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キリが良い所で終わらしたら少し短くなってしまいました。

ごめんなさい。

妹の危機にちぇっぴりマジ切れした森山実留です。

だって妹が素っ裸で液体に漬けられていて

目の前で汚い男がゲヘゲヘしてるんですよ。

切れるのも当たり前じゃないですかっ!


まぁ確かに成長した体は・・・ゲフンゲフン。












「別世界?」


「あぁ、やっと喋ってくれたね

 こうやって人と話すのは久しぶりなんだよ

 会話ってのは良いね

 こう誰かと繋がってるって気がするよね」


「・・・・・よく喋るな」


「ごめんごめん

 本当に会話が久しぶりで僕は嬉しいんだよ」


ニチャニチャした笑顔を顔に張り付けているが

目が全然笑っていない。


「それで別世界とは?」


「そうだねそうだね

 その前に名前を教えてくれないかな?

 やっぱりさ人と話す時には相手の事を知ってないと

 いけないしね

 それに名前の交換はコミュニケーションの最初だと思うんだ」


「断る、お前に教える気はないし

 仲良くするつもりもない

 お前は敵だ」


「おいおい、怖いな

 そんな顔をしないでくれよ

 僕は君に危害を加えるつもりはないよ

 それ以前に僕は君に勝てる程強くないからね

 僕はね戦いはカラッキシなんだ

 もっぱらココ専門でね」


頭をトントンと叩きながら

ニヤニヤと笑う。


「何とでも呼べ」


「OKOK、そうだな~

 じゃぁ、君の事は・・・・ミノル君と呼ぼうかな」


「なっ?」


「あっはっはっは、良い顔するね

 驚いたかな?

 僕はね君とは敵になりたくないんだ

 同胞のよしみじゃないか


 だから僕の手の内を先に晒すよ

 それをね友好の証としてくれないかな」


「どうだかな

 本当の事を言うかどうかも怪しいもんだ」


「そこは信じて貰うしかないよね

 僕のねユニークスキルは≪分析≫と≪分解≫だよ

 それに加護を受けてる神は"厄神モズ"だね」




男の名前は神代妙錬かみしろ みょうれん

元々の世界では研究者をしていた。

専攻は生命について。

命と言うモノの解明を生甲斐としていたそうだ。

とある機関に所属し研究に没頭していたとの事。


ある時にトイレの個室に入った時に

床が無くなっていてそのまま落ちていった。

気が付いたらこちらの世界に来ていたようだ。


ここまで説明を聞いた上で信じる事にした。

何をかと言えばコイツが同じ世界から来たというのを。

それ以外の情報はどうでも良い。

いや、トイレの床が無くて落ちたと言うのは気になる所だが

今は気にしないでおこう。


大事なのは神代という人物が俺の前に居るって事だけだ。

生きたままこっちに来たからには転生とは違うのか?


そして淡々と説明していたが顔には

気持ちの悪い笑顔と何も映していないんじゃないかと

勘違いさせるような濁っている目。

社会で生きていく上で必要な何かを無くしたような目だ。


間違いなくマッドサイエンティストだ。

研究内容も非合法な物だったに違いないであろう。

この施設を見れば容易に想像できる。



出来れば関わり合いになりたくない。



更に説明はスキルについても行われた。

≪分析≫は対象物の事が分るが

情報というよりも構成物質等が分るという

どうも科学者向けのスキルらしい。

名前、スキル、加護なんかは分かるようだ。


≪分解≫は≪分析≫で判明した内容を

部品毎や素材毎に分離する事が出来る。


それだけ聞くと恐ろしい能力だが

スキル、意志の力、神の加護等でレジストされる事もあるので

全てに通じる訳ではないそうだ。


それと厄神と言うのには直接に会ったことは無く

こっちに来てから頭の中に声が響いただけだったそうだ。

その時の内容は教えてくれなかったが。


厄神自体は相当な高位神だという事だ。



相変わらず気持ちの悪い笑顔でネチャネチャとした話し方だが

敵対するつもりがないのは何となくわかった。

少なくとも今すぐにどうこうしようとする気はないようだ。


そして俺は興味のある事以外は

何も喋らないのにひたすら話し続けてくる。

情報収集には良いが目障りな事この上ない。



「それにしてもミノル君は凄いね

 外と中でそこまで噛み合っていないのは凄いよ」


「あ?何がだ?」


「ハハッ、なんだろうね

 他人の体に魂が入り込んだようなそんな感じがするんだ

 魂の情報量と体の許容量が合ってないね

 そう、魂の入れ物として肉体が作られてないと言えるね

 それが僕の分析の結果さ」


「俺の事はどうでも良いだろう」


「いやいや、実に興味深いよ

 その体も色々な種族の血を引き継いでいるだろ

 中でも淫魔の血が強いね

 それでも血の力を強く感じる事はないだろう?

 人を誘惑したり強烈な欲望に襲われたりは無いはずだ

 それは君の魂に情報がないから血が活性化してないと予測できる

 それでもある程度の影響が出てるはずだし

 恩恵も受けているはずだ


 それに神の加護もあるだろう

 どうも複数の力を感じるが・・・・・なんだろうね

 そうでもない力と異常に強い力を感じるね

 

 ・・・・良いねっ!実に良いねっ!


 こう、僕の手で色々とっ!色々と調べたいねっ!


 ・・・・ハっ!あぁ、ごめんごめん

 君に危害を加える気はないよ」


うん、そろそろコイツの相手をするのはやめよう。

勢いで流されているけどコイツは敵だ。




「この培養槽はなんだ?」



ザワリ。

俺の首筋に寒気が走る。


目の前には気持ちの悪い笑顔ではなく

悪魔のように歪んだ笑顔とは言えないような笑顔をしている顔があった。


この顔だ。


この顔がコイツの本性だ。



「ハハハッ!これが培養槽だとわかるのかい?

 良いねっ!実に良いねっ!

 これは、この実験はっ!

 僕の最高の実験さっ!」



口から唾を飛ばし顔を赤くしながら

身振り手振りを活用し説明してくるが

興奮と狂気に包まれた言葉の半分以上は理解できない。


「そう、神の加護だっ!

 上位種の気まぐれで施される大いなる力

 本来の個の力を大きく上昇させる力だ

 まだに神の力と言うに相応しい

 ではそれを命に還元した場合は神が作れるのかっ!

 そうそれこそが僕のっ!

 僕のぉぉぉぉぉっ!」


それでも理解出来たことは

加護持ちを実験体として何かを作り出しているという事だ。

熱く語っていたがろくでも無い物を作っているのは間違いない。

神を作るとか何とか言ってたけどな。


上にあった惨たらしい状況も

実験に使われた加護持ちの末路なんだろう。

酷い事をする。



突然の同胞との出会いでタイミングを失っていたが

そろそろコイツをお別れしたい。


永久に。


それでもまだ聞かなければいけない事がある。

身体能力を向上させながら問い掛ける。


「お前の目の前に培養槽は何の為にある?

 他とは違うのか?」


「あぁ、これはね僕らと同じ別世界からきた子だよ

 この子もね君と同じで異常なまでの力を感じるね

 他とは比べ物にならない位だ

 力が強すぎて僕が直々に調整してるんだよ」


心に黒い物が再び忍びよってくる。


「同じ世界から来たのなら俺と同じだろう?

 なぜその子は素体として使う?」


「はは、この子はね

 君ほど面白くないんだよ

 存在がね

 神の力が強いってだけの

 都合の良い実験材料だね

 この世界は弱肉強食だ

 弱い者は強い者の餌にしか存在価値は無いんだよ」


「そうか・・・」


湧き上がる黒い何かが

俺の思考を染めていく。


同じ世界から来た男。

だが敵だ。




俺は握りしめていた短槍を振りかぶる事も無く

ノーモーションで男に突き出した。



ギャイン。



またもや弾かれる。



「混ざり物の癖にこんな所まで入り込むとはな」



そこに居たのはマネキンではなく黒ずくめだった。

ヴァースが2人の間に居た。


何時の間に来たんだ?

聖騎士はどうした?


疑問は色々とあるがここを切り抜けないと不味い。

魔法具の隠蔽をやめ魔力を全開放する。



神代は本当に戦闘力がないんだろう。

戦闘に参加する意識がない。

それ以前に椅子から立ち上がるつもりすらないらしい。


ヴァースは神代を守る為に間から動かない。

それならやりようはある。

こいつにも思う所はあるからな。



「今迄の借りを返してもらおうか?」


「混ぜ物ごときが何を言っているがわからんが

 ここで死ぬのは貴様だがな」




魔力を練り上げジリジリと距離を測る。

ヴァースの武器は短剣のみ。

あと3歩でこちらの射程圏内だ。


武器を斜に構え足に力を溜める。

あと2歩。


≪軌道予測(簡易)≫を発動し

少しの動きも見逃さないようにする。


あと1歩だ。










「そこまでにして欲しいな」



椅子に座ったままの神代が感情の籠ってない声でそう呟く。




「全く、困ったもんだよ」




誰に言うでも無く発した言葉の直後に破砕音が部屋を満たした。





それは実里の培養槽が粉々に砕け散った音だった。




みっ、みのりーーーー!

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