3-13
平日に2~3話更新はしていきたいと思ってます。
天使に遭遇した森山実留です。
神聖で美しく人類に無情の愛を降り注ぐ存在ですね。
そんな愛と美の権化である存在に会えるとは嬉しい限りです。
もっともこの世界の天使はそんな存在じゃなそうですが・・・・。
2人が危険を感じして臨戦状態に入っているが
状況がよくわかって無い俺。
目の前の天使とやらの外見を観察してみる。
サラサラの金髪ロングヘアで
顔は作られた人工物のような硬質な美しさだ。
美術品や芸術品のような感じだろうか。
誰かが作りし美が作り手を超えた何かを得た美しさだ。
心が動かされる美しさ。
それが人によっては恐怖や崇拝等になってしまう程のね。
服装は動きやすさを考慮してか
体にフィットしてるノースリーブでヘソ出し
下はひざ丈までのハーフパンツ。
手には小柄な小手と足にはブーツ。
腰の後ろには短剣を携えている。
外見だけで言えば軽装の冒険者風の美女だ。
そして背中には純白の穢れない翼が携わっている。
折り畳まれているのか小ぶりで背中から少しはみ出ている程度だ。
いや・・・・小ぶりではないかもしれない。
文面で説明するとそうなるんだ。
仕方が無いじゃないか。
体がねガチムキなんだよ。
うん、ごっついガチムキだ。
可憐なイメージなんて全然無い位に
ムッキムキだ。
腹なんてボコボコに割れてるし
首が滅茶苦茶太い。
身長も高いので異常なまでの威圧感だ。
確かにこれは危険だ。
こんなにガチムキなのはジミー以来だ。
"いやぁ、袖があると服が選べないじゃん?
やっぱりノースリーブなら肩回りが楽じゃん"
とか言い出しそうだ。
想像を絶する美女にガチムキの体。
何やら危ない匂いがプンプンする。
「とろこで誰なの?
ここは入ってこれない場所だと思うのだけど」
「お前は天使族・・・・なぜこんな所に」
「聞いているのはこちらなのだけど?」
「皆、気を緩めずにっ!
何かあれば直ぐに攻撃に移るよ」
「話を聞きなさいよ・・・・・
誰だって聞いているのよ」
「ミノル、天使族に遭遇したら
殺すか殺されるかだ
あいつ等に慈悲は無いぞ」
「え・・ええ?えええええ?」
相変わらず理由もわからないまま
殺戮戦闘シーンに場面は移ったようだ。
何にせよ死ぬのは御免こうむりたいので
戦闘態勢を取る。
「たく・・・・・話も出来ない下等生物がっ」
天使は右手をサッと振る。
うお、なんだっ。
身構える・・・・・・も特段変化はない。
いや、多少動き辛くなったか?
しかしそれだけだ。
何もおきない。
横を見るとザッカリアとサリーが硬直し
ピクリとも動かない。
「何で動けるの?
生物は動きを止めるはずだけど?
あれ・・・・?生物じゃないの
変な感じをうけるのだけど」
「俺はゴーレムだ・・・
普通の生物じゃない」
「あら、良く出来た人形さんなのだけど」
天使は再度、右手を振る。
「ぐはぁ」
体から急に魔力が抜けていくのがわかる。
「人形さんなら魔力が無ければ動けなくなるのだけど」
体から力が抜け膝が落ちる。
どうやら魔力を抜かれているようだ。
俺の体には魔法は効きにくいはずなのに。
スキルか?天使の力なのか?
手を突き体を支えるが
既に立ち上がる力さえない。
ギリギリで感覚器官は動いているがそれも時間の問題だ。
体が床に崩れ落ちる。
衝撃も感じる余裕がない。
目の前が暗くなってきた。
手足の感覚も覚束なくなってきた。
俺はまだ横たわっているのか?
体は維持出来ているのか?
それすらもわからなくなってきている。
耳も遠くなってきている。
これ魔力が切れたら死ぬのか?
転生ポイント貯まってると良いんだけど・・・。
《魔力量が身体維持限界点を下回ります
至急対応をしてください》
キュイが警告を投げてくるも
打てる手はもはや何もない。
「せめて・・・・この・・・迷宮・・・居た・・・の・・・が・・・
ラバ・・・リ・・・オ・だっ・・・・た・・・・ら・・・・」
「あれ?ラバリオ様を知っているの?」
「・・・・・」
「聞いているのだけど?」
「ま・・・りょ・・・く・・・・」
「あぁ、ごめんごめん
魔力を抜いてたね」
フッと体に力が戻ってくる。
「ハァハァハァハァ」
深呼吸をし魔力を取り込みながら
残っている魔力を体に行き渡らせる。
魔力吸収さえなければ何とか体は動かせる。
迷宮壁の欠片を口に放り込み咀嚼して飲み込む。
それらを5分程繰り返して何とか通常レベルまで回復する。
「そろそろ大丈夫?
人形君が何故にその名前を知っているのか聞きたいのだけど」
「名前ってラバリオの事か?」
「人形君があの方を知っていて更に名前を呼び捨てにしているのは
納得出来ませんが・・・まぁ良いですわ
そう、そのラバリオ様の事ですわ」
ふむ、天使という存在がどういう者かが
分らないから情報を全部出すのもなぁ。
それにしても人形君とは可愛く言うモノだ。
こんなBUSAIKUを前にしてなっ!
「その前に貴方は誰なのですか?
貴方が言う通り自分はゴーレム・・・・人形だ
先程、仲間に天使族と言われたが何も知らないんだ」
「何故、人形君に説明しなければならないの?」
そう言うと思ったぜ。
しかしそこは論点をズラせば簡単な事さ。
俺の見立てではコイツは単純系だ。
「ラバリオは俺にとっても大切なんだ
関係も分らない方に話すのは迷惑が掛るのは困る」
「そ・・・そうですわね
あの方に迷惑が掛るのは困るのだけど・・・・
まぁ、良いわ人形君が教えるのに足るか試してあげる」
「何でそうなるっ!」
「迷宮の最深部まで来て謎の存在が居たら
そういうお約束だけど」
「いや!そうじゃなくてっ!
いやいや、まぁそうなんだけどっ!」
「何にせよ大丈夫よ
私が作ったゴーレムの戦闘試験も兼ねているだけだけど」
「それが目的じゃねーか」
何故かなし崩し的に戦闘になったが
ようは倒せば良いだけだろ。
俺もラバリオには会いたいしな。
天使がゴーレムを召喚すると
床に魔法陣が描かれ中央から何かが出現した。
それは辛うじて人型と言えるだろう。
寸胴の体に顔と思しきデザイン。
手は肩と腕の関節が辛うじてある位。
指は懐かしのマジックハンドかの如く二本指だ。
しかも指先が無駄に丸いので物を掴むのは辛そうだ。
せめて尖らせれば武器にもなるのに。
足は・・・・もう説明は良いか。
ずんぐりむっくりな足で殆ど上がりません。
摺り足よりはマシかな程度で動けます。
もう何と言うか壊滅的にセンスも技術も感じられない。
適当に形を作って無理矢理動かしてます感が満載だ。
大きさは3mあるかないか程度だが
横にも太いので中々の巨大さに見える。
「さて、戦うのだけど
準備はよくて?」
「本当にやるの?」
「ええ、やるわ
あたりまえだけど戦闘の結果で人形君が
怪我をしたり死亡したりしても責任はとらないわ」
「そうですか・・・・でわ自分が
このゴーレムを滅茶苦茶に壊しても文句はないと」
「出来るものならね
何なら壊して素材を持って行っても構わないぐらいだけど」
「本当に?二言はない?」
「えぇ、ラバリオ様に誓って」
ラバリオに誓ってて・・・・そんなに大層な奴なのか?
いや確かに神だし凄いんだろうけどさ。
実際に会うとそうでも無いんだけどなぁ。
「でわ、戦闘開始」
天使の一声で戦闘が始まる。
「うヴぉーーーーーン」
雄叫びをあげながらゴーレムは近寄ってくる。
物凄い速度だ。
遅い方でね。
足が殆ど上がらないのに膝や股関節なんかも
殆ど動いてないから1歩で進める幅が少ない。
コレ、俺が歩いたほうが速いんじゃね?
俺は穂先が潰れた短槍を構え投擲する。
これはあっさりと弾かれる。
うん、防御力は高そうだな。
次に魔力砲を打つ。
左右からそれぞれ貫通型と拡散型を。
これは多少は効果があった。
外装に少し傷がついた。
貫通型ならダメージは与えられそうだ。
それに魔力を込めて拡散型の威力をあげると
バランスを崩したのかフラフラしてる。
アンバランスな作りをしてるもんな。
ふむふむ、素材のランクはそこそこ高そうだな。
硬度はあるみたいだけど柔軟性と魔法抵抗は低そうだ。
今更だが俺の魔力砲は魔力を力として打ち出すので
物理攻撃と魔法攻撃の両特性を備えている優れ物だ。
威力は今一つだけど使ってると少しづつ上がってきてる。
これも熟練具合があんのかね。
よし、検証は終わりだ。
さて、ここは一発かまして
とっとと終わらよう。
ドォゥン
突然、天使ゴーレムの真後ろで爆発が起きる。
天使が驚いているが気にしない。
立て続けに3回の爆発が起こりゴーレムはバランスを崩す。
更に俺が魔力砲を連射し重心を狂わす。
追い打ちで膝関節付近に再度の爆発。
完全にバランスを崩したゴーレムは前のめりに倒れ
ジタバタし起き上がる事も出来ない。
その上から重量がある岩の塊が落ちてくる。
バゴン。
岩の塊が落ちてくる。
ドゴン。
岩の塊が落ちてくる。
ズガン。
身動きが取れなくなった頃を見計らい
貫通型で肩と股関節を砕き四肢を捥ぐ。
手足は収納し残った胴体は止めとばかりに
立ち上がった炎の柱がコンガリと焼いていく。
俺がザッカリアとサリーに秘密にしておきたい事の一つで
魔法が使えると言うのがある。
基本的に俺の体は表皮を境に魔力が越えられない為
魔法の発動が出来ない。
左右の手からは魔力砲は出せるが
そこから魔法の発動は出来なかった。
これは魔力を力に変換する機能が手首の部分にあるからだそうだ。
それにより魔力砲は撃てるが魔力自体が
体の外に出れるわけじゃないって事らしい。
しかしキュイからは神システム経由で魔法を発動出来る。
但し、威力、精度は俺本来のレベルでは発動出来ない。
全力を10段階だとするとおおよそ半分程度の4~6だ。
燃費も悪く5割増し程度の付加を感じる。
今回の魔法発動のコストは迷宮壁を齧って補給した。
それに予め使用する魔法はプリセットしておかなければならない。
更に言えば発動を念じても僅かだがタイムラグがある。
色々とデメリットはあるがメリットも大きい。
まず何と言ってもこの体で魔法が使えるという事だ。
次に発動の際に発声が必要ないと言うのも凄く便利だ。
それにある程度の連射が効くので攻撃密度を上げる事も可能だ。
これらによって戦闘の幅は大きく広がったわけだ。
ほいじゃ腕をぶった切ったりして内面を直接外に出せば
魔法使えるんじゃね?と考えたこともあったが
もちろんやる勇気はない。
完全には焼けなかったが焦げた元ゴーレムは
活動を停止した。
「これで良いかな?」
胴体をつま先で突きながら動かない事を確認し
俺は天使にそう告げる。
「な・・・・・なにしてくれてんのよぉぉぉぉぉぉ」
天使の絶叫が響き渡ったのは仕方が無い事なのだろうか。
実留君・・・・大人げないぞ。




