2-18
時間が無くて少し短くなってしまいました。
こんにちはリースです。
村に帰ってきてからはお姉ちゃんに一回も会っていません。
付き添いの人に聞いても何も教えてくれません。
お姉ちゃんに会いたいな。
お姉ちゃんの料理美味しいんだもん・・・・美味しいんだもん・・・。
牢屋に入れられてから2週間が経過した。
あれから一度も外に出てはないない。
武器防具は没収されていれば
相手が油断すると予想されるので
アイテムボックスは使わないようにした。
こっそり使えば大丈夫そうだが
念には念をいれておく。
その為、料理も出来ない。
キリルとアリスがボヤいているが俺の所為では無いと思う。
アリスの分の食事は無いので
可哀想だとは思うんだが・・・・。
二人とも恨めしい目で見るのは止めて欲しい。
やる事も無いので魔法の訓練をする事にした。
ハイエルフから見れば俺が訓点してるレベルなんて
大したことでは事ではないようで何も言ってこない。
魔力もそれほど籠めずに行っているので威力も低いしな。
少し試したい事があったので
魔法で部屋の壁や入口を攻撃したが
傷一つ付けられなかった。
迷宮の扉と同様に着弾寸前に消滅しているようだ。
この技術欲しいな・・・・。
色々と応用出来そうなんだけどなぁ。
高威力の物理攻撃なら効きそうだが
見張りも居るので止めておいた。
他にも部屋の中では火魔法と土魔法は発動しなかった。
どうやら発動が阻害される結界のようなものが
部屋にはあるようだ。
風と水は発動出来た。
元々空気中に存在するのだから当たり前だけどな。
そこから考えるに魔法の源の生成を禁じられてるような感覚か?
多分、松明等があれば火魔法で操作は可能だろう。
火の気なんで周りに無いけど。
これは脱獄防止と事故防止の両方に効果的だとは思う。
そんな理由もあり魔法の訓練をしていても
特に何も言われない。
彼奴らも内心では「無駄な事してるな」位に
馬鹿にしてるんだろうけどさ。
ついでなのでキリルも魔法の勉強をした。
≪白帯指導者≫の補正効果もあるとは思うが
意外に筋が良いようで風と水を扱えるようになった。
生活魔法程度だけどね。
火と土もここを出れれば使えるだろうさ。
「凄いです!ミノル様
魔法の勉強は旅の途中に少しづつ進めていましたが
こんなに理解しやすく教えて頂けたのは初めてです」
「うんうん、褒めるが良い湛えるがいい」
「はい!ミノル様!」
ちょっと調子に乗ってたら
見張りの目が凄く冷やかで痛かった。
ピローン
> スキル≪中級魔法(風)≫を手に入れました。
> スキル≪中級魔法(水)≫を手に入れました。
ようやくGETだ。
ここまで来れば後はイメージ次第で大抵の事は出来る。
これで今後が楽になる。
そこからはイメージの練習を繰り返した。
アリスには夜な夜な情報収集をお願いした。
リースは清めの儀式は終わったようで
神殿内の部屋に監禁されている。
食事は質素の物が運ばれているようだ。
俺とキリルの処遇も揉めているようだ。
追放すべし、我らが手を汚す必要はないという意見もあるが
大半は聖域に踏み入れた俗物を開放すれば
今後にどんな影響があるかがわからないというのが大多数のようだ。
意外にハイエルフって血生臭いのな。
それでも殺せとハッキリと言うのが少ないのは
高貴たる証なんだろうか。
どうでも良い事だけどね。
魔法の訓練も落ち着いた頃に動きがあった。
どうやら祭壇に赴く日が決まったらしい。
今から3日後の深夜に祭壇に続く扉が開くとの事だ。
リースを神に捧げさせたりするかよ。
俺は奥歯を噛みしめる。
昼間に色々と試しておき前々から考えてた作戦を見直す。
本日の深夜に行動開始の為、時間がない。
え?救出とかって前日の深夜とか
祭壇の扉があいた時じゃないのかって?
う~ん、面倒臭いじゃん。
ハイエルフの都合なんてどうでも良いしさ。。
夜になると辺りには霧が漂いだした。
森の奥深くに位置する此処では珍しくもない。
そして霧が出て視界が悪くなればなるほど
俺らは行動しやすくなるってわけだ。
霧が濃く深くなるのを待ち続ける。
深夜になると濃霧に満たされ
村は静けさに包まれていた。
頃合いかな?
隣で爆睡しているキリルを起す。
「キリル、そろそろ時間だ」
「は・・・い・・・、ミノル様」
ふわぁ~、と欠伸をする。
仕方ないとアイテムボックスから飲み薬を取り出す。
「よし、これを飲め
スッキリするぞ」
疑いもせずに一気に飲み干すキリル。
顔色がすぅ~つと明るくなる。
「何だかスッキリしました
ありがとうございます」
「それは良かったな
じゃぁ行くか」
「はい!ミノル様!」
俺は≪黒蜥蜴竜鱗盾≫を2枚取り出しキリルに渡す。
今回は防御に回って貰う為、両手に盾装備だ。
鎧等も無いから防御力を上げておく必要がある。
俺も左手に装備し右手は空けておく。
着てる服は下手な革鎧なんかよりも防御力あるしな。
≪溶解唾液≫を使って入口の鍵を溶かす。
音や匂いで見張りに見つかるかもしれないが気にしない。
鍵が溶けると出入り口が開いた。
外に見張りが居るのは分っているが気にせずに出ていく。
「なっ!貴様ら!
一体どうや ズバンッ」
何か鈍い音がしたかと思うと
見張りは体をビクンビクンしながら崩れ落ちた。
「・・・・ミノル様、今のはどうやったのですか?」
「ん?あぁ、簡単さ
空気中から水分を取り出して水球を作って
見張りに密着させた状態で
爆発的に圧縮空気を開放して衝撃波を叩きこんだんだ
1発は少ない衝撃でも頭、耳、首、胸、腹と同時に
ぶち込めば結構な衝撃になるさ」
「その割には音も衝撃も来ませんでしたが」
「もちろん、空気の膜を作って相手を包んでいるから
音も衝撃も殆ど漏れない
更に外に拡散する分も衝撃に回せるので効率が良い」
「素晴らしいです」
「これも迷宮並みに濃い魔力があるから出来るんだけどな
そのお陰で魔法も使いたい放題だぜ」
見張りの体を漁ってみると
鍵束が見つかった。
もちろん俺はハイエルフの言う下賎なミックスだ。
鍵束と共に色々な道具と武器防具を手に入れた。
見張りを簀巻きにして証拠隠滅するのも忘れない。
幾つかの空いている牢屋を過ぎると
詰所の様な小部屋があった。
部屋の中には誰かの気配があったので
扉越しに衝撃波を叩きこむ。
少し待ってから中にはいると
ハイエルフが1人転がっていた。
装備品をありがとう。
もちろん身ぐるみは全て剥がす。
容赦なく服も全部剥いでおります。
生まれ育った肉体以外は全て頂きます。
装飾品も何もかもだ。
大丈夫、俺はミックスだからこんな事もやるさ。
ハイエルフがそう言うんだから間違いないさ。
部屋の中には俺らの装備品もあったので取り戻した。
キリルは≪レッドカウアーマー改≫が返ってきたのが
嬉しかったようだ。
神殿の詳細な場所は不明だが魔力が濃い方向がある
そちらに当たり付けて向かう。
ハイエルフは見つけ次第無力化し
身包みを剥ぎ簀巻きにする。
10人程剥いだところでキリルが疑問を持ったようだ。
「ミノル様、妙に人が少ないと言うか
静かじゃないですか?
それに出会うのも元気が無いと言うか
疲れているような感じを受けます」
「おっ!良いとことに気が付いたね
この霧に乗じてずっと弱い毒を漂わしてたんだよ」
「毒ですか?」
「あぁ、効果は弱いが匂いも色もない
倦怠感等を伴う神経毒だ
それを空気中に薄く漂わした」
「ひょっとして自分が凄く眠かったのも影響ですか」
「あぁ、そうだな
俺は毒耐性があるから大丈夫だ」
「ひっ酷いです!
自分にまで毒を掛けるなんて!」
キリルは裏切られたと言わんばかりに
悲しい表情を向けてくる。
捨てられた子犬の様だ。
「俺の自家製解毒剤をあげたじゃん
あれって俺の血液から作った貴重品だぞ」
「・・・・え?
ミノル様の血・・・・・?」
「あぁ、俺の毒耐性が組み込まれている血を元に
魔法で希釈し魔力を練り込んだんだ
効いたろ?」
「ミノル様の血・・・・
ミノル様の一部・・・・」
何だかキリルがうっとりするような
怖い顔をしている。
駄目だ!これは駄目な顔だ!
ズバシャン。
低温度の水球を作り結構な勢いで顔面にぶつける。
「う・・・うわっ!
なっなんだ?
あれ?ミノル様どうしました?
怖い顔をされてますよ」
「いや、うん
良いんだ何でもないよ」
キリルの怖い一面を垣間見たが気にしない事にしよう。
親しき仲にも礼儀ありだしな。
予防線は張っているとは言え
慎重に行動を進める。
更に5人程の簀巻きを作った辺りで
警備の装備品が少し上等な物になっているのに気が付く。
うん、やっぱりこの先で間違いないようだな。
族長に会った建物の裏手に回ると
門のような者が見える。
小ぶりながら綺麗な装飾が入り
今迄の建物とは雰囲気が違う。
どうやらこの建物がそうみたいだ。
魔力も一段と濃いがそれ以外にも別の物を感じる。
ラバリオに感じたものだ。
これが神気なのだろうか。
そうは言っても僅かに感じる程度だけどね。
ここには警備は居ないようだ。
感知にも引っかからない。
建物の中は感知すら出来ないけどね。
全然読めない。
神殿と言うからには外部とは
シャットアウトしているのだろうか。
結界か何かで。
考えても仕方がないが中にゾロゾロと
居られても不味いよな。
どうしようか悩んでいると
少し軋んだ音がしたかと思うと
建物の扉が内側から開かれる。
「そこに居るんだろう?
下賎なミックスが」
どう見ても完全装備の族長が扉の前で仁王立ちしていた。
実留君、言われた事やヤラれた事にたいして
根に持つタイプの様です。




