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2-17

暑さと湿気でやられています。

エアコンを付けるか悩む時期ですね。

皆さん初めましてキリルと申します。

この度、ミノル様という女神に使える事になりました。

自分は盾神ブルス様より加護を受けています。

神様に愛され神様を守る。

盾職としてこんなに名誉な事はありません。

それにとっても食事が美味しいんです・・・・・美味しいんです・・・。









ハイエルフと遭遇し3日間が経った。



わかった事は幾つかある。



好戦的では無いが排他的である。

余所者には友好的ではない。

自分達の都合の良いように物事を解釈する。

ハイエルフの血は高貴という認識。

なによりミックスを異様に嫌悪する。




結局、どういう事だ?と言うと。




俺とキリルは牢屋の中に居る。

武器や防具の装備品は没収されてはいるが

縛られたりはしていない。


それに牢屋と言っても部屋の中は快適だ。

そこそこ広い部屋でベットもトイレもある。

監視係りは外に居るがこちらから話掛けなければ

余計な事は言ってこない。

まぁ聞き耳は立てているんだろうけど。



食事も1日2食を支給される。

量も味も悪くない。


俺の中でエルフなんかは菜食と言うか

肉を食べないようなイメージだったが

そういう事もないようだ。


監視係りに聞いてみたが

森の恵みは大事にするというのが

一族の誇りであり教えらしい。

それは魔物の命も含まれるとの事。


ちなみに監視係りに聞いたのはキリルだ。

俺が話しかけても露骨に嫌な顔をしてくる。

何か汚らしい物を見るような目だ。


何回か話しかけたものの心が折れそうになるので

交渉役はキリルに変わってもらった。


グスン。






「それにしても暇だね

 リースは無事かなぁ」


「無事だとは思います

 3日前の状況では重要な人物だという認識を受けました」


「そうなんだよなぁ・・・・・

 妙な感じだったよな」


3日前のハイエルフと対面した時の事を思い出す。







「貴様らは何者だ?

 ここが聖地と知っての侵入者か?」


「俺はミノル、ハイエルフの子であるリースを

 保護したので送り届けに来た者だ」


「なに・・・・リース・・・様だと・・・・・


 おい、連絡しろ」


そう言って2人組の1人が指示すると

もう1人が森に戻って行く。

残った1人はこちらへの注意を怠らずに

弓を向けたままだ。


「ミノル・・・・と言ったか

 お前・・・・何者だ・・・

 色々な気配がするな・・・・・ミックスか」


そいつは確かに顔に嘲りの表情を浮かべた。


「おい、ミノル様を馬鹿にしているのか?」


その表情に気付いたキリルがズイっと前に出る。


「お前は人族か・・・・

 まぁリース様を送ってもらった事には感謝しよう

 だが、ここが我らが聖地

 勝手に入った事に対してはそれなりの対処を受けて貰おう」


「なんだと・・・・それはそちらの都合だろうが

 こちらには関係がないな」


「そうもいかん、人族とミックスなんぞが

 許可なく聖地に入るとは大罪も良いところだ

 それをリース様を送った恩もある

 いきなり処罰されないだけでも感謝するんだな」


明らかに感謝すらしてないのがわかる態度で接してくる。


「貴様・・・・・っ!」


「キリル止せ」


「しかしミノル様・・・・彼奴はミノル様を・・・」


「良いんだ、俺は気にしていない」


キリルが突撃しそうなのを止める。


アリスはハイエルフの登場前に咄嗟に俺

の中に入ってもらっていたので気付かれてはいない。



そうこうしている間にガサガサと森から更に5人のハイエルフが出てくる。

内1人は先程の奴だ。


「本当にリース様だ・・・手間が省けて助かる

 よし、こちらに寄越せ」


新しく出てきた1人が名乗りもせずに言い放つ。

他の5人に比べて身なりが上等だ。

醸し出している雰囲気も違うものを感じる。


それにしても失礼にも程があるだろう?

さっきからこいつらは何なんだ。


「俺はミノルと言う、お前は誰だ?」


「ハッ、ミックスか・・・臭うな

 お前に名乗る名前なんぞない

 リース様をこちらに寄越したまえ

 穢れてしまうだろが」


リースは俺の後ろにピッタリと隠れている。

威圧感が怖いようだ。


「名乗りもしない奴に渡せると思うか?」


「思うね、周りを見てもそう言えるかな?」 


話す男以外は全員こちらに弓を向けている上に

森の中にも何人か居るのも感知している。



ふむ、こりゃ武力的には無理があるか・・・。


俺は黙って両手を上げる。


「最初から素直に渡せば良いものを

 さぁリース様、戻りましょう」



そう言ってリースを無理矢理引きはがし

俺らは連行される事になった。



結局は誰も名乗りもしやがらなかった。




更に2日程経ってから呼び出しがかかる。


「外に出ろ

 族長がお会いするそうだ

 失礼の無いようにな」


前後左右を完全武装のハイエルフに囲まれ移動する。


連れて行かれたのは謁見の間というか

広々とした部屋だった。


部屋は上段と下段にわかれており

階段で遮られており実際の距離以上に格差を感じる。

上段には椅子があるだけで何も無い部屋。

床はチリ1つないぐらいに磨きあげられており絨毯すらない。



その椅子に1人のハイエルフが座っていた。


透き通るような肌。

流れるような髪。

絶世の美女だ。

今迄、視てきた中でも群を抜いてレベルが違う。


但し、雰囲気は華やかとは遠い印象を受ける。

その目には全てを見透かしているようにも感じるし

何も捉えてないようにも感じる。

退廃的な感じも受ける。


多分、俺なんかとは比べ物にならないぐらいの

長い時間を生きてきたに違いない。




下段に通され階段のかなり手前で止められる。


「長の御前である、頭が高いぞ」


横に立っている兵士の槍で膝裏を突かれ崩れ落ちる。


「ミノル様!」


「キリル!良いんだ!」


「しかしっ!」


「良いんだ、大人しくしておけ」



うちらが強制的に頭を下げさせられると

上段より声が届く。


「我らが森の守護たる要、リースを連れて戻った件

 感謝するぞ」


「これが感謝している者がする仕打ちかっ!」


「黙れ、長が話しているだろうっ」


頭を押えられているので横を伺う事は出来ないが

鈍い音とくぐもった声が聞こえてくるので

キリルが何かされているのだろう。


こんな時にあんまし熱くなっちゃ駄目だぜキリル。


長と呼ばれる者は意に介さず話を続ける。

目の前では何も行われていないかのように。

そして当然のように名乗らない。


「人族とミックスが我らが聖地に足を踏み入れたのは許せぬ

 本来であれば生きて返さぬところだ

 だがリースの件もある命だけは助けてやろう」


「リースは無事なのか?」


「黙れと言っているっ」



ゴスッ。



わき腹を石突きで突かれる

肺の空気が抜けて息苦しくなる。

それでも俺は問い掛ける。



「リースは無事なのかと聞いている」


再度、突こうとした兵士を長が手を振って止める。


「何故にそこまでリースを気に掛ける?」


「リースは短い間だったが俺の仲間で師匠だ

 気にするのは当然だろう」


「ミックス如きが我らがハイエルフの一員を仲間呼ばわりするのは

 烏滸がましいにも程があるわ


 

 まぁ、良い

 リースの事を教えてやろう」





リースはハイエルフの中でも特殊な存在だ。


ハイエルフは聖地と呼ばれる場所に住まい森を守っている存在だ。

聖地と呼ばれる場所の奥深くに神の力を授かる祭壇がある。

そこで神の力を授かる事により森の繁栄は約束される。


逆に言えば祭壇を守る事がハイエルフの役割であり誇りでもあるのだ。


では、何故リースが特別なのか?


祭壇には巫女が必要なのだ。

巫女とは森に愛された者。

その証は緑色の目を持つ。


そう、リースは緑の目を持って生まれた。

他のハイエルフは幾つかの色があるものの緑は

1人も見かけなかった。


「疑問がある

 何故リースの両親はここを出たんだ?」


「我が子を神に捧げるのが嫌になったのだろう

 役目を放棄するから天命を全う出来ないのであろうな

 嘆かわしい事だ」


「天命・・・?

 母親はオークに襲われた・・・・・ぞ

 父親はどうなった?」


「聖地を捨てたハイエルフに命の価値なんぞないわ」




「・・・・・・殺したのか?」



「さてな、我には興味がない事よ」


腹の中にドス黒い何かが溜まって行くのがわかる。


そこで何故、リースの両親は村から

逃げようとしたのか疑問に感じる。

リースを巫女として縛り付けるのが嫌だったんだろうか。


「巫女の役目とは何だ?」


「なに、簡単な事よ

 祭壇にて命尽きるまで祈り続けるだけだ」


「命・・・尽きる・・・まで?」


「そうだ

 祭壇に入れるのは巫女のみ

 神託が下れば巫女のみが部屋に入り外から閉ざされる

 命尽きたと同時に神に召される

 部屋には体も何も残らない

 名誉な事なのだ」


「今、リースはどうしているんだ?」


「外の穢れに触れてしまったからな

 今は来るべく神託の日に向けて身を清めている」




それから幾つか情報は聞き出せたが

リースの将来が明るくなるような要素は一つも無かった。




その後、また牢屋に戻される。

いつ出れるか?と聞いても何も教えてはくれない。




その日の夜にアリスを呼び出し

情報を探ってもらう事にした。


『アリス、危険かもしれないがリースの居場所と

 俺らの処遇を探ってくれないか?』


『任せてください!

 このアリスの命に代えても探ってきます』




それから数時間、アリスは暗躍し情報を拾ってきた。


『リースちゃんの居場所がわかりました

 祭壇がある神殿に身を清める泉があるそうです

 そこで身を清め続けてます

 場所は確認したんですが

 結界があるようで近寄れませんでした』


『無事なんだな?』


『無事ではあるようですが

 みを清める際には水のみが与えられて

 食事は取れないみたいです』


『食事無しってもう5日以上経ってるぞ?!』


『リースちゃん、心配です』


『それで俺達はどうなる?』


『ん~、詳細は分りませんが無事に帰れそうな雰囲気ではないですね』


『やっぱりそう思う?』


『はい、王道ですね』


『王道だよな』





さながらリースは囚われ姫で

俺らはその従者ね。

双方共に生きて帰れるかはわからない。


まぁ、ここまで王道で来たらやる事は1つだよな。



俺は隣で寝ているキリルを静かに起こす。


「む、ミノル様

 どうされましたか?」


キリルに状況を説明する。


「まぁ、そういう訳だ

 ここまで整ったらやる事は一つだろ」


「どうするんで?」









「ここの集落をぶっ壊してリースを掻っ攫って逃げるんだよ」


後日、キリルはこう言った。

この時の俺は凄い笑顔だったと。


なんかハイエルフ達がやたらと感じ悪いですね。

困った奴らだ。

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