2-28
蒸し暑い季節になってきましたね。
エアコンをオンしました。
料理人の森山実留です。
職業がいまだに1つしかGET出来ていません。
一応の予定では冒険者ギルドでクエストをこなしていけば
他の職業が手に入ると思ったのに・・・グヌヌ。
人生と言うのは思い通りに行かないものですね。
旅の大まかな行程としては
デンベルグ出発しリードリスの端を霞め
中程度規模の街道を進みパーセラム王国に入る。
ある程度は北上し首都方面に進みパーセラムの管理下に
入る手前で西方向に進路転換する。
パーセラムに入ると危険度が上がるので
その前に確認しとかないといけない事もあり
最初の目的地としてリードリスの端にある小さな町に向かった。
名前をバニスというらしい。
出発前にバニス周辺の討伐クエを幾つか受注した。
新しい仲間の様子を確認する事と路銀稼ぎを兼ねているので都合がいい。
冒険者ギルドはある程度の大きさの町なら支部があるので大丈夫だ。
冒険者カードがあれば受注クエとかも把握可能なので
何処の支部でも報告は可能。
但し、あまり遠い支部とかだと確認に時間が掛ったりするらしい。
以前はブタ子が台車を引いて進んでいたが
今回の旅は状況が不安定な為、諦めて貰った。
代わりに俺の収納鞄偽装のアイテムボックスに積荷は格納した。
幾つかのクエを解消していくうちに
ブタ子とエレアスさんの事がわかってきた。
まずブタ子は怪力だというのが再認識できた。
どれくらいか?と言うと
片手で俺の襟後ろを掴み持ち上げられる。
それでも余裕があるみたいだ。
多分、俺の全力強化と同等かそれ以上だ。
にも関わらず防御面は弱い。
物理防御も魔法防御も弱い。
力はあるので踏ん張る事は出来るのが救いだ。
防具は何故か露出が高めの革鎧しか身に着けてくれないので
ハイエルフの小盾と外套で防御を補助した。
盾は小手よりも多少大きい程度だが緊急時の防御用には有効だろう。
外套は戦闘用で貫通、斬撃にもある程度の防御力がある。
温度調整が付いていないが気にしないようだ。
外気温の変化には強いらしい。
武器はハイエルフのアイツの弓だ。
あの偉そうにしてた奴の。
名前しらねーけど。
命中率向上の付加があるシンプルな弓だ。
何故か疑問に思う程に弦が強い。
ブタ子であれば引けるので強さと相まって丁度いい。
矢筒も族長のに比べると質は高くないが矢切れが無い魔法具だ。
通常の矢に比べてはかなり品質は良いみたいだけどね。
ちなみに族長の弓と矢筒は投げ捨ててあるのをちゃんと拾ってある。
余程高度の魔法武具なのか誰も使う事が出来なかった。
もったいないので売らずにとっておく。
エレアスさんは・・・・・・何と言うか・・・・駄目だ。
嫌・・・駄目じゃないんだが・・・・・アレだ。
最初に言っておくがエアレスさんは強い。
今迄見てきた中でも群を抜いて強い。
魔法はあまり得意ではないようだが接近戦だけであれば
俺では勝てない。
キリルと俺で2対1でギリギリ良い勝負になる程度で
それでも分が悪い。
キリル、リース、俺でなんとか勝てる程度だ。
盾は装備しない完全に攻撃スタイルだが
強大な大剣を軽々と扱う上に機動性も非常に高い。
最初に戦闘スタイルを聞いてみたところ。
攻撃は最大の防御なりを信じている人で
己が躱す前に切れ
防御する前に切れ
がモットーらしい。
それに
躱されたら軌道毎切れ
防御されたら防御毎切れ
も合わせると完璧だそうな。
こう言い切った。
実戦闘で確認したら確かにそうだった。
何にせよ攻撃重視だ。
手数で押す、1発を重くする、隙を突く、フェイントを掛ける。
技術も凄いが全ては攻撃に繋げる為だ。
仲間との連携も上手いが熱くなると暴走の気があるのは気になる。
それにしたって尋常じゃない突破力と突撃力は高く評価できる。
冒険者ギルドでも単独でのBランクと聞いて納得できた。
この人でBランクって更に上はどんだけなんだよ。
ちなみにこの人の駄目な所は戦闘じゃない。
性格だ。
最初はおっとりとした少し砕けた感じの
大人しい話し方だったが
それは慣れてない人向けだった。
慣れてくると・・・・ボクっ子になる。
なんだよそれ?
そんな人なんて聞いた事ねーぞ。
そして戦闘時は・・・・・アレだ・・・・危ない感じだ。
血がたぎるようなイメージなんだろうか。
いや、良い人だよ。
常識もあるし頭の回転も速い。
戦闘力も高いし何より可愛い上にデカい!
でもちょっと引いちゃう。
何だかんだと言いながら
キリルが抑え、エレアスさんが突撃する。
俺が遊撃に動き、ブタ子が隙間を埋めていく。
リースか高火力で狙い撃つ。
歯車がかみ合うとかなりの殲滅力となる。
バニスまでは順調に到着した。
クエストの報告や装備の整備等を行い
野営時に有った方が良いものを追加購入等の準備で
3日間程滞在しパーセラムに北上を開始した。
リードリスとパーセラムの国境付近には特段何もない。
街道沿いであれば砦なり検問所みたいなのがあるのが普通だが
パーセラム側は出入り自由で好きにしろというスタンスなので何もない。
開拓地が減ったり自然が多くなってくる事により
国境なんだと判断出来るぐらいだ。
危険度が高いとは言っても街道沿いであれば
そう頻繁に何かがある訳でもない。
リードリスは側も国境周辺の未開エリアから
魔物等が出てくる事もあるので警戒しているからだ。
但し、未開エリアに入ってしまえば違う。
魔物や獣、又は好戦的な亜人種族も居るし
逃げてきた犯罪者や盗賊等の温床でもある。
リードリスの監視も無ければパーセラムの管理も無い。
力が正義の無法地帯となる。
その為、そこには独自のルールがある。
絶対的な弱肉強食。
そして未開エリアの開発をしない。
この2点を受け入れれば誰も拒む事はない。
まぁそんな所に入る手前で野営準備だ。
明日の朝から未開エリアに入り
当分の間は厳しい旅になるので
寛げるわけでわないが
せめて料理だけはって事で気合を入れて作る。
そうは言っても簡単な物しか作れないけどな。
黒鍋に水を入れ出汁を取る。
店で買っておいた鰹節のような物があったのでそれを使う。
独特の匂いがあるので酒を少し入れる事で調整する。
お酒は果実を使った地酒だがほんのりと甘みがありスッキリとした味だ。
ベースが出来た所で根菜と肉を入れて煮込み。
最後に葉野菜を沢山いれてしんなりさせる。
塩と魚油で整えて完成だ。
まぁ普通の汁物だけどね。
それ以外としては同時並行で
香草を詰め込んだ鳥を大きな葉に包んで蒸し焼きを作った。
パンも大量に取り出し軽く炙ってから
ハム、チーズ、バターで簡単なサンドイッチにした。
しまった、シチュー何かにするべきだった・・・・。
汁物と味が合わないが気にしないでおこう。
「「「いただきまーす」」」
始まった食事はいつもと変わらず争奪戦だ。
かなりの量を用意しているのにも関わらず
皆が自分の分の確保に余念がない。
野営中という事もあるので
食事だけではなく周囲にも意識を向けながらだ。
皆、器用な真似をするね。
リースは相変わらず口いっぱいに詰め込み
一生懸命食べ汁で流し込むような感じだ。
落ち着いたら綺麗な食べ方を教えてあげないとな。
キリルはリースよりはマシな食べ方だがだが
それでもガツガツと食べる。
鳥の足に豪快に齧り付いているのは気持ちがいいけどな。
アリスは・・・・・鳥の胴体に顔突っ込んでる?!
何してんのコイツ?
・・・・・・よし、放っておこう。
ブタ子はエレアスさんと残り1本の足を取り合いしてる。
「エレアスさん、これは私が先に取ったんですよ」
「ブタ子ちゃんが取分けてくれたのはありがたいけど
優先的に自分に持ってくるのはどうなのかな?
僕はねそれが食べたいんだよ」
「エレアスさんは胸肉を確保しているじゃないですか
ですからこれは私のです」
「いやいや、これは僕のなんだけどね
足も食べたいんだよ」
笑顔でパンをモリモリと食べながら冷戦を繰り広げる2人。
いや、半分づつ別けあえば良いだけじゃねーか。
ガツガツと食べるのを眺めながら
俺の分は最初の1杯だけで
もう回って来ないんだろうなと感じ他の物を用意する。
久々にローストオーク肉を取り出し軽く温める程度に
炙りながら塩を振り食べる。
もちろんこれも強奪される事は間違いないので
量は用意するのも怠らない。
俺も慣れたもんだ。
食後のお茶を飲む頃になり
ようやく落ち着いた空気になった。
いや、君たち必死過ぎるだろ。
「エレアスさんも良く食べるねぇ」
「僕みたいな冒険者は食べれる時に
食べないといけないからさ」
う~ん、僕っ子か・・・・う~ん。
「エレアスさんはどっちが素なんです?
最初は丁寧に話し方で
今は結構砕けてますけど」
「エレアスで良いよ
なんかさ冒険者もBランクになると色々とあってさ~」
エレアスさんの話を聞くと成程と頷ける点はいくつかあった。
元々は人懐っこくて明るい人で今が素なんだそうだ。
それが冒険者でBランク、しかも単独での実績となると
良い寄ってくる奴が多かったらしい。
しかも女性で外見も良いとなると尚更だ。
確かにBランクはCに比べて報酬がグッと良くなる。
それでも単独でクリア出来るエレアスさんは良い的だったらしい。
何せ単独でクリア可能で付いていくだけで報酬が確約されるようなもんだしな。
他にも単独でクリア不可能なクエストの場合に
臨時で組んだ相手に絡まれたり裏切られたりする事
なんかもあった。
それらに嫌気がさして新緑の稲穂亭で愚痴ってたところ
リムちゃんとダリアさんに口調を改めた方が良いと指摘されたそうだ。
外見と口調が相まって軽く見られていると感じたらしい。
それからあまり親しくない人には微妙な口調になり
認められると僕調に戻るってな具合になったんだとか。
「へぇ、ランクが上がるのも大変なんだなぁ
となると俺はエレアスさんに認められたって事でいいの?」
「だからエレアスで良いって!
ミノルちゃんはリムちゃんも信用出来るって言ってたし
今まで見てきた感じでは大丈夫かな
それに料理が美味しいしね」
「結局は食い物かよっ!」
「胃袋を掴むってのは大事な事だよ」
「ここから先ってのはどんな所なんですか?」
「そうだね~、未開エリアと言っても
国として管理されてないってだけで
誰も住んでないわけじゃないし
開発されてない訳でもないんだ」
「大半が森林なんですか?」
「そうだね森林が多いけど山もあれば谷もあるし
野原もあるし農業地域もあるよ」
「注意する点は?」
「そうだね~、魔物や盗賊の襲撃は絶えず警戒した方がいいね
そして各集落にはそれぞれのルールがあるから従った方が問題は起きにくいね」
「ルールは絶対じゃないの?」
「亜人のルールなんて人族の常識とはかけ離れているのもあるし
そこは一応は守ってはみようかなって位で考えておけばいいよ」
「出てくる魔物は強いの?」
「多分だけど変なルートさえ通らなければ
Cランク程度までで考えておけば良いよ
流石にそれ以上は滅多に出て来ないとは思うけど・・・
臨機応変で対応していくしかないかな」
幸先が不安になる情報ばかり。
エレアスさんは通った事があるらしいのが安心材料かな。
明日の朝にはパーセラムに入国だ。
入国って言っても何がある訳じゃやないけどね。
エレアスさんは一種の脳筋ですね。
邪魔なら切れば良いじゃんっ!
そんな事を言いそうです。




