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3-18

涼しくなりましたが天気が不安定ですね。

湿気が多くて気持ち悪いです。

ついに魔王に謁見する事になった森山物留です。

魔王ですよ魔王!

勇者と言ったら魔王!魔王と言ったら勇者!

いやぁワクワクしますね。

まぁ、俺はそんな世界に影響のある人物とは程遠いただのゴーレムですけどね。

この差はなんなんだよ・・・・。









魔王。


それは魔族の頂点に位置し魔族を総べる者。

無尽蔵の魔力に支えられた突破困難な防御力を持ち

甚大なる破壊力の魔法で他を滅ぼす恐怖をもたらす者。


武術を学んだわけでは無いのに武器の種類は問わずに

何でも使い変幻自在の動きで攻撃を繰り出し

その一撃は歴戦の重騎士でも一撃で葬り去る。

武器を持たずとも拳だけで城壁を崩せるほどの威力があると言う。


他を寄せ付けぬ絶対的な強者。

世界神の加護を受けし魔族の王。



俺はそっとパンフレットを閉じる。


「マスター、このパンフはなんです?」


「ん?それは我が魔王領のパンフレットだが?」


「いや、そういう事ではなくてですね

 何でこんな物があるかという事なんですが」


「ふむ、まず魔王領のアピールが目的だな

 魔王領と言えども国だ

 国を維持する為には金が掛り動かすには国民が必要だ

 それには住む者も働く者も商人も農民も必要となる

 それならばまずはこの国に来る者が多くなくてはいけない」


「そこらへんはやけに現実的なんですね」


「現実的と言うか現実だからな

 それも魔王様が言いだした事ではあるがな

 力のみが全てと言う魔族を束ねて国を作ろうとしたのだ

 それはとても凄い事だとは思わないか?」


先代の魔王までは魔族を束ねているとは言っていたが

あくまでも一部の者達で集まっていただけで

1つの国としては認められていなかった。

今の魔王になり魔王領を纏め拡大し国としての体制を作った。


うん、なるほど。

そういった動きなのか。


まぁこれもパンフに書いてあるんだけどね。


世間一般では魔王領は魔族が住まう国とあるが

実際に魔族が住んでいるエリアは魔王領よりも広い。

魔族が住んでいるエリアの他国よりの部分を

魔王領として建国したと言ったところだ。


現在では魔王領は他国から魔族が住む未開エリア守る役目と

未開エリアから他国を守る両方の役目を負っている。


魔王と言う名の王様が統治する

魔族が多い国、それが魔王領サイラスだ。



何で俺がそんなパンフレットを持っているのかは

ヴァースに渡されたからだ。


そう、呼び出された内容はハレンさんの予想通りだった。






「ヴァース様、ミノルを連れてまいりました」


相も変わらず机しかないシンプルな部屋だ。

そして黒づくめも変わらず表情も何も読めない。


「ご苦労」


「お話とは?」


「お前とゴーレムに魔王様が会いたいと言われてな」


「魔王様・・・ですか・・・」


「少しの間、お前のゴーレムの行動を記録していたのは知っているな?」


「はい」


「提出された資料と記録が魔王様の目に止まったようでな

 興味を持たれたようだ」


「はっ、それでは魔王様に謁見となりますか」


「いや、どうも個人的な興味のようでな

 正式な謁見ではないようだ」


「と言いますと?」


「詳細は未定だが呼出しがあるはずだ

 それを待っていろ」


「了解しました」


ふむ、魔王ってのはどんな人なんだろう?

そんな疑問が思わず口に出てしまう。


「魔王とはどのような方なのでしょうか?」


ハレンさんとヴァースは俺を怪訝そうな顔で見つめるが

意味がわからない。


もう一度、確認しようとした時にヴァースが机から

冊子のような物を取り出し渡してくる。


「呼出しがあるまでにこれを読んでおけ・・・・

 ハレン、ゴーレムへの教育はちゃんとしておけ」


「はい・・・・わかりました」


あれれ?俺何かしたか?


「では連絡が来次第繋げる

 下がれ」


部屋を出て通路を歩きながらハレンさんに聞いてみる。


「俺・・・何か不味い事を聞いちゃいました?」


「いや・・・いい

 そういえばミノルには我が魔王領の事は

 きちんと教えて無かったな

 ・・・・逆にすまないな」


「いえ、マスターが誤る事では」


こんなやり取りの後に冒頭に戻るわけだ。


パンフにはコミカルな絵と共に魔王領の現状を簡単に説明し

魔王のプロフィールや各種特産品の特集。

更には入国手続きの仕方等も記載されている。


うん、確かにこれを読む限りでは魔王領は

想像していたよりは手厳しい国ではないように思えるが

間違いなくそうではない事を俺は身をもって知っている。


そんな国を取り仕切り盛り上げようとする魔王。


興味はあるけど怖さもある。

俺に拒否権はないけどね。





それから3日後に呼出された。

指定された場所は魔王城ではなく

未開エリアに近い国境を守る砦の一つだった。


案内は例の角鳥だ。

同行人はハレンさん。

護衛はザッカリア。


サリーは他の任務の為に着いていけないのが

残念だと言っていた。

お弁当を作ってあげたら喜んでたので良しとしよう。

まぁ彼女団分も作らされたのは謎だが。



道中は何かトラブルがあるわけでもなく

順調に進んだ。

ハレンさんの要望により朝の動作チェックと

夜の模擬戦がある位だった。


ご飯はいつのまにか俺が準備する事が

当たり前になったようだ。


時折、襲ってきた魔物や魔獣がいるし

街道から少し入れば果実や香草の類も

そこそこ見つかるので食材に関しては困らない。


そうはいっても簡単な焼き物や汁物しか

作れないのは歯がゆいものだ。


せめて黒鍋があれば・・・・。



ハレンさんとザッカリアが美味しそうに

バクバクと食べるのをじっと角鳥が視てたので

おすそ分けをしたら見向きもされなかった。

まぁ良いかと思って気に停めて無かったが

後で皿を見たら綺麗に無くなってた。


気に入って貰えたのかな

それからは毎回、皿に用意して端に置いておくと

何時の間にか無くなってるようになった。






砦に到着すると厳重な警備体制だった。

魔王が居なくても国境付近はこんなものらしいけど。


入口のゲートで来訪を伝えると

すぐさま中に通された。

VIP扱いは良いね!


VIPはハレンさんで俺は

オマケなんだけどね。


砦内には身分の高い者が訪れた時に

使用する区画がある。

魔王はそこに居るらしい。



謁見は明日の朝からその中の一室で行われる。

明日・・・・明日がこえぇなぁ。



一応は招かれたと立場なので俺にも一部屋与えられた。

窓も何も無く机とベットがあるだけの部屋だ。

ハレンさんの部屋は質素ではあるが

窓もあり広い作りだった。

立場の差を感じるがゴーレムに用意されたと事を考えれば

破格の対応と言えよう。


部屋には鍵が掛ってて出れないけどね。

ん?これって監禁か?

トイレも何も必要じゃないから別に構わないけどさ。


ザッカリアは入場時に分かれた。

馴染みの兵士と飲むらしい。



監禁されたとしても

監視をされていないのは良い事だ。



アリスを出してあげたいが

何かしらの感知に引っかかるとまずいからな。

キュイ、周囲の警戒を頼んでおく。



『アリス悪いな、出せてあげれなくて』


『いえ大丈夫です

 それにしても魔王ですか

 確か世界神の加護を持っているとか』


『そこなんだよなぁ

 隠蔽スキルも通じなそうじゃね』


『それは難しいですね・・・・

 通常能力でも圧倒的に負けていると思うので

 加護が何処まで誤魔化してくれるかですが』


『あの神様と世界神って同じだよな?』


『ですねよぇ』


『・・・・・あれ?駄目なパターンじゃね?』


『う~ん、立場も能力も違い過ぎますから

 どうにか出来るとは・・・・ちょっと・・・・』


『むぅ・・・アリスの色使いで何とか!』


『そ・・・それは!わっわたし位の美貌ならば

 例え魔王と言えども!』


『その隙に俺は逃げるからさ』


『おいてきぼり?!』


『だってアリスは体が消滅しても復活出来るじゃん』


『実留さんだって復活できるじゃないですかっ!』


『俺のは転生だから復活とは違うわっ』


『ばーかばーか

 実留さんなんて虫を丸かじりしてれば良いんだ!』


『おっ、そういや随分と虫喰ってねぇなぁ

 あの味が懐かしい・・・・犬だったよなぁ・・・』


『虫を懐かしがらないでください』



久々にアリスとの会話を堪能し朝を迎えた。

作戦はなるようになれ。

つまりはノープランだ。


今迄は加護頼りで誤魔化してきたのにそれも

通じるかどうかはわからないし。


ぶっちゃけ何とななる手段がまるでない。

出たとこ勝負しか出来ないのが現状だ。





翌朝、ハレンさんと並んで魔王がいる区画に訪れる。

明らかに質が違う区画だ。

調度品が置かれ警備兵の装備品も質が高い。


それよりも奥から溢れ出てくる魔力に気圧される。

明らかにこちらに向けられているのがわかる。

ただの魔力なのにこちらの動きを制限するかのような

圧力を感じるのは圧倒的な実力差か・・・。



魔王が居る部屋に近づくにつれて濃厚になる魔力に

耐えながらハレンさんの後に着いていく。


これ下手な精神系攻撃よりも威力あるんじゃねーか。

今は何とかレジスト出来てるけど

ちょっとキツイ。


ハレンさんは大丈夫なのか?



部屋に前に立つと魔力濃度は半端ないものになっている。

ヤバい・・・・もう限界だぞコレ。

心が折れそうだ。



ハレンさんがノックをし扉を開ける。

覚悟を決めろ。

全身に魔力を巡らせて踏ん張る。







「君は何をそんなに身構えているんだい?」


気が付くと魔力は霧散しており

部屋の中には何の気配もない。


そこには人の気配すら感じられない。

いや・・・・隣のハレンさんは感じられる。



正確に言えば目の前に居る人物の気配だけが感じられない。


俺の視覚は確かにその姿を捉え認識しているのに

誰かが居る様にはどうしても思えない。



その姿は年端も行かない少女だ。


「どうしたのかな?

 私の姿が見えないのかな?


 それとも



 私の存在を実感出来ないのかな?」



戸惑っていた理由をズバリ言い当てられて

少なからず動揺してしまう。



「まぁ、そんなに畏まらないでくれたまえよ



 はじめましてだね」






私が魔王だ。


強さとはかけ離れた世界に生きるような

可憐さを身に纏い折れてしまいそうな細身の少女はそう告げた。



ついみ魔王と対面です。

実留君頑張れ!

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