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QUEST 6 『親友』

「何時、わたくしが犯人だとお気づきになられましたの?」


「元々、ちょっと怪しいなとは思ってたんです

 ……あなたはこの犯行決行において三つ、間違いを犯した」


 ショーは探偵っぽい口調で語り出す。


 まず、一つは現実(リアル)

ショー達にゲーム内でパーティを組もうと誘ったこと。

これは、ミカエールが犯行を前々から計画していた場合

誘拐が発生した時からミカエールがまず怪しいと気づく。


 そして二つ目、ショーのいる前で状態異常系の

ユニークテクニックを使用してしまったこと

これが使えた時点で犯人は限定されてしまう。


そして三つ目は


「この俺が天才だったからってことかな」


 と言い捨て、ドヤ顔をするショー。


「ふふっ、素晴らしい推理力ですわ」


「ミカエールさん、何故こんなことをしたんですか」


「それは……」


「それは?」


 ミカエールは口を開く


「校内美少女(顔だけ)ランキングでわたくしが3位で

 あの雨宮さんが2位ってのが気に喰わなかったからですわっ!!!」


「「そんなつまらない理由でこんな手の込んだことをしたんかいっ!!!」」


 ショーとユゥはあまりの酷い理由にハモりながら突っ込みを入れる


「つまらない理由じゃありませんわ!

 私は雲城財閥の時期跡取り、常に一番じゃないといけませんの」


「その言い分だとまず美少女ランキング1位の方を

 どうにかすべきじゃないのかよっ!」


 ちなみに校内美少女ランキング第一位はなかなか学校に現れず

正体が謎に包まれており、病弱っ娘説が出てたり出てなかったり

 作者が設定を考えていなかったとかそういうのではないので

ご安心ください(作者より)


「とりあえず、雨宮さん

 わたくしはあなたが気に入りませんの、わたくしと勝負なさい!」


「ふええ」


「すまないが、ユゥは爆睡状態から覚めたばっかで

 身体も本調子じゃないだろうし

 だから、代わりに俺があんたの相手をしよう」


「まぁ、それでも構いませんわ。

 ここでは存分に勝負はできなさそうですし

 いったん外へ出ますわよ」



 緑の平原が地平線まで伸び、空と大地の境目が曖昧になっている。

 ここは中央イデアと東イデアを結ぶセントイース平原。

ここで戦いが始まろうとしていた。


「試合開始の合図は夜明けの鐘の音。

 勝負はどちらかのHPが先に0になったらそこで戦闘終了。

 それで異論なくて?」


「あぁ、問題ない」


 両者、まだ武器を収めた状態でお互いを睨み合う。

そこからは緊張感が生まれており、一触即発とはまさにこのことだった。

 そして鐘塔の鐘がゴーンゴーンとなり響く

両者一斉に収めていた武器を手に取り走りだした。

 かくして戦いの火蓋が切って落とされた。


「ホーリーランスッ!!」


 先手はミカエールだった。

槍に黄金の光が宿り、そこからレーザー光線の如く

強烈な突きをお見舞いする。

 ショーは彼女の攻撃をかわし切れず、わずかに攻撃が掠り

HPバーが1割減ってしまう。


「ショー!」


「大丈夫、まだこれからだっ」


 心配そうにユゥはショーを見つめる


「彼女を庇って代わりに戦うなんてずいぶん仲がよろしいですのね

 二人はどういう関係ですの?……恋仲とかかしら?」


「そんなんじゃねーっよ、雨宮は俺の友達なだけだ」


 随分余裕があるのかミカエールはショーに向かって煽る

が、ショーも冷静に受け答えをする。


「友達、か……あっははははははっ!

 下らない、実に下らないですわっ

 そんなもの常にトップでいる必要のあるわたくしには

 ただの足枷にすぎませんわっ」


 雲城財閥の令嬢である雲城 美華恵は雲城財閥の時期跡取りとして

常にトップでいることを心がけていた。

そしてそれは大好きな父の為で父に認められる事が彼女の生き甲斐だった。

トップであり続けるためには努力を惜しまず、常に上を目指す事。

上を目指すという行為は必ず上にいた誰かを蹴落とす必要がある。


「スコールスピア!」


 豪雨の如く、激しい槍の突きがショーを襲う。

何発かは避けるが残りの数発はよけきれず被弾してしまう。

ショーのHPバーは残り5割に差し掛かっていた。


「なるほど、な

 あんたがどういう人間なのか少しわかった気がするよ

 あんたはどっちかというと俺らと同じ側の人間だってことをな」


「それはどういう意味なのかしら」


「確かにあんたは他の人間より持ってない物を多く持っている

 だがな、あんたにはただ一つ持ってないものがあるって知ったんだ

 それは……親友(ともだち)だ」


 学校では彼女にたくさんの友達がいた。

だが、それらは皆、学校序列(スクールカースト)上位の者と仲良くなることで

自分の地位を上げようとする利己的な者達だった。

 自分は利用されているのにうすうす気づいており

ある時、一つのことに気づく、自分は一人ぼっちなのだと

そして、彼女は少しずつ心を歪ませていった。


「あんたがユゥを嫉妬で襲ったという話、あれは嘘だろ?

 あんたは……たぶん、誰かに助けを求めていたんだ。

 学校序列(スクールカースト)という呪縛から逃れたいが為に

 ワーストの俺たちにコンタクトをしてきた…、違うか?」


「…るさい、うるさいうるさいうるさいうるさいっっっ!!!」


 ミカエールは感情をむき出しにしてショーに襲いかかる。

そして、彼の目の前に来たかと思えば自慢の白い翼で空高く飛びたつ


「全ての光よ、我が手に集え

 あらゆる物を貫く槍となりて、仇なす者に終末を」


 詠唱を唱え、テクニックを立ち上げる。

周囲の光は彼女の持つ槍に集まり、球体状に膨れ上がる。


衛 星 光 槍 撃サテライト・スピアレイ !」


 それは真下にいるショーに向けてユニークテクニックを発動させた。

空から降ってきた光の槍となったそれは

周囲を焼き払い、辺り一面焼け野原になっていた。


 ショーは光の槍を直に浴び、ショーは……、倒れた。



 ……ここはどこだ?暗くて何も見えない。

そうだ、たしかミカエールのすごい光線を喰らって倒れたんだ。

ユゥの代わりに戦うとは言ったけどこんな無様に負けるとは世話ねえな、ははっ


─それで良いのか?


 頭の中に何かが語りかけてくる。


 良くない、俺は雲城の気持ちなんてわからないが

頼れる友のいない孤独感は痛いほどわかる。

彼女の気持ちを知ってしまった俺がなんとかしないといけないんだ。

変わるんだ……、これまでの自分と決別するんだ……。


(ぬし)の気持ちはわかった、ならば我が名を叫べ


 名前?おまえは一体誰なんだ


─我が名は…



 ショーは意識を失ったままだった。


 ミカエールは感情に任せて暴れた自分に後悔したのか

青ざめた表情で光の槍を逃れたユゥの方を向く


「雨宮さん。今思えばあなたは変わった方でした。

 校内美少女ランキングで2位でありながらワーストの位置にいて

 それなのにそんな境遇に嘆くことなく、学校生活を楽しんでいらしてた

 初めてあなた方を見た時に気づきましたわ

 これがわたくしに足りないもの

 きっとわたくしはあなた方が羨ましくて

 それが欲しくてこんなことをしてしまいましたの

 ……迷惑をかけてごめんなさい」


 悲しげな表情で愚かなことをしてしまった自分に嘆く彼女に

ユゥは何も言うことはできなかった。

 長い沈黙が続く、それを破るかのようにユゥが切り出す。


「友達になろう!」


「雨宮さん、わたくしがあなたに何をしたかご存知でしょう?

 同情か何かは存じかねますが、わたくしにその資格は……」


「私ね今日、雲城さんに一緒にパーティを組もうって言われた時

 すっごい嬉しかった。友達になりたいって思ったんだ。

 それに友達になるのに資格なんていらないよ、だから友達になろっ」


「でも、わたくしは……でも……」


「雨宮の言うとおりだぜ」


今にも泣きだしそうなミカエールの後ろから声が聞こえた。

ショーだ。


「日ぐっ…、ショー!もう死んだかと思ったよ!

 でも、なんで生きてたの?」


「んー、たぶんこれのおかげ」


ショーはそういうと自分が頭に装備している額金に指を当てる。


NAME:サファイアヘルム

部位:頭

効果:防御+8 致命的攻撃を受けた時、生き残る時がある。

説明:額の部分に青い石があしらわれている額金。


 サファイアヘルムの効果が発生し、HPを1残して生き永らえたのだ。


「ショーさん、さっきはこんなひどいことをしてしまい

 もうしわけございません、こんなわたくしをどうかお許し下さいまし」


「は?何言ってんの?

 勝負してんだからあたりまえじゃん

 勝負はまだ続いてるんだ、そろそろ決着をつけよう」


 ミカエールがショーに謝罪をすると

何故だかショーは挑発気味に煽ってきた。


「あー、その、あれだ。賭けでもしようじゃないか

 お前が負けたら俺らと一生友達になる。

 俺が負けたら一生おまえの友達になってやる

 これでどうだ?」


 そんな芝居じみたセリフにユゥはくすくす笑っていた。


「……良いですわ、しかしHPが1しかないあなたに

 まず勝ち目はありませんでしょうけど」


「そうでもないよ、俺はあの日、初めてダンジョンを攻略して

 報酬を貰い損なっちまったんだ

 でも、それは違った、俺はあの時、確かに報酬を受け取って(・・・・・・・・)たんだ

 見せてやる、その報酬を」


 ショーは右手を天に掲げ、目を瞑り意識を集中させる。

薄れ行く意識の中で聞いた、その名前を思い出す。


─我が名は魔剣・カヴァーン


「召喚、魔剣・カヴァーンッ!!!」


 ショーが高らかにそう叫ぶと

虚空に魔法陣が刻まれそこから一本の両手剣が姿を現わす。

その剣は、ショーの手中へと吸い込まれていった。


 刀身は蒼く、文字のような模様が刻まれており

どこか神秘的な剣である。


「ショー!その剣一体なんなの?!

 Wikiにそんな剣の情報載ってなかったよ!」


「あー、まあ後で詳しく説明するよ」


「未知の武器ですって?

 ふふふ、面白くなってきましたわね

 いいでしょう、わたくしも本気を出しますわっ!」


 剣と槍の攻防が始まる。

 魔剣・カヴァーンは両手剣なのだが軽く使いやすい。

それに特徴的なのはこの剣のエフェクトだ。

虚空に放った斬撃は一瞬では消えず、2~3秒くらい経つと消える。

何か意味があるのだろうか?


─相手は強い、この技を使うがいい。


 頭の中に直接そう語りかけられると

一つのテクニックのイメージが流れ込んでくる。


虚空斬(こくうざん)!」


 閃光を放つように鮮やかなエフェクトが発生し、斬撃がミカエールに直撃する。

彼女のHPバーはもうショーのHPバーと大差が無くなっていた。


「わたくしの負けですわ」


 今まで勝負に勝つことに拘り続けてきた彼女だが

今の彼女の顔はまるで憑き物が落ちたかのように清々しかった。


「それじゃ、約束通り

 ミカエール、今日から俺たちは友達(フレンド)だ」


「えぇ、よろしくお願いしますわ」


 二人は熱い握手を交わす。

彼女は本当の友達を得ることができたのだ。


「ねー、ショー!この剣一体なんなのー?!

 見せてよーーっ!!」


 が、感動の場面は束の間だった。

 ユゥ達がそうこう騒いでいるとガラの悪い男達が集まってくる。

もしかして、この周辺で略奪行為を繰り返している盗賊団だろうか。


「よくも酒場で俺たちの仲間を倒してくれたな

 たっぷり例はさせてもらうぜっ」


 盗賊の親分がそういうと盗賊達全員が武器を構える。


「そういえば、ミカエールさん

 盗賊がユゥを攫って行ったというのは?」


「……もちろん、ハッタリですわ」


「そ、そうか……なら、仕方ないな

 ……ん、なんだありゃあ?!」


 ショーは驚いたようにそう叫ぶと

盗賊達は何が起きたのかと周囲を見渡す。

 毎度、お馴染みその他(エキストラ)テクニック『騙し』だ。


「逃げるぞっ!」


「「はーい」ですわっ!」


「あ、逃げやがった!待ちやがれっ!!」


 ショーはそう言うと、3人は一目散に逃げだしたのだった。



 一方、そんな3人の様子を樹の上から眺めている二人の姿があった。

黒装束に口を覆う黒い布、そして彼らの背中には

蝙蝠(こうもり)のような羽が生えていた。


「ついに召喚武器を使う人間が現れたか

 面白くなってきたぜ…クヒヒッ」


「シェルテ、忘れてはないだろうが

 今回の任務はあくまでも偵察だ。

 余計なことはするなよ。


「わーってるよ

 それにもうすぐあの(・・)イベントが始まる

 それが始まれば嫌でも戦うことになるさ」


「わかっているならそれで良い

 ジャーキスに戻って報告するぞ」


そう言うと二人は黒い羽を広げ西の空に向かって姿を消していったのだった

今回、初登場した召喚武器は

物語を進める上で重要なファクターとなる予定です。

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