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QUEST 8 『黒翼の堕天使』

 白い天井、壁にはゲームのキャラのイラストの描かれたポスター

机の上には携帯ゲーム機とそのソフトが散乱している。

 この部屋の主、日暮翔は今日は休日ということもあって

IO内で夜更かしをして、その疲れが出たのか昼間なのに熟睡しているのだった。


 そんな彼なのだが、1本の電話により眠りを覚ますことになった。

ショーは着メロがなっている携帯(ガラケーではない)に手を伸ばす。


「もしもし、なんだ雨宮か」


「日暮っ、大変だよっ!

 召喚武器が実在していたのがプレイヤーの間で話題になってるっ」


「なるほどねえ、召喚武器が……な、なんだと?!」


「とりあえず、ネット見ればわかるからっ!じゃ、そゆことで!」


 そう言われて電話は切れてしまった。とりあえず現状を把握しないといけない。

 翔は自分の部屋にあるPCを立ち上げ、IO関連のサイトをしらみ潰しに探す。

もし、自分が召喚武器を持っていることがバレた時のことを思うと気が気じゃない

他のプレイヤーからの嫉妬で罵倒が飛ぶかもしれない。

ありもしない噂を流され、酷い扱いを受けるかもしれない。

 しかしそんな想いは杞憂に終わった。


 大手IO情報ブログ『イデア・ジャーナル』

プレイヤーであるブログ主がゲーム内で直接有名プレイヤーに

取材インタビュー等を行うスタイルが受け、多くのプレイヤーに支持されている。

 その中の数ある記事の一つに注目する。


『イデア各地で召喚武器使いが現れる!』


 イデア各地、これはすなわち自分以外のプレイヤーも

召喚武器を持っていたという事を意味する。


 イデア・ジャーナルが現在確認している召喚武器使用者は3人らしい。

まず1人目は悪魔族最強ギルド『七つの大罪(ギルティ・セヴンズ)』所属のさーたん氏。

2人目は天使族大手ギルド『終末の福音アポカリアエヴァジェリア』所属ゼース氏。

そして3人目が竜族の零細ギルド『神竜隊(ドラゴンフォース)』のリューオー氏だそうだ。

彼らの持っている召喚武器の詳細は不明、追って情報を公開する予定とのこと


 とりあえず自分のことじゃないと安心したショーは

近くに置いてあったジェネシスを被り、IOにログインしたのだった。



 東イデアの北側に位置するジョヴァの街

 ここは人間種族のスタート地点のフィールド近くに存在する街であり

日々増え続ける初心者たちの拠点となっている。

 ショーは街の外れの草原で今日もここでキャラ強化に励んでいた。


「ふーっ、ここのMOBはほとんど片付いちまったか」


 次はいつか覚えた薬草学のテクニックを上げるために

そこら辺の原っぱから薬草を探しあてる。

 物理系のビルドである以上、回復アイテムの自給自足は欠かせない。

薬草を摘み、狩りをし、傷ついたら薬草を使い、薬草が減ったらまた探す

これら一連の動作がショーのゲーム内の一日の行動だった。


「薬草ウマー」


 そう言って、西の空を見上げると

なにやら空には黒い斑点のようなものが浮かんでいた。

 この光景、ゲーム開始初日にも見たことがある。

たしか、ギルド連合とかで人間種族の複数のギルドが集会を行うために

ここジョヴァにたくさんのプレイヤーが箒やら竜に乗って

飛んできたことがあった。

 しかし、今日はその集会の日ではないはずだ。


 黒い斑点は徐々に大きくなり、その詳細は明らかになる。

その正体は人間ではなかった。


 頭に生える角、背中に生える黒い羽、先が矢のように尖った尻尾。

悪魔種族と思しき集団がここに向かって飛んできていた。

 そして、その集団はショーの前で着地する。


「貴様がショーだな?」


「あんたらは一体……?!」


 悪魔の集団の中からリーダー格と思われる男が姿を現す。

銀髪のロングに天使種族の翼をそのまま黒色に変えたような翼。

誰もが羨む甘いマスク、高そうな黒の洋服に、腰にはレイピアを身に着け

その姿はさながら悪魔の貴族というに相応しい風貌だ。


 IOにおける最初に選べる5つの種族の一つ、悪魔。

INTは5種族中最高、ただし物理攻撃には滅法弱い。

INTに依存するテクニックに追加ボーナスがあるなど

攻撃魔法系においては最強の種族と言えるだろう


「私は『七つの大罪(ギルティセヴンズ)』のサブリーダーが一人

 『傲慢の罪』のシファールという者だ」


 傲慢の罪とは恐らく二つ名のことだろう。

このゲームではプレイヤーとNPCの間に存在する名声値という隠しパラメータが

一定を超えるとその時の自分に相応しい二つ名を手に入れることができるらしい。

どんな二つ名であれ、二つ名を持っているのは凄腕のプレイヤーを意味する。

しかしこの二つ名システム、どういう仕組みになっているのかは定かではない。


「『七つの大罪』……?

 どっかで聞いたことあるような……あっ!」


 ショーは思い出した。

イデア・ジャーナルで紹介されていた召喚武器所持者のいるギルド

七つの大罪(ギルティセヴンズ)』だ。


「センティデアに送った偵察の者から話は聞いた。

 貴様が魔剣を所持している事をな。

 折り入って相談なのだが、ここで一つ私と手合せをしてほしい」


「何……っ?!」


「召喚武器を持っているということは

 貴様も私の(あるじ)と同じイレギュラーなのだろう?

 私は強い相手と戦うのが大好きなんだ。さぁ魔剣を召喚したまえ」


 シファールはそう言い捨てると腰に着けていたレイピアを引き抜き

その刃をショーに向ける。


「ちょっとさっきから好き勝手言ってんじゃねえぞっ!

 主とかイレギュラーとなんなんだよっ?!」


「お喋りがしたいのであれば、まずは私を打ち負かしてからにしてくれたまえ

 まぁ、端から私は負けるつもりは無いがね」


「殺る気満々かよっ?!……やるっきゃないのか!?」


 シファールのレイピアの突きがショーを襲う。

しかし、ショーも負けじとその突きを持っている剣で弾く

 だがこちらは守るので精いっぱいだ。


「どうしたっ、さっさと魔剣を召喚したまえっ!

 このままじゃ私の剣の錆になるだけだぞ?」


 シファールの力強い突きがショーに直撃する。

その勢いでショーは後ろに吹っ飛んだ。


「いってぇ……、もう怒った。

 いいよ見せてやるよ俺の魔剣をっ!!!」


 右手を天にかざし、目を瞑り意識を集中する。

集中が頂点に達し、次の瞬間、目を見開く。


「召喚、魔剣・カヴァーンっ!!!」


 ショーが高らかにそう叫ぶと虚空に魔法陣が刻まれ

そこから一本の蒼い刀身を持った両手剣が姿を現す。

そして、その剣はショーの手中へと吸い込まれる。


「おお、これが魔剣……、カヴァーンというのか

 名前はイマイチだが素晴らしい」


「そりゃどーも、じゃ、行かせてもらうぜっ!!!」


 カヴァーンを携え、シファールに向かって走り出す。


「米斬りッ!」


 ショーの得意ユニークテクニック、米斬りを発動させ

攻撃がシファールに当たったかのように見えたがそれは間違いだった


「残像だ」


「なん……だと……」


シファールは音も立てずショーの背後に回る

ショーはどこかで聞いたことのあるようなリアクションを取るも

即座に背後のそれを振り払う……がまたしても残像で攻撃は外れる


「だったらこれならどうだッ?!虚空斬ッ!!!」


 ユニーク接近系(アサルト)テクニック『虚空斬』。

素早い斬撃で空間に亀裂を入れ、相手ごと大きなダメージを与える。


 しかし、これも外れてしまう。


「もう良いだろう、終わりにしよう」


 飽きたかのようにシファールはそう言うと持っていたレイピアを天にかざす

レイピアに闇と光が渦を巻いて合わさり最強に見える。


堕天・灰刃剣エンゼルフォールストラッシュ


 彼の闇と光の合わさった灰色の剣が振り下ろされたかと思うと

ショーのHPは瞬く間に0になった。



 目の前が真っ白になり、目が覚めるとそこはジョヴァの街の広場だった。

シファールとの決闘に敗れ、復帰地点に戻ってきたのだ。


「そうか、俺、負けたのか……

 あいつ、とんでもなく強かったな……」


 たしかに自分の持つ召喚武器は強い。

しかし、自分自身はまだまだ半人前だということを思い知らされる。

 そして、世界にはまだまだ自分より強い存在がいることを知ったのだ。


「面白え…、面白すぎるじゃねえか……っ!

 絶対、強くなってやる!そして次会ったときは勝つっ!!

 覚えてやがれーーーーーーーーーーーーっっっ!!!」


 西の空に浮かぶ夕焼けにそう叫び、誓うショーなのだった。



 西の空には用事を済ませて自分のホームタウンへと戻る

シファールの一隊が空を飛んでいた。


「いやー、お見事です。シファールさん

 召喚武器使いのガキをいとも簡単にのしちまうなんて」


「相手がたまたま、始めたての初心者だっただけだ

 召喚武器もなにかのバグか手違いで手に入れてしまったのだろう」


 シファールの部下が彼をベタ褒めすると

シファールは自分の見込み違いだった相手にがっかりしていた。


「シファールさん、その傷大丈夫っすか?」


「傷……?」


 シファールが自分の頬に手を当てるとそこには一筋の切り傷が出来ていた。


「IOが始まって以来、攻撃を受けたことなんて

 指で数えるほどしかないシファールさんに傷を付けるなんて……

 あのガキは一体……っ?!」


「ふ、ふふふ、あーはっはっはははっ!!!

 この私に傷を付けるとは!良いだろう認めてやろう!!

 蒼い魔剣のショー、覚えておこう!!

 そして、次会う時までにはせいぜい強くなっておくがいい!!!」


 シファールは東の空に向かって自分に一撃を入れた()に賞賛を贈るのだった。

シファールはショーのライバル的立ち位置として

今後も登場する予定です。

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