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2-38

梅雨明けが発表されましたね。

いやぁ、暑いです。

エアコンがフル稼働の時期になってしまいました。

あわわわわ。

あわわわわわわわ。

実里が・・・・みのりがぁっ!

パニックになっているモリヤマミノルです。

落ち着け!俺!落ち着くんだ。


・・・・む・・・・むりだ・・・・。

あわわわわわ。












破砕音の後には液体が流れ出る音と同時に柔らかい物が

床に落ちる音がする。


「みのりっ!」


俺は駆け出そうとするがヴァースに阻まれる。


「そこをどけっ」


俺はヴァースに突きを繰り出すも

動揺している為か簡単に躱された上にソケット部分を掴まれてしまう。


「おいおい、ミノル君

 随分と動揺しているね」


今の俺に神代の相手をする余裕はない。

ヴァースに掴まれたままの槍を手放し更に1歩踏み込む。

足元を流れる培養槽の中身を使い水刃を近距離から放つ。


しかし水の刃はヴァースを捉えることなく

形を維持出来ずに液体に戻った。


慌ててバックステップで距離を取る。


「落ち着きなよミノル君」


「何をした?」


「君の魔法を≪分析≫して≪分解≫しただけだよ

 君とは戦いたくないんだよ

 ほら、ヴァース君も返してあげて」


ヴァースがヤレヤレと言わんばかりの態度で武器を投げ返してくる。

それを片手で受け取り構えなおす。


「う~ん、警戒を解いてくれないんだねぇ」


「当たり前だろう」


「じゃぁこうしようよっ!

 僕とヴァース君を見逃してくれたら君には手を出さないよ」


「そんな事が出来ると思うか?」


「でもさこの聖女さんは君の大事な人だろ?

 それも家族か何かの近しい人じゃないのかな?」


「・・・・何故それを?」


神代はニヤリと嫌な笑顔を浮かべる。


「まぁ、君の慌てようからもわかるし

 何より魂の情報が似てるんだよね

 根本が同じと言うか繋がっていると言うかね

 それに君達からは非常に高い神の力を感じるんだ

 僕でも分らないとなると相当な上級神だろう

 確か、この聖女さんは世界神グラバスとかいう

 加護を受けてるんだっけ?

 となると君もそうなのかな?


 ・・・・・・まぁ、そこは気にしないでおくよ

 科学者として不確定情報で動くわけにもいかないしね


 で、どうかな?」


「実里は無事なのか?」


「あぁ、大丈夫だと思うよ

 力が強すぎて≪分析≫の効きが浅くてね

 ≪分解≫による抽出もあまり上手く行ってなかったから

 しばらくは怠いだろうけど

 命や寿命に影響はないハズだ

 そこは保障しよう」



提案としては魅力的ではある。

俺は今すぐにでも実里に駆け寄りたいところではあるが

ヴァースが邪魔をする。

結界が効いている状態でなお強いコイツに勝てる可能性は

五分五分と言った所か。


「悩む時間をあげたいところではあるけど

 こちらも時間が無くてね

 あまりこういった事はしたくないんだけど

 聖女さんを人質に取る事だって出来るんだよ」


チッ。


「わかった・・・・取引と行こう」


「あぁ、良かったよ

 君のような面白い存在とは仲良くしていたいからね

 早速だけどヴァース君頼むよ」


神代が机の上の荷物を鞄に手早く入れ小脇に抱える。

それをヴァースが御姫様抱っこスタイルで持ち上げる。

何か違和感があるな。


「はは、不思議そうな顔しているね

 僕の足は動かないんだ

 先天性でも怪我でも無くてね

 この世界で受けた・・・・まぁ、呪いと言われるものかな」


そう話す神代の目は先程とは違い強い意志を秘めていた。

但しそれは憎悪、身を焦がす程の憎悪だろう。

眼力だけで人を殺しかねない。

そんな目をしていた。


「まぁ君には関係ない事だったね

 それではミノル君またの機会に」


ヴァースから黒い布が広がり神代が覆われると

フッと消えて居なくなった。

俺のアイテムボックスのような機能なんだろうか。


「ふん、では混ぜ物よ

 何れこの借りは返させてもらうからな」


「借りも何も俺は何もしちゃいないが

 あぁ、見逃してやる事を言っているのかな?」


「フッ、ほざいて居るがいい

 その内に貴様を殺してやろう」



ヴァースの足元に闇が広がりそこに沈んでいく。


「おい、もう1人の魔族はどうなった?」


「ブリンジ様の事か・・・・・

 あの方は上で遊んでおられるよ

 どちらにせよ此処から出るにはブリンジ様を突破しなくてはならず

 貴様は必然的に死ぬ事になる

 あの方は我よりも混ぜ物を嫌いだからな

 ククク・・・・・精々頑張って命乞いでもするんだな」


トプン。

水に潜る様な音を立てヴァースは闇に沈んで行った。


なんだよ・・・・もう1人も連れて帰れよ・・・。



それよりもだ。

実里に走り寄り抱きかかえる。

布地を出して培養槽の液体を拭く。

更に大き目の布地を出して包み込む。


「実里っ!大丈夫か実里っ!」


反応はない。

息はしているから大丈夫だとは思うが・・・。


とりあえず地下を出よう。

念の為、書類やら本やらの証拠になりそうな

物は片っ端から収納していく。


実里を背負い地下を出る。

先行でアリスに偵察を頼むが上の実験エリアの

生存者は居ないらしい。


階段をあがり部屋に出るとそこは酷い有様だった。

培養槽は幾つも割れ聖騎士達が何人も倒れていた。

生存者を探したものの全員が事切れていた。


レイムールの培養槽も割れていたが

残念ながらこちらも息をしていなかった。

多分、攻撃か何かの余波で培養槽が割れた際の影響だろう

胴体に拳大の穴が空いていた。


いけ好かない奴だったが実験体にされての最後だ。

冥福を祈ってやろう。

俺は少しの間、両手を合わせて祈りをささげた。











回復ヒーリング


俺は使えるようになった回復魔法を実里に使う。

ほのかに体が光ると外見の細かい擦り傷等が消えていった。

コイツは便利だぜぇ。


もう一度、回復魔法を使うと。

実里がうっすらと目を開ける。


「ん・・・・・・」


まだ少し焦点が定まらないようだ。


「実里?大丈夫か?」


「お・・・・にい・・・ちゃん・・・?」


「あぁ、俺だ実留だ」


「お兄ちゃん・・・・本当に・・・・?」


「本当だ、実里を助けに来たぞ」


実里は弱々しい手で俺にしがみついて泣きだす。

俺はそれを優しく抱きしめ頭を撫でてやった。


実里が落ち着いて来たのを見計らい

果実ジュースを取り出し飲ませながら話を進める。


「本当にお兄ちゃんなんだね

 前は犬だったからビックリしたけど

 確かにお兄ちゃんと判るよ

 すっごい美形になったね」


「あぁ、ここまで色々とあってな

 沢山話したい事はあるけど

 まずは此処から脱出しようと思うんだが動けるか?」


「うん大丈夫だよ

 少し体に力は入りにくいけど何とかなると思う

 靴と服があれば欲しいな」


「ちょっと待ってろ」


アイテムボックスから幾つかの服と靴を取り出して

サイズが合いそうな物を選ぶ。


「さっきも思ったんだけどお兄ちゃんもそれ使えるんだね」


「アイテムボックスの事か?」


「そう呼んでるんだね

 私は無限収納鞄って呼んでるけど便利だよね

 幾らでも入るし持ち歩く必要もないし」


「へ?」



実里のアイテムボックスは最初から規制なしバージョンだったそうだ。

最初の俺が3個だったのはどういう事だ?!

しかも生まれてからずっと使っているが未だに余力を感じるらしい。


それって今の俺よりも上のモデルなんじゃないの?

ポイントまで使って拡張したのに・・・・。

俺のでもまだまだ余力あるから良いんだけどさ。

ちょっぴり悲しくなった。


ここで見つけた書類や本なんかを実里のに移しておく。

俺が持っていても仕方が無いしな。



服と靴を身に着けた所で今後の行動を相談する。


「表では魔族が戦っているから遭遇したくない

 裏からこっそり出て逃げようと思うんだけど良いか?」


「うん、堂々とそういう事を言うのは

 お兄ちゃんらしいね

 でも、それはちょっと難しいかも」


「実留さん、私も同意見です」


偵察に行っていたアリスが戻ってくると

実里と同じ意見を進言してきた。


「あら?そちらの妖精さんは?」


「私は実留さんのパートナーであるアリスです

 実里さんですね。よろしくお願いします」


「可愛い~、お兄ちゃんの世話をしてるんだね」


「はいっ!そうなんです

 実留さんはもう私が居ないと駄目で駄目で」


「そうなんだよねぇ

 お兄ちゃんはさ肝心な所で抜けちゃうというかさ」


「おいおい、今はガールズトークしてる場合じゃないだろ

 それにアリス・・・・いい加減にしろ・・・・抜くぞ」


アリスはその一言で理解したらしく

顔を青ざめ大人しくなる。


「実里、それで難しいとはどういう事だ?」


「う~ん、建物が何かの結界に覆われているんだよね

 何かに閉じ込められていると言うか」


「そうなんですよ

 何か薄い膜の様な瘴気のような物が覆ってるんです

 近寄っただけで体の維持に影響が出るレベルなので

 ちょっと突破は難しいと思います」


「それって表の魔族が張った感じ?」


「多分、そうじゃないかな

 凄く気持ちの悪い感じを受けるよ」


「突破は出来そうな感じか?」


「かなり高出力の聖属性で叩けば行けるとは思うよ

 私はそこまでは使えないんだけど」


「俺も今すぐには無理だな」


「どちらにせよ結界に接触したら

 相手にはバレると思うよ」


「ここから逃げるにしても

 魔族をどうにかしないといけないんだな

 状況が分らないと何とも言えないな」


実里には俺が使っていた隠蔽効果のある外套を渡す。

俺もそれよりは質が落ちるが同様の効果がある外套を羽織る。

何となくだが俺よりも実里を隠した方が良い気がする。

神代も特別扱いしてたしな。


1階部分は其処かしこで戦闘があったようで

至る所が壊れ聖騎士とマネキンが累々と横たわっていた。


そのまま進むのは諦め実験エリアから裏部屋に

戻り2階に上がる。

相変わらずベットは臭かった。


2階では崩れた場所から外壁を伝わり屋根の上に出て

姿勢を低くし下からは見えない位置に陣取る。


確かに周囲に半透明の黒い薄い膜の様な物が張っているのがわかる。

あれが結界なのかな?

聖属性に慣れてない俺でも流石に直視するとわかるな。

うん、俺じゃあれを突破するのは無理だ。


魔族をどうにかしないと逃げれない事が再認識できただけだ。





そしてその魔族は建物前の広場で聖騎士3名と戦っていた。


戦っていたのはクソ騎士B、C、Dだ。


他の聖騎士はどうなったんだ?







あいつらが倒してくれれば楽なんだけどなぁ。




実留君・・・・・まぁ、何も言うまい。

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