3-21
涼しくなったり暑くなったりが困りますね。
服を悩む時期だなぁ。
目が覚めると目の前が明るくなっていた。
どうやら何処かに寝かされているようで
天井の白さが目に痛い。
それ自体が発光しているのか蛍光器具のような物は
何も見当たらないが柔らかな純白な光で満ちている。
ここは何時もの場所なんだろうか?
あそこに寝台のような物ってあったかな?
まぁ、あの神様なら簡単に用意出来るだろうけど。
【うん、正解】
「まぁ、もう3回目・・・初回を入れて4回目か・・・
流石に馴れるわ」
【そう馴れたとか言われちゃうのも何だか
有難味が無くて嫌なんだけどね】
「今更じゃね?」
【う~ん、もっと敬ってくれても良いんだよ】
「相手次第だな」
【そんな事を言わないでよ~
今回だって助けてあげたじゃない】
「あ・・・・あぁ・・・・そういえば・・・・
何があったんだ?
なんか記憶が曖昧なんだけど・・・・」
【うんうん、今回は目が覚めるまでに
ちょっと時間が掛ったからね仕方が無いよ】
「まじか~
どれくらい?
数日とかじゃないよな?まさか1ヶ月とか?」
【現地時間で求めると35年位だね】
「え?ごめん、もう一回言って」
【うんうん、君はね35年位寝てたんだよ】
「・・・・・・・てめぇ!この野郎っ!」
【えええええ!何で!
今回は流石に僕に感謝して貰いたいのに!】
「・・・・感謝?
そういや何でそんなに経ってるの?」
【もうちょっと敬意を持ってもらいたいな
こう見えても僕は最高位の神なんだよ
何だか段々と君の僕に対する態度が酷くなっている気がするよ】
「そ・・・そうか・・・それは・・・申し訳ない
それでは神様、状況を教えて頂けないでしょうか」
【そう急に言葉使いを変えても気持ち悪いだけだよ】
「もー、どうしろってのよ?」
【あはは、うんまぁ今ままで通りで良いよ
じゃぁ状況を説明するね】
「おう、頼むよ」
【うんうん、君が何処まで覚えてるかによるんだけど
どうかな?】
「う~ん、魔王に黒い炎で殺されかけた事は覚えているんだけど
そこら辺からは記憶が曖昧だなぁ・・・」
【殺されかけたと言うか殺されたんだけどね
まぁゴーレム体だったから破壊されたって言うのが
正しい所かな】
「それでどうなったの?」
【魔王君に魂も消滅させられる所だったんだよ
転生するにしても魂が無いと無理だからね
結構、危なかったんだ】
「あーそういえば転生アプリがどうとか
表示されてた気がする」
【うんうん、僕が無理矢理に条件を開放したからね
それでも起動は僕からじゃ出来ないから
本当にギリギリだったんだよ
多分、数秒遅かったら君の意識が消失して
間に合わなかったんじゃないかな】
「そんな事になってたのか
・・・・・悪かったな怒っちゃって」
【いいよいいよ
君が居なくなると悲しいしね
それに本当にギリギリだったから魂が少し損傷しちゃって
修復に時間が掛っちゃったんだ
それで35年も目が覚めなかったんだよ】
「え?損傷って大丈夫なの?」
【記憶や機能等は問題ないよ】
「そうか・・・・俺は俺のままで問題ないって事だよな
でもさ"等は"って言うからには何か代償はあったんだろ?」
【うんうん、君は今迄通りに何の問題もないよ
核の部分については僕が全力で保護したからね
そこは誓っても保障するよ】
「あんた最高神なんだろ?
誰に誓うんだよ」
【あはは、僕自身にかな
自分が自分を疑ったら僕達は存在が危ぶまれるからね】
「そうなの?
自分を信じられない奴なんて沢山いるぞ」
【僕達の存在はね
何でも出来ると考えられているけど
とても希薄な存在なんだよ
通常は魂があって肉体があるんだ
そこに能力やスキルが付随する
でも僕達は違ってね
まず能力ありきなんだ
そこに意識が付随するんだね
だから能力に性格が左右されてしまう事が多いんだ】
「つまりは自分の能力を信じられなくなったら
存在自体を否定してしまうって事?」
【うんうん、そうだね
だから僕は君の魂に関しては問題ないと保障するよ】
「そっか、わかったよ
疑った所で俺には判断出来ないからな
それで代償は何なんだ?」
【君が今迄培ってきた魂の情報量が減っちゃったんだ
修復する時の補修材として利用せざるおえなかったんだ
核の保護を最優先にしたから僕の力でも代替品まで用意出来なくてね】
「具体的にいうと?」
【全体的にステータスが下がっちゃったんだ
スキルや能力なんかは変わらないんだけど
威力や効果もそうだし身体的能力も結構下がっちゃってね】
「まじかー」
【転生後の種族にもよるけど
ひょっとしたら発動出来ないスキルなんかも出ちゃうかもだね】
「そんなに下がるの?」
【平均だと5割以下になるかなぁ
スキル熟練度も軒並み下がっちゃうし
魔力なんかはゴーレム体の時に比べて3割以下になりそうだよ】
「それは・・・・辛いな・・・・・」
【でも転生後の種族が強かったりすれば問題ないし
そうじゃなくても成長すれば元通りにはなるよ
下がっただけで無くなったわけじゃないしね】
「まぁ、無事なだけ良いか・・・・
それにしても何なの?
あの魔王って?
コロコロと態度変わるしさ」
【魔王君は以前に僕が招いたんだけどね
まさかあんなに成長するとは思ってみなくてね
それに君がこのタイミングで遭遇するとは思ってなくて】
「向こうが落ち人で俺が転生者の違いはあるけど
同じ加護を受けてて能力が違いすぎない?」
【それは数百年の鍛錬によるものだね
最初は彼女も最弱の獣にすら殺されそうになってたし
かなり苦労していたよ】
俺は魔王の目を思い出す。
子供の様な目を。
狂気が見え隠れする目を。
俺を楽しそうに殺した目を。
「そっかー・・・・・・俺は殺されたのに
何か嫌いになれないな・・・・なんでだろうな
まぁ会いたいかと言われると会いたくはないけどね」
【うんうん、今はそれで良いんじゃないかな】
「それにしてもあれだ!
落ち人とか神の加護とか受けてると寿命延びるのか?」
【落ち人の個人差はあるけど
世界の壁を跨ぐ際に体に何らかしらの影響が出るから
寿命が延びるのもその一つだね
全員が長寿になるわけでもないけどね】
「そうなのか?
じゃぁ逆に短命になったり全く能力が何も付加されない事も
ありうるって事なのか?」
【それもありうるよ
その場合は魔物や魔獣に殺されたり
急な環境変化に対応できなかったりして生存率はかなり低いね
あえて言うなら現状で生存しているって事は
なにかしらの能力を持っていると言い換えても良いんじゃないかな】
「あぁ、なるほどな・・・・弱気者は淘汰されてるって事か」
【酷い言い方になっちゃうけどね
その通りなんだよね
落ち人の大半は神の意志だから高確率で付与されるハズなんだけど
自然発生で何も関与せずに落ちてくる人や
極まれに神の加護を受け付けない者も出てしまうんだ】
「そこら辺は神様でも管理しきれないの?」
【僕でも全てを管理してるわけじゃないよ
会社の社長が日々の細かい仕事まで押えてる訳じゃないのと一緒だね
もちろんやろうと思えば出来るけど
そこまで手を出すと色々と不具合も出てくるしね
神の世界もそんなにシンプルじゃないんだよ】
「分かり易い例えだけどな
話が逸れちゃったけど神の加護については?」
【それについては受けた神にもよるね
神と言っても様々だからね
短命の神とかも居るからそれだと逆に短くなっちゃうよ】
「どんな神だよっ!こえーよ」
【短命の神はねぇ、対象者の寿命が短くなる代わりに
内容を物凄く濃くしたりするよ
君の元居た世界でも太く短くって言葉があったでしょ
それを司る神だね
なんだったら紹介するけど】
「うん、遠慮しておく」
【あはは、残念だなぁ
それに加護を受けた神さまが意図的に能力を
制限する場合もあれば他よりも多く力を授ける場合もあるんだ】
「だから魔王は俺と同じ加護なのに能力に差があるわけだ
魔王に依怙贔屓しやがってっ!ズルいぞ!」
【うんうん
依怙贔屓ってのは言い得て妙だね】
「やっぱし魔王の方が加護が強いんだろ?
ぶーぶー」
【魔王の加護は普通だよ
それ以前に僕が授ける力は他の2人も一緒だよ
勇者君と妹君だね】
「んじゃ、どういう事だよ」
【君だけね加護が弱いんだ】
「はい?!どーゆう事?」
【僕が加護を与えたのは現状では4人居るんだけど
君だけ他の3人とは違うんだよ
例えとしてなんだけど3人に与えた能力を100だとしたら
君には20位しか与えてないんだ】
「依怙贔屓って逆かよっ!
俺だけ弱いのかよっ!」
【あはは、怒らないでよ
その代わりに君には神システムを与えたんだ
転生アプリやポイント等は他には無い利点だと思うよ
幾らでもやり直しが出来るんだし】
「まぁ、そう言えばそうなんだけどさ」
【あぁ、それに君は寿命もそんなに弄ってないよ
ただ成長曲線は少し変えてあるから成長は早いけどね
妹君はそこそこ長寿にしてあるかな】
「そうなの?」
【うん、神の加護で寿命が延びるのはね
神の力が根本的なベースに加わるから
成長や代謝による劣化や損傷が少ないし
強化されるから寿命が延びるんだ
だから高位の神ほど能力値は伸びるし
与えられた加護が強いほど更に伸びるって事だね
もちろん全部の神がそうするわけじゃないから
どうなるかはわからないけどね】
「なるほどなぁ
でも実里と俺の差はどんな感じなんだ?
どちらかだけが歳くったり寿命で無くなるのは嫌だぞ
実里は転生出来ないんだろ?」
【君の寿命は通常より少し長い位だけど
成長速度を高めているから早目に成長するよ
それでも数割増し位だけどね
これ以上はスキルを使わないと体に負荷が掛かるから無理なんだ
妹さんは成長速度は普通だけど寿命は伸びてるよ
これは僕の加護をそっち寄りにしてるからだけどね
体の全盛期を長く維持出来るようになってるんだ
その分、他の能力は勇者君や魔王君程じゃないけどね
それでも通常の人に比べたら相当に能力値は高いよ】
「全員が同じ内容って訳でもないんだな
まぁ素体が違うんだからそれもそうだろうけどな
ちなみに勇者と魔王の加護内容って教えてよ」
【うんうん、僕は君のそのストレートな所が好きだな
個人能力じゃなくて僕の与えた加護の内容だから
別に構わないかな】
「そうだそうだ~
何も能力を教えてくれってわけじゃないんだ・・・・・
聞いたら教えてくれる?」
【あはは、それは無理だよ
だって君はそれを判断材料にしちゃうでしょ】
「チッ」
【あはは、まずは勇者君だね
彼にはねカリスマを与えたんだ
個人的な魅力じゃなくて民衆のシンボルとなるような
人を魅了する力と言っても良いかな
もちろん各能力は大幅に底上げしてるよ
特に技術面に特化しているね】
「へ~、勇者は技巧派なんだな
巨大な力を巧みに使って仲間を率いる
まさしく勇者って感じだな」
【うんうん、そうだよね
まさしく勇者って感じでしょ】
「魔王は?」
【圧倒的な能力だね
技術よりも力を重視した能力値だよ】
「あれで技術がないの?
物凄い技巧だったぞ
魔法構成なんて緻密過ぎて理解すら出来なかった」
【それは本人努力だよ
魔王君は数百年の実績があるからね】
「勇者と魔王って戦ったんだろ?
魔王は数百年って言うけど勇者はどうなんだ?」
【勇者君はこちらに来てまだ数十年じゃないかな
生きてきた長さは魔王君の方が圧倒的に上だけど
勇者君は元の世界でも戦いを職業としていたから
元々の能力に差があるんだよ
それが数百年の差を埋めたんだね】
「それで結局は引き分けて今は国同士に話になっていると」
【うんうん
でも国同士だと動きが鈍くなっちゃうからね
どうしても大きな争いにはならないんだ
前にも言ったんだけど大きな戦争は100年位無くてさ
勇者君と魔王君が国を挙げて戦うには
まだ時間が掛りそうだし】
「それで俺を呼んだんだっけな」
【そうそう
まさかこんなにも早く魔王君に会えるは
思っても無かったけどね
僕の予想を超えてくるとは流石だね
この調子なら勇者君とも会えるかもね】
「何か話を聞くだけだと余り会いたいとは
思えないんだけどな・・・・」
【あはは、その内ね
さて、今回は強制的に任意転生しちゃったから
そこら辺の説明もしようか】
相変わらずの神様のとぼけっぷり。




