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あぁ・・・寒い。
ケッタッキーが食べたくなりますよね。
あれ?なりません?
二足歩行の犬に生まれ変わった森山実留です。
体の作りは人族がやたらと毛深くなった感じですが
顔が長いです。
いや、縦方向じゃないですよ。
もちろん前後にです。
これ意外と鼻先と顎が邪魔で下が視にくいんですよねぇ・・・。
今日も日課の朝運動をして狩りに行こうとした時に
大怪我君を連れたボロボロ君がヨタヨタとやってきた。
もう立って動けるのかよ。
野生ってすげーな。
「どうした?もう動けるのか?」
「キノうはアリがとう」
「おう、気にするな
助けたのは気まぐれだから感謝しなくて良いぞ」
「ナンとかウゴけるようにはなっタ」
「まぁ命が無事なら良い事だ」
「ソレでもまだウゴくのはツラいがな」
確かにボロボロ君に支えられて
立ってるのがやっとって所だな。
「キノは有難うゴざました」
「君も大丈夫なのか?」
「僕はダイじょぶです」
ボロボロ君には食料しか渡さなかったけど
大丈夫のようだな。
全身傷だらけだけど深い傷は無かったからね
「まぁ、次は気を付けろよ
じゃあな」
感謝を伝えられちょいと気恥ずかしくなったので
とっとと狩りに行く事にする。
「チョと待ってクだい」
「ん?なんだ?」
ちなみにボロボロ君は普通に近い発音だが妙に抜けがある。
何と言うか外国人が中途半端に覚えた様な感じだ。
大怪我君はスラスラと話すがアクセントが変だ。
そのうち2人共、普通になるとは思うけど。
「オ願いがアりす」
「お願い?」
ボロボロ君がモジモジしてる。
いや、言うなら早く言えや。
「ワタしたちニかりヲおしエテはもらえないダろうか
アツかましいノはわかッテいるのだが・・・・」
「何故、俺に?」
「貴方は他とチガう」
「ソう、ほかノやつとハちがうモのをカんじるんダ
そレニ、ワタしたちはモウあとがナい」
「俺に何のメリットがある?
気まぐれで助けただけで
面倒まで看る理由はないぞ?」
「ワカっている
ワタしたちはアナたのヤサしさにツケコんでいるだけダ」
「僕達出来るコとナンでもする」
2人はジッと俺を見つめてくる。
おいおい・・・・勘弁してくれよ。
『まじかよー、アリスどうしよう』
『どうしましょうか
見捨てちゃいますか?』
『う~ん、こう面と向かって言われるとなぁ』
『実留さん』
『なんだね?』
『見捨てるなんて出来ないんでしょ?』
『いやいや・・・・いやいやいやいやいや・・・
出来るとも出来ますとも
たかが犬じゃないですかーやだーもー』
『じゃぁ何で昨日は助けたんですか?』
『・・・・・・・はいはい、わかりましたよ
そうですそうです
放っておけなかったんですよ!』
『素直になればいいんですよ』
『わかったよ・・・・ただ、一緒に狩りは出来ないぞ』
『そうですね
まずは実留さん自身が強くならないといけませんし』
『ん~、狩りと体の動かし方を教える位か?』
『そうですね・・・・ウサギなら対処方法さえわかれば
何とかなると思いますし』
『全く・・・・面倒な事だな』
『でも私はそんな実留さんが好きですよ』
『はは、アリスにそう言って貰えるなら
一肌脱ぎましょうかね』
近くで誰かに聞かれるのも面倒になりそうだったから
俺はボロボロ君と大怪我君を連れだし小川に行く。
そこで座りながら話をする事にした。
「2人が焦っているのはわかった」
「デわ、ツレていってモらえるノカ?」
「いや、それは出来ない」
「でわ僕達にドうしてくれるダ?」
「狩りの方法と体の動かし方を教えよう
それでウサギは狩れるはずだ
まずは其処から始めよう」
「ソウだな、かりハじぶンのちからデやるモノだな
ワカったアリがとう」
「教えるのは明日からにする
それまで体を休めておけ
今日の夜に話をしよう」
そう話を纏めて住処に一旦戻る。
教官に相談し俺の分の食糧を受け取り2人に渡す。
渡す時にやたらと恐縮してたのでちゃんと釘を刺す。
「これはお前達に対する貸しだ
返すまでは死ぬ事も許さない
その為に今は体を治す事を考え
これを食べて寝ろと」
うん、すげぇ脅したからバクバク食ってたぜ。
最初から素直に食べとけば良いんだ、うんうん。
それを見届けてから狩りに向かった。
今日は出遅れてしまったがやる事は色々とある。
効率を重視してウサギを狩って行く。
途中で気になった事があるので実験をする。
今の状態でホーンラビットの突撃を受けたらどうなるかだ。
"銀角"は鋭さと突撃力があり相当な威力だったが通常種は?
そして今の俺はどの程度の強さなのか?それを知りたい。
≪毛皮硬化≫≪骨硬化≫≪百足硬皮≫で体を硬化させ
≪身体魔補≫で土台を強化する。
熟練度も魔力も低くなっているので効果はあんまりだが
無いよりは良いだろう。
ホーンラビットを前にし両足を踏ん張り防御姿勢を取る。
「こいやぁっ!」
ウサギに効くかわからないが挑発し攻撃を仕掛ける。
ドンッ!
鈍く重い音と共に腹部に角が突き刺ささる。
結構な衝撃で相殺しきれずにバランスを崩しヨロヨロと下がってしまう。
腹部を見るとちょっぴり血がにじんでる。
突き刺さってはいない・・・いないが・・・。
「いてぇっ!!」
もの凄く痛い。
それでも危険な領域の怪我はしないようだ。
予想だが硬化系スキルを解除したら貫かれると思う。
≪身体魔補≫を解除したらバランスを維持出来ずに倒れる。
ちきしょうここまで弱くなってんのかよ。
だが死ぬ事は無いっ!
その後も何回かの実験を繰り返す。
ピローン
> スキル≪挑発≫を手に入れました。
≪挑発≫
説明:来いよっ!オラオラ!来いよぉぉ!
効果:対象の注意を引きつける
ヘイト値を大幅にプラス
ウサギを煽ってたらスキルをGETした。
うむうむ、良き事かな。
一通り実験をした後に狩りを再開する。
その後、2匹を食べたが皮はそのままで角だけ残しておいた。
持って帰る分を3匹確保してから他の準備に取り掛かる。
日暮れギリギリの時間になって住処に戻る。
コボルドは夜目が利くようなので昼間程じゃないが
行動自体はそこまで問題ではないようだ。
だが、夜間行動する種が出てくるので出歩かない方が良いと教えられた。
そこそこの奴なら勝てるとは思うのだが
無駄に危険を増やす意味もないからな。
教官に獲物を渡し子供部屋に移動する。
コボルドの出産周期はかなり早い。
集落によって違うらしいが2ヶ月~半年程度で
出産時期を迎えるようだ。
なので少なくともあと1ヶ月は此処が使われる事はない。
使っても数週間程度なので普段は怪我をした者の
隔離場所になるって訳だ。
2人に今日の食料を渡す。
朝に脅しただけあって感謝の言葉と共に素直に食べ始める。
食欲だけを見ると怪我の具合は大分良いようだな。
瀕死の状態から1日で持ち直すなんて凄いぞファンタジー。
食事が終わったら明日からについて説明する。
2人には拒否権はない。
俺の考えのみが正しい。
権力って気持ち良いぜ。
俺が突き付けた条件は以下の通りとなっている。
1 : 日が昇る前に起床し早朝は訓練の時間とする
2 : ボロボロ君と大怪我君の2人組で狩りを行う
3 : 自分自身で慎重になり過ぎてるんじゃないかと
疑問に思う位に慎重になれ
4 : 狩った獲物の角、牙、爪、皮等の素材となりそうな部分は
可能な限り俺の為に持って帰ってくる事
5 : 手に入れた食料の1/4は俺に差し出す事
真面目に狩りをしても駄目だった場合でも食料は保障してやる
だから俺に借りを返すまで死ぬことは許さない。
お前らの命は俺の物だ。
決して無茶はしない事を叩きこんだ。
折角手に入れたんだ手放すつもりはないぜ。
そして俺は2人に武器と防具を渡す。
俺の御手製で単純な槍と腹当てだ。
槍は太めの木の先にホーンラビットの角を無理矢理つけて
丈夫な蔓があったのでそれで固定した。
突き刺す以外の使い方をしたら速攻で壊れそうな作りだ。
腹当ては木の板とウサギの皮を蔓で固定しただけの物。
これまた酷い作りだ。
木板と言ってはいるが大木がボロボロになった部分の皮だしね。
せめてナイフと針と糸が欲しい。
≪ホーンラビット角木槍≫
ホーンラビットの角を利用した木製槍
意欲は認めるが無いよりはマシな程度の酷い作り
種別:武器
品質:粗悪品
≪ホーンラビット皮腹当て≫
ホーンラビットの皮と木板を利用した防具
意欲は認めるが無いよりはマシな程度の酷い作り
種別:防具
品質:粗悪品
何とも酷い説明だぜ。
作った本人が言うのもなんだけど間違ってないけどね。
それでも無いよりはマシだろうさ。
俺で痛い位なら直撃なら死んでしまうしな。
よく大怪我君は助かったもんだ。
それにしたって俺の防具より良いんだよ!
≪ボロ布の服?≫
ボロボロの布地で出来た服のような何か。
ワンピースのような作りをしている。
とりあえず体を隠せるだけありがたいと思うおう。
種別:防具?
品質:粗悪品
服?って聞かれても困る。
防御力なんて無いに等しい。
なんと言っても初期装備品だしね。
武器と防具を装備させた2人は心なしか頼もしく見えた。
明日からはビシバシと鍛えてやるからなっ!
久々に実留君に部下がっ!
鬼教官なので叩いて伸ばすタイプです(多分)。




