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更新が遅くなりました。
申し訳ないです。
骨生活にも慣れてきた森山実留です。
鈍器と盾も手に入れたので例のスタイルに戻りました。
ゲーム等でよく見かける格好ですね。
しかし何故、彼らは鎧なんかを着けていないのでしょうか?
答えは簡単です。
この迷宮は鎧をドロップしないんです!
え?ここの事は聞いてない?
やだなぁ、他の骨事情なんて知りませんよ~。
25階層のボス部屋の前で俺は悩んでいた。
何をやっても大扉が開かないんだ。
鍵穴があるわけじゃないし。
今までは押して開けるタイプだったので
引いてみたりスライドさせてみたりを
試したが全く動かない。
これが壁で扉型の装飾品と言われても
良い位にちっとも動かない。
25階層の入り口から扉までの1本道を
スキルを駆使しアリスと二人で
念入りに調べたが何もなかった。
「何も無いなぁ」
「無いもないですねぇ」
「さて、どうするか・・・・
調べれる場所は
一通り調べたしなぁ
ひとまず休憩してこれからを考えようか」
「はい、お腹も空きましたしね」
時間帯や経過時間によって
何かがあるかもしれないので
念の為、扉の前で料理を作る事にする。
最初の小部屋から持ってきた石で竈を作る。
次に何回か酸に耐え表面の鱗が
ボロボロになり地素材が出た
≪黒蜥蜴竜鱗盾≫を乗せて鍋代わりにする。
土魔法で砂を出し風魔法で叩きつけ
簡易的なサンドブラストにし
磨き上げたので良い感じだ。
もちろん持ち手部分も容赦なく削ったので
素材は謎だがほぼ地金属だけになっていて
少し浅い鍋としては中々に使える。
そこに水を溜めマリラスネークを
ブツ切りにして入れる。
途中の魔物から取れた謎の香草らしきものを入れて煮込む。
まぁそれだけだ。
「おっ、おいしぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!
ハフッハフッ
これ、これ、美味しいです
ハフッハフッ
とまらなーーーい」
調味料も何も使っていないので
手抜きも良い所だが
ガツガツ食べるアリスを見ていると
こちらもホッコリする。
うんうん、作った甲斐があるというものだ。
鍋の下から火をおこしつつ
水を少しづつ足しながら煮詰まらないようにする。
水と火の両方を同時に使うのは大変だ。
生活魔法レベルの威力しか出せないし
気を抜くとすぐに維持出来なくなってしまう。
食事をする必要が無いので
アリスが満足するまで作りつつ
魔法の練習に励む。
しばらくすると満足したのか
アリスが横になりだす。
あいも変わらず体に比べて
尋常じゃない量を食べたが・・・。
「満足したか?」
「はい、これ以上は流石に無理です
もう限界です」
「うん、そうだな
アリスのお腹をみればわかるよ」
「あはははは、少し食べ過ぎましたね」
「あれで少しかよ」
「戦う乙女は食べるものなんです」
「誰と戦ってるんだよ
いつも飛んでるだけじゃねーか」
「ん~、食欲?」
「いや、負けてるからね!
かんっっっっっぜんに負けてるからね!!」
今後の行動を話し合うも良いアイデアは何も出てこない。
あの扉の向こうに行けないのが問題だ。
やはり、扉をどうにかするしかない。
調べれる場所は全て調べてみた。
これ以上は何かあるとしても俺じゃ見つけられない。
よし実力行使だ。
扉から少し距離を取り腰より
少し高い位置までの土壁を作る。
魔力を注ぎ込み強度を高めてある。
準備が完了したら時間を掛けて
限界まで魔力を練りこみ威力を高める。
扉に向けて炎球を射出。
すぐに土壁の下に隠れ爆風をやり過ごす。
結論からすると扉には何も傷つかない。
周りの壁は汚れるものの無事だ。
他の魔法も試したものの同じ結果だ。
どうやら扉は魔法無効の効果があるらしく
ギリギリ数cm手前で遮られ無効化されている様だ。
物理攻撃をしようにも全力フルスイングでも傷すら付かない。
無効化を上回る威力で魔法を放ては行けるかもしれないが
今はそこまでの威力は出せない。
現状で扉の突破は無理だろう。
周囲の壁はどうか?
魔法や攻撃で傷つける事はできた。
が、かなり硬い。
異様に強度がある。
最大威力の魔法でも僅かに傷が付く程度。
我らが釘バットでも同様だ。
しかし扉には手が無くても
壁には何とか攻撃が通じる事がわかった事は大きい。
そう俺には手段がある。
唾液だ。
「ゴパァッ」
あれから数時間の間、ひたすら≪溶解唾液≫を発動し
扉周辺の壁を溶かし続けた。
どうやら耐酸性はそんなに高くないようだ。
それでも一回分の唾液では少ししか溶かせない。
それからは耐久戦だ。
長時間かかる時には骨ボディは便利だ。
疲れもなくやり続けれるしね。
ただ、地味な作業で飽きるけど。
唾液を吐き続ける事、約1日。
少しづつ進めてなんとか扉の周囲が
見える程度には溶かせて来た。
2日目。
扉が少し浮き出てくる位は溶けてきた。
それでも全力で叩いてもビクともしない。
なんだか少し唾液の酸性が強くなった気がする。
3日目。
扉が少しカタつく感じがする。
もう少し前進だ。
4日目。
扉がだいぶ出てきた。
明らかにカタカタする。
唾液量が増えてきたような。
5日目。
少しガタガタ言うようになった。
これもう少しなんじゃね?
6日目。
何箇所か扉の反対側まで見えた部分がある。
どうやら壁の方が厚みがあるようだ。
うん、やっぱり唾液の酸性と量が変化してきてる。
7日目。
かなりガタガタ言うようになった。
もうそろそろ良いだろう。
「と言うわけで唾液を吐き続けるのは
卒業しようと思う」
「ついにですか!
いやぁ暇でしたよ」
「うんうん、そうだろうね
ずっと食べて寝てたもんな」
「だってやる事ないんですよ」
この数日間、アリスは本当に食べて
寝てるだけだった。
たまに何処かに飛んでいっていたが
基本的にはそれだけだ。
食事の用意は唾液を出しつつ
獲物を焼いてあげた。
スキルと魔法の同時使用の良い練習にはなったけどね。
そういえばアリスは太ったりはしないんだろうか?
さて、1週間程掛けて浮き彫りにした扉が
目の前に俺は魔力を練りに練っている。
スキルを多重起動し全身を強化する。
筋力も限界まで上げる。
よし、準備は万端。
いってみるか。
「とつげきぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
俺は全身にムチを入れフル加速で扉に向かう。
「おんどりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
そのままの勢いで扉にドロップキックを御見舞いする。
もちろん風魔法で勢いをプラスも忘れないぜ。
激しい衝突音と共に乾いた音が響き渡る。
更に何かが崩れるような鈍い音がし・・・・・。
ズズーーーーン。
ゆっくりと扉は向こう側に倒れていった。
そして俺の両足は砕け散った。
足が砕けたので両手で這って中に入ると
そこは通路と同じ素材で作られた部屋だった。
中には何もない。
装飾も次の階への扉もない。
ただ、中央に人影があった。
座り込みこちらに背を向けて作業中のようだ。
「もう、さっきからドタンバタンと誰っすか~
まだオープンして無いっすよ~」
そう言って振り向いたのは
若い兄ちゃんだった。
「あれ?アンタ誰っすか?」
それ、俺が聞きたいよ。
やっと話が動きそうです。




