7-19
自分以外の方々が豪華すぎて良くわからない状況になっている森山実留です。
そもそもがこの世界に来たのって妹を追いかけて来ただけなんですが・・・・。
アイツ元気にしてるのかなぁ・・・・出番ないけど・・・。
☆
その後、周囲を落ち着かせながら俺が説明をした。
ルエラには全て話しても構わないと了承を得た上でだ。
俺が転生している事については全員が知っていた事だしな。
一応、事前に絶対に口外しない事を全員に了承して貰っているのだが
「念の為に私が皆様に話した内容を口外出来ないような魔法を掛けさせて頂きましょう」
ガインツがサラっとトンデモな事を言いだしたので
何となくコイツの性格が分ったような気がしなくもない。
話しが大きな事になってきたが
俺に責任がある訳じゃないがこうなったら皆を道連れにしちまおう。
因みにガインツの魔法は副作用なしで解除は簡単だそうな。
~
ルエラが補足しながらも俺の説明が終わった時は全員が無口だった。
創造神やら世界神やら裏迷宮や管理迷宮、そして更に俺の連続転生。
そりゃ理解が追い付かないのも理解できる。
俺も当事者じゃ無ければ「はぁ?」の一言しか出てこないだろう。
「ふむ、この国というより世界自体が危険とは言うが
実際の所はどのような状況なのだ?
具体的にはどのような影響があると想定される?」
皆が沈黙を守る中でミガが質問する。
「そうだな・・・・・一番最悪の状況を考えるのであれば
この世界自体が崩壊し次元の狭間に飲み込まれると言った所だろう
存在自体が消滅するので生物も無機物も何も残るまい」
「一番最善では?」
「生命活動に必要な各種の要素が維持出来ず生物が生きれぬ世界になろう
世界は維持されるが死の世界となるであろうな」
「どちらにせよ我らが存続していくのは不可と言う事だな?」
「世界を維持構成するシステム自体に異常が起きている状態だ
システムが止まれば維持は出来ぬさ」
「それはどれくらいの猶予があるのだ?」
「詳しく調査をしてみぬ事には現状での明言は我にも出来ぬ
今、この瞬間に訪れるかもしれないし数千年、数万年は持つかもしれん
だが今この時も世界のバランスは崩れ続けていると言うのは間違いないだろう」
「ふむ?
となると僕が調査した結果と照らし合わせると予測範囲が上がるかもしれないね
各地で様々な事が起きているのは僕の方にも情報は集まっている」
「ならば私の観察記録も合せて結び付けましょう
システムとのリンクは切れていますが私自身が観測した記録があります」
どうやらガインツも迷宮ボスと同じ状況のようだな。
聞くとガインツ自身が目覚めた時は既にリンクは切れていたようだ。
先代との交替時に何かがあったのか、何かがあったから世代交代したのかも不明だそうだ。
「それでは少し話を詰めるか」
「あ、ちょっとその前に頼みたい事が!」
ルエラが立ち上がろうとした時ドパール卿が手を上げた。
~
翌朝、闘技場で何故か向き合うルエラとドパール卿が居た。
ルエラは全身魔装を生成し素手で対面している。
ドパール卿は・・・・何と言うかアレだ。
人型と言うよりは手の長いゴリラ型と言うのだろうか?
ゴリラにしてはやけにスタイリッシュではあるがシルエットはゴリラだ。
大きさは人よりも数回り大きく鈍黒い色のやけにSF感が強く銃以上に違和感がある。
ロボット?外骨格?それともパワードスーツ?どう言えば良いのかよくわかんないのだが
とりあえずドパール卿はゴリラ型のそれに乗ってルエラと向き合っている。
事の始まりは昨日のドパール卿の発言だ。
一言で言えば作品の性能評価をして貰いたい、だ。
どうも神に通じると思われる程の物を作成したと。
その性能をルエラに見て貰いたいと。
代わりに世界の異変についての調査に全面的に協力するとね。
それでルエラもOKしたんだがまさか作品てのがあんなのだとは思っても居なかった。
「それじゃよろしく頼むよ
性能には自信はあるけど勝てるとは微塵も思ってないから
手加減はして欲しいな」
「性能評価であればある程度は動きを見なくてはなるまいよ
即座に終わらせるつもりもない
安心して向かってくるが良い」
そう事前に話を合わせると両者は激突した。
ドパール卿のゴリラ型兵装は肩甲骨付近から光りの奔流を放ちながら
大きさと形からは想像出来ないような機敏さで前後左右上下に動きルエラに攻撃を加える。
その攻撃も特徴のある両手で殴る、手を支点に器用な体捌きで強烈な蹴りを放つ。
ルエラの体制を崩そうとショルダータックルをすると言う体術も見事だが
それに加え各所から降り注ぐ実弾からレーザーの様なモノ、果ては氷や炎と言った魔法らしき攻撃。
俺が食らう側だとするとゾッとするような多彩な攻撃だ。
繰り出すタイミングも計算されていて実に隙がない。
「攻撃は見事と言って良いだろう
威力も手数も申し分なく一級品と言って良い」
そんな事を言いつつもそれをルエラは涼しい顔で捌いていく。
「ははは、そんなに簡単に防がれてかすり傷すら付けれないのに」
「なに通常の範囲であればと言う事よ
我に、ましてや神に挑もうとするのならば更に重い一撃が必要になる
この世界の者であれば魂をも掛けた一撃をな」
「でわ受けて貰えますかね?その一撃を」
「ふふ、面白い!全力で打ってみるが良い」
そう言うとドパール卿は距離を取った。
ゴリラ型は今迄の運動による加熱を強制冷却するかの如くプシューと全身から蒸気を噴射した。
排気が止まると両手を着きやや前傾し肩や腰、前腕部等の各所の装甲がパカっと開いた。
「ヒュゴォォォォォ」と吸気音が鳴り響くと同時に「キュオォォォォォォォォ」と甲高い音がする。
背中から再度光の奔流が迸るが先程との比じゃ無い位に大きく輝きも段違いだ。
「ん・・・・・?神の力を感じるな・・・・」
「わかりますか?まぁ種明かしは後でと言う事で!」
ゴリラ型からの音が空気を割くかの如く限界まで高まった瞬間に口部が開き極光線が放たれた。
闘技場全体が閃光に埋め尽くさるかの眩い光がルエラに突き進み・・・・直撃した・・・と思う。
実際には光が強すぎて殆ど見えなかったんだ。
その後に訪れたのは爆風と爆音の豪嵐。
全員が吹き飛ばされ俺も耐えられずに吹き飛び壁に叩きつけられた。
念の為に防御魔法は張っておいたのにあっさりと消し飛びやがった。
「痛ててて・・・・なんつう威力だよ、つうか!おい!ルエラ!大丈夫か!
これ周囲にも被害でてるんじゃないの?!」
吹き飛ばされる前にルエラが何も防御を展開していないのは確認している。
流石にこの威力を直撃じゃ・・・。
「安心するがいい、我は無事だ
それにしても・・・・・・やるではないか我に傷を負わせるとは」
視界がクリアになると全身に魔装を生成したルエラが右手を前に突き出した形で立っていた。
だがその右手の魔装は肘辺りまでボロボロになり皮膚は爛れ赤み、血が滲んで垂れている。
「は・・・はは・・・・アレを・・・片手一本で封じ込め対消滅させましたか・・・」
「なに、普通に食らっても良かったんだが周囲に被害が出そうだったのでな
お陰で傷を負ってしまった・・・・そう言えばここまでの傷は初かもしれんな」
確かにルエラは怪我をした事が無い訳ではないがあそこまでの怪我は無かったハズだ。
しかも簡易的な魔装ではなく本格的な全身魔装では確かに初だ。
魔法で防げば周囲に反射や余波で影響が出てしまう為に圧倒的な力で抑え込みきったって訳だな。
ルエラは右手を軽く振ると怪我が一瞬で治り魔装が再生成される。
まぁあの程度ならルエラにとっちゃなんでもないしな。
「僕の限界ギリギリの1撃がその程度ですか」
「我に手傷を負わせる事が出来たのだ誇るが良い
僅かとは言え神力も使わざるえなかったのだ目的は果たしたと言って良いだろう」
「それは素直に嬉しいと受け取っておきますよ」
「さて、攻撃は見たが次は防御だな」
ルエラはニヤリと笑うと一般人でも間違いなく分かるであろうレベルで右拳に魔力を圧縮し纏わり付かせる。
神力は感じないので単純に魔力だけだと思うが異常な濃度で右拳周辺だけ空間が歪んだかのように見える。
慌ててドパール卿がゴリラ型を防御姿勢に持って行く。
限りなく前傾姿勢で腰の辺りからは何かが射出され地面に固定される。
開いていた外装は全て閉じ背中の光の翼らしき物は両肩から前面に展開され機体を覆った。
更に周囲には光のフィールドが張られバリアのようなものも張られている。
準備が整った事を確認したルエラはトンっと軽く跳躍し右拳で単純に殴った。
再び訪れる爆砕音と爆風、それに何か硬い金属がヒシャゲルような音がすると
ゴリラ型はズタボロになりながら外壁まで吹き飛び・・・・そのまま突き刺さり前に崩れ落ちた。
確か闘技場の壁って異常なまでに強化されていて王都に絶対に被害が出ない様にって話だよな。
完全にめり込んで壁が壊れちゃってるよなぁ。
「ふむ・・・・・防御はそこまでではないようだな」
軽く呟いたルエラだが表情を見るに「やり過ぎたか?」と焦っていたのを俺は見逃さなかった。
~
両腕がほぼ全壊し原型を留めておらず頭部も半分もげ、胴体部の装甲も大きく陥没し各種装甲が剥がれ落ちている。
下半身に至っては地面にガッチリ固定していたのが災いしたのか千切れている。
地面から抜けるよりも早く千切れるってどんなけのインパクトなんだっつぅ話だ。
プシューと音と共に首の後ろ部分が大きく開きドパール卿が出てくる。
「流石に此処までとは思わなかったよ」
搭乗するのを見て無かったのだがあそこか出入り口なんだな。
胴体内で操作するタイプの様だ、って他にどんなタイプがあるかは知らんが・・・後で見せて貰おう。
「攻撃が見事な物だったのでな思わず全力では無いとは言え手加減を忘れてしまった」
「実際に限界値ギリギリを試せたのは僕としても有難い
それにここまでボロボロでも搭乗員にはまだ余裕がある位には耐久度は残ってるんだ」
「ほうそれは凄いな
先程感じた神の力もそうだし防御にも利用しているな?
教えて貰えるんだろうな?」
「約束ですからね」
かなり疲れている様子のドパール卿ではあったがルエラと話せることが余程嬉しいのか
楽しそうに2人で消えて行った。
「・・・・・・・・吹き飛んだ全員とかメチャクチャな闘技場は放置かよ」
あの2人は興味がある事にしか興味がないのかね。
この後の片づけはきっと俺が手伝う事になるんだろうな・・・・ハァ。
とりあえず軽傷や気絶してる奴らを回復させつつ回収する事にした。
~
それから数日後、事情を知っている面子達での行動方針が決まった。
まずパーセラム王国に残る者達。
これは当然の事ながらミガ、そして前王のセンドゥールとララとディズ。
王が動くわけにはいかないがディズが国としての窓口として各種手配等でバックアップしてくれる。
ララはその実働部隊と言った所だ。
次はハイエルフの森に行く面子。
なんと例のゴミ箱と言うか処理場はどうも世界の余剰エネルギーを回収する役割を持つ
神のが作った世界の維持システムの1つらしい。
俺の経験を話した時にルエラ、ガインツ、ドパール卿が食い付いた。
本来の使い方かどうかは不明だが稼働してたことを考えるとシステムが生きている可能性はある。
上手く行けば情報にアクセス出来た上に少しでもバランス調整が行えるかもとの話だ。
ルエラやガインツが存在を感知出来ない程に秘匿されている事からも可能性は高いとの事。
勿論、ドパール卿の情報網にも引っかかってなかった。
これにはルエラ、ガインツ、ドパール卿の3人とゼノーヴァとリノンが護衛に着く。
ルエラが居る時点で問題無いとは思うがハイエルフ達は超排他的だしな。
外から調査に赴くなんて奴らが来たら何をするかわからんしな。
ドパール卿の専属護衛って考えれば良いだろう。
ルエラはバランス調整の為、ガインツはシステムへの再アクセス復旧の為、そしてドパール卿は興味の為だ。
他にも幾つかこのような管理機構と思われる場所があるそうなのでそっちも巡る予定だ。
好奇心旺盛組は準備が出来次第とっとと出発していった。
そして最後に残った俺とロージーは当初の予定通りフィラルドへ実里に会いに行く。
パーセラム王国からの特使として向かうので向こうで会えるのは間違いない。
寧ろ国として正式に申し込みを行い受理されたのだ相手が居なくてすれ違いなんて事もない。
ただ、その分調整に日数が必要となってしまうが確実に会えるなら問題ないだろう。
指定された日時はまだ少し先だがミガに色々と頼まれ事をされているので暇でもない。
「私がミノルをバックアップするのだ代わりに少しばかり手伝ってくれても良いだろう?」
そう言われちゃぁ従うしかないよな。
「闘技場で仮面を付けて戦うとか嫌だぞ」
「それも頼みたかったんだかな・・・まぁ良い他にも頼みたい事は沢山ある
内情をある程度知ってて信用出来た上に身上は誰も知らず強いなんて便利だ」
「少しばかりの手伝いなのに頼み事は沢山なのか?」
「なに気にするな
提供してる部屋も最高の食事も酒もフィラルドへの手配も全てこちら持ちだ」
「それを言われると辛いなぁ
女王様は何を私めにご要望で?」
「そうだな・・・・酒でも飲みながらミノルの事を教えて貰おうか
どんな物語を読むよりもそっちのが面白そうだ
もれに私が字を読むのは相当に疲れるから仕事上以外では勘弁して貰いたいからな」
ミガの目は過去の事件で視力を失っているが生活に支障が無いのは
"魔眼の神"から貰った能力のお陰で文字も判別出来るがずっと追い続けるのは疲れるようだ。
そういえばその事件の事も聞いてなかったな。
「自嘲にするには話が重すぎるっての・・・・・真相究明はしたのか?」
「ふふ、そうか・・・そこら辺も話してやろう」
ニヤリとミガが笑うと丁度、料理を持ったララと酒を大量に抱えたセンドゥールが帰ってきた。
そしてその匂いで寝ていたロージーが目を覚ます。
「丁度いい所に帰って来たな今から酒のツマミに我が父の事をミノルに話そうと思っていた所だ。
ミガがそう言うとセンドゥールは露骨に嫌さそうな顔をする。
「お前本当に性格悪いな」
「なに、部下の勝手な行動に気が付きもしなかった前王の間抜けさを話すだけだろう」
ミガが笑ってそう言うもセンドゥールは満更な感じじゃないようだ。
あんな過去を笑って話せるようになったのは本当に良い事だよな。




