3-7
出かけてしまうので次回更新は
水曜以降を予定しています。
出来るかは分かりませんが
少しづつ展開を早くしてみたいなぁ。
こんいちわ、森山実留です。
知ってますか?生物って天敵がいると身が竦みあがるんですよ。
流石に2回も殺されたら抵抗ありますよね。
ブルブル。
「頼みとは何だ?」
目の前の魔族、ヴァースはそう呟いた。
小さいのに妙にハッキリと聞こえる声で。
間違いなくコイツは俺を2回も殺した魔族だ。
緊張し体に力が入って行くのがわかる。
今は敵じゃないハズだ。
落ち着いてじっくり観察しろ。
うん、机が似合わねぇ。
つうか気に入らねぇ。
・・・・・・ブリンジを倒せたんだから
コイツも行けんじゃね?
待て、待つんだ俺。
倒すとしてもも今じゃない。
状況を確認してからだ。
「まずは今回の私の作品を紹介します
ミノル、一歩前に出ろ」
そう言われて一歩前に踏み出す。
それだけで感じる圧力が増したようだ。
動揺しているのがバレないように注意したが
隠し通せただろうか。
「ミノルと言うのか・・・・ふむ・・・・
お前・・・・・人形の癖に加護持ちか・・・まぁ良い
提出された書類と模擬戦の評価は確認した
どうやら想定通りの性能が出てないようだが?」
あっぶねー、絶対に何か感じやがったよな。
こいつも読める奴なのか?
ステータス隠蔽しといて良かったぜ。
「貯蔵魔力の低さが原因と思われます
魔力量を増やせば出力も向上させれるので
体内構造も併せて最適化されます」
「なるほど頼みと言うのは
高品質の魔核水晶を寄越せと言うとこか」
「正直に言えばそうなります
それとは別に素材を幾つか頂きたいのですが」
そう言って紙をスっと差し出す。
あれは素材リストかな。
「良いだろう魔核水晶はこちらで用意しよう
素材については・・・・ちょっと待て」
ヴァースは小さな宝石のような物に小声で話し出す。
あれはなんだ?
「あれは通信石よ
短距離用のでペアの石同士で会話が出来るわ」
疑問が顔に出てたのかハレンさんが教えてくれる。
そんな魔法具もあるのか。
ちょと欲しいな。
少しの間、ヴァースとハレンさんが会話をしているのを
横で黙って聞いていた。
ハレンさんの研究成果についての話が殆どだったが
中には気になるワードも出てきた。
「やはりブリンジ様が居なくなった事により影響ですか?」
「あぁ、そうだな上層部もそこで揉めている
今後の研究にも影響が出る可能性がある
手は打っているがここも危ないかもな」
おうおう、なんつー話をしてるんだよ、
話が出た方をぶっ殺したのはここに居るゴーレムですよ~。
とは絶対に口が裂けても言えない。
トントン。
話を夢中になって聞いているとノックがされる。
そういやさっきの通信で誰か呼んだのか。
ヴァースが何も言わないのに扉が開かれ誰かが入ってくる。
「呼んだかな?ヴァース君」
俺の体を再度、衝撃が襲う。
車椅子に乗って扉から入ってきたのは
落ち人"神代妙錬"だった。
そうだよな・・・ここがミリナリスで
目の前にヴァースが居る。
それならこいつが居てもおかしくない。
こいつの≪分析≫って誤魔化せるのか?
・・・・・・不味い・・・・非常に不味いぞ。
ここで正体がばれたら速攻で殺されるだろうな。
転生ポイント溜まってるかな・・・。
いや、死ぬことを前提に考えるのは駄目だ。
また犬やら骨になるのは勘弁してもらいたい。
ハレンさんの人族には注意しろってこんな意味ね。
確かに他の人族もこのレベルなら相当ヤバいわ。
「あぁ、ハレンのゴーレムを改良するのに
素材が必要でなそっちの手持ちにあるだろう?」
車椅子は何の抵抗も無い様に自動で動く。
ハレンさんの言う魔道デバイスとは何か違う気がする。
音も無く動くそれは魔法具の一種だろう。
魔法具よ魔道デバイスの違いってなんなんだろうな。
無音で近づきリストを受け取った神代は
相変わらずの気持ち悪い笑顔だ。
「そうだねぇ、これ位なら確かにあったよ」
「あぁ、神代さん私のゴーレムを紹介しておこう
ミノルと言う」
おうおうおうおうおうおうっ!
何で名前言っちゃうんだよっ!
ゴーレムってだけで良いじゃないかっ!
ピーンチ、俺ピーンチッ!
「ミノル?・・・・ミノル君ねぇ」
ニチャニチャした笑顔をしながら俺の顔を覗き込む。
そんなに至近距離で見ないでっ。
気持ち悪いからっ。
確実に≪分析≫を使ってるよな。
頑張れ≪自己ステータス隠蔽≫。
負けるな≪自己ステータス隠蔽≫。
しばらく神代に見つめられたが気持ち悪いので
直視は出来なかった。
「ふ~ん、君は面白い中身をしているねぇ
前に読んだ資料では人口知性と書いてたけど・・・
まぁ、良いか
興味はあるけど僕の研究とはあまり関係ないしね
いや・・・・そうでもないか
うん、良いよ素材を提供してあげるよ
その代わりに一つ依頼を受けてくれないかな」
隠蔽は成功したのかな?
ニヤニヤ顔が凄く怖いんですが。
その後、少し会話をした後に先に部屋に戻るように言われ
ハレンさんを残して戻る。
しばらくして戻ってくると妙に不機嫌だ。
自分が帰った後にヴァース、神代、ハレンさんで
話し合いが行われ素材提供の条件が提示されたそうだ。
そこで何かあったんだろうな。
神代の条件はある魔物の素材を取って来る事だった。
それだけなら問題はないがハレンさんは
待機し俺に単独行動をする事を追加されたそうだ。
これはヴァースと神代の総合意見だろう。
単独行動は俺のゴーレムとしての性能を試したいからだろうな。
自律行動が本当に出来るのかと言うところか。
自分は同行しない代わりに安全性を考えて
2名の同行者を就ける事をハレンさんは押し込んだ。
同行者はヴァースが選任するので
本当に安全かは不明だがハレンさんなりの落とし所だったのだろう。
何点か引っかかる点はあるが俺の魔力貯蔵量向上の為には致し方ない。
それにしてもハレンさんは相当に嫌味か何かを言われたんだろうか。
物凄い不機嫌だし素材取りも命令口調だったし・・・・・。
何にせよ命令されたから従うしかないけどね。
無事に成功させて気分良くさせてあげよう。
この組織内ではハレンさんが最終防衛ラインだからな。
もちろんヴァースと神代からのね。
翌日の朝に出発なので早目に寝る事にした。
寝る前にゴーレムでも睡眠が必要なのは何故?とハレンさんに質問すると
「精神的には人族を模している上に
構造的にも睡眠中に余力魔力で各種内部構造の補修をしている」
全く寝なくても問題は無いが寝たほうが調子は良くなるんだそうだ。
何でそんな構造にしたんだ?
そもそも人族の精神をどうやって真似たんだ?
これらの質問には
「ドパール卿が・・・・以下略」
この人は本当に大丈夫なのだろうか?
本当に信用に値するんだろうか・・・・・。
俺は不安な気持ちを押し殺したまま
紫色のドロドロとした少し苦味のある爽やかな甘さの液体を飲んで寝た。
翌日、初めて建物の外に出る事が出来た。
外は密林や秘境と言うわけでも無く普通の町だった。
厳密に言えば郊外と言えば良いのかな。
周囲に建物は幾つかあるがどれも大きい。
イメージとしては郊外に向かう大き目の道路等に大型スーパーや会社等が
立ち並ぶようなものだ。
道もアスファルトってわけじゃないが石が敷かれていて
意外に近代的と言うか整備されている。
建物・・・正式名称はわからないので研究所と呼ぼう。
研究所出入り口は大き目の扉で建物前は少し開けていてる。
荷物の搬入や人の出入りがあるからだと思う。
それにしてもオープンな雰囲気だ。
研究所ってもっと厳重で重い感じじゃないんだろうか。
神代の研究とかここでしてるのか?
広場にはザッカリアが居た。
前回の時とは違い防具を身に着けている。
武器は直剣のロングソードに小型の盾だ。
体の大きさから重装甲系かと思ったが
そうではないようだ。
「おはよう
同行者ってザッカリアの事?」
「おう、俺が一緒に行く事になった
それと隣のコイツだな」
ザッカリアの隣には爽やかな好青年が立っていた。
身長は高いが体が細くヒョロっとしてる。
此方は全身を覆う黒い革鎧は動きやすそうだ。
武器は腰に短剣があるのがわかる位だ。
2人とも動きやすさを重視してるのかな?
「初めまして、実留と言います」
「ミノル君だね
ザッカリアから聞いているよ
自律式のゴーレムなんて珍しいね
僕はサリー、サリー・グーゲンって言うんだ
サリーって呼んでくれると嬉しいな」
「はい、よろしくお願いします」
おぉ、なんつー良い人だ。
やたら爽やかだしイケメンだぜ。
「サリーはな黄豹族って言う亜人なんだが
魔族の血も入ってるからつえーぞ
それに魔物や魔獣を使役するから戦闘から偵察まで
なんでも出来る万能選手のエリート様だ」
「おいおい、そんなに持ち上げても何もないぞ
それに魔族の血が入ってるから少しばかり力が強いだけさ
友達に助けて貰って何とかなってるに過ぎないよ」
「はは、謙遜も過ぎると嫌味に聞こえるぜ
まぁ、そんな訳で俺とサリーがお供するから
安心して楽しもうぜ」
ザッカリア・・・君は一体何を楽しむつもりなんだね。
「サリーさんは魔物を使役出来るんですか?」
「呼び捨てで構わないよ
それに敬語もいらない
上司部下って訳でもないんだからね」
「はい・・・・、いや、わかったよ」
「宜しく頼むよ
それじゃ僕の友達をちょっと紹介しようか
おいで"レッド"」
サリーの足元が淡く光を放ちそこから何かが現れる。
こ・・・これはまさかの召喚術?
ゲームやら漫画等で見ては憧れていたやつかっ。
それにしてもレッドか。
かっけー名前だ。
色を冠した名前なんてものは
余程強い奴と相場が決まっている。
これは期待大だ。
光りが消え現れたのは・・・・・オークだ。
メスのオークが立っていた。
なんで?
なんで豚?
召喚で豚って呼ばれるの?
え?俺が変なの?
「ミノル君、この子が僕の大事な友達の
レッドだよ」
「お・・・おう、はじめまして」
「初めまして、サリー様に仕えています
レッドと申します
宜しくお願いします」
「おいおい、仕えてるは止めてくれよ
僕らは友達だろう
ミノル君も宜しく頼むよ
この子は戦闘も出来るし良い子なんだ」
「もう、サリー様ったらぁ」
なんか目の前でイチャイチゃしだしたぞ。
それを見ていたザッカリアがこっそりと耳打ちしてくる。
「サリーは良い奴なんだがな
ちょっと女好きなんだわ
他にも使役してるのは居るんだが全部女なんだよ」
「そうなの?!」
サリーさんの予想外の一面に戸惑うが
良い人なのは間違いないだろう。
挨拶をしたらレッドは帰って行った。
ハレンさんを含めて条件と日程を確認を行う。
基本的には俺の稼働実験の扱いになるので
リーダーは俺でザッカリアとサリーがサポートとして補佐する形だ。
アリスはヴァースと神代の目が怖いので
この場所を離れるまでは戻って貰っている。
さて、準備も終了し出発だ。
「でわ、マスター行ってきます」
「あぁ、問題ないと信じている
頑張ってこい」
ゴーレムの冒険が始まる。
ゴーレム行きまーすっ!




