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書いてたら楽しくなってきてしまい少し長めです。


やっと妹に会えた森山実留です。

以前の面影は一切無いけど美人に成長してくれて

お兄ちゃんは嬉しいです。

推定年齢で19歳前後でしょうか。

そういえば俺は何歳なんだろうか・・・・骨はわからんし

今は20代位には見えるんだけど・・・・・はて?









クソ騎士達とブリンジの戦いは想像以上に拮抗していた。



≪聴覚≫を強化して声を拾うと


「他の奴らはどうした?」


「中はどうなっている?」


等と話している事から他の聖騎士達が駆けつけてきていないようだ。

多分、あの3人以外は全滅している。

倒れている全員を調べていないから正確にはわからないが

居たとしても戦闘できる状態ではないのだろう。

余力があれば後で感知してみよう。


外に倒れているのはブリンジとの戦闘結果だろうし

建物内はヴァースがやったのか。

どんだけ強いんだって話だ。

まともに戦ったら勝てそうもない。


そんな相手に3対1でも拮抗しているのは流石だと言える。

あんなクソな野郎共でも実力は高いんだな。


クソ騎士Bは接近戦が得意なようだ。

大剣と言うには細く短いが片手剣と言うには大きくて長い。

そんな長さの剣を時には片手で時には両手で自由自在に使い攻撃している。

盾は装備していないが剣や小手で受け流し

決して受け止めたりはしない戦い方だ。


Cは遊撃と言えるか。

Bの攻撃の合間をぬって攻撃を繰り返し

回避が間に合いそうもない場合は盾を使って防御している。

装備は片手剣と盾だ。

どちらも無骨な作りだが質が良いのが分る。


傍目から見てもBとCの連携は見事だ。

良く訓練されているのがわかる。

普段から連携を想定しているのだろう。



DはBとCに比べて少し見劣りした。

武器はハルバードと呼ばれるような斧槍だ。

長さは通常の物よりも短い。

取り回しを重視しているのだろう。


Dは魔法も併用し戦うスタイルのようで

B、Cに比べて中間距離が得意なのだろう。

バランスの良い万能型ゆえに救出部隊に選ばれたはずだが

中途半端な魔法や攻撃ではブリンジに通用しない。

簡単に言えば火力が足りていない。

それでいてBとCの連携にもうまく入れないので

サポートに徹しているようだ。


それにしても何故、Dが一緒になって戦っているのかは謎だ。


お前は救出任務が担当じゃないのかと。

お前の部下は全滅したぞと。

そう問い詰めたくはあるが俺には関係がない事だ。


ブリンジの戦闘方法は徒手空拳。

ヴァースのように武器を使うわけではないようだ。

ただ格闘技のように流派っぽい感じがするわけでもない。

それでも動きに無駄が無い事は俺がみても理解できる。

最短で動き最小で動く。

間違いなく強い。

相変わらず防具らしきものは身に着けていないのに

聖騎士達の攻撃はダメージを与えられていないようだ。




拮抗している今の状態であれば

俺が参戦すれば倒せるだろう。


「実里、俺は参戦してくるがお前はここに居るんだ」


「え?大丈夫なの?

 私から見てもあいつはかなり強いよ」


「あぁ、でも今なら聖騎士達に加われば

 何とかなるかもしれない」


「本当に大丈夫?」


「あぁ、お前を残して死にはしないさ

 話したい事も色々あるしな

 アリス、お前は実里に付いててくれ

 何かあれば頼む」


「わかりました

 我が魔剣である鋼飛龍剣の何に掛けてお守りしましょう」


キラーンと輝く剣を掲げて

アリスは決めポーズだ。


うんうん、戦力としては全く期待して無いんだよ。

ちゃんと警戒だけしといてねって事だよ。


「よし、行くか

 ・・・・っとそうだ実里、俺じゃ聖騎士達を守り切れる自身がない

 申し訳ないが魔族を倒す事のみを目指すがそれでも良いか?」


「うん、しょうがないよ

 聖騎士は身内だけど正直な所、見たこともない人達だったら

 お兄ちゃんが無事の方を取るよ」


「ごめんな、俺の力が無いばかりに」


「ううん、今はお兄ちゃんの命の方が大丈夫だよ

 手足が千切れた位なら治してあげるからね」


「お・・・おぅ」




俺は身に着けていた隠蔽用の魔法具を全て実里に渡して発動させる。

代わりに取り出したのは本来の装備品達だ。


助走を取るために少し後ずさり

魔法具とスキルを使える物は全開だ。


現在、この場は魔力濃度が上がっているので吸収し取り込む。

抑えていた魔力も練り上げ身体能力を向上させる。


準備が整い、アリスと実里にサムズアップをし出撃を伝える。


「「いってらっしゃい」」


唇がそう動いたことを確認し俺は広場に向かって

跳躍をする為に駆け出す。


『実留、いっきまーーーーーすっ!』


そう叫んでしまいそうになるが

グッと我慢し空中に躍りでる。



しかし。



俺が空中に飛び出るのと同時に。



非常に不味い状況に陥る。



向上された身体能力に≪知力向上≫で知覚時間も伸びていた。

それらが空中にいる数秒の間の事を俺に認識させた。





BがCと入れ替わるようにブリンジに躍りかかり

上段から体重を乗せた凄まじい斬撃をお見舞いした。

その一撃は誰が見ても完璧だと言うタイミングで放たれ

ブリンジを確かに捉えた。


完璧なタイミングで全力の一撃。

倒せるまでいかなくても重傷は与えれたはずだ。



Bの剣が砕けなければ。



飛び出す前に気が付いておくべきだったのだ。

Bの攻撃密度が減っていた事に。

嵐のような攻撃をするBがタイミングを計るようになっていた事に。


Bは武器の限界を感じていたのだろう。

そこで起死回生に1発に込めたが残念ながら既に限界を迎えていた。


剣が壊れたBは距離を取ろうとバックステップするも

ブリンジが一気に距離を詰める。


咄嗟にCが無理な体制で間に入り盾を掲げDが魔法で援護に入る。


しかしCの迎撃はあと1歩間に合わず

逆に中途半端な姿勢だった為、吹き飛ばされ盾を持った左手を潰された。

Dの魔法はブリンジの勢いを少しだけ弱めただけにすぎず

結果として武器も無いBの胸にはブリンジの抜き手が突き刺さり崩れ落ちた。



これが着地するまでの僅か数秒で起きた事だ。

そして今、頭を潰されたCがベチャっと音と共に地面に沈んだ。


まじかー、さっきと全然状況違うじゃない。

現場に到着したら3人中2人が倒されてるってどうなのよ。



「おい、良いとことに来たな貴様も戦いに加われ」


「なんだ?以前の混ぜ物か・・・・死んで無かったか」



おいおい何だよ。

Dと2人でどうすりゃ良いんだよ。

高速で頭を回転させ考える。


「ふはははは、邪魔な2名が居なくなったな

 今から吾輩の実力を思い知らせてやるわ」


おいおい死んだ仲間の事を邪魔とか言っちゃってるよ。

こいつ頭の中は大丈夫か?

そんな死亡フラグバリバリの言葉を吐いておきながら

Dの実力はBとCと同様かそれ以上と言えた。

聖戦闘衣とやらの出力も高い。


多分、コイツは集団戦闘が苦手なのか

単純にBCとの折り合いが悪くて連携が取れてないだけなのかもしれない。


ブリンジと直接戦わなくて良いなら

幸いとばかりにサポートに回る事にする。



Dは斧槍を器用に使う。

突いて切る。

引いて切る。

変化を付けて小刻みに攻撃する。

大振りは決してしない確実な戦い方だ。

そこに魔法を織り交ぜていく。

火で水で直接攻撃や目つぶしを狙う。

実に堅実派だ。


馬鹿っぽい言動等から実力を甘く見ていたかもしれない。

派手さはないがBとCよりも対人戦なら相当強いんじゃないか?



俺は主に魔法でサポートした。

ブリンジの足元に氷を張ったり凹凸を作ったり泥濘を作った。

砂で目つぶしを行い、圧縮空気でのバックアタックやサイドアタック。


基本的には嫌がらせと足止めだ。

もちろん間には短槍での攻撃もおりまぜた。


直接のダメージはないものの

支援と言う意味では上手く行っている。


俺が足止めと時間稼ぎと遊撃。

Dがそれに合わせて攻撃と繰り出す。

土壇場で合わせた割には良い連携だ。

BCの連携よりも攻撃頻度は少ないものの

ブリンジに全力攻撃をさせないという事には成功している。


それでも火力不足は否めない。

Dも頑張ってはいるがアタッカーが1人では高火力の攻撃を繰り出す

間が作れないのだろう。




最初は何とかバランスを維持していたが

少しづつブリンジに押され始める。


相手も俺の小刻みな妨害にイライラしだしたのか

力押しになってきた。

Dは防御も悪くないのだが力負けしてしまう。

俺のサポートもそこまで勢いを削げるものでもない。


ジワジワと劣勢になってきた。



それでもDは攻撃の手を休めず

魔法を織り交ぜて小刻みにダメージを積み重ねていく。

ブリンジの攻撃は受け止めず躱すか流す。

俺も妨害はするが攻撃に回る余裕がなくなってきた。



ここが分岐点だ。

今が流れを変える事が出来る最後だろう。


俺は攻撃魔法を繰り出し何とか隙を作りDに話しかける。



「ちょっと、このままじゃ不味いぞ」


「貴様に言われるまでもない

 手を抜かずに援護をきっちりやらんか」


「さっきからやってるだろうがっ

 言い争っても仕方が無い

 何か手はないのか?」


「チッ・・・・・

 聖属性の攻撃を繰り出せばダメージは通るが

 準備に時間がかかる」


「わかった、時間は俺が稼ぐから

 アンタは準備しろ」


「ハッ、貴様に何か出来るとも思えんが

 吾輩のサポートをしっかりするんだな」



こんな時まで馬鹿っぽいDを無視して前に躍りでる。

魔法は一切使わないで魔力を全て強化に回す。

足は止めずに連続で突きを繰り出す。


「はっ、次は混ぜ物か

 お前も余程死にたいらしいな

 折角助かった命だろうに」


「そりゃどうも

 魔族如きに心配されるなんてありがたいね」


「貴様・・・・我を愚弄するか」


「愚弄も何もねぇ

 知ってるか?

 本当に事を言うと人って怒るんだぜ

 まぁお前は人じゃないけどな」


「・・・・・死ねっ」



突進してくるが攻撃が大振りになっており俺でもギリギリで回避できる。

それでも攻撃に移れるほどの余裕はないが。


攻撃を躱す度に軽口を叩く。

ますます切れるのでスピードがあがるので

躱すのがギリギリになる。

それが更に苛立たせるのだろう。

ブリンジにとってはかなり嫌なループだろう。


拳にはうっすらと魔力と言うか瘴気が纏わりついて

掠っただけでも体を持って行かれそうだ。


Dの攻撃を待ちながら

ギリギリのダンスを続ける。



数時間にも感じる数分が過ぎた辺りに

Dから聖属性の力が立ち上がるのを感じる。



キタコレっ!



位置取りを把握しブリンジの背中がDに向くように誘導する。

頭に血が上っていてガムシャラに突っ込んでくるので簡単だ。


ブリンジの肩越しにDの準備が整った事を確認する。












「我が気が付かないと思っていたか?」


ブリンジは人を馬鹿にしたような表情を浮かべ

反転し今迄にない爆発的な速度でDに向かう。


Dの顔が恐怖に引きつるのがわかる。

攻撃姿勢に入ってしまっている為、回避も防御も間に合わない。




駄目だ!間に合わないっ!

それでもっ!!












ズバンッ!!










魔力を込めに込めた俺の短槍はブリンジの胸元に突き刺さり

周囲の細胞を巻き込んで爆散し大穴を空けた。


黒い血のようなものを口から吐き出しながら

ブリンジは言葉を紡ぐ。


「ガハァ・・・・・き・・・さま・・・・何を・・・・」


「いや~、急に反転するから間に合わないかと思ったぜ」


「何を・・・言っている・・・・」


「攻撃するチャンスを狙ってたんだよ

 お前に通じそうな攻撃なんて

 俺の魔力じゃ全力で1撃分しか用意出来そうもなかったしな」


「・・・・・それが・・こ・・・・の・・・結果・・・・か?」


「まぁ、そうなるな」


俺の攻撃はブリンジに大穴を空けた。

しかしブリンジの右腕もクソ騎士Dの

わき腹を吹き飛ばしながら背中まで貫通していた。



「混ぜ・・・物が・・・・ゆる・・・・さんぞ・・・」


ブリンジはまだ動ける力があるのかDを貫通している右腕を

強引に振りぬき俺に攻撃をしかけてくる。

しかしその動きは遅く見るまでもない。



攻撃を躱し首を切りはなした。




Dはブリンジの攻撃により上半身と下半身が

殆ど千切れかけていた。

顔色も土気色でギリギリ息がある状態だ。

回復魔法を使うが痛みを抑える程度の効果しかないだろう。


瀕死の状態でも俺に言葉を投げてくる。


「何故だ・・・・・何故・・・・・」


「はっ?お前が言ったんだろうに


 "我らは一切貴様の面倒は見ない"

 "貴様なんぞに助けてもらう程、落ちぶれてない"


 ってな」


「何を・・・言っている・・・・・」


「まぁ、良かったじゃん

 無事に魔族を倒せたんだしさ

 うんうん、無事にあんたの役目は果たせたよ」


「違う・・・・吾輩・・・は・・・・

 これから・・・・・聖騎士・・・として・・・・上に・・・・」


弱々しく言葉を吐き出すも焦点はすでに無い。


「邪魔な奴らが・・・死んだ・・・・から・・・・

 これ・・・から・・・は・・・我が・・は・・・い・・・の・・・

 て・・んか・・・・だ・・・・」


Dは最後の言葉まで自分の欲望にしがみ付いたままこの世を去った。







こうして魔族との戦い。

実里の救出作戦は終了した。


ついに救出作戦が終わりました。


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