2-23
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15万PVも達成できありがとうございます。
皆さんの心のアイドル、アリスです。
最近はあまり出番がありません。
落ち目なのでしょうか。
アイドルには旬があると言いますが。
私の旬は過ぎたのでしょうか。
歌って踊れるナビゲーション妖精の需要はないのでしょうか?
え?元々ナビゲートしてないって?
私の行動自体がナビゲートなんです。
アイドルは背中で語る物ですよっ!
「俺に客だぁ?」
酒と唐揚げで強制起床させられた
ダンザムはのそのそと起き上がり
同じテーブルに着く。
そこに置いてある酒を勝手に注ぎ飲みだす。
因みに酒というのは麦酒だ。
ほんのり甘みもありアルコール度数も高くはない。
常温ではないもののそこまで冷えているわけではないので
現代日本のラガービールに慣れた俺にはちと物足りない。
これでもう少し冷えていてくれたらなと思う。
唐揚げを摘まみながらエールをガブガブ飲みだす。
先程まで潰れていたのに大丈夫なんだろうか?
まぁドワーフなんて酒飲みだって言うしな。
平気なんだろうなきっと。
「あぁ、こっちに居るミノル君と言うんだが
ハーフエルフの子でな
装備品を改めたいそうなんだ」
「ハーフエルフだぁ・・・・・・・ハーフねぇ
まぁどうでもいいがな」
・・・・これ俺がミックスって気付いてね?
「それに装備品ねぇ
そんなに大層な物を持ってるとはおもえねーけどなぁ
それこそでっけぇ商店にでも行けば良いの買えるだろ」
今の俺達は荷物を置いて普段着なんだ。
ラバリオ製の服も今は脱いで安い奴を着ている。
料理で油が飛ぶのは嫌だしな。
いくら汚れないと言っても気分の問題はあるよね。
「いえ、今の装備品を見てもらったのですが
通常品では見劣りしてしまい
魔法武具だと費用対効果が低いという事になりまして・・・」
「はっ、生意気言うじゃねーか
そこまで言うなら装備品を全部もってきやがれっ!」
豪快に言い切るとエールと唐揚げをモリモリと消費しだす。
同じように唐揚げをモリモリ食べるアリスを置いて
俺とキリルとリースはフル装備に換装すべく部屋に戻る。
食堂に戻ると何故かアリスとダンザムさんが意気投合し盛り上がっていた。
「いやぁ、アリス!お前はわかってるな!」
「もちろんですよダンザムさん」
「そもそも酒とはな命の源!
生きる為の活力なんだよ!」
「そうですそうです!
食べる事はすなわち生きるという事!
質よく生きていく為には食は大事なんです!」
「「はっはっはっはっ」」
うん、盛り上がってるのは良いんだが
微妙に会話が噛み合ってないからね。
その後はエールを飲みながらジックリと装備品を見られる。
「ふ~ん、確かに良い装備してやがるな
特にミノルと言ったか?
お前の装備は質が違うな
特に服・・・・だな
どこで手に入れやがった?」
「え~と、迷宮で会った神さまに作って貰いました」
「「「・・・・・・はっ?」」」
アリスを除く全員があきれ顔でこちらを見ていた。
もちろんアリスはこちらに興味がなく唐揚げを食べ続けている。
「いや、あまり詳細には言えないんだけど
迷宮の奥でさ迷宮神とかいう神に会ってさ
仲良くなったら作ってくれたんだ」
詳細な説明は避けて
「流石はミノル様です!」
「お姉ちゃん凄い!」
キラキラとした目で見てくる俺の料理信者はおいておいて
宿屋の方々とダンザムさんは微妙な目だ。
「まぁ、その話が嘘か本当かはわからないが
服がかなりのモンだってのは分る
そいつは俺の手には負えんな
だがその他は何とかは出来るかもしれん・・・が
お前は何を俺に出す
俺は金じゃ動かんぞ
金ならいくらでもあるからな」
金以外・・・・・となると何だ。
切り札はあるがあまり出したいカードじゃない。
その他だとすると・・・・。
「魔物材料でしょうか・・・・
迷宮のボス素材なら種類は多くないですが
量はあります」
「迷宮ボスの素材ね・・・・確かに魅力的ではあるがな
それだけじゃちと足りんな」
「他・・・・となると・・・・・」
むぅ・・・やはりカードを切るしかないのか!
出来ればこれを出したくはないのだが・・・。
「何を悩んでるんですか!実留さん!
実留さんと言えば切り札を出さなくてどうするんですか!」
なに?まさかアリス!俺を裏切るのか!
「ま・・・まてっアリス!」
「良いですか!ダンザムさん!
実留さんを甘く見てもらっては困ります!
良く聞いてくださいね
実留さんが出せる最大のカードはっ!」
「待て!アリス!待つんだーー!」
「それは!
料理ですっ!」
ババーンと自信満々に言い切るアリスに
思わず拍子抜けし間抜けな声が出る。
「へっ?」
「良いですかダンザムさん
そもそも今、エールと共にモリモリ食べている
料理は唐揚げと言って実留さんが作った物ですよ」
「なんだと?!
シャイが作ったんじゃねーのか?
そりゃ確かにいつにも増して妙に美味いと思ってたが・・・」
「そうでしょうそうでしょう
一度でも実留さんの料理を食べたら理解するのです
それが途方もなく価値があるという事にっ!
おや?実留さんどうしました?
顔が固まってますよ」
「いや・・・・俺はてっきり・・・」
「てっきり?」
「はは、ミノル君
本当の切り札があったんだろ?」
「はい・・・・・グスン」
アリスとの謎の掛け合いで自爆した俺は
切り札を鞄からそっと取り出す。
それは瓶に入った琥珀色の液体だ。
蓋を開けてグラスに注ぎダンザムさんの前に置く。
「なんだこりゃ・・・酒か?
妙に良い香りがしやがるが・・・・」
「お試しになってください」
ダンザムさんが緊張しながら少しづつ口に含む・・・・わけもなく
ガバっと一口で呷る。
「ンンンッッッッッ!!
ブッハァァァァ」
顔を真っ赤にし堪え切れないとばかりに息を吐く。
「なななななななんだこりゃぁ!」
「お気に召して頂けましたか?」
「気に入ったなんてもんじゃねぇ!
なんだこいつは!
味が濃くて深いのに甘さはほのかにするぐらいだ
それに香りが複雑で色々と感じられる
なんと言っても喉と胃にガツンと来る強さ!
こいつは・・・こいつは・・すげぇな」
余程気に入ったのか手酌で注いでガンガン飲みだす。
シャイさんとダリアさんも少しづつ舐めて味を確かめる。
「いや、こいつは何と言うか凄い酒だな
芳醇な癖にしつこさが無い」
「確かに凄い香りがするね
でもあたしには少し強すぎるね」
「水で薄めても飲みやすいですよ」
水差しを持ってきて水を足してあげる。
シャイさんには1:1で割ったトゥワイスアップを。
ダリアさんには1:3位で割って水割りを作った。
水割りにはリースに氷を作って貰って入れた。
ついでにダンザムさんには氷をいれてロックにした。
「おぁ、香りが華やかになったね
味も角が取れてまろやかになったよ」
「美味しい!これなら私でも飲めるわ
甘みを強く感じるのは気のせいかしら?」
「そのままでガーっと楽しむのも良いが
氷でチビチビと飲むのも美味いな
で?コイツはなんだ?」
この酒は俺が魔法の練習を兼ねて
自作した物だ。
エールを蒸留したものを黒鍋に入れて一晩寝かしたものとなる。
そう作り方は大雑把で正確ではないがウイスキーだ。
小瓶1本分で約200ml程度しか作れてないからな。
それにしても本来であれば樽で熟成させるところを
黒鍋に入れたら琥珀色になるとはどんな鍋なんだよ。
俺もそんなに飲んだ事があるわけじゃないが
生前に飲んだどんなウイスキーよりも美味い気がする。
「ウイスキーと言ってエールを蒸留したものです
魔法で無理矢理作ったのでその瓶1本しかないですが・・・・」
「蒸留ってのは何だ?」
「一度、温度を上げて沸騰させ水蒸気にし
それを集めて冷して液体に戻す事です
そうする事により不純物の除去と度数を高める事が出来ます」
「・・・・そうか・・・・ふむ
そうだな、お前コイツを大量に作れるか?」
「どうでしょうか
設備があれば可能だとは思いますが」
「よし、ミノル
お前はが俺に差し出すのは素材、酒、料理、そして
こいつの作り方でどうだ?」
「なら、うちも一口乗らせてもらおうかな
施設を作るのに必要な材料の一部負担と宿泊費の免除でどうだい?
後は・・・そうだな・・・場所の提供も出来る
そのかわりウイスキーを宿で取り扱わせてもらえないかな?」
「おぉ、そいつは良いな
俺も飲めるし宿も名物になる
腕にかけて良い装備を作ってやるぞ
どうする?」
「わかりました、基本的な事しかわかりませんが
それで良ければお伝えします」
そうやって何時の間にか蒸留所作りが決まった。
俺はダンザムさんに料理とウイスキー(魔法生成)を作成し
蒸留器の作成を行う。
キリルは材料と金稼ぎの為に冒険者ギルドから
討伐依頼をメインに受けてこなす。
メインはリースとアリスの三人組で行うが
時には他チームと共同したりする。
リースはメインは狩りと採掘だが
蒸留器作成時に魔法を使いたい時はヘルプしてもらう。
アリスは監視レーダー役とリースのお供で一緒に行動してもらった。
俺の日々のスケジュールを詳細にするとこうなる。
早朝に起床し宿屋で厨房を借りて朝食とお弁当を作る。
俺、アリス、キリル、リース、シャイさん、ダリルさん
リムちゃん、ダンザムさんの8人分だ。
その後、皆と別れて工房に行き
ダンザムさんを起して朝食をとらせる。
ダンザムさんは無類の酒好きだが仕事中は飲まないのが
ポリシーだそうだ。
ダンザムさんと武器防具をあーじゃないこうじゃないと
話しつつ蒸留器の作成を行う。
最初は実験的な小さいモデルを作って蒸留していく事にし
過熱、冷却、気密保持なんかを魔法で代替えしていたのを
少しづつパーツを作って置き換えていく。
蒸留器はシンプルなのが良いと思い単式蒸留器にした。
そして夕方近くになれば宿屋に帰り食いしん坊達とダンザムさんの分の
料理を作りつつ宿の手伝いをする。
俺が料理を作ると客が増えるのは嬉しいのだが
非常に忙しくなるのが辛いところだ。
宿的には売り上げが伸びるから嬉しいみたいだけど。
実験的に作ったウイスキーは
一晩寝かせてから夜に出している。
蒸留器も形になってきたので作成できる量も増えてきた。
宿で一般客に出せるようになるのはもう少しだ。
仲の良い常連客には試飲で感想を聞いてみる事もあるが
概ね好評だ。
作業開始から2週間が経った。
ピローン
> スキル≪中級魔法(火)≫を手に入れました。
> スキル≪中級魔法(土)≫を手に入れました。
> スキル≪酒作成≫を手に入れました。
> 称号≪魅惑の料理人≫を手に入れました。
> 職業≪料理人≫を手に入れました。
これで魔法に関してはかなり出来る事が広がった。
鉱石や鉄の加工なんかも出来るようになったし火力も上がった。
あとは熟練すれば細かい細工も出来るようになるだろう。
≪酒作成≫は酒を造る時に補正が入る。
称号は・・・・・まぁ今更だな。
初めて手に入れた職業がコレかよ・・・・。
そりゃそうなんだろうけど冒険者には関係ないよね。
なんだかちょっと悲しい。
手に職が出来たと思えば今後の旅も楽になるかな。
街中で屋台とかやれば良さそうだよな。
黒鍋と材料があれば水も火も魔法で出来るしな。
うんうん、そう思う事にしよう。
さらに1ヶ月が経った。
蒸留器もそこそこの大きさのが2機作られた。
蒸留所はシャイさんが所有していたものの
栄えてもいなく畑にもならない街外れに持て余していた
土地があったので有効活用した。
問題があったのは熟成に関してだ
本来であれば樽詰めし少なくとも数年間の熟成期間が必要だ
黒鍋を使えば一晩で熟成可能だが
これは譲るわけにはいかない。
そこで考え付いたのがソレラシステムだ。
黒鍋で熟成させたウイスキーを
ある程度の量を仕込んでおきこれをAとする。
新しく蒸留した物をBとしAを半分混ぜる。
AB混合が出来たがこれは既に半分が熟成されている事となる。
混合を熟成させて出荷する際に減った分を更に補てんする。
こうする事によって品質の一定化と早期熟成が可能となった。
そしていつまでも黒鍋熟成させた分は引き継がれる事にもなる。
何故か黒鍋で熟成させた物を混ぜると熟成が早くなり味も良くなる。
そういった点からもソレラシステムは都合が良かったと言えよう。
中身を満たした樽は地下に掘られた貯蔵所に保管される。
貯蔵所は空調管理され湿度と温度を一定に保つようにしている。
そして各所に配置された魔石によって魔力濃度を濃くした。
魔力に関しては黒鍋の影響かもしれないが
濃度が高い方が味も良くなり熟成が早くなる事がわかったからだ。
もっと鍋を作って貰うんだったな。
宿では少量限定だが提供できる事になった。
常連さん以外にも好評だ。
熟成が進めば提供も出来る量が増えるし
値段も落ち着いてくるハズだ。
小瓶での販売も視野にいれてるみたいでしね。
安定供給が出来れば樽を変えてみるなり
熟成期間を延ばしてみたり
原料を変えてみたりすると良いんじゃないかとアドバイスをしておいた。
蒸留所作りも大方終えて運営も軌道に乗りだした。
キリルも冒険者ギルドでランクが上がりDになった。
魔物素材や鉱石の類、更には金も結構稼いだようだ。
リースやアリスもEランクになった。
俺だけFだぜ・・・・・かなちい。
その日の夜も営業時間終了後に
ダンザムさんを含めて遅めの食事をしていた。
出来たばかりのウイスキーを飲みながら
料理をつまみつつダンザムさんと話す。
「くぅ~、黒鍋熟成も格別に美味いが
出来立ても若々しくて良いな」
「そのうち熟成が進めば味も変化すると思います
10年後、20年後には違った味わいになりますよ」
「そいつは楽しみだな
毎年、酒の成長を楽しめるなんざドワーフ冥利に尽きるぜ」
シャイさんとダンザムさんは蒸留所の共同経営者となった。
ダンザムさんが製造と蒸留所管理。
シャイさんが販売と貯蔵管理。
適材適所だね。
一応、俺も共同経営として名を連ねているが
実際には何もしないけどね。
「そうだな、ミノル君には感謝してる
ウイスキーはこの宿のそしてこの街の名物になってくれるさ」
改めて乾杯をする。
最近ではウイスキー目当てに来る客もいるぐらいだからな。
そしてダンザムさんからついにある報告が届く。
「おう、お前達の装備品が何とか完成したぞ
後は微調整だけだから明日にでも来い」
そうついに装備品が出来たんだ。
明日は皆で工房にお邪魔する事にする。
って2ヶ月も掛かったんかいぃぃぃぃ!
もっとこうファンタジー的に1週間とかじゃないの?!
実留君、ガチ酒作りです。




