2-22
明日は更新できそうもありません。
冒険者の森山実留です。
駆出し冒険者と言えば薬草を採ったりゴブリンを死闘を繰り広げたりですよね。
または街に何故か居る王族と関わりを持ってみたり。
夢は広がる冒険者ワールド。
まぁ王都や首都でも無い都市に王族なんで居ませんけどね。
居たら居たで間違いなく罠か陰謀ですよね
冒険者ギルドの後に向かったのは
この街で一番の品数を誇るウェルザ商店だ。
武器防具はもちろんの事、魔道具なんかも取り扱っている。
通常レベルの品であればここで揃わないものは無いと噂される位だ。
大通りに面した店はかなり大きい。
店内も広々とした作りで綺麗な作りだ。
展示されている商品も種類と値段に分かれていて見やすい。
おっ、魔法武器のコーナーなんかもあるのかよ。
剣がずらーと並んでいるのとかを見ると
興奮するよな!
俺だけ?
キリルは防具を。
リースは杖を。
アリスは魔道具を。
俺は手当たり次第に。
少しの間、各種装備品を堪能していた。
ある程度満足した所でカウンターにいる
店長らしきオッサンを捕まえる。
「すみませーん、装備品を更新したいんで
見積お願いしたいんですが」
「あいよ~、いらっしゃい
君の装備品でいいのかな?」
「いや、うちら3人のでお願いします」
「ふ~む何だか3人共、バラバラな装備だねぇ。
ちょいと時間掛りそうだから中で見させてもらえるかな
おーい、カウンター変わってくれ」
「はーい」
「じゃぁ、中にどうぞ」
受付を若い子に変わってもらい
自己紹介をしながら店長が中に案内してくれる。
名前をラルベと言うらしい。
「要望としては装備品の一新という事でいいのかな?」
「そうですね
とりあえず見積だけですけど」
「見積だけでも大歓迎さ」
気さくな店長は机に並べられた装備品を1人分づつ確認していく。
3人分を見終わるのに10分位かかった。
「う~ん・・・・・・・・これは何と言うか・・・・
正直言うとですね
うちの店では無理です」
「え?」
「申し訳ありませんが
当店には今の装備以上に高ランクな装備品は取扱いがありません」
「なっ、なんだってー」
「いや、あるにはあるんですが
予算も跳ね上がりますし
出す値段に見合う程の性能向上があるかどうかは・・・」
店長が言うにはうちらの装備品は
かなり高ランクとの事。
一般流通品ではそれ以上の物は難しい。
あ、≪レッドカウアーマー改≫よりは良いものは
あると提案されていたがキリルは顔を真っ赤にして拒否していた。
ちなみに今の装備品は迷宮ドロップ品に
ハイエルフから入手した装備品を組み合わせて使っている。
鑑定結果と効果から薄々感じてはいたけどね。
俺の服なんて神が作った物だしね。
「後はもう職人の一品物で作成してもらうしかないか
各商店が持っている品を探すしかないですね」
「誰か紹介してもらえないですか?」
「そうですね~、職人だと街で一番の腕と言えば
ダンザムって言う爺さんが居たんですが
気難しい上に酒に溺れて客が居なくなっちまって
店を畳んじまったんだよなぁ」
「それは残念だ・・・・」
武器防具は買わなかったものの
幾つかの魔道具や消耗品や日用品を購入しラルベの店を後にする。
手持ちの品を手放すときは是非うちにと言っていた。
まぁ良くしてくれたし考えておこう。
帰り道に教えてもらったダンザムさんの店に行ってみるも
誰も居なかった。
むぅ、装備の更新は無理か・・・・。
どうしても欲しい分けじゃないが
この先にどうなるかわからないから
少しでも良いものを用意したかった。
それには理由がある。
ローレゼリアからフィラルドまでは3ヶ国が間にあるのだが
ローレゼリアの隣国がリードリス、そしてオックローン、最後がシューリズとなっている。
どうもこの三国がそれぞれキナ臭い噂が聞こえてきているからだ。
以前からリードリスとシューリズは
双方共に海に面していないので海資源と流通の面で
オックローンの領土を欲しがっているという事情がある。
それでも各国は大きな争いもなかった。
しかし最近ではリードリスが冒険者の囲い込みと
ローレゼリアからの武具の輸入が増えてきている事から
戦争を考えているのでは?との見方が強まっている。
シューリズにも同様の動きが見られるらしい。
近年は各地での魔物被害も増えてきており
少しづつだが物騒になってきているのだ。
個人で旅をする分には直接戦地に行かない限りは
あまり影響はないが注意するに越したことはない。
それにもし戦争でも始まれば通行制限が入ったりした場合
未開の地を通る事になりかねないので
フィラルドまでの道のりは厳しくなるだろう。
そんな理由もあり出来れば装備品の質をあげておきたかった。
宿への帰り道にも色々な店があったので
覗きながら帰る事にする。
製造業が盛んなだけあり武器防具以外にも
服やアクセサリーなんかも多数の店があった。
今度、リースに可愛い服でも買ってあげよう。
宿に帰えると夕食時には少し早いが
なかなかの賑わっている。
それでも半分位は席が空いているので
今のうちにご飯を食べることにした。
「ただいま~」
「お帰りなさ~い」
宿の娘でもあり看板娘でもあるリムちゃんが出迎えてくれる。
旦那さんの名前はシャイさん、女将さんの名前はダリアさんだ。
「うちらもご飯食べちゃいたいんですが良いですか?」
「は~い、ちょっと待ってね」
パタパタと厨房に入って行く。
中ではシャイさんが食事を作っているので会釈しておく。
「えっとね~、お母さんが用事で出かけちゃってて
仕込みが終わりきってないから
帰ってくるまで手伝ってくれれば大丈夫だって
もちろん食事はサービスするってよ」
「そっか~、うんいいよ
じゃぁ、キリル荷物を部屋に置いてきてくれ
リースとアリスは隅の机にでも座ってて」
「じゃぁ、リースちゃんとアリスちゃんには
飲み物サービスしちゃうから机に座っててね」
そういって各自の行動が決まり
俺は厨房に入った。
「おう!こっちに料理の追加だ!」
「こっちにも追加頼む!」
「さっき頼んだ料理はまだか~」
なんだこれは・・・・・?!
今、宿の食堂エリアは酷い事になっている。
明らかにキャパシティを超える人数が押し寄せ
皆が競い合うように料理を食べ酒を煽っている。
「こいつはうめぇな!酒との相性がバッチリだ!」
そう豪快に笑いながら口いっぱいに頬張りながら
酒をゴキュゴキュと飲み欲して満足そうにしてる冒険者風の奴もいれば
「ふむふむ、これは・・・ほうほう・・なるほどなるほど」
そんな独り言を言いながら料理を細かく刻みながら
ずっと食べ続けてる学者っぽい見た目の奴なんかもいる。
机が足りなくなってきたのか
床に直接座ってる集団もいれば
何処からか持ってきた机と椅子で
オープンテラスのような感じで入口付近に座席を作ってるのもいる。
ダリアさんも戻ってきたが
厨房に入る余裕なんてなくリムちゃんと対応に追われている。
俺とシャイさんはひたすら料理を作り続けている。
途中からは全てお任せにしてもらっていて
要望も聞かずに手元にある食材で作れる物を出しているのに
誰からも文句も言われない。
大丈夫なのか・・・・・。
嵐のような数時間が過ぎて宿の食材が底をついた時に
営業を終了する事になった。
皆、渋々と帰って行った。
ここの客は普段からあんなに飲み食いするのだろうか・・・・恐ろしい。
食堂に残っているのは飲んだくれて潰れ
てる人が端に一人居るだけだ。
そして結局、俺は何も食べていない。
もちろん食いしん坊共はちゃっかり食べていたけどな。
「いや~、ミノル君助かったよ」
「ほんとにね~、私が帰ってきたら凄い事になっててビックリしちゃったわよ」
「皆、ミノルさんの料理が気に入ったんだね~」
「そうなんですかね?
作るのは好きなんで構いませんが
凄い量を作った気がしますよ」
「そうだなぁ、食材が殆どなくなっちまったからな
明日の朝の分は・・・・・どうすっかな」
「自分の手持ち材料を譲りましょうか?」
「おお、それは助かるよ」
今日の帰り道に収納鞄風の物を手に入れており
そこから出すような感じでアイテムボックスから各種食材を取り出す。
シャイさんが明日の仕込みをして
ダリアさんとリムちゃんが片づけをしている間に
4人分の食事を作る。
もちろん食べてない俺と宿関係の分だ。
・・・・・3人が恨めしそうに見ているので
その分も追加した。
黒鍋を使い鶏肉をスジ切りし調味料、香草、酒を混ぜたものに混ぜ込む。
その間に卵と小麦粉を用意して順次まぶしていく。
下ごしらえが終われば黒鍋に油をはりジックリと揚げていく。
そう唐揚げだ。
仕込み時間も揚げ時間も短いのに
黒鍋を使うとしっかりと味が付きカラっと揚るのは謎だ。
便利なんで文句を言うどころか感謝したい位だ。
明日でも食べれるので残っても良いやと思い
かなりの量を作った。
大皿には唐揚げの山が出来た。
うん、良い眺めだ。
男の子には宝の山だね。
「「「それじゃぁ、お疲れ様でした~」」」
グラスに酒を注いで乾杯する。
食いしん坊共はジュースだ。
シャイさん、ダリアさん、リムちゃんが
唐揚げを口に放り込む。
「「「?!」」」
3人の顔が一瞬止まる。
次の瞬間。
一心不乱にガツガツと食べだした。
「ハフハフッ
ミノルさん
ハフハフッ
これ何ですか!何なんですか!」
「ハフハフッ
ミノル君、これは何と言う
ハフハフッ
食べ物なんだい」
「ハフハフッ
あらやだ
ハフハフッ
ああやだ」
うんうん、気に入って貰えたようで良かった良かった。
山のような唐揚げに挑んでいるシャイさんに聞いてみる。
「ダンザムさんという職人を知りませんか?
この街一番の方だと聞いたのですが」
「ダンザム?
あのドワーフのか?」
「いや、ちょっと種族までは分りませんが・・・・」
「職人でダンザムって言ったらまぁ1人しか居ないな」
口に唐揚げを頬張りながら
右手に酒の入ったジョッキを左手に唐揚げを持ちながら
おもむろにシャイさんは立ち上がる。
そして食堂の隅に歩いて行き床に寝っころがって潰れている人物に近づく。
鼻先にジョッキを近づけるとパチッと目をさまし
ジョッキを奪うようにとり半分位を一気に飲み干す。
シャイさんは突き出すように唐揚げを出す。
パクッと食いつき食べだし残り半分を飲みきった。
「ブハァ、こりゃうめぇな」
シャイさんが苦笑しつつ手を差しのべて起してあげた。
「おい、ダンザム客だぞ」
「あ?俺に客だぁ」
なっ・・・・・・なんだってーー!
街一番の職人は直ぐ近くに居た。
迷宮ボスとハイエルフの装備品はかなりな高品質です。
全て売却すれば一財産になります。




