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3-19

暑くなったり涼しくなったり。

着る服に困る時期になっていきますね。

皆さんロズですわ、ごきげんよう。

最近はミノル様に会えていないのですけど

会いに行くのは何か嫌な予感がします。

これはきっと会わない方良いと言う神様のお告げですね。


ボスは今日も定着してくれませんしラバリオ様との連絡も付きません。

仕方ないので日課のトレーニングをしましょう。


フンハフンハフンハフンハ。


今日もロズのムキムキは更に進んで行くのであった。











「魔王様、我が作品をお持ちいたしました」


ハレンさんが1歩前にでて資料を渡し挨拶をする。


「あぁ、ハレン君だったかな

 君と会うのは何時振りかな?」


「10年程になります」


「もうそんなになるか

 時間が進むのは早いな

 もっと配下の者と話はしたいのだけど

 今は色々と周りが五月蠅くてね」


「いえ、魔王様が私達を守って頂けているので

 安心して研究が出来ているのです」


「そう言って貰えるのであれば

 私も頑張れると言うモノだ

 

 で、それが君の作品かな?」


「はい」


「ふむ、以前に計画を話していた

 自律型のゴーレムだったかな?」


「はい、ここまで10年も掛ってしまい

 申し訳ありませんでした」


「いいんだ

 魔族は力を重視する傾向が強い

 君のように技術向上を目指す事はとても良い事だよ」


「ありがとうございます」


「さて自己紹介をしてもらおうかな

 ゴーレム君」


豪華な机に頬杖をつきながら細い指で資料をめくり

パラパラと読みながらこちらを見つめてくる魔王。

今はそこに存在するのをハッキリと感じる事が出来る。


「はい・・・ミノルと言います

 名前はマスターから授かりました」


って自己紹介って何を言えば良いんだよ。

とりあえず名前以外って何を言えば良いんだよ。

ゴーレムですって言えばいいのか?!


何も言えずに魔王の反応を伺う。


視線が合うと澄んだ・・・・そう、とても澄んだ目が俺を見ていた。


もの言わぬ重圧。

確固たる意志。


個人が支えるには余りにも重いモノを背負っている目だ。

それなのに澄みきった目だ。

純粋に只々純粋に自分自身を疑わないそんな強さを感じる。



その目を見つめていると・・・・・。




「・・・・ミノル・・・・ミノル・・・・ミノルっ!」


はっ。


ハレンさんに揺すられて気が付いた。


「あれ?今?」


「どうしたんだ急に黙るなんて

 魔王様の御前だぞ」


「はい・・・あぁ・・・いや・・・・申し訳ありません」


どうやら意識が飛んていたようだ。

訝しげな表情のハレンさんを見るに一瞬の事だったようだが。


魔王は楽しげに微笑んでいた。

クスクスと少女のように笑っていた。


「ハレン君、ミノル君の精神攻撃に対する耐性は

 そんなに高くないようだね」


「魔王様でしたか・・・・冗談が過ぎます

 いかなゴーレム、いや魔族と言えども魔王様の

 魅了チャームをレジスト出来る訳もありません」


「いや、そんな事もないようだよ

 ミノル君の意識を一瞬だけ空白にするのが精一杯のようだ」


「魔王様が本気を出せばそうでもないでしょうに

 あまり我が作品で遊ばないで頂けるとありがたいです」


「ふむ、そんな事もないんだがね・・・・まぁ良いさ

 それで性能の方は資料の通りと」


「はい、始動時は設計通りの性能は出てませんでしたが

 改良と訓練で資料に記載されている値になりました」


「成長するゴーレム・・・・魔道デバイス・・・・

 ドパール卿と言うのは私から見ても天才と言わざるおえないだろうな」


「我が一族の者をそう言って頂けるのは光栄です」


「さて・・・・ハレン君

 君に聞きたい事がある」


魔王は口元で指を組み視線だけをこちらに向けてくる。

先程とは違い冷やかな目だ。

凄味がジワジワと溢れ出してくる。


ハレンさんも感じているのか

緊張から表情が少し強張る。


「はっ、なんでしょうか」


「うん・・・・まぁ簡単な話なんだけどね



 君はそのゴーレムを量産出来るのかな?」


おおう!魔王直球だな!

俺もちょっとそれは気になってた所だ。


今の体は大半がドパール卿が作った物を流用しているし

魂だって転生で俺が宿ったが知性なんてそうそう発生しないはずだ。

そもそもがどうやって俺が宿ったかもわからないのに。

ハレンさんは解明できたのか?


「そ・・・それは・・・・」


「ん?どうした?」


「はい・・・・申し訳ありません

 現状では量産の目途は立っておりません」


「理由は?」


「はっ・・・・体の方は不明な部分もありますが

 そこは現在の技術で応用可能ですし

 構成材料は今の方が高品質に出来る物もあり

 全体的にみれば平均値で」


「御託は良いよ

 結論は?」


「魂の生成及び定着方法が今だに不明です」


「なるほどねぇ」


「仮説はあるのかな?」


魔王から発せられる冷圧が濃密になっていく。

空気がピンと張りつめて緊張する。


「仮説と言うべきほど情報が集まっていませんが

 制御コアに自然発生する力

 精霊等と言われる存在を捉える事によって」


「あ~、駄目だね

 ハレン君、全然駄目だよ」


魔王は先程と同じ微笑んだ顔をしているが

だが明らかに質の違う冷たい表情だ。


「と言いますと」


「ハレン君は正解を聞きたいのかな?」


「はい、技術者としては恥ずかしい話ですが

 少しでも研究が進むのであれば」


「あはは、じゃぁ教えてあげるよ


 捕縛チェイン


魔王が発した力ある言葉により

何もない空間から黒い鎖が幾つも発生し俺を縛り上げる。


「なっ!これは!」


咄嗟に力を入れるも全く身動きも出来ず

そればかりか体に力が入らなくなってくる。


「あ・・・」


喋る事も出来なくなり体が重い。





「魔王様、ミノルに何をっ?」


「あぁ、うん

 だからさ答えを教えてあげようとしているんだよ



 ミノル君



 君さ



 元々、他の生物だっただろう?」



うお、なんでわかるんだ。

やはり隠蔽が効いてないのか?

だが大丈夫、まだ大丈夫だ。

魔王は"他の生物"と言っている。

転生者や落ち人とは言っていない。



「魔王様、一体何を仰っているのですか?」


「ハレン君、君の研究はとてもとても重要で

 興味深いのだけれどね

 1つ間違っている点がある

 ドパール卿の考案した人工知性を宿らせると言うのは

 他者の意識を転送か転写する類のモノだと思うんだ

 私も詳しくは解らないがね」


「何故そのように思うのです?」


「まぁこれは私の憶測になるのだがね

 ドパール卿は自分自身を作りたかったのだと思うよ

 目的までは・・・・・・まぁ何となくだが察しがつかないでもないが

 どうでも良い事さ」


「それで・・・・ミノルにはなぜこのような事を?」


「ハレン君には関係がない事なんだがね

 まぁ君の作品でもある事だ

 全く関係が無いとは言えないか」


「ミノルは私の作品です!

 関係が無いとはっ」


「説明してあげるから少し黙っていてくれないか

 沈黙サイレンス


ハレンさんの首に黒いリボンの様な物が巻きつく。

それだけでハレンさんは声を出す事が出来ないようだ。


「ミノル君、最初から君には知性や知識があった

 それは前の人生・・・でいいのかな?

 まぁいい、前の人生の時の物だな?」


有無を言わせない重圧が俺を襲う。

部屋に入る前に感じた奴だ。


「ぐ・・・・あ・・・・・」


つうか束縛されてて話せねーよ!


「あぁ、済まないね

 拘束が強すぎたか

 よし、これで話せるだろう」


体から抜ける力が少しだけ減る。


「あ・・・・ああ・・・・んっ

 はい、声は出ます」


「で、どうなんだね?」


視線をそらさずに微笑みを浮かべたままの姿勢から

ピクリとも動かない。

また存在感が希薄になってきている。


魔王は既に確信してるハズだ。

ここで誤魔化しきれるはずもないか。

まだ正解を掴んでない今なら嘘と真実を織り交ぜれば・・・。


「はい、確かに自分は以前は別の人生を送っていました

 魔物に襲われて死亡しました」


「種族と年齢・・・・後はそうだな職業何かを聞いておこうか」


「種族は人族で10歳でした

 職業は特にありません・・・・しいて言えば家の手伝いです」


「手伝いとは?」


う~ん、随分と細かい所を聞いてくるな。


「村が小さかったので畑仕事や薬草調合や

 家畜の世話等です」


「戦闘経験は?」


「村からほぼ出た事がないのでありません」


「人族で村ねぇ・・・・・・間違いはないんだな?」


弱気になっちゃ駄目だ。

こんな時こそ心を強く!平常心で対応するんだ。


「はい」


よし、出来たな俺。







「くくくくくく」


「魔王様?」


「くくく・・・・あっはっははっはははははははははははははははっ」


唐突に魔王が高らかに笑い出す。

突如吹き荒れる魔力の嵐と威圧を伴う笑い声。


「くっ・・・」


あまりにも強烈なそれは物理的な衝撃をも伴い襲う。

いつの間にか束縛は解け体は動くようになったが

身体能力を限界まで強化しても

圧倒的な圧力に耐えるしか出来ない。


ただ魔力を放出しているだけなのに何て圧力だよ。

笑い声だけでも普通の人族なら即死するレベルだ。


魔王とはこんなにも格上の存在か。

生物としてのレベルが違い過ぎる!


なんとか目だけを動かしハレンさんを伺うが

ハレンさんの前には薄く光る魔法陣らしきモノが展開されている。


「魔王様!お気を確かに!

 お静まりくださいっ」


俺の束縛と同様にハレンさんも自由になったようだ。

魔法陣を見るに防御魔法を展開しているのだろう。

それでもギリギリ耐えているようだが俺よりずっとましだ。

なんと言っても話せるだけの余裕があるからな。


「ははは!私は冷静だよ

 ただね心の底から愉快なだけだよ!

 こんなにもっ!こんなにも愉快な気分は久々だよ」


「魔王様・・・一体何を・・・・?」


「ハレン君・・・・ミノル君はね君は転生者と言えば分かり易いかな

 前世での記憶と経験や知識なんかを引き継いでいるんだよ」


「ミノルが?」


「しかも相当な神の加護を受けているね

 死んだ者の魂がそのまま次に引き継がれるなんて

 相当な高位神の力でも借りないと無理だろう?」


「た・・・確かに・・・神の領域の力だとは思いますが・・・」


「それにさこの資料なんだけどさ

 内容は殆ど出鱈目な値が記載されている」


「そっそんな事は」


「いいんだいいんだ

 私に虚偽の報告なんて消滅させてしまう所だが

 今は気分が良いから資料については許そうじゃないか

 それにねハレン君

 君に責任がある訳じゃないしな」


「と言いますのは?」




魔王は荒れ狂う魔力をそのままに

ドキッとするような少女の笑顔をしたまま

舞台女優が大げさに演技をするかのように両手を大きく開き

一歩、また一歩と近づいてくる。



「こんな愉快な気分にさせて貰えたんだ

 今回は全て説明してあげよう


 このミノル君はね

 私と同じ世界神の加護を受ける者だ


 

 な、そうだろう?」





俺はついに正体を暴露された・・・・。



近づいてくる魔王に何も出来ず

ただ見つめる事しか出来なかった。



実留君ピーンチ。

魔王・・・・圧倒的過ぎるだろ。

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