2-40
12時更新が出来ませんでした。
少し長めです。
魔族を倒したことでデビルバスターとなった森山実留です。
デビルは悪魔だろって?
やだなぁ、悪魔って魔族ですよね~。
え?違うの・・・・・・本当に?
ブリンジを倒した俺は全魔力を感知に回し広範囲を検索する。
何人か生き残っている聖騎士が居たので助けて回復させる。
十分な安全確認と生存者の救出が終わった後に
アリスと実里を迎えに行き下に降ろす。
他の聖騎士達までは手が回らないが
クソ騎士達は綺麗に並べておいた。
嫌な奴らだったが戦闘だけは一級品だった。
助ける義理も無く共闘しただけだったが
そこは敬意を送ろうと思う。
一通りの作業を終えると結構な時間が経った。
建物の奥までは手が出ないものの
正面で戦っていた者達は並べる事が出来た。
原型を伴っていない者も居たがなるべく特定出来るようにした。
「ふぅ、終わったな
魔族も居なくなったしこれで解決だ」
一息ついた所でアリスがこっそりと話しかけてきた。
実里は教会の人らしく死者に祈祷を捧げている。
『実留さん、Dさんって本当に無理でした?』
『う~ん、あの状況じゃ無理だな
BかCが生きてたら何とかなったかもしれないけど
・・・・いや、それでも無理だな
結局はDはBもCも俺の事も信用してなかったし』
『そうですか・・・・しかし状況から考えると
実留さんが見殺しにしたと思われても仕方が無いですよね』
『・・・・アリスの言いたい事もわかる
だが俺の全力じゃDも助けてブリンジも倒すなんて無理だよ』
『それは分ります
確かに実留さんの実力じゃ単独で正面から戦ったら
間違いなく死んでますしね』
『おいおい、それは言い過ぎじゃね?
確かに防御のみだったけど1発さえ当たれば逆転出来たんだからさ』
『い~え、そんな事ありません
その1発を入れるのにどれだけ限界ギリギリだと思ってるんですかっ!』
『おう?俺怒られてるの?』
『そりゃそうですっ!あんな無茶してっ!』
『・・・・・ひょっとして俺に気を遣ってくれてるのか?』
『えっ?!なななななな・・・何を言っているんですか』
多分、アリスは俺がDを犠牲にした事を重く感じるなって
言いたいんだろうな。
確かに両方は取れないから俺には実里の安全を選ぶしかなかったのは確かだ。
それでも何処か・・・・心に引っ掛かる物はある。
『ありがとうな・・・・アリス』
『いえ・・・・気にしないでください』
気恥ずかしいのかアリスは周囲を見てくると言って
飛び立って行った。
丁度、祈祷が終わった実里に話しかける。
「済まなかったな
あまり守る事が出来なかった」
「ううん、お兄ちゃんも危なかったし仕方が無いよ」
「そう言ってもらえると助かるよ」
「それと・・・・迎えに来るのが遅くなって悪かったな」
「うん・・・・それは本当だよ
もう20年近くも待ったんだからね」
「あぁ、悪かった
これからは近くにいるからな
でも立場が違うから一緒には居られないか」
「あ~、うんどうだろ
でも何とかするよっ!
私はこう見えても聖女なんだからね」
「そういや、聖女ってなんだ?
王女とか高位司祭とかじゃなかったか?」
「あ~、うんそれは色々とあってね~」
色々と話そうした時に集団の足音が聞こえてきた。
後追いで向かっていた本部隊だろう。
一旦、会話を打ち切り出迎える。
死屍累々の状況に本部隊のメンバーが驚き
聖女と共にいる聖騎士以外という事で俺が囲まれたりしたが
一緒に来たモリスさんと実里が事情を説明してくれて
事なきを得た。
簡単に言うけど本当に殺気立って囲まれた時は怖かったんだぜ。
エレアスはモリスさんと一緒だった。
姿も見えないから不安だったんだが
大怪我はしてないものの無事なようで良かった。
それでも所々に怪我があるので大変だったのだろう。
よく生きててくれたな。
後でゆっくり事情を聞く事にし
とりあえず今は疲れたので休みたかった。
後片付けと調査は聖騎士団の本隊に任せ
俺らは駐屯地に帰る事となった。
実里は惜しげも無く聖女の権限を使い
馬車に俺を同乗させた。
もちろん認めないと言う奴が多かったが
実里の会話力は凄まじく皆、撃沈していった。
帰りはずっと話し込んだ。
たまにエレアスやモリスさんも交えて話したりもする。
どうも俺はモリスさんと一部の聖騎士以外からの受けが良くない。
やはり混血は嫌われる者なのだろうか。
そんなに違うものなのかね。
実里の生い立ちは以前にブタ子に聞いた事と
そんなに外れてはいなかった。
フィラルドの王家では王位継承権が無い立場で
神の加護を受けて生まれた場合
聖神教会の司祭となる事が通常だそうだ。
実里は兄が居た為、司祭になる事がほぼ決まっていた。
普通では考えられない程の高位神の加護だった事も後押しした。
その時点ではまだ神の名前は分らなかく
教会内のかなり位の高い神の加護持ちでも
判断は出来なかったそうだ。
そうした理由もあり
実里は幼き頃から神殿を住む場とし
司祭になる為の教育を受けていた。
だがそれは厳しいモノではなく愛情と神聖さに
包まれた暖かい生活だったらしい。
ただ存在については外部に厳重に秘匿されていた。
王族であり高位神の加護を受けた身と言うのはそれだけで
狙われる対象になりうるからだ。
実里は成長するにつれて神の意志を
感じるようになったと言う。
意思と言っても選択肢があれば何となくこっちの方が
良いかなと思える程度らしい。
理由はわからないが何となく感じるらしい。
もちろんifの話で選択肢の正否が分かるわけではない。
想定していたよりも結果が良くなり。
想定していたよりも悪い結果にならない。
プラスを最大限に。
マイナスを最小限に。
それが神の意思だと言うのだ。
ただこれには問題がある。
感じる時と感じれない時があるらしく
感じれたとしても殆どが
右に曲がるか左に曲がるか?
明日の晩御飯は何を食べるか?
等のどうにも神には関係が無さそうな事ばかりだそうだ。
ある時には国と教会に関わる
大きな問題の前に同様に感じる事があった。
実里はいつもの感覚で判断して良いかが
分らず悩んでいた。
自分の感覚を信じるには問題が大きすぎたのだ。
悩んでいると夢の中に神が出てきた。
姿はぼやけて見えないし声をハッキリとわからないけど
どうにも何処かであった気がする。
名前を"世界神グラバス"と名乗ったのだそうだ。
夢の中で感覚を信じるように告げられたらしい。
この事を教会の上層部に報告すると一気に状況が変わった。
世界神の加護は世界でも2名しか確認されていない。
これは教会の為に神が遣わした使者だ。
そんな声が上がり司祭から聖女に格上げされた。
そしてどうしてか魔族がその情報を掴み
色々と仕掛けてきた。
成人の儀の時の襲撃もその一端だったそうだ。
そうして今回の誘拐に至る。
実里自身も気が付いたら誘拐されていたと言うから
何とも微妙だ。
俺はそこで気になったので転生時の事と
神システムについて聞いてみた。
転生の時に会った神とグラバスは
同一ではないと言うのが実里の意見だ。
ハッキリとはわからないが背丈も外見も声も
話し方さえも何もかも違ってそ威厳のある感じを受けたそうだ。
あいつ絶対にキャラ隠してんじゃねーかっ!
神システムについては知らないらしい。
これは疑問だ。
俺は実際に神に会ったことはあるが
夢に出てきたりお告げらしきものを受けたことも無い。
実里と俺だと与えられた物が違うんだろうか。
他にもエレアスが何故無事だった理由も聞けた。
劣勢になってきたD隊副隊長が本体に救援を頼みに行かせたらしい。
D自身はBとCが苦戦していたので助けに行ったとの事だ。
今となっては狭義心からなのか欲望の為だったのかはわからない。
現場の状況も分らないので悪く言うのは止めておこう。
少なくともDが単独行動した事でエレアスは助かったんだしな。
モリスさんは何と一般市民出身の叩上げなんだとか。
聖属性の適性が高く身体能力も高く頭も切れた。
これで貴族出身か加護持ちであれば間違いなく
教会直属部隊に配属されたレベルだそうだ。
出身って大事なんだな。
俺なんてダンジョンの小部屋の骨出身だぜ。
一般でもなんでもないアンデットだぜっ!
大丈夫、何時かモリスさんの事を気に入ってくれる神がいるさ。
そう慰めると微妙な笑顔を浮かべていた。
駐屯地に戻ると気が安らいだのか
実里は2日間程寝込んだ。
その間は教会直轄部隊の医療班が結界を張り
誰も近寄れなくなった。
部屋に戻るとリース、キリル、ブタ子が飛びついて来た。
10日間ほど離れていて心配だったそうだ。
何があったかを説明すると何だかこってりと怒られたが
心配してた裏返しと思うとそれも心地よく感じるものだ。
それからはモリスさんも立ち会いの元で
お偉いさんに事情説明と視てきた事の報告をし
神代、ヴァース、ブリンジの知りうる限りの情報を渡す。
神代が別世界から来た事だけは伏せておいたが。
説明は何度も行った。
取り調べのような尋問のような状況になる度に
モリスさんが間に入ってくれた。
なんなかこう聖騎士って嫌な奴が多いなぁ。
実里が目を覚ますまでその状況は続いた。
起きてからはガンガン口を出して俺は解放された。
聖女ってすげぇ権力あるんだな。
そして何処からか聞いて来たのか
俺の料理が食べたいと言い出しやがった。
この所、作って無かったし食いしん坊共も騒がしいので
快く了承した。
いつもの広場を会場にして開催した。
実里には日本食に近い物を食べさせたかったので
魚から出汁を取って色々と作った。
うどん、出汁巻卵や各種根菜の煮物。
他にもフライなんかも作った。
後はソースとマヨネーズがあったのでお好み焼きも用意してみた。
有りあわせの材料だけではそこまで
種類を作れなかったが皆が凄く喜んでくれた。
味付けは醤油が無いので魚醤で代用した。
魚醤はこの世界でも少量は流通しているようで
駐屯地にも僅かながら残っていた。
この世界にも醤油はあるんだろうか・・・。
無いなら作れば良いけどあれって小規模で作れるものなのかな?
大豆と麦と塩は用意できると思うけど麹菌ってあるのか?
・・・・・自然発酵で行くしかないか。
いつかチャレンジしてみたいとは思う。
懐かしい味に触れたのか実里はモリモリと食べている。
昔はよくこうやって俺が作って実里が食べてたのを見てたよな。
実里は外見が変わって気品も漂うようになったが
食べ方は変わらない。
それを見て俺は心が温まるのを感じる。
やっとこうして近くに居れるようになったんだな。
教会に戻ったらどうなるかわからないけど
今、この瞬間は兄妹の時間を過ごせる幸せを噛みしめよう。
実里に料理を出していると
アリス、リース、キリルが自分にも~!と要求してくる。
エレアスもブタ子もガツガツはしてないものの
いつも通りにマイペースで食べ続ける。
はは、いつも通りだ。
魔族なんて関わり合いになりたくないね。
よ~し、今日は作りまくるぞっ!
ズブゥ。
唐突に体に衝撃が走る。
ゲハァ。
口から血が滝のように零れ落ちる。
あれ?なんだこれ?
俺の胸から何かが生えていた。
それは剣先だ。
何故か剣が俺の背中から刺さっている。
「言っただろう貴様を殺すとな」
そう耳元で聞こえた瞬間。
再度、衝撃が走り腹から腕が生えてきた。
黒い、全てが黒い腕だ。
「ハハッ、借りを返してやったぞ
ブリンジ様の借りも合わせてな」
背後でトプンと水が跳ねる音がする。
全身の力が入らずに崩れ落ちると
そこでやっと気が付いた周囲がざわめきだす。
「お兄ちゃんっ!」
最初に気が付いた実里が急いで回復魔法を掛けてくるも
臓器の損傷が激しいらしく呼吸もままならない。
胸と腹からの血は止まらず。
喋ろうとも口が血まみれで上手く喋れない。
「み・・・の・・・り・・・・す・・・まん・・・
また・・・待たせる・・・・な・・・・」
「大丈夫っ!大丈夫だから喋らないでっ!
なんで!なんで回復しないのよっ!
医療班、医療班を早くっ!!」
「ミノル様っ!しっかりしてくださいっ!」
「き・・・り・・・る・・・みの・・り・・・を・・
たのめ・・・る・・・か?」
「はいっ!ミノル様の頼みであれば何でも!
何でも大丈夫です
ですから気をしっかりと」
「りー・・・す・・・も・・・たのん・・・だ・・・・ぞ」
もう話す事も出来なくなってきていた。
実里の回復は僅かな時間の延命を叶えただけだ。
振るえる指で操作しアイテムボックス内の物を全て出した。
近くで凄い音がしていたが既に耳には届かない。
そのままの必死の形相で魔法を使い続ける実里の顔を撫でる。
ごめんなまた悲しい思いをさせて。
でもまた会いに行くからな。
最後の気力を振り絞り俺は笑顔を作った。
「また・・・な・・・・・」
それだけを何とか伝えると俺は暗闇に沈んで行った。
ヴァース来るのはえーよっ!




