2-1
新章開始です。
骨です。
骨骨です。
ロックです。
森山実留です。
ダイエットに成功しました。
体脂肪率0%です。
アスリート体型なんて目じゃないですよ。
骨に転生したものの犬の時に比べて
あまり動揺はなかった。
≪種族変更耐性≫の能力だろうか。
絶対に後追いで追加しやがったよな。
明らかに犬よりも骨の方がきついじゃねーか。
何にせよパニックにならないのは良い事だ。
なんせここは迷宮。
何処かの小さな小部屋のようだ。
部屋の中には自分以外の生物は居ない
まぁ骨の俺を生物と言って良いのかは不明だが。
とりあえずステータス確認を行う。
名前:森山実留
性別:不明
種族:スケルトン
年齢:不明
≪スケルトン≫
生物が死んだ後に骨だけになった状態で
魔力が集まり生命を持つにいたった。
生命に強い執着がある為、生物に襲い掛かる。
やっぱしスケルトンだった。
見た目は分らないけど手足を見る限りでは
人族っぽいんだけどね。
顔みたいけど怖いんだろうなぁ。
職業、称号、スキルは表示されなくなった。
これは神システムのVerUPによるのかな?
アップデート内容が告知されないってのは
運営としてどうなのよ。
メニューを見ていくと職業、称号、スキルの欄があったので
それぞれ見てみると今迄のは全部引き継いでいるようだ。
これは実際に試してみよう。
次に体を動かしてみるも普通に動く。
手先も足先も意識して動かせる。
最初はカクカクしたが意識する事によって
徐々にスムーズになってくる。
ただ無意識に動かすとカクカクさは否めない。
ん~、体の使い方なんかも検証する必要があるなぁ。
そして驚いたことに呼吸が出来る。
肺も何もないけど呼吸的な事は出来る。
実際の呼吸とは違うんだろうけど感覚はある。
謎だ・・・・謎過ぎるぜ・・・マイボディ。
よし、そろそろかな。
本来であれば最初にやるべき事を後回しにしていた。
システム周りのチェックよりも先にやるべき事を。
> ナビゲーションアプリを起動します
> 転生後の初回起動の為、調整を行います・・・・。
目の前に光の粒が集まってくる。
フワフワと何かが漂っている。
多分、これが調整中って事なんだろうな。
少し経つと輪郭がハッキリしてきて
ブワァっと強く光ったと思うと。
「実留さん、無事にてんせ・・・・ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
アリスが唐突に叫声をあげて殴りつけてくる。
ポクっと音がするものの痛くはない。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!骨!骨!
きもちわるいぃぃぃぃぃぃぃ!!
だずけでぇ!実留ざんだずげでぇ!!!!」
顔を恐怖でボロボロにし。
涙でグジョグジョにしながら飛び回って
小石やらなにやらを投げつけてくる。
「待って!アリス!
俺だから!実留だから!」
「うわぁぁぁ・・・だずげでぇ・・・・って?
実留さん?」
「あぁ、俺だアリス」
「グズッ・・・・グズッ・・・本当に実留さん?」
「ああ、本当に俺だ
今回は骨になっちまった」
「もうなんだ~、そうならそうって言ってくださいよ
びっくりして損しちゃいました」
「いや・・・呼び出した途端に叫ばれたからさ」
「もういやだなぁ~」
「さっき気持ち悪いとか言ってなかった?」
「いやいや、そんな事ある訳ないじゃないですか
も嫌だなぁ実留さんてば」
無言でズイっと顔面を近づける。
「アリス君なんで顔を逸らすんだい?」
「あはは、そんなに見つめられたら
恥ずかしいじゃないですか」
「・・・・・・・・」
「すみません、何もない眼窩に赤い光が灯ってて
キモコワイです・・・・」
正直な感想は人を傷つける事もありますね!
「そういや、さっき俺の事をぶったり
石を投げてきたけど攻撃できるの?」
「そういえばそうですね、少々お待ちを
ん~、神システムのVerUPに伴って
ナビアプリも更新されているようです
え~と、説明がありますね
"物を触れるのに攻撃出来ないって微妙だよね
解除しておくから君も頑張ってね
でもすっごい弱いけどね、あはは"
だそうです」
「説明で笑うってなんだよ・・・
相変わらずの適当さだな」
「なんにせよ実留さんの手助けが出来るように
なるのは良い事ですよ」
「まあな」
「さて、また最初からやり直しだ
よろしくなアリス」
「はい、頑張りましょう
って凄いポジティブですね」
「あぁ、こうなっちまったら仕方がないしな
実里に会いに行くっていうのも中途半端だし
そういや、あの後ってどうなったんだ?」
「実留さんの下半身が綺麗さっぱり無くなった
後に私の記憶もスッパリ終わってるんですよね
多分ですが実留さんと連動したんだと思います」
「そうか・・・実里とブタ子は元気かな」
「現状だと確かめようがないですしね」
「だな、うし周辺から確認しよう」
アリスと小部屋を検索する。
石と木で出来た様なベットのような物と小さな机。
後は物入れぐらいしかなかった。
どうやら誰かが住んでいた場所のようだ。
ふむ、俺はその誰かの骨を使ったのだろうか。
見つけた物で使えそうなのは
ボロボロのショートソード。
同じくボロボロのスモールシールド。
少しだけマシなナイフ。
他にも日記のような物や服もあったが
ボロボロになっていて使い物にならなかった。
ランプは燃料が無かった。
剣と盾は手に持ち、ナイフとランプは
アイテムボックスに収納しておいた。
アイテムボックスは容量がどーんと増えていた。
これで当面は大丈夫だろう。
流石に貴重なポイントをぶち込んだだけはあるぜ。
≪捕食者≫があればスキルも奪えるようだしな。
残念ながら以前のアイテムは引き継げなかったようだ。
しっかし、見た目は完全にゲームのスケルトンだぜ。
アリスに見てもらった所、骨格は人族のだろうとの事だ。
小部屋には扉があったので外の様子は伺えないが
扉からは微妙な魔力を感じた。
≪鑑定≫すると魔物避けが掛っていた。
外気の魔力を循環させる作りでなかなか高度だ。
部屋が荒らされてないのはありがたい。
少しの間、剣を振ってみる。
フラつきはしないが剣の使い方なんてわからん。
実際に戦ってみるしかないようだ。
「アリス、外に出てみよう」
「そうですね、ちょっと様子を見てみましょう」
ドアをそっとあけてアリスに外を伺ってもらう。
「何もいませんね」
「うん俺の感知にもひっかかんない」
お馴染みの≪魔力感知≫と≪嗅覚≫と
≪風魔法≫の併用だ。
鼻が無いのに≪嗅覚≫とは如何なものかと思うが
使えるのだから良いとしておこう。
ファンタジーだしなうんうん。
部屋を出ると通路が左右に広がっている。
ポーラスの迷宮と同じような作りだが
素材が少し違う。
あっちよりも明るいと言うか見渡しやすい気がする。
右手を選んでソロソロと進む。
角の度に右に曲がれば迷いはしないだろう。
10分ほど進むと次の角の先に
生命反応をキャッチ。
どうやら芋虫型のキャタピランドだ。
しかも有り難い事に単独。
動きも遅いし初戦の相手には良いな。
犬の時よりも確実に俺の機敏性は落ちてるし。
吐き出す糸は面倒だが火で焼けるから何とかなるだろ。
≪大声≫発動。
「クカカカカカカカッ!」
我ながら嫌な声だ。
スキル使わないで普通だとカタカタとしか言えないしな。
それ骨とかが当たってる音で声じゃないですから!
声帯もないのにスキルは無事に発動。
同時に角から飛び出す。
糸を懸念して顔面に炎の矢を食らわす。
「ピィギャルルルルル」
直撃したものの皮膚には粘液で濡れている上に
威力も高くないのであまり効果はない。
ただ牽制にはなったので横をすり抜けながらショートソードを一閃。
ズブリ。
そんな感触を残りながら皮膚を切り裂き
かなり深めに刺さる。
そのまま引き抜こうとして
パキッ。
折れる。
なっ、なんだってーーーーーーー!
初撃で剣が折れるとはどういう事だ。
動揺してた瞬間を見逃してくれるはずもなく
お尻を振り回してくる。
それをスモールシールドで防ぐ。
ボクゥッ!
おおう凄い衝撃だ。
少し吹き飛ばされたものの
盾で防いだ俺にはダメージは無いぜ。
この体は軽いんだなぁ。
バラッ。
砕ける。
なっ、なんだってーーーーーーー!
1発で盾が砕けるとはどういう事だ。
度重なる出来事に動揺するのを
見逃してくれるはずもなく
頭から突撃してくる。
「うおぉぉぉぉぉぉ」
全力で横にヘッドスライディングで飛ぶ。
ゴリゴリゴリゴリ。
嫌な音がしつつも何とか避ける。
地面には白い跡が残る。
あぁ、昔は実里と石で地面に色々と書いて遊んだなぁ。
そんな思い出が蘇えりホロっとする。
今回は身を粉にしてますがね!
必死に立ち上がってキャタピランドと対面する。
「アリス、武器なくなっちゃった!」
「実留さん、任せてください」
アリスをみると少し大きめの石を
プルプルしながら持ち上げている。
どうやらキャタピランドの頭に落とすようだ。
俺はアリスに親指を立てサムズアップし
作戦了解の合図を送る。
タイミングを合わせ炎の矢で牽制を行う。
「今だ!アリス!」
「食らいなさい芋虫よぉぉぉぉ!」
ひゅー、ポク。
「「・・・・・・・」」
あれだうん!
アリスが持てる少し大きめの石って
普通に小石だからね。
「ダメージゼロじゃねーかぁぁ」
「実留さん、後は任せましたよ」
そういってアリスは天上ギリギリまで逃げる。
役に立たねぇ。
もう、あれだアレをやるしかない。
炎の矢で僅かずつだがダメージを与えつつ
キャタピランドの突撃と糸を躱しながら機会を伺う。
「ここだぁ!」
キャタピランドが突撃する瞬間に
目の前に火の球を出す。
これにぶつかるも威力はなく音がデカいだけ。
本命はキャタピランドの足元に作った突起だ。
≪生活魔法≫でもそれぐらいなら出来る。
気にせずに突き進むキャタピランドは
見事に引っかかり前のめりになる。
「倒れろやぁぁぁ」
すかさず横から前蹴りを入れて
初撃の剣で付けた傷を上側に倒す。
「おうじょうせいやぁぁぁぁぁ」
傷口に右手で抜き手を突き刺す。
何処からかゴキィと鈍い音がするものの高ダメージだ。
「ピィギャァァァァァ」
「まだまだぁぁぁ」
右手にありったけの魔力を注ぎ込み炎を起す。
「ピィギィィィィィィィ・・・・・・」
キャタピランドは香ばしい匂いをさせながら
動かなくなった。
右手を抜くと右腕の手首から先は折れ曲がり
黒く焦げていた。
先程の鈍い音は俺の手が砕けた音みたいだ。
なんつぅ弱い体だ。
転生ポイント50は伊達じゃないぜ。
「大丈夫でしたか実留さん」
「あぁ、なんとかな右手はボロボロだけどさ」
「痛みとかは?」
「そういえば痺れたりの感覚はあるけど痛みはないな」
「それなら良いんですが」
さて、ついに≪捕食者≫の出番だぜ。
これはあれだな強靭な皮膚とか糸を吐けるスキルとか
をGETできるに違いない。
声帯なくても≪大声≫が出来るんだ糸ぐらいは
出せるようになるっしょ。
ナイフを取り出しキャタピランドを解体する。
一口大に切り取った肉を口いっぱいに含む。
グシャグシャ、ゴックン。
ビチャ。
地面に落ちる。
「「・・・・・・・・」」
骨じゃ喰えねーよ!
≪捕食者≫は発動しなかった。
ですよね~。




