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異世界の女神様

「ハロー」

「・・・ん?」

「目が覚めたようだね。」


黒田が意識を取り戻すと、白い空間にいた。

目の前には、女がいる。長身で金髪、高そうな民族衣装のようなものを着ている。

絶世の美女とは彼女ようなことを言うのだろう。

いたずらっ子のように輝いている目で黒田を見ている。


「・・・ここは?なんで俺はこんな場所に?」

「おっと、説明するのも面倒だから私の思考を読ませてあげるね。」


そういって、女は黒田の頭に手をかざし何やら呟いた。

その瞬間、黒田は割れるような頭痛と引き換えに、現在の状況を理解した。


「・・・つまり、俺は本来あの事故で死んでいて。それをお前が助けた。お前は異世界で最も信仰される女神であり、俺はその異世界に送られると?」

「そうそう、いくつかの特殊能力も与えてあげるよ。」


女神はニコニコしながら答える。

黒田にはわかる。

この笑みは哀れみや慈悲の笑みではない。例えるなら、小学生が捕まえたカブトムシを興味の視線で観察しているような表情だ。

つまり、彼女にとっての黒田はその程度の暇潰しなのだろう。


「俺が、その提案を受けると?別にこのまま死んでも一向に構わんのだが。」

「むー、それは困るな。あなたが仕事にしか興味のない異常者だってのは知ってるけどさ・・・でも、説得の自信はあるんだ。あなたが私の世界に来たくなる理由はあるよ。」

「ほう・・・」

「あなたは仕事が好きなんだよね?実は私の世界は、あなたの感覚で言うとだいぶ遅れている。あなた世界の人にでもわかるように言うと中世ぐらいの技術力かな?まあ、魔法とか魔獣とか魔王とか、あなたが知らない要素もあるけど・・・」

「・・・」

「私の世界は停滞している。もう何千年も王制や貴族がはびこり、魔王や勇者があらわれては・・・を繰り返してるんだ。」

「・・・アホらしいな」

「あなたから見ればね。」


女神は西洋人風にフリフリと頭を振って、手を横にしてヤレヤレといったジェスチャーをした。

イラっとした。


「魔法が便利すぎるんだよ。そのせいで自然科学や論理的な思考が、あなたの世界と比べて極端に発達しにくいんだ。現状である程度安定してしまってるんだよ。」

「それならそれで、いいんじゃないか?」

「私が停滞に飽きたんだよね。あなたという異物が新しい風を私の世界に運んでくれることを私は願っている。」

「暇つぶしかよ・・・とんだ神様だな。」

「別に乱れることを願ってるわけじゃないよ。ただ新しい展開を見たいだけ。私これでも慈愛の神なんだけど・・・。」


女神はニコニコと笑っている。まるで最初から答えがわかっているように。

イラっとした。


黒田は知的な人間にありがちな、他人に行動を読まれることを嫌っている。

どうしようか、黒田は悩んだ。


「まあ、私にはあなたに対して悪意のないことを理解してもらえればいいさ。私の世界にはあなたにとってやりがいのある仕事がゴロゴロしている。どう?異世界の神様が依頼するこの案件、受けてくれないかな?」

「・・・俺にとっては一番の殺し文句だな。」


黒田はニヤリと笑って答えた。

「受けましょう。その仕事。」

「オッケー。交渉成立だね。」


女神と黒田は握手をした。


「私はあなたに、何も使命を課さない。あなたが思うがままに行動してほしい。」

「最初からそのつもりだよ。」

「ふふ・・・期待通りの人だね。あなたが必要になるであろう私の世界の一般常識と言語全種を与えてあげるね。おまけに服までサービスしちゃおう。」

「至れり、尽くせりだな。」

「他にも・・・ふふふ、あなたにピッタリの能力を提供するからね。実はあなたがD社からの仕事を勝ち取ったときのプレゼン、私も見てたんだ。あの劣勢から覆すんだもん、かっこよくてドキドキしちゃったよ。」

「あの競合は厳しかったな。・・・てか、あのプレゼンは異世界の神様にも好評だったのかよ・・・」


黒田と女神は互いに頷きあっている。


「じゃあ、話も終わったようだから、送ってくれ。」

「・・・いいけど、あなた本当に仕事以外に興味ないのね。てか、私の名前すら聞かないってどういうこと?こんな美女なのに。これ結構傷つくわー。」

「ああ、そう言えば聞いてなかったな。名前は?」

「うわー。とってつけたよう聞いたね。これ地味に傷つくわー。・・・ミネルバ。私の名前は女神ミネルバだよ。」

「それじゃあ、ミネルバ様、送ってくれ。」

「おおう・・・また適当な。グスグス、いいもんいいもん。私がいかに敬愛されてるか異世界で思い知ればいいんだからね。・・・それじゃあ、いってらっしゃい。あなたの活躍見守っているよ。」


唐突に景色が真っ白になり黒田は意識を失った。

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