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7-15

パーセラム王国に辿り着いた森山実留です。

奴隷だった国に来るなんて色々と思う所はあります。

ロージーを出場させて賭ければ儲けれるんじゃね?!

寧ろルエラとタッグ組ませれば色々と出来るんじゃね?

"選定の儀"とか簡単に突破出来そうなんですけど・・・・。



 ☆



王国南方領グリフェリアを抜けると

以前より整備された街道が現れ格段に進みやすくなった。

相変わらず街道沿いには検問のような物は無く誰でも入国出来るようだ。


幾つかの宿場を経由し首都であるセッタニアを目指す。

時折巡回している警備兵と思われる国軍の集団とすれ違った。


何組かの集団の中に時折制服が違う者が居る。

何かの魔道具なんだろうがすれ違う者達に向けては確認を繰り返していた。


「ルイーシャ、アレは何だかわかる?」


ルイーシャは俺達に状況を説明してくれた獣人族の女性だ。

ここ数日で随分と打ち解けたと思う。

他の2人は話してもくれないけど・・・・。


「あれは獣人族に対して不正と言うか悪い事をする者を識別する魔道具だそうです」


「不正を識別する?

 どういう事?」


「反応が出た者は拘束され連行されると言われています

 私達の村は大きな街道からは外れてましたので

 接する機会も無く詳しい事は分りませんが・・・・」


「悪い事を識別?・・・・ってロージーは何か知ってる?」


道中からずっと御者をやってくれているロージーは何かを思い出すかのように空を見上げ。


「んー、いや特に無いなぁ

 多分、国が公的にやってるんだろうけど主軸な事業じゃない気がするね

 特定人物や物質ならまだしも人物の行動が識別出来るなんて信用できないし」


「魔道具の数も少なく主要街道等がメインで細かい場所までは網羅はしていないそうです

 言われてみれば確かに公的に発表されている情報ではないですね」

 

「あくまで噂話ってレベルなのか」


「実際は別の目的があっての行動だろうけど説明がないから

 そんな噂話が蔓延してるって所じゃないかな?」


「それは有りそうな気がするな

 なんにせよ俺達には関係がないだろうから気にするだけ意味ないか」


「そう言う事だね

 さて、馬車を進めるよ」


話しに合せてゆっくりと進んでいた馬車をロージーが少し早めようとした時に

前から警備兵の集団が近寄ってきた。

丁度、話していた魔道具持ちも居る。


「君達、ちょっと良いかな

 簡単な検査をさせて欲しい」


警備隊の隊長だろうと思われる獣人族の男が話しかけてくる。

鍛え抜かれた体が制服の上からも分り眼光も鋭く強靭さを感じるが

物腰は柔らかく言葉使いも丁寧だ。


ロージーが馬車を止めて俺に合図を出してくる。

まぁこの集団でリーダーと言えば俺になるのか?

いやわからんが。


「はい何でしょうか?」


「魔道具で簡単な検査を行うだけなんだが良いだろうか?

 強制ではないんだが出来れば協力してもらえると助かる」


丁寧な言葉の裏には「拒否をしても強制的にやる」と言うのが見え隠れする。

これあれだ・・・・うん、警察の職務質問みたいなもんだな。


「いいですよ

 このままで良いんですか?」


「協力を感謝する

 乗車したままで構わないしすぐ終わるよ

 おい、始めてくれ」


声を掛けられた異なる制服の者が足早に近寄ってきて魔道具を向ける。

ロージーやルイーシャなんかが向けられた時には何も無かったのに

俺だけ何度も魔道具を向けられる。


「た、隊長・・・・は、反応が・・・・」


「何?本当か?」


「はい!何度も確認しました!

 この男性から反応があります」


「落ち着いて確実に再度チェックを行え」


どうやら反応が出て隊長と魔道具担当がバタバタとしだした。


「何か問題でもありましたか?」


「いえ・・・・その・・・・問題と言う訳ではないのですが・・・・」


強面の隊長がシドロモドロになりつつ事情を説明してくる。


例の魔道具で該当者が出ると城に連行しろとお達しがあり編成され行動しているが

どうも隊員達にも詳しい理由は教えられていないと。


「噂では犯罪者や予備犯をいぶり出す道具と聞いていますが

 それに引っかかったと言う事ですか?」


「いや、それは流布されている噂でして

 実際には扱いは丁寧にと言われていますが私も反応があったのが初めてのモノでして・・・

 それとまぁこう言っては何ですが警備隊の設備になるので

 丁寧な扱いと言いつつも貴方達の荷馬車と対して差が無いので微妙と感じるかもしれませんが」


「それは強制ですか?」


「いえ、強制ではないですが報告は上げる事になりますので

 国内での行動に制限が掛けられる事もあるかもしれません

 悪いようにはしないとの事なので出来れば御一緒頂けると此方としても助かります」


「すまないが、連行先は城と言ったが間違いないかな?」


「はい、城にお連れする事になります

 手荒な真似はしないと私が保障しましょう」


隊長は急に割り込んできたロージーにも丁寧な態度だ。


「ミノル君、どうせ行先は同じなんだ

 任せてしまえば楽も出来るんじゃないかな

 後ろの三人も任せれるしね」


「何か事情でも?」


ルイーシャ達の事を説明すると驚きつつ凄く感謝された。

そして3人は保護し確実に村に帰してくれる事も約束してくれた。


詳しい事情聴取と調査に協力して貰う為に城に向かう必要があり

今少し一緒に居る事になったが伝令を村まで送ってくれる事だし一先ず安心していいかな。


とりあえず向かう先は一緒なんだ。

ここは大人しく世話になるとしよう。


 ~


首都までの道のりは警備隊と一緒と言う事もあり何も問題なく進んだ。

隊長自ら荷馬車の御者までやって貰い申し訳ない位だとは思うが

実際には俺達の監視の意味合いもあったんだろうが扱いは丁寧だったので文句は無い。


街道を進みパーセラム王国の首都であるセッタニアが近づくと人通りも多い。

以前より国が活気付いている為に人口も結構増えているのかもしれない。

その影響か街道も混んでいて馬車も思うように速度が出せずスローテンポとなっていた。

これも急速に発展してる弊害なんだろうかね。


「最近は首都近くの主要な街道は混んでいましてね

 それだけ国が栄えているって事なんでしょうが色々と問題も多いですよ」


「例の盗賊団のような事も多いんですが?」


「人攫いのような大がかりな事件は少ないですが強盗や揉め事は多くなりましたね

 獣人族は元々が強い種族ではありますが向こうも分かってるので数で数で来るんですよ

 端々まで我らの手も届きにくいですし何ともですよ」


「人口や物の流通が増えると仕方がないですよ」


「自分達の目が届かないのが全て悪いのですが

 そう言って貰えると気持が楽になります

 それに甘える訳にはいかないですけどね」


そう呟く口調は苦い物を噛み潰したようだ。

どちらかと言えば閉鎖的な傾向があった国が外に目を向け出したんだ。

急な変化は内外共に色々とあるんだろう。


「このまま進むと夜中になってしまいます

 手前のキャンプ場で朝を迎え早朝に中に入る予定です」


「急がなくて良いの?」


「中に入ればそのまま登城して貰う手筈ですし

 今からの時間だと中で宿を取るのも難しいです

 街の手前にはキャンプ地もありますのでそこが良いでしょう

 あと少しだけ柔らかい寝具は我慢して欲しいですが」


「わかった」


「夜は手持ちの食材を全て使い切るから期待して貰って良いですよ

 といっても何時もより具が多くなるだけでしょうが」


そう笑う隊長には裏があるようには思えない。

本当に何も現場レベルまで知らされていないのか?

城で待ち構えているのは良い事か悪い事か。

ミガが関わってるなら何とかなりそうな気もするけど

そうじゃなかったら面倒な事になりかねないよな。


最悪は周囲を吹き飛ばしてでも逃走すれば良い。

とまぁ、それは最後の手段だが色々と出来る事はある。

何にせよ城まで行けば分る事だ。


どうせ最後ならと俺は隊長に裏迷宮産は無理だが手持ちの食材を色々と渡すか。

自由に食える最後の晩餐かもしれないんだ少しは楽しむのも良いだろうさ。


 ~


大きな街周辺には大抵の場合は街道沿いに夜を明かす為のキャンプ場がある。

特段、何がある訳では無いが広く切り開かれた場所があるだけだ。

街などへの夜間入場は基本的に多くの入場金や補償金が必要となるので夜明けを待つ者達は多い。

それだけ街側としても夜間入場のリスクは高い。


誰だって無駄な金は払いたくないし夜に入って仕事が出来る訳でもないしな。

なので街の手前に皆で集まって安全に夜を明かす場が出来るって訳だ。


正式に開拓された場所ではなく宿も無ければ食堂等も無い。

街の近くなので危険は少ないが見回り等もないので全て自己責任だ。

もっともこんな場だからこそ屋台や行商、見回りの冒険者達等の

様々な食い扶ちが転がってるってのは間違いないんだけどな。


お目付け役が1人付けられたが好きに見て回って良いとの事なのでウロウロと見て回る。


「思ってたよりも大きな規模だし活気もあるね」


「余裕がある者は最後の売り出しとばかりに放出するし

 ギリギリで辿り着けた者は最後のひと踏ん張りで糧を得ようとする

 人が大勢いれば安心は高まるがそれだけ魔物に狙われやすくもある

 それを守る冒険者や護衛にも仕事はあるさ」


「なるほどね

 どこに行っても逞しいもんだ」


「それが生きるって事なんじゃない

 さて、私達もその恩恵に預かろうか」


区画整理されていないフリーマーケットのような雑多なエリアを歩き

目ぼしい物や掘り出し物を見つけ気に入れば買っていく。

値段交渉なんかも楽しいし良いモノが手に入れば嬉しいもんだ。


俺は珍しい香辛料と警備隊の人にお土産として幾つか酒を買った。

今日の夜は仕事中で飲めないかもしれないが明日は街中なんだし

手土産とするのも良いだろう。

色々と思う所はあるが丁寧に此処まで連れてきたのは間違いないんだし

こちらとしても最後まで礼を尽くしておけば悪いようには扱われないだろうさ。


・・・・・まぁ普通に飲んでたけどな・・・・隊長すらも。

勿論、見張りと周囲の警備担当は一滴すらも飲む事を許されなかったが

代わりに飯は優先的に好きなだけ食べて良いとなった。

この隊長やり手だよなぁ。

本人、軽く飲んだら直ぐにベロベロになって寝ちゃったけど・・・・。

確か獣人族って酒に強いのと弱いのが極端に出やすいんだっけ。


 ~ 


翌朝は少し遅めの準備と出発となった。


「まぁ、登城するにしても朝から入れるのは事前手続きした場合だけなんだ

 此方も朝一で伝令は送っているから入場を多少遅らせた方が丁度いいのさ」


朝一は混むらしく出入り口を受け持っている同僚に

手間を掛けさせたくないとの思いもあるらしい。

この人、外見が完全にガチガチの武人系なのに中身は凄く良い人っぽいよな。

物凄く損をする性格っぽいけど。


出入り口では申請さえしてしまえば身なりのチェックすらされずに

一般口とは違う専用口からスンナリと中に入る事が出来た。


久しぶりに見る街並みは懐かしくそして目新しくも感じた。

元々が奴隷で自由に動ける身分じゃなかったと言う事もあるし

動けるようになってからも行動範囲はそこまで広くなかった。

何よりも街中が発展していると言うのも大きいだろう。

古くからある街並みに違和感を覚える様な新しい物が色々と混じっている。

人通りや店なんかも以前より明らかに増え活気がある。


「随分とキョロキョロとしているが

 ここに来るのは初めてか?」


「いや・・・随分と前に・・・居た事がある

 その頃とは雰囲気が違うなってね」


「現王になってから随分と国が変わったからな

 その年でその頃を知ってるって言うと小さい頃の話しか?

 人族に見えるが長命種だったりするのか?」


「いや、そう言う訳じゃないんだけど

 何と言うかね」


「すまん、踏込んでしまったな

 何か事情があるんだろう

 この国で獣人族に手を出す者には容赦はしない

 だが種別での差別もしなく平等でもある

 悪い事をしない限りは何も不平等な事は行わない事は国として約束しよう」


「ここまでの道のりでそれは理解してるよ

 俺達への対応も丁寧だったし」


「ハハ、そう言って貰えるなら此方も嬉しいさ

 仕事とはいえ獣人族以外の者にもこの国の良さを知って貰いたくてね

 剣闘士等の戦奴も有名ではあるがアレも正式に国の認可を受けている事業だ

 そりゃ奴隷なんて生臭い事もあるがどこだって同じだろ?

 それを国で保護し鍛え上げ自分の腕で人生を掴みとれる道があるだけマシじゃねぇか」


「その口調だとひょっとして?」


「あぁ、俺も戦奴上がりで国に雇われたんだ

 こう見えて若い内に実力を買われてバリバリのエリート様だったんだぜ」


真面目で国に忠義が厚く他人に心配りが出来る隊長の過去が

戦奴ってのはまた以外・・・・・でもないのかね。


その後は隊長の過去話を懐かしく聞きながらも馬車は大通りをゆっくりと進む。

しばらく行くと見えてきたのは多少は綺麗になったが俺の記憶にあるままの城だ。


「さて、どうなることやら」


馬車は俺達を乗せたまま大きな門を潜り進んで行く。

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