2-10
書くのが楽しくなってきました。
事象には理由がある。
その理由に意味があるかは不明ですが。
そんな意味不明な迷宮に生れ落ちた森山実留です。
迷宮の神秘に触れましたが
触れなくても良い事もあるのですね。
「えっ?駄目なの?」
「今のミノルさんに日光が大丈夫なように
するって事っすよね?
それは駄目っす
そんな能力を付加する力は自分には無いっす」
「まじかーだめかー」
「自分が出来る事は迷宮に関する事ぐらいっす」
下級神と言えど、神と名が付く者に
出来ない事があるとは・・・。
ちきしょう。
「何か方法はないかなぁ・・・・」
「う~ん、日光に弱いのはアンデットの
宿命のようなもんすからねぇ
種族特性の変更はかなり大事っすからね」
「もういっそ死んで転生しちゃえばいいんじゃないっすか」
「現時点で転生ポイントが貯まってるかが怪しんだよ」
「そうっすかー、骨の時点でアウトっすね」
「そうストレートに言われると傷つくぞ」
「自分、思った事を口に出すタイプっす」
「それ自慢でも何でもないからねっ!」
そうは言ってもこのままじゃ手詰まりだな。
最下層まで到達して神にも遭遇したのに・・・。
再度、状況を整理する。
手持ちカードのは何がある。
スキル、アイテム、状況を全て考えてみる。
う~ん、今一つだ。
日光を防げるような手が思いつかない。
「まじっすか!アリスさんパないっすね」
「アハハハ、うんうん敬いなさい」
そんな会話が聞こえてくるが気にしない。
一体、アリスの何が凄いのかが気になるが
そこは突っ込んだら負けだと思う。
アリスは兎も角、ラバリオは仕事しなくていいのかよ?
と言いたくもあるが
俺らが居る事によって手が止まっているんだから
突っ込んだらこれも負けだな。
ラバリオが作業していた場所をみると
何か人形のような物が置いてある。
なんだろあれ?何処かで見た様な気がする。
「ラバリオ、あの土人形みたいのなんだ?」
「まじっすかアリス姉さん!パネェ!パネェっす!
・・・あっはいっす
あれはゴーレムっす
この迷宮の最下層を守るボス予定っす」
ふ~ん、ゴーレムねぇ。
・・・・・・ゴーレムだ!
「ゴーレムだっ!」
「み、実留さん如何したんですか!
急にビックリするじゃないですか!」
「ゴーレムだよ!ゴーレム!」
「ゴーレムがどうしたっすか?」
「ラバリオってゴーレム作れるんだよね?」
「はい、作れるっすよ」
「デザインは自由?」
「そうっす」
「ならさ、俺の体が入るようなゴーレムって作れる?
肉体の代わりになるようなさ!」
そう、俺の考えは防具や服としてのゴーレムではない。
着ぐるみのイメージだ。
外骨格としてのゴーレムだ。
それであれば日光なんぞ屁でもない。
防具にも服にもなるゴーレム。
完璧だ!
完璧すぎるぜ!
「材料ないと土系しか出来ないすけどいいっすか?」
「材料も特にないしね
なるべく人間に見えるように頼むよ」
「了解っす
行くっすよ
≪創造≫っす」
俺の周りが一瞬光り輝いたと思うと
目の前が真っ暗になる。
しばらく経つと視界が戻るものの
何かゴーグルをかけた様な眼鏡越しのような感じだ。
「おお、実留さん!凄いです!
人形みたいな印象は受けますが
ばっちり人間っぽいで」
「まじか!鏡欲しい!」
「自分、デザインには自信があるっす
≪創造≫っす」
そういってラバリオは鏡も作ってくれた。
「おお、すげーじゃん!
これだよこれ!」
「そんなに褒めないで欲しいっす」
そう言うがラバリオの顔は嬉しそうだ。
でもこれで外に行けるんだ。
嬉しさがこみあげてくる。
「あのさ、ラバリオ」
「なんすか?
お礼は良いっすよ
暇潰しみたいなものなんで」
「全身がピクリとも動かないんだけど」
「もちろん神気が無いと動かないっすよ!
ブワッと出してみるっす」
「神気ってなに?」
「神が持つ魔力みたいなもんす」
「俺、神じゃないよ?」
「グラバス様の加護持ちなら大丈夫っす!
きっと出せるっす」
「・・・・・無理じゃね?」
「無理っすか?」
「普段のゴーレムは何で動いてるんだ?」
「自分が作るゴーレムは自律行動させるのは
神核水晶を使うっす」
「神核水晶とは何だい?」
「神の力が宿った水晶っす」
「それを1つ頂けないかな?」
「駄目っす
自分も上司から支給された1個しかないっす
これあげちゃうと怒られるっす」
・・・・そうだ!
「魔核水晶じゃ駄目なの?
結構持ってるんだけど」
「珍しい物を持ってるすね
既存生命体をベースに作成するなら
作れるっすけど
人型ならその材料が必要っす
それに魔力が濃い所じゃないと
維持出来ないっすよ」
どうも神核水晶と魔核水晶では
大きく性能が違うようだ。
もちろん神核水晶の方が桁違いに良い。
この迷宮のボスを例えにすると
中ボスは魔核水晶を使用し生体ベースで作成。
これはゴーレムと言うよりは強化された魔物に近い。
迷宮の魔力で維持しているので迷宮内か
それに近い魔力濃度が高い所でなければ維持は不可能。
自前で魔力を賄う事は可能だが
維持し続けるのは余程の容量がないと難しいとの事。
中位魔族クラスならば可能らしい。
神核水晶はそれ自体が魔力の吸収増幅機能が
あるので維持するのはずっと簡単だが
手に入れるのが尋常じゃない位難しい。
売れば数年は軽く遊んで暮らせるレベルとの事だ。
「ちなみに何でそんなに魔核水晶を持ってるっすか?」
「あぁ、途中のボスを何十回も狩って手に入れた」
「・・・・・何やってるんすか!!」
メチャクチャ怒られた。
でも返せとは言わなかった。
ラバリオは良い人(神)。
魔核水晶はボスを倒せば手に入ったから
ラスボスのゴーレムを倒したら手に入るんじゃね?
と聞いたら最終調整して迷宮をオープンさせるまでは
ラスボスが起動しないので待てるなら待てば良いよと言われた。
後20年位で完成予定との事だ。
「それぐらいスグっす」
いや、すぐじゃねーから。
しかもオープンすると迷宮機能で強さが上がるらしい。
其処らは随時調整するらしいのでお願いしてみた。
「俺が来る時だけ弱めにしてよ
アイテム取りにくるからさ」
「不正行為は駄目っす
自分の査定に響くっす」
だそうな。
査定ってなんだよ・・・・給料制なのかよ・・・。
結局、動けないので外骨格は解除してもらった。
ラバリオ曰くかなりの高性能だったらしい残念だ。
「ラバリオは何が出来るの?」
「そうっすね
自分が出来るのは≪創造≫と≪再生≫っす
後は迷宮の調整とかっす」
「≪創造≫は何でも作れるの?」
「生命を作るのは無理っす」
「再生は?」
「一旦、壊れたりして元の形から変わった物を
元通りに出来るっす」
「≪回復魔法≫とは違うの?」
「出来る事は一緒っす
でも≪再生≫は対象物と対象範囲の桁が違うっす
自分、これでも神っすからね」
「・・・・・・・あのさ、≪再生≫で
俺の体を復元できない?」
「出来るっすよ」
「まぁ・・・難しいよな・・・って出来るの?!」
「簡単に出来るっすよ」
「じゃぁやってよ!」
「良いっすけど肉体に今の魂が定着したままか
わからないっすよ」
「え?どういう事?」
「肉体を元に戻すと魂が拒絶されるかもっす」
ラバリオの説明によると
肉体を元に戻すという事は
生前の状態まで戻すという事になる。
つまり
身体(骨):魂(俺)
の状態から
身体(肉):魂(俺)
になるという事だ。
しかし身体(肉)の時の魂は俺ではない。
身体(肉)は生前の魂を求めるのだ
その際に身体(肉)に拒絶される可能性があるとの事。
まぁ求めたところで魂は戻ってこない。
それは迷宮神としての力の限界だそうだ。
では拒絶された場合、俺の魂はどうなるか?
あくまでも不明だが転生出来ると良いね程度みたいだ。
「あ、でも自分が補助するっすから
そこまで分の悪い賭けじゃないっすよ
魔核水晶を大量に使えば結界も作れるっす」
俺は≪再生≫を受ける事にした。
ラバリオに手持ちの≪魔核水晶≫の大半を渡した。
それでも5個は手元に残してくれた。
ラバリオは良い人(神)。
≪魔核水晶≫を各所に配置した魔法陣の
中央部分に俺は寝ている。
アリスは怖いので外に待機だ。
結界は体が魂を求める力を抑え込んでくれ
かつ俺の魂の定着の手助けをしてくれる内容だ。
これも生体ベースのボスを作る時の応用と言っていた。
「いくっすよ~」
「おう、頼むぜ」
「了解っす
≪再生≫っす」
ブイイイイィィィィィイイイィィィィィ。
何かの共振している音が耳に響く。
視界は闇に閉ざされ
体が熱く変化しているのがわかる。
何かが満たされるような幸福感に包まれ
俺の意識は飛んだ。
「・・・・・実留さん・・・・・実留さん」
「・・・・ん・・・・・んん」
「・・・・大丈夫・・・で・・・すか・・・・・」
「・・・・あ・・・あぁ・・・・大丈夫だ」
目を開けるとアリスとラバリオが俺を覗き込んでいた。
場所は魔法陣の中央だ。
どうやら何かの布のような物が掛けてあるのは
ラバリオの優しさだろう。
体を動かすと・・・・動く。
手足も動く。
みるとちゃんと手がある。
足もある。
筋肉も皮もある!
どうやら無事に肉体が戻ってきたようだ!
「鏡、鏡はっ!」
「ここにあるっすよ」
ラバリオが椅子と鏡を持ってきてくれる。
しがみつきながら椅子に座り込む。
布ははだけてしまったがそれどころじゃない。
急いで鏡を覗き込む。
「あれ?」
ペタペタと顔を触る。
「うん、間違ってない、あれ?」
これ、女じゃね?
実留君、何と女でした。
ついに肉体を手に入れた実留君。
いや実留さん?




