2-19
更新が遅くなりました。
申し訳ない。
傲慢なハイエルフが許せなくなった森山実留です。
何をした所で奴らの俺に対する評価は変わらないと思います。
なんせ下賎ですからね・・・・グヘヘ。
知ってます?ハイエルフって結構良い装備してるんですよ・・・グヘヘ。
神殿の前の少し開けた場所に族長は立っている。
どう贔屓目に見ても完全装備だと思われる。
頭には額から頭頂部そして後頭部までを覆う
戦闘用のヘッドギアのような物を被っている。
耳も露出していない事を考えると音量への対策はしていそうだ。
体も全身タイツの様な物を着ている。
各所にプロテクターが付けられ動きやすさと防御力を両立させているのだろう。
ブーツはシンプルな作りだが足首の動きを
阻害しないような凝った作りになっている。
もちろん手にはグローブだ。
全体的にモスグリーンで統一されており
非常に洗練された感じを受ける。
妙に現代風と言うか機能性重視の見た目なのは
疑問に思う所だが。
全身上から下まで半端ない魔力を感じるので
何かしらの効果が付加されていると思って良いだろう。
能力向上の定番であるアクセサリー何かが
外から見ても一つも見当たらないのが
現在の装備品の良さを裏付けしているんだと思う。
そんなもの必要ないレベルって意味なのかね。
腰にはショートソードを差し
手には弓を背中には矢筒を背負っている。
それらからも力を感じる。
装備品パクれねーかな。
なんかコイツ好きになれそうもないし・・・・。
「どうした?
出てこないのか?」
明らかに補足されてるよな。
諦めて出て行く。
「どもども、呼ばれましたかね
族長さん」
「ミックス如きが良くも我らが村に
毒なんぞをまき散らしてくれたものだ」
「あれ?バレてました?
感知されないレベルの毒を
時間を掛けて漂わしたんですけど」
「普通ならそうだろう
神殿の中と外で空気が違う事に気が付かなければな」
「神殿?」
「あぁ、神殿は全ての害するものを除外する
毒も何もかもな」
なるほどね。
族長は神殿に居たから外の空気に毒が
混ざっているのを気付けたのか。
「他はどうした?
神殿内に族長だけって事はないだろ?」
「何も知らないのは滑稽さを感じるな
神殿にはな巫女と長しか入る事は許されておらん」
そんな事しらねーから。
滑稽とか言われても困るから。
「はは、何を言うか
牢屋に閉じ込めた上に何も説明も無く
それでいてこんな秘境にあるような村の
下らない約束事を知らないのが滑稽だと
全く、自分達のルールでしか話せない奴なんて
そちらの方が余程馬鹿らしく田舎者に見えますがね」
おおう、キリルどうした?
唐突に毒を吐き出したぞ。
一息に話した後に更に矢次やに畳み掛ける。
最初は呆気に取られた族長も
能面の様な顔に僅かばかりの感情が滲み出る。
「この人族風情がっ」
唐突に弓を構え射出してくる。
キリル君、相手を挑発する才能があるのかもな。
両手で盾を構えたキリルは弓を受け止める。
ガスっと音と共に盾に矢は突き刺さる。
あの弓すげーな。
今のキリルって盾重複装備にハイエルフから
拝借した装飾品で更に防御力上げてるんだぜ。
普通の攻撃ならまず弾くだろう。
そこにサクッと刺さってる。
一度動き出すとなし崩し的に戦闘になった。
キリルは俺と族長の間に立ち防御担当。
俺は族長を近寄らせない用に魔法で攻撃を行う。
最初は矢切れを狙い相手に攻撃手段が無くなったら
魔法で追い詰める考えだったが
何時までも矢を放ってくる。
ちきしょう矢筒も魔法具かよ。
多分、矢切れは無いな。
接近戦に持ち込もうにも
動きが早くキリルの足じゃ追い付けない。
俺だと防御に不安ありだ。
「こっちだー」
声が聞こえた方を見ると何人かが此方に
向かってきている。
まだ居るのかよ。
大人しく寝てるよ。
それか気が付いて魔法で治療したか。
このままだと不味い状況になる。
「チッ、仕方ねーな」
キリルに近寄り作戦を耳打ちし
了承を待たずに準備を進める。
コストの低い魔法で牽制しつつ
余剰魔力を溜めて練り上げる。
「キリルッ!今だっ!」
防御一辺倒だったキリルが攻撃の素振りを見せる。
族長は流石の反応で回避姿勢に入るが
それはフェイントだ。
キリルは攻撃と思わせ風を族長の顔に叩きつける。
少し風が強いな程度の出力しかないが
キリルの突然の魔法に防御姿勢をとってしまう。
それもフェイントだけどなっ!
本命はこっちだ。
溜めておいた魔力を開放すると同時に
≪毒液生成≫≪霧生成≫を重複発動させる。
今回は防がれるのを想定して結構な濃度だ。
発動ポイントは族長の目の前。
防御姿勢のままなので回避も出来ずに直撃する。
毒での効果は期待していない。
時間稼ぎと目くらましが目的だ。
申し合わせたようにキリルと俺は走る。
神殿の入り口に向かって。
「きっ貴様らっ!」
族長も反応するがすでに遅し。
うちらは扉を潜ってる。
振り向きざまに炎球を放つ。
音と派手さを重視した奴だ。
扉に向かって駆け出そうとした
族長の目の前で爆発させ一瞬の間を作る。
ズシィィィン。
次の瞬間、扉は閉まり逃げ切る事に成功した。
扉が閉まると中央にあるレリーフがユックリと回り
180度回転したところで魔法陣が浮かび上がった。
カチリと小さな音がしたかと思うと扉はビクともしなくなった。
「オートロックかよ
出る時はどうするんだ・・・・・・
早まった事したかな?」
「しかし、あのままでは遅かれ早かれ
不味い状況になってましたよ」
「まあな、それにしてもキリル
最初の毒舌凄かったな」
「あれはまぁ、ミノル様を馬鹿にした口調が許せなくなりまして
ずっと我慢してたんですが限界でした」
「そうかそうか、ありがとうな
ちょっとスカっとしたぞ」
「はいっ!」
嬉しそうにしているキリルはさておき
今後の対応を考える。
扉はビクともしないが開くのは時間の問題だろう。
まずはリースの確保だ。
気配を探りながらリースを探す。
作りは広々としているが部屋の数が少ないのが救いだな。
手当たり次第に部屋を覗き
使えそうな物は片っ端からGETしていく。
何個かめの部屋にリースは居た。
「リース!」
「お姉ちゃんっ!」
扉を開けた俺に飛び込んでくる。
軽く鼻をズビズビ言わせながら
必死にしがみつ。
「お姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃん」
「よしよし」
リースの頭を撫でながら抱きしめる。
落ち着くまでそれは続いた。
でだ、これからどうするかだが
まずこの神殿を隅々まで調べて
脱出の手立てを探す事にした。
リースが先程居た部屋と同じような部屋が2個
これが住居用というか人の為だ。
他には宝物庫のような色々な儀式用の法具が
おいてある部屋。
中身は全て頂いておいた。
その他の小物等が置いてある資材室のような部屋。
もちろん中身は全て・・・以下略。
後は小さな滝がある泉の部屋だ。
イメージとしては打たせ湯に近い。
リースが身を清めたのはここだそうだ。
部屋はそれしかない。
神殿は広いが部屋数は少ない。
正面の大扉は繋がっているのは大きなホールだ。
ホールは大扉から少しづつなだらかに下がって行き小さな扉に続く。
そこが祭壇への入り口だ。
ホールから祭壇までは太い柱が立ち並び荘厳な雰囲気となっている。
全体図は幅の狭い扇子のような形をしている。
扇の頂点に大扉。
支点部分に祭壇への入り口。
部屋は両端部分にある。
扉から見て右が住居で左がその他だ。
随分と変な作りな気がする。
ホールの何処からでも水を垂らすと祭壇の入り口に集まる作りだ。
祭壇の中も調べようと思ったが
リースに止められた。
祭壇の部屋には一度入ると2度と出てこれないらしい。
神への生贄しか入れない部屋だそうな。
ここで俺はピピーンと閃く。
「リース、キリルここで撃退するぞ」
俺は作戦を伝える。
そこからは時間との戦いだ。
リースに聞くと扉を開けるのには相当量の魔力を注ぐ必要がある。
その為、あと数時間は稼げる計算だ。
俺達は全力で準備に取り掛かる。
それから数時間後、ついに扉が開かれる。
閉じるときとは逆に魔方陣が発光しレリーフが回りだし
180度回転すると小さな音がなった。
そしてゆっくりと扉が開かれる。
開ききるとそこには鬼の形相をした族長が立っていた。
そうまさに鬼だ。
あの無表情だった美形がこの世のものとは思えないほどの
怒りに満ちた顔になっている。
もう怒りのオーラが目に見えるんじゃないかと思うほどだ。
「き・・・・さ・・・ま・・・・ら・・・・
この場所が!この神殿が!
どのような場所なのか分かっているんだろうなっ!
畜生にも劣るミックス風情が立ち入っていい場所じゃないっ!」
俺は正面に立ち応える。
「そんな事言ってもさ入っちゃったもんは仕方なくね
今更そんな事言われても困るんだよね
そういうのは事前にさ~書面で説明してくれないとイカンよ」
「もう良い喋るな
その口から二度と話せなくなるが良い」
族長は弓を投げ捨て腰のショートソードを引き抜く。
全身から魔力が吹き上がるのを感じる。
「△▲△▲△▲」
何かも魔法を使ったのだろう。
爆発的な加速でこちらに突撃してきた。
「うわ、ヤベっ」
俺は慌ててバックステップする。
「今更もう遅いっ!」
族長は射程内に俺を捕らえたと理解し刺突の構えで更なる加速を行う。
その足元に急にロープが張った。
柱の影に隠れていたリースとキリルだ。
族長はコントかよっ!っと突っ込みたくなるような
完璧なタイミングで足を引っ掛ける。
「なっ?!」
俺は強化した身体能力でジャンプし馬とびの要領で
族長を飛び越し更に後ろに向かって放り出す。
追い討ちかのように魔力を極限まで込めた強風を叩きつけ
強制的に加速させる。
族長はそのままツルツルに凍ったホールの床を滑っていく。
祭壇の入り口に向かって。
そして祭壇に入る唯一の出入り口である小さな扉は閉じる。
族長を飲込んで。
ハイエルフは無事に生贄を神に捧げる事が出来たって訳だ。
グッバイ族長




