者。

髪の毛を含む顔全体が隠れていて、まったく正体が分からない。

その声は、男とも女とも取れない中世的な声だった。


「誰だ…お前…?」


「魔族の僭主(せんしゅ)だ。…今はな。」


背後にいた”魔族の僭主”は、タルシスの腹に刺さった剣を引き抜いた。

その時、タルシスは痛みよりも、恐怖に襲われた。


確かに、あの火の海から剣は投げられ、腹に刺さった。

一瞬ではあるが、この眼でその瞬間を見ている。

しかし、僭主と名乗るこいつは、後ろから剣を引き抜いた。

つまり、剣は背後から腹に刺さったということ…。


「お前…な、何者だ…?」


タルシスは腹を手で押さえる力も出せぬまま、その場にうつ伏せで倒れ込む。

鮮血が、森の中に広がる。

火の海から聞こえる、パチパチという木々を焼く音が、その儚さを謳っているようだ。


「魔族の僭主シアンだ。」


シアンはそう名乗り、タルシスの首を剣で切断した。

首は森の中へ吹き飛んだ。


「……。」


シアンは剣を手にしたまま、火の海へ近づく。

そして、剣を持っていない左手を翳す。

すると、火は徐々に勢いを弱め、やがて消えた…。


「リアル…逃がさんぞ。」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



気付いたらここにいた。

俺は確か…家で麻婆豆腐を作っていたんだ。

そこそこ料理が得意な俺は、弟の好きな麻婆豆腐を作っていた。

それがなんだ?ここはどこだ?


「ちょっと待って…。」


俺がいたのは、どこだか知らぬ町の端っこだった。小さな町だ。

目に付くのは、大きな鐘が吊り下がった教会。

ギルド窓口と書かれた建物に、武器屋と宿屋。


「なんだこれ…ド○クエ?」


俺は状況が全く把握できなかった。

まずここはどこで、なぜこんなところにいるのか。

それを知りたかった。


夢じゃないかと思って頬を抓ってみたが、普通に痛い。

涙が出るほど痛い。これは夢じゃないんだ。


俺はとうとうその場に座り込んだ。

そして、不意に背中を後ろの壁に付いた。

ん?後ろに壁…?


不審に思って後ろを振り向くと、そこには大きな風車があった。

白い支柱に茶色い木製の羽が付いた風車だ。


「おぉ…なんか和むな、これ。」


そんなことを呟いていると、だんだん眠くなってきた。

ここがどこだかは全然見当もつかないが、居心地が良い。

のどかで暖かな空気だ。たぶん住民も優しい(良い意味での偏見)。


ふと空を見上げた。

綺麗な青空に、真っ白な雲。

いくらなんでも平和的過ぎる気もして、少し怖かった。


「もしかして俺…死んだのかなぁ~…。」


ため息交じりで冗談を呟く。

そんな感情でしばらく空を眺めていると、雲を裂いて何かが落ちてくるのが分かった。

細長い何か…。うん、こっちに向かって落ちている。


「…やばいやばいやばいやばい!」


ものすごいスピードで落下してきたそれは、俺の目の前に不時着。

地面に突き刺さった。これが位置エネルギーの恐怖か…。


落ちてきた物の正体は、鞘に納められた刀だった。

柄は薄い青色。鞘は若干青みがかった黒色といったところだろう。

(つば)は四角く、中心に白く光る宝石のような物が埋め込まれている。

宝石に太陽の光が反射する。

ちなみに、刀身の厚さは、鞘の厚さからいうと3ミリ程度だろう。

幅は3センチほどかな?


「なんだなんだこれ…なんで空から剣が降ってくるんだ…?」


『おい!お前がリクウか!?』


「…!?」


やはり夢か…?

俺は再び頬を抓る。痛い。

ビンタもしたが、普通に痛い。涙目になった。


これは夢じゃない。夢じゃないけど…


…確かに剣が喋った。


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