2-14
勢いで書きました。
そろそろペースが落ちると思います。
料理人の森山実留です。
最近は良く料理をするんです。
調味料が手に入らないので素材の味を生かした物が殆どですがね。
おっと中には文字通り生きたままってのもありますが。
・・・フフフ、皆さんもいつ料理されるか気を付けてくださいね。
目標のオーク集落は山肌に面した洞窟で
中はそこそこ広いようだ。
中央ブタ(故人)の情報によれば
洞窟の入口から少し入った所が広場になっていて
そこで祭りが行われるとの事。
祭りの中にはオス同士の喧嘩祭りのようなものがあり
それの賞品がエルフ子だ。
ちなみに事前に強さをアピールし認められると
組合せでシード権が貰えるらしい。
勝ち抜きだからかなり有利だ。
もちろん優勝者にはメスブタの熱烈なアタックもあるらしい。
オーク社会は強さを重視するのだ。
まず料理するには食材の状況確認が大事だ。
浮かれている奴らは良いとして
歩哨の位置を確認する。
洞窟の入口を挟むように2匹立っている。
こいつらは頑丈そうな鎧と槍を持っている。
距離がある為、声は拾えないが
何か軽口を言い合ってるようだ。
祭りで浮かれてやがるな。
絶えず何かをクッチャクッチャ食べてるし。
2匹で交互に皮袋のようなものを飲んでいる。
きっと酒だな。
あんなんじゃ見張りになんねーんじゃなかろうか。
結局、洞窟の見張りは2匹だけのようだ。
事前情報から入手しておいた場所を探す。
そこが今回のキーポイントだ。
洞窟からみて右斜め方向に進むと小さな滝がある。
そこで賞品という名の生贄を清める儀式が行われる。
辿り着くと儀式は既に始まっているようで
石をくみ上げた少し高くなっている場所に木箱が載せられている。
祭壇だろうか?
オークもそんな事やるんだな。
ちょっと感心する。
そこに何やら恭しく祈りだか何だかを捧げている。
数は5匹・・・・・メスばかりと言えども厳しいか・・・。
やはりこいつらも一緒に料理するしかないな。
儀式は時間がかかりそうなので
次に下ごしらえを行う。
下ごしらえで料理の出来は左右されるからな。
洞窟に戻り各所の点検を行う。
具体的には空気穴だ。
そこを1個づつ塞いで行く。
少しぐらいは見逃してもそんなに影響はないので良しとする。
他の出入り口が無い事も確認済だ。
その他もろもろの準備も終了。
夜になると魔力は濃くなる。
もちろん迷宮程とはいかないけどね。
後は魔力を溜めこむべし。
ひっそりと洞窟の入り口の上の方に待機する。
それからしばらくし
洞窟内が騒がしくなってくる。
どうやら喧嘩祭りが始まったようだ。
見張りも入口から中を見てワイワイと騒いでいる。
こいつら本当に使えないな。
俺には有り難いけど。
そしていつの間にか中に入って行きやがった。
・・・見張り無しかよっ!!
思わず突っ込んでしまったのは仕方がないと思うの。
でもこれで楽にはなったしな。
前方から木箱を担いだ集団が戻ってきた。
5匹は縦列を作りゆっくりと歩いてくる。
箱は後ろの2匹が担いでいるのを確認。
料理開始だ。
先頭の3匹が入口に入った所で
アイテムボックスから岩を取り出す。
そう大岩だ。
大きさが数メートルはある岩を落とす。
見事に洞窟の入り口を塞ぐ形で設置が出来た。
その際に3匹は巻き込まれたのは計算通りだ。
箱を持つ2匹は少し余裕をもって歩いていたので無事だ。
確認後に洞窟の上から飛び出す。
空中から得意の≪霧蠍短槍≫をお見舞いする。
殺傷だけを目的にしたので容赦なく連射だ。
着地した時には周囲は肉塊と血の海だ。
木箱にはかなり掛っているが気にしないでもらおう。
「今、助けるから安心して」
そう声だけかけて入口に向かう。
大岩の向こう側からは異常に気が付いたオークが
岩を叩いているのがわかる。
このままならいずれ突破される。
俺は大岩をアイテムボックスに収納する。
ボシュッ。
炎球を打ち込む。
ズシャーン。
大岩をアイテムボックスから出して入口を塞ぐ。
「「「ピィギィィィィィィィィィ」」」
うんまぁそうなるよね。
大岩の向こうからは阿鼻叫喚の叫び声が聞こえる。
我ながら俺、酷いな。
それからも折を見ては
大岩を収納、炎球打つ、大岩で塞ぐ。
これを繰り返した。
内部には50匹も居るのであれば
料理時間は長めだ。
何だか良い匂いがしてきたのは
良い感じに出来上がってる証拠だと思う。
ある程度、繰り返したら魔力が減ってきたので
休憩がてら木箱を解体する。
中からはエルフの子が居た。
縄で手足を縛られて猿轡をされている。
緑色の服を着てフワッフワの金髪だ。
身長は俺の腰ぐらいだろうか・・・・かなり小さい。
薬かなんかで眠らされているのかピクリともしないが
呼吸はしているので生きてはいる。
一安心だね。
・・・・・・何故か、冒険者風の少年も
一緒にいるのが謎だが
コイツダレダ?
エルフの子の縄を解き大き目な葉っぱを敷いて寝かせてあげる。
少年の方は・・・そのまま寝かせておいた。
アリスに見張りを頼み料理を続ける。
繰り返し行っていたら少年が目を覚ました。
「実留さん、少年の方が目を覚ましましたよ」
「そっか・・・どれどれ」
二人で少年を覗き込む。
「・・・んん・・・ん・・・・ん」
少年がうっすらと目を開く。
「おい、大丈夫か?」
パシパシっと頬を叩く。
「・・・・・・・」
少年は目を開いたものの
俺を見つめるだけで何も反応しない。
「おい、おいって!
意識ははっきりとしてるか?」
「神だ・・・・女神がいる・・・・・」
パタリ。
そういって少年はまた目を閉じた。
「なんだコイツ」
「なんなんでしょうね」
念の為、更に3回ほど繰り返してから
大岩の除去をした。
物凄い熱気が出てきたが風魔法で上昇気流を作り回避し
さらに中の換気も行った。
暑すぎて中に入れないしな。
≪霧生成≫で水分を中に送り込み強制冷却も同時平行だ。
ある程度、冷えた所で中に踏み込む。
まぁ酷い事になっていた。
入口に近い方は完全に黒焦げだ。
何回も炎球に曝されたわけだしね。
広場を中心として横穴が幾つかあるので端から見ていく。
住居がメインで保存庫のようなものが幾つかあったが
食糧関連は全て駄目になっていた。
武器防具は使えそうな物は全て回収した。
いつか売る時がくるかもしれないしな。
生き残りは1匹も居なかった。
中には熱じゃなく酸欠で死んだのもいるようだが
結果としては変わらない。
黒焦げのオーク以外は全て回収した。
洞窟は魔法で天井を幾つか崩し
入口も塞いでおいた。
これでここが魔物の巣になる事もないだろう。
エルフっ子と少年を2度にわけて
小さな滝の下流まで運ぶ。
キャンプに良さそうな場所を見つけ寝かせる。
まだ目が覚めなかったので
俺とアリスはローストポークパーティーをする事にした。
「ブタうめぇぇぇ」
「ジュージーなのに中はほんのりレアで
噛めば肉の旨味が口いっぱいに広がります」
「うんうん、大量にあるからしばらく楽しめるぞ」
「今回はバッチリでしたね」
「あいつらが祭りで浮かれてただけで
普通の時だったら無理だったろうな」
「運も実力の内ですよ
結果としてお肉は美味しいです」
「そうだな、肉は美味しいな」
無事に助けられたのか緊張も解け
アリスとのくだらない会話でも盛り上がる。
「・・・・お姉ちゃん誰?」
唐突に隣から声があがる。
驚いて振り向くとエルフっ子が目を覚ましていた。
「お、目が覚めたかい?
オークはもう居ないから安心していいよ」
「ん?
ここは?お姉ちゃんは誰?」
「あぁ、そうだったね
俺はミノル、こっちの妖精はアリスだ」
「アリスだよ~、ここはオークの集落からは
離れてるから安心だよ」
「だから安心して良いよ
もう怖い事なんてないから
良かったら名前を教えてくれるかな?」
「名前・・・・私の名前は・・・・リース・・・森のリース」
「リースちゃんね、エルフで・・・良いのかな?」
リースはフルフルと頭を振る。
「エルフじゃないの?」
「うん・・・・私は・・・森の守護民・・・ハイエルフのリース」
「「ハイエルフ?」」
エルフっ子かと思ったらハイエルフっ子を拾いました。
実留君はまともに戦わないですね。




