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プロローグ

「ふう・・・」

黒田は額を掠める汗をハンカチで拭いた。


彼は今、大手町の交差点で信号が変わるのを待っている。

彼は全身をブランドもののスーツで固めており、長身で痩せ型、顔は知的でイケメンに分類される。

傍目に見てもやり手のビジネスマンといった格好だ。

「次は、E社に頼まれてたクレーム処理のマニュアルの直接指導だったか・・・」


黒田は、いわゆるエリートサラリーマンであった。

とあるコンサルタント会社に所属し、他社の経営を立て直す仕事をしている。

コンサルといっても、彼の仕事は多岐に渡る。

新入社員の教育、経営方針のアドバイス、クレーム処理マニュアル、営業方法のマニュアル、経理・総務の効率化、資産の運用法などなど・・・要は会社にとっての何でも屋に近いと黒田本人は考えてる。


彼は現在26歳、入社3年目にしてプロジェクトリーダーの地位になるほどやり手だった。

今では3チームのリーダーを勤め、12社を担当している。

彼が担当しているその全ての会社が彼の仕事に満足していた。

依頼した仕事を速やかに、そして効率的にこなしてくれるからだ。


その反面、彼は実は異常者だった。

彼は、幼いころに両親に捨てられている。

それゆえに愛情を知らない。興味もない。娯楽も知らないし、金に執着もない、趣味もない。

女は抱くが執着もない。

・・・いや、趣味はあった仕事だ。

彼は、仕事自身を好み。それをこなすことに喜びを感じていた。それ以外に何も考えてなかった。


会社では仕事に対する強引な姿勢から、「奇跡の営業マン」「ごり押しの黒田」「仕事の鬼」「恫喝者 黒田」「豪腕黒田」などの渾名もつけれられているが、本人は気にしていない。

チームのメンバーである部下は全部で30名。

慕われているし、信頼されている。彼は異常者であり人間に対して興味もないが、人間関係が構築できないわけではないのだ。仕事に必要だと思うのなら人付き合いもこなす。



信号が青に変わる。

黒田が交差点を渡ろうとしたとき、トラックの影からバイクが猛スピードで飛び込んできた。バイクと黒田が激突する直前、彼は光につつまれ意識を失った。

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