3-14
倍返しだっ!
いや何も食らってないんですけどね。
半沢直樹は面白いですね。
こんにちわ森山実留です。
天使が作ったゴーレムを一方的に攻撃して
分解して部品をパクッたら怒られました。
事前に承諾を得たはずですが・・・・世は理不尽な事だらけですね。
荒れ狂う天使を宥めてから話を
聞く事が出来るまでに1時間を要した。
今は何処からか取り出した机と椅子に座って向き合っている。
ザッカリアとサリー(と彼女団)はずっと固定されたまま
部屋の片隅に放置されたままだ。
「私はラバリオ様の弟子である天使族のロズと言うわ
階級は天使よ」
「天使族?階級?」
「あら?人形君は何も知らないのね?
そう言えば他の人に比べて状況が分ってなかったようだけど」
天使族とは神の遣いとされている種族だが
実際にはただの1種族に過ぎないそうだ。
もちろん聖属性が得意で神の御使いとして
働く者も多数存在するので間違った認識でもないそうだ。
階級は上位、中位、下位の三段階に分かれ
更にその中が三段階の9種類に分類される。
上位クラスは熾天使、智天使、座天使。
中位クラスは主天使、力天使、能天使。
下位クラスは権天使、大天使となり最後が天使だ。
ロズは天使なので階級としては最下位クラスとなる。
上位クラスともなると下手な下級神を上回る壮絶な強さを持つらしいが
同じ天使族だとしても滅多に遭遇する事もないらしい。
ロズも出会ったことは無いそうだ。
神もいれば天使もいるのかよ流石はファンタジーだなぁ。
ロズはぶっきら棒だがちゃんと説明してくれた。
意外に良い人なのかもしれない。
ザッカリアとサリーは何か勘違いをしているのかな?
その他にもお互いに色々と話をしたが
やはり印象としては普通だ、いや寧ろ知的な印象を受ける。
ムッキムキの体が視界に入らなければだ。
「それでロズはラバリオの弟子でここで迷宮作成の
修行をしていた、という事でいいのかな?」
「えぇ、それでいいのだけど
何故、人形君に呼び捨てにされるのかしら?」
「え?だめ?
さん付けした方がいい?」
「駄目に決まっているでしょう
あくまでも私は天使であり
人形君よりもはるかに上位の存在です
私を呼ぶ時は様を付けなさい」
「ラバリオが呼び捨てなのに?」
「それは人形君の勝手に呼び捨てにしてるだけなのだけど」
あれ?若干キレ気味?
無意識なのかは分からないが猛烈なプレッシャーを感じる。
ここは従っておいた方が良さそうだ。
「は・・・はい、ロズ様」
「わかればいいのだけど」
「それで人形君はラバリオ様の迷宮で出会って
仲良くなったと」
お前は人形君のままなのかよ!
そう突っ込みたいが空気がそれを許さない。
「それで、ラバリオ・・・・・・・・様と連絡は?」
何時も通りに呼び捨てにしようとしたら
ギロリと睨まれた。
筋肉もビクンビクンいわしてるし。
こえぇよ、さっきまで大丈夫だったのに。
あれ?天使族って怖いの?
「連絡はしているのだけど
ラバリオ様は忙しい方なのよ
大抵はあの方からの折り返しだけど」
「なるほど
連絡の頻度は如何程で?」
「そうね、半年前後で1回有るか無いかね」
「こちらからは?」
「一時間に1回程度かしら」
「そ・・・それっ・・・」
それはストーカーなんじゃないかという発言は
身の危険を感じたので寸での所で飲みこむ。
「それ?」
「いや・・・それ・・・は忙しい方なんだなと」
「えぇ、そうね
ラバリオ様は迷宮神として多忙な日々を送っているわ
人形君が知り合いでもそうそう連絡が出来ないのだけど」
「半年に1回とかだと重要な連絡は?」
「それはメールと呼ぶもので必要な情報を
送る事になっている」
「メール?」
「あぁ、そうね人形君には分らない事か」
ロズは軽く馬鹿にしたような顔をするが
説明してくれるようだ。
机から取出した紙に羽ペンでサラサラと何かを書いていく。
文字は解読できないので何が書いてあるかわからない。
「何を書いているので?」
「そうね、現状での迷宮の簡単な報告をしておこうかとね
ここのボスを作っていたのだけど
どうやら自然発生したようなのよね
それならあのゴーレムが無くても大丈夫なのだけど
・・・・・そう言えば人形君は何処から来たのかしら?」
「壁をぶち抜いて来たけど」
「え?壁を?どうやって?」
「ナイフで少しづつくり抜いて来たんだけど・・・」
「ナイフで?迷宮の壁がそんな物で切れるとは思えないのだけど」
ナイフまで見せるのは迷ったが仕方が無い
またここは誤魔化して話すしかないなっ!
ここは1つ何処かの神が作った武器だとしておこう。
取出したナイフを見せる。
手に取ってまじまじと見つめるロズ。
「あ・・・・あなた・・・・何て物を持ってるのよ
何?このえげつないまでの効果は・・・」
あれ?ロズは鑑定出来るの?
俺の鑑定スキルは封印されてるんだけど・・・・。
ズルいなぁ俺も色々と調べてみたいのに。
鑑定しても大雑把にしかわからないんだよな。
よ~し、これは要交渉だな。
強気にアタックだ。
未だにロズはブツブツ言いながらナイフを見てる。
「何よこれ・・・・物理防御と魔法防御がほぼ無効って・・・・
感じる神気も・・・物理保護も凄い・・・これ壊れるのかしら・・・」
「あの・・・そろそろ返してもらえると」
「人形君っ!これを何処で手に入れたのかしら?」
事前に考えておいた内容を話す。
とは言ってもドパール卿の部分を名も知らぬ神に置き換えて
祖先が賜ったとしただけだけどね。
ロズは妙に納得しているが大丈夫だろうか。
まぁバレた所で問題はないのだけど。
ピローン
> スキル≪誤魔化し≫を手に入れました。
おおう・・・・スキルが手にはいっちまった。
そんなに俺は誤魔化してきたのかね?
ちょいとスキルを見てみる。
≪誤魔化し≫
説明:繕ってばかりの人生って楽しいのかな?
効果:誤魔化そうと意識すると何となく会話や行動に
真実味が帯びたように感じ信じて貰いやすくなる。
うっせーよっ!ばーかばーか!
こっちだって繕いたくてやってんじゃねーよ。
相変わらずイラっとする説明だな。
何にせよ有用なスキルなのは間違いないから
有りがたいと思っておこう・・・・・イラッ。
「それで何処の壁を壊してきたのかしら?」
「ん?だからそれはボス部屋のここに続くトコの壁だよ」
「・・・・ボスはどうなったのかしら?」
「倒しちゃったよ」
「な・・・・・なにしてくれてんのよぉぉぉぉぉぉ」
2度目の絶叫を聞き宥めすかすのに更に30分を要したのは
仕方がなかったんだろうか。
それにしても前回よりも時間が短かったのはスキルの御蔭だろうか。
「折角作ったゴーレムも壊されて
自然発生したボスも倒されて・・・・・グス」
「とりあえず現状をありのままに書いて
ラバリオ・・・様に送ってみてはどうかな?
俺の名前も最後の方に書いておくと良いと思うよ」
ロズはグスグス言いながらも手紙を書きなおしていく。
どうやら前の手紙にはボスが定着したしゴーレムも作成出来たと
自信満々に報告を書いていたようだ。
申し訳ない気持ちにはなるが俺は悪くないと思う・・・・多分。
ロズは書いた手紙を丁寧に折り畳むと
机から携帯を取り出した。
二つ折りのガラケだ。
ボタンの数が少なく大きい。
ディスプレイに映る文字も大きい。
うん、楽ちんな奴だね。
そのディスプレイ部分に書いた手紙を押し付けると
スウっと中に吸い込まれていった。
俺が知ってるメールと違うっ!!!
呆然としていると着信があった。
「もしもし・・・・はい、ラバリオ様っ!」
どうやらラバリオから着信があったようだ。
ここ地下なのに電波通じるんだなぁとか
あのメールは電子的なのか物理的なのかとか
取り留めない考えが頭によぎってしまう。
「人形君、ラバリオ様が変わって欲しいそうよ」
「もしもし、ラバリオ?」
「ミノルさんおひさしぶりっす」
「ひさしぶりだね
まさかまた話せるとは思わなかったよ」
「自分もロズがミノルさんと関わるとは思っても
いなかったっす」
ラバリオから説明を聞くとロズが天使族でも
聖属性の適性値が低く魔力も上手く使えない。
戦闘能力はそんなに高く無く寧ろ低い。
知識を求めて必死に努力するも
魔力の扱いも聖属性の魔法も上達しない。
それならば戦闘術を学び強くなろうと思って
体を鍛えたらムキムキになってしまった。
天使族は中位クラスからはある程度の外見変更も出来るが
下位クラスで肉体の上昇はあっても劣化はなく細身になる事も出来ない。
唯一誇れた美しさもガチムキの体とのアンバランスで
気持ち悪いと周囲から指さされる存在になった。
筋力は付いたが勘違いしたボディビルディング的な
魅せる筋肉となり力はあるもののスピードは遅い。
天使族の戦い方には魅せ筋は必要ではないのだ。
魔力も上手く扱えず落ちぶれたロズにも一つだけ特殊能力があった。
それは僅かながらも"神気を扱える"能力だ。
出力は極々低いし操作も拙い。
それでも扱えるか扱えないかでは雲泥の差がある。
そもそも神とは何か?
神とは世界を創世し管理する存在で1つの種族なのだ。
最初から神に生まれる者も居れば種族進化して神族に成る者もいる。
神族としての最低条件が神気を扱えること。
神気を扱えるようになるには才能も努力も幸運も修練も何もかもが必要だ。
その為、必然的に長寿の種族から進化する事が多いが
才能に溢れ人族から成った者も居ると言う。
ロズはそんな神気を使えるのだ。
つまりは神族になれる可能性がある。
少なくとも0%ではないという事だ。
この可能性にロズは掛けた。
各地を訪問し情報を集めて旅を続けた。
そんな折にここの迷宮にたまたま寄ったラバリオに
出会ったという事だ。
「それでラバリオに弟子入りを?」
「いや、もう凄い押掛っす
凄い迷惑っす
何を言っても聞かないので
その迷宮のボス作成を任せる事にしたっす」
「じゃぁ正式に弟子入りはしてないの?」
「ボスが出来たらって約束っすが
自然発生のボスもミノルさんが倒しちゃったみたいですし
技術もセンスも壊滅的だったから多分、当分無理っす」
「そうだよなぁ・・・・・うん、わかる気がするよ」
「とりあえず15年程放置したっすけど
まだ諦める気が無いみたいで毎日何十回も連絡がくるっす」
「そりゃまた大変だな・・・・
でも俺が一緒に居た時には着信なかったじゃん」
「もちろんばっちりと着信拒否してるっす
ロズからは自動的に留守電に繋がるっす」
おおう、ロズも酷いがラバリオの対応も・・・・。
15年も掛けて作ったゴーレムを壊されて
定着しかけたボスも倒されちゃったのか。
何かごめんなロズ。
ちらっと横目で見ると距離をとってこちらを
凝視している。
多分、ラバリオが会話中は近くに寄るなとか
言っておいたんだろうな。
でもそれを守るなんて律儀だな。
懐かしくてグダグダと話してしまったが纏めると。
この迷宮はラバリオが作成したが
他に急な迷宮作成が入った為に放置をされていた。
それでも定期的にメンテナンスに来ていた時に
ロズに発見されたらしい。
神気を感じれるのもロズにとっては幸いだったのだろう。
ラバリオには不幸かと思うが。
ロズは猛烈なアタックで弟子入りしたが
迷惑に感じたラバリオはここの迷宮作成を押し付けた。
こんな感じだ。
ロズがゴーレムを作ったり迷宮の管理が出来るのは
ラバリオが仮弟子として準迷宮神扱いで登録したからだそうだ。
ザッカリアやサリーを停止させ俺の魔力を奪うのも
それらの権限での能力だそうだ。
ラバリオの力も制限付であるものの一部使用可能らしい。
もっともこの放置ぎみの迷宮のみの限定能力ではあるらしいが。
じゃぁ外に出た場合のロズは?の質問に
「肉壁には使えるんじゃないっすか
あっ、知識はかなり有るんで辞書兼肉壁っすね」
だそうだ。
その説明は流石にどうかと思うぞ。
「そうだっ!ミノルさん、ロズに代わってもらっていいっすか」
ロズに電話を渡すとひったくるようにし電話に出る。
「えぇ・・・・はい・・・ラバリオ様・・・・
そう、そうなんですよ・・・・・
はい・・・・でも・・・・壊されて・・・
それに・・・・そうなんです・・・・
それにしたって・・・・えっ?・・・どういう事ですが?
え?ええええ?・・・・・だって・・・はい・・・
人形ですよ・・・・でも・・・・はいっ?
でも・・・・でも・・・・BUSAIKUですよ・・・
そんな・・・・それじゃぁ・・・・・え~・・・・」
何だか前にも同じ事があったような・・・・
微妙に馬鹿にされてる感があるのは気のせいだろうか。
つうか!BUSAIKUは関係なくねーか!
電話が長くなりそうなんで俺はゴーレムの胴体を解体する事にする。
こんな時にも試作ナイフは役に立つ。
グリグリと解体していく。
そういやアリスもラバリオに会いたいだろうなぁ。
でもロズには秘密にしておきたいし。
変に勘ぐられたらやだもんな。
考え事をしながらも解体していく。
表面は焦げてるが中身は無事だ。
コアを探すと・・・・・あったあった。
胴体の真ん中にコアを見つける。
「おぉ、"神核水晶"じゃん」
少し欠けてるけど手に入るのは嬉しいな。
多分、俺の魔法攻撃をレジストしようとして
高負荷で欠けたんだろう。
品質もそんなに良くなさそうだしね。
他にも"魔核水晶"等も幾つかGETした。
どれも品質はあまり良くなかったが。
それにしても内部構造がお粗末だ。
もっと構造を改良すれば出力も跳ね上がるんじゃね?
内部から良さげな部品を幾つか取得し
残りはハレンさんの土産にそのまま収納した。
何時の間にか電話も終わっていたようだ。
ロズがこちらを見つめている。
やべぇ・・・・ゴーレムを丸パクリしたのを見られちまったか。
約束してた事だけど気まずいモノはあるな。
「あ・・・あの・・・ロズ様・・・・
ゴーレムは約束通りに・・・・貰って・・・」
「あぁ、ううん
ゴーレムなんてどうでもいいのよっ!ミノル様!」
「へ?・・・・ミノル様・・・・・?」
「それにロズ様だなんて・・・・もう
私の事はロズと呼び捨てください」
・・・・・・・ラバリオ、お前何やらかしやがったっ。
ラバリオさん・・・・適当っす!




