QUEST 7 『蒼刃の魔剣』
どんなオンラインゲームにも大なり小なり都市伝説という物が存在する。
イデアオンラインも例にもれず、いくつか都市伝説が存在していた。
VR適正が異常に高く、一人で数十人以上相手できる謎のプレイヤーの存在。
イデアのどこかに現れるという本来存在しないはずの街とか
イデアは実在する異世界説など、他にも色々あるらしい。
ここは大手匿名ネット掲示板『12ちゃんねる』
ここのVRMMO板に一つのスレッドが立っていた。
【IO】イデアオンライン都市伝説検証スレ【USO】
389 :VR世界の名無しさん:206x/05/14(金) 02:13:42.77 ID:xxx
やべえ、見ちまったよ
あれ絶対、都市伝説の召喚武器だわ
390 :VR世界の名無しさん:206x/05/14(金) 02:16:15.22 ID:xxx
>>389
kwsk
391 :VR世界の名無しさん:206x/05/14(金) 02:18:58.55 ID:xxx
セントイース平原のとこで青い服着た人間の男が両手剣を召喚してた
武器の性能が良いのか知らんけど物凄いスピードで目視できなかったし
話しかけようとしたんだけどいきなりそいつの周りに
MOBの盗賊団がPOPしたせいで
一緒にいたパーティごと逃げられてしまったよ
392 :VR世界の名無しさん:206x/05/14(金) 02:23:48.00 ID:xxx
>>391
嘘乙
393 :VR世界の名無しさん:206x/05/14(金) 02:24:52.19 ID:xxx
百歩譲って召喚武器があるとしても問題は召喚武器の入手法だよな
一説によるとダンジョンを潜った時、ごく稀に隠しダンジョンに送られて
そこをクリアした者だけが手に入れられるらしいけど
394 :VR世界の名無しさん:206x/05/14(金) 02:27:20.94 ID:xxx
あーシークレットダンジョンってやつか
これはまた初期に出てた都市伝説だな
65536分の1の確率で開くとかいうやつ。
395 :VR世界の名無しさん:206x/05/14(金) 02:31:03.25 ID:xxx
65536分の1wwwwwwwwwwwwwwwww
開くもんも開かねーっよwwwwwwwwwww
もうシークレットダンジョンも召喚武器も無いに等しいだろこれ
─
朝の通学路、少年と少女は一緒に登校していた。
少年は眠そうに欠伸をし、少女はそんな少年に
ちょっかいをかけていた。
彼らの名は日暮翔と雨宮優菜。どこにでもいる普通の高校生だ。
変わりない日常に退屈を覚える日暮翔だが
ここ数日で大きく変わったことが一つだけあった。
「ごきげんよう、優菜さん」
「あ、美華恵ちゃんだ。、おはよー!」
金髪の左右にはリボンで結んだツインテール
そのツインテールはくるりとカールされており、手の込み様が窺える。
彼女の名は、雲城 美華恵。お嬢様である。
雨宮と雲城はあの日からすっかり親友になり
下の名前で呼び合うようになっていた。そして日暮翔はというと
「おっす、雲城」
「ごきげんよう、翔様」
「頼むから、その呼び方だけはやめてくれ
他の奴らに聞かれたら絶対誤解されるから」
あの日、彼女と友達になってしまってからというもの
随分気に入られてしまったようで前日まで二人称が「日暮君」だったのが
「翔様」にランクアップしていたのだった。
「あら、わたくし達の仲は誰にも邪魔はさせませんわ
学校序列という障害だって余裕で飛び越えて見せますわ」
「だから、そういう言い方が誤解されるんだってば」
「何故ですの、わたくしはこんなにも翔様をお慕いしとう申してますのに
随分とつれないのですわね……とても悲しいですわ」
「雨宮、頼むからこいつをどうにかしてくれ」
「いやあ、お熱いお熱い」
困惑する翔に優菜は茶化すように言うと翔は優菜に軽くチョップを喰らわす。
「あうぅっ、そんなことより昨日のあの両手剣
しっかり説明させてもらうからねっ!」
「カヴァーンのことか、俺がこいつと初めて会ったのは
ギーアの洞窟とかいう初心者ダンジョンだった。
そこのボス、剣を守るボスゴブリン?だっけな
そいつを倒したら出てきた。」
「ふんふん、えっ、それってもしかして
都市伝説の隠しダンジョンってやつ?
ボスの名前もwikiに載ってないやつっぽいし……
それでそれで?武器の性能とか効果とか特性とかは?」
「なんだよそのシークレなんとかっていうやつ
俺だって昨日、初めて召喚したばっかで
詳しいことは分かってねーんだ、細かいことは知らん
続きは今日の夜、IOでな」
「えーっ!」
───
──
─
長く退屈な一日が終わり、IOにログインする。
目を開けるとそこは前回、ログアウトした噴水広場だった。
そして、目の前にはユゥとミカエールがいた。
「おっそいよ、ショー」
「ごきげんよう、ショー様」
「悪い悪い、じゃ、さっそくだけど召喚してみるよ」
「あ、ちょっと待って!」
ショーがカヴァーンを召喚しようとすると
ユゥがそれを止める。
「IOにおいて召喚武器ってのは、存在するかどうかもわからない
まさに幻の逸品なんだよ、他人の目につくここでやるのは不味いよ
どこか人目につかない場所でやらない?」
「そうか、それもそうだな」
オンラインゲームにおいて、ゲーム内に一つしかないアイテムが存在すると
所持者は注目と羨望の的となり、また嫉妬の対象になったり
無駄な人間関係のいざこざが発生したりするものだ。
平和にゲームがしたいなら下手に目立たない方が得策なのである。
─
ここは、センティデアの東に位置するフィールド『セントイース平原』
ショー達は、魔剣・カヴァーンの力を調べるために
人通りの少ない平原の一角に足を運んでいた。
「召喚、魔剣・カヴァーンッ!!!」
ショーが高らかにそう叫ぶと虚空に魔法陣が刻まれ
そこから一本の両手剣が姿を現す。
「流石、ショー様ですわ!」
「でも、何でカヴァーン?カリバーンとかならわかるけどさ」
「メニューで装備欄を確認したら如何かしら
何か情報が載っているかもしれませんわ」
ショーはメインコマンドのEQUIPで魔剣・カヴァーンの詳細を確認する。
NAME:魔剣・カヴァーン
分類:召喚武器(両手剣)
威力:120~160
効果:【虚空の傷】空撃ちの斬撃を一定時間固定する。
【空間操作】召喚中、アイテム所持枠を無制限にする。
説明:空間を司ると云われる伝説の魔剣。
召喚時間10分、再召喚時間3時間。(ショー専用アイテム)
「なにこのチート武器……といっても召喚時間と再召喚時間があるなら
そこまでチートじゃないような気もするね」
「空間操作とか地味にチートだな……
ドラ○もんの四次元ポケットみたいなことができるわけだ
まさかとは思うがカヴァーンってカリバーンと鞄をかけたダジャレなんじゃ」
「……名前を考えた時の製作者の精神状態を是非知りたいですわね」
ここで気になったのが効果【虚空の傷】だ。
ミカエールと戦った時に外れた斬撃のエフェクトがすぐには消えず
2~3秒すると消える不思議な現象が恐らくそれだろう。
「少し、試してみる必要がありそうだな」
ショーはそういうと遠距離テクニック『ショット』を立ち上げ
近くを徘徊していた小熊のMOBに石を射出する。
怒った小熊はこちらに向かって襲い掛かってくるが
ショーは小熊が目の前にくる前にカヴァーンを素早く振る。
虚空の傷の効果で空間に傷が生じるも
小熊の爪はまもなくショーに襲い掛かろうと思われた。
が……その心配は無かった。
小熊はカヴァーンの作り出した虚空の傷にぶつかり
逆にダメージを受けたのだ。
そして、攻撃を受け怯んだ小熊はどこかへ逃げて行ってしまった。
つまり、虚空の傷が発動し、傷が空間に残っている間
モンスターがこれに触れると攻撃を受ける。
こういう仕組みのようだ。
「なるほど、こういう風に使えば良いのか
アイデア次第じゃ色んなことに使えそうだけど
使えるのかっていったら微妙なとこだなあ」
そうこうしていると召喚時間が終わったのか
魔剣・カヴァーンは元いた場所に帰って行ってしまった。
「あー、終わっちゃった。
もっと見たかったのにー」
「それにしても、ショー様はすごいですわ
初心者のはずなのにこんな武器を持ってらっしゃるなんて」
「ははっ、偶然というかなんというべきか」
実際、偶然なのだからなんとも言えない。
ユゥに聞く前は召喚武器なんてそこらのプレイヤーあたりが
みんな持ってる物とかそんなイメージだったが
世界に一つしかない武器だと聞かされた時は驚くしかなかったのだ。
「……しい」
「ん?」
「私も召喚武器欲しいーーーっ!!!
ねえ、本当にダンジョンに行って手に入れたんだよね?!
その時のダンジョンってどんなかんじだったの?!」
ユゥがショーの肩を激しく揺らす。
ショーはユゥの暴走を止めろと言わんばかりに彼女の腕をつかむ
「よーし、こうなったら私も自分の召喚武器を探してくる!
ショーより強いの見つけるんだから、見てなさいよねっ!!」
ユゥはそういうと何処かへ行ってしまった。
「行ってしまわれましたわね……
はっ、ということは今、わたくしはショー様と二人きり……?!
つまりこれは好機……?!」
「はぁ、俺は疲れたよ
ログアウトして寝よっと」
「しょ、ショー様っ!
実はわたくし、ショー様のことが前々から…す、好きでしたのっ!!
もしよろしければわたくしと付き合ってくださりませんかっ?!」
しかし時すでに遅し、ミカエールの衝撃の告白は
ショーがログアウトしたと思われる方向にただ空しく響くのだった。
─
一方その頃、大手匿名ネット掲示板『12ちゃんねる』
ここのVRMMO板に新しいスレッドが立っていた。
【速報】召喚武器は実在していた【実装済】