宿屋まんまる亭①
「はあ・・・」
港町ポルタの宿屋まんまる亭の2人娘の一人セーラは溜息を付いていた。
(客が全然来ないし・・・暇だよ。お父さんもお姉ちゃんも暇してるし・・・)
宿屋まんまる亭。
港町ポルタにあるいくつかの宿屋の一つ。昔は繁盛していたが、今は客が一人もいない。まんまる亭のロビーの椅子に座りセーラは考える。
(このままじゃ、うちの店潰れちゃうよ・・・)
セーラは涙目になる。
切っ掛けはあった。
さんかく亭だ。
さんかく亭は最近できた店で、まんまる亭の向かいの通りにある。
外装も新しく、サービスは普通だが、商業ギルドから後を推しを受けており中々の盛況を誇っている。
ここまで客が離れて、今まんまる亭が潰れるか否かというところにまで追い詰められている直接的な原因はさんかく亭の存在だろう。
(なにもかも、さんかく亭が悪いんだ。あいつらが商業ギルドの後押しを受けて色々と裏から汚いマネをしているに違いない。ウチの評判はあまり良くないのだから。
そりゃ、外装はウチより立派だけど。値段だって同じだし、父さんの料理は美味しいし、私たちだって頑張ってるのに・・・)
実際に、さんかく亭が何かをあくどい真似をしているわけではないが、セーラには客足が遠のいた原因がわからないため、そんな思考に陥る。
セーナはやることもないので床掃除でもしようかと思い立ち上がった。
その時だった。
バタッ!
宿屋の扉が豪快に開き一人の男が侵入してきた。
「泊まれるか?」
セーラは一瞬、呆然としたあとに我にかえる。
「は、はい!空いてます、空いてます。」
(・・・人族だ。黒髪黒目は珍しいな。・・・この人、カッコイイ・・//)
「・・・とりあえず、今夜は泊まりたい。あと夕食を貰えるか?」
「は、はい。わかりました。お父さーん。夕食一人前~」
黒髪の男はテーブルに座り、目をつぶって腕を組んで考えごとをしている。
セーラはカウンター内の姉のもとに行こうと、小走りに進んでいって盛大にコケた。
「ふえええ」
涙目になりかけたセーラに水色の髪の少女が声をかける。
「セーラ大丈夫?あなたはドジなんだから走っちゃダメよ?」
目をこすりながら、立ち上がりセーラは水色の少女に声をかける。
「ニーナお姉ちゃん、あの人カッコいいよ。」
「・・・本当。珍しいわね黒髪黒目は。」
姉とのガールズトークで盛り上がる。年頃の娘にとって最も重要な話題だろう。
それから暫らくしてカウンターから声がかかる。
「おい、セーラ。夕飯できたぞ。持ってけ。」
父から声がかかり、セーラは夕食を男に運ぶ。
セーナも大好きな、自慢の父の料理だ。
「どうぞ。あとこれは私からのサービスのデザートです。」
「・・・ああ。」
男は無愛想に夕食を受け取り、黙々と食べ始めた。
(ノーリアクションか・・・食事に興味がない人なのかな)
セーラは男の無反応に多少失望しながらカウンターの中に戻っていった。
それから20分ほど、男が夕食を食べ終わったようなので、部屋に案内しようとセーラがカウンターから出ようとした時
バァァン!!!!!
轟音とともに、叩きつけられた机がバラバラになっている。
男が立ち上がり、両手を机に叩きつけて怒鳴ったのだ。
「5点だ! この宿屋は!! 100点満点でだぞ!」
黒田である。




