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7-10

皆さんこんにちは森山実留です。

異世界に転生して更に異世界かと思ったら同じ異世界でした。



 ☆



魔王を拉致してから2日が経過した。

今居るのはサイラスの外れにあるうち捨てられた廃屋だ。

魔王城からの逃亡は周囲からの認識を阻害する魔法を掛けて一気に走り抜けた。


廃屋は森の中にあるボロ小屋で元は農具等を仕舞っておいたような場所だろう。

周囲に人除けの結界を張ってくれているので少しの間は見つかる心配はしなくていいハズだ。

中は狭いが雨風を凌げるだけでも随分と助かる。

そこで魔王は眠りに就いていた。


ルエラ曰く、裏迷宮で魔物が俺達相手に全力を出せないのと

似たような感じを魔王から受けたとの事。

こちらでの神とやらの仕業だと思うが

何かしらの制約等が掛けられているのではないかと。

全ては感覚でしかないが魔王の潜在能力はもっと高く深いハズだとも感じたそうだ。


加護を受けている神の影響だとすると俺関係なのだろうか。

敵対した場合の制約のようだがルエラは俺の所有物扱いなので

その影響が多少出たのではないかとの事だ。

そもそもルエラ自身はこちら側の神との関わり合いは無いわけだしね。


もっともその辺は神側の管理なので正確な事は不明だ。

ルエラが魔王からそう感じたってだけでアレが本気だったって事もありうるし。

他に何か体調的な影響があったのかもしれない。


しかし、そんな事が出来ると言えば間違いなく世界神ってかアイツの仕業だよな。

魔王に加護を与えてるのもアイツだしさ。


俺と対した場合の制約だとすると理由はなんだ?俺を殺さない為?

以前、俺が魔王に殺された時はそんな事を言ってなかったよな。


そういや魔王が俺の名を聞くのは十数年ぶりとかなんとか・・・。

今回の転生はそれ位かそれ以上の時間がズレたって事なのか?


仮に魔王が俺を殺さないように制約を付けられたとして理由はなんだ?

・・・・・・・・アイツも俺の動向を掴めてないって事か?


つまり行方がわからない俺が知らない所で殺されたりしない様にか?

でも魔王だってアイツの監視下だろ?

それとも制約は他にもあるって事なのか?

俺も神システムとも繋がらないし。


うーん、考えた所でよくわからん。

そもそも転生してる事は間違いないんだし

今もアイツが見て笑ってるって事の方がありそうだけどな。


 ~


逃亡から3日目の早朝、魔王が目を覚ました。


「ここは何処だ?」


「サイラスから少し離れたとこにある捨てられた小屋かな

 俺の事がわかる?」


「ミノル・・・・君か・・・・・

 改めて見ると・・・何となくはわかるのだが

 ハッキリとそうだとは断言できない」


「どうやら今の俺は世界神の加護も無いみたいだからね」


「加護を失ったのか?

 それであれば納得出来るが・・・・しかし何かは感じるんだが

 それが世界神の加護であるかも分からない」


「それは創造神ラカリスティン様の力で感じているのであろう?」


「貴様ッ!」


「ちょ!落ち着いて!ちゃんと紹介するから」


俺は今迄の事を魔王に簡単に説明する。

神システムについては隠すが世界神の加護が無い事や魔王の制約についても話す。

まぁ全て仮説にすぎないんだけどね。


「敵対の意志は無いと言う事は理解した

 もっとも私の力が及ばない者が居る時点で敵対も何もないがな

 そもそも古代に神が直に手掛けた龍種に改めて挑もうとは思わん」


全てを説明すると魔王はやれやれと言った風に一息ついて落ち着いた。


「我は本体に作り出された仮初に過ぎぬし守りに特化した者よ

 代わりに攻めはそこまでではない」


「フフ・・・・どうだかね・・・そういう事にしておこうか・・・

 それで今の現状と私が感じた違和感と言うのは

 その創造神とやらが何かしているというのかい?」


「我も正確には判断出来ぬが

 本来であればラカリスティン様の力が広がっているハズなのだが

 この世界はグラバスティス様の力を感じるな」


「グラバスティス?」


「うむ、次元管理神グラバスティス様だ

 ラカリスティン様の弟神でもあり神気も似てはいるが神格は下になるな

 下とは言っても神の格としては最高位には違いないが」


「グラバスティス・・・・世界神グラバスの事か?」


「世界神と言うのが我の知識には無いが

 お主・・・魔王で良いのか?

 そなたから感じる神の力も同じモノよ」


「世界神グラバスの本当の名は次元管理神グラバスティスだと言うのか?」


「我も創造された際に会っただけなのでな

 断言は出来ぬがラカリスティン様に近しい神気で我が知っているのはその方のみよ」


「次元管理神って何を司る神なの?」


「世界と言うのは其々が少しづつ重なり合い影響しあって存在しているのだ

 その狭間が遠すぎても近すぎても問題があってな

 それを管理、世界の垣根つまり次元を管理調整し世界を安定化させるのを司っている

 広い意味では世界を管理するとも取れるし世界そのものに手を出せる程の高位神でもある

 だが世界を無から創造出来る程の力は無いハズだ」


グラバスが世界神ではなく次元管理神か。

俺からするとどっちも差がわからん。

格も最高位って事だし人知を超えた力なのは間違いないだろうし。


それにしても次元を管理する能力ねぇ。

となると例の世界だか次元だかの狭間にある例の場所は

奴自身の能力で作った場所って事になるのかな。

それがわかった所で何も変わらないんだろうけど。


「私にとって世界神の加護は生きて行く上で重要であって

 相手の正体が世界神だろうが次元管理神だろうが問題はない

 力を与えてくれるのならば神の正体等に興味は無い

 制約とやらはどうなった?」


「我がラカリスティン様の神気で抑え込んだ事により

 何時まで持つかは分からないが多少ではあるが緩和されているであろう

 逆に言えばグラバスティス様の力を十全に使えるかはわからん」


ルエラの説明によると格が上であるラカリスティンの力を叩き込み

無理矢理に引っ込ましたと言うか元の加護を抑え込んだってのが正しいらしい。

それが大した怪我もないのに魔王が丸三日も寝込んだ理由だ。

姉神であり力の源が似ている事により可能な事なんだとか。

改めて聞くと結局は今は実力を発揮しきれないって事なんじゃなかろうか。


因みに使った神気は僅かではあるが現状の表世界では補給出来ないので

使えば使う程にルエラは能力が発揮できなくなるそうだ。


意識が戻ったとは言え本調子には程遠い魔王を寝かせ食事の用意をする。

その間、ルエラは瞑想というか何かに集中したまま微動だにしなかった。


 ~


「俺達に付いて来る?嘘でしょ!」


飯を食いながら魔王が突然のカミングアウトをかましてくる。


「アハハ、そう喜ばないでくれよ」


「いや、喜んでないからね!」


「魔王が宛先の無い旅に付いてきちゃいかんでしょ!

 仕事とかどうすんのよ!」


「なに、私が居なくても何とかなるさ

 それに分身体を置いていくから問題ない」


「え?なに?どういう状況なの?

 つうか今の世の中ってどうなってるの?

 俺とかの扱いは?」


「そうだな・・・・そう言えば此方の話をしていなかったか」


魔王が言うには俺が最後に確認された場所はパーセラム王国で15年ほど前になる。

ミガが国王となり格段に国は栄えているが中立国なのは変わらないそうだ。


魔王領としては正式にグリンバーグとの和解が成立し

魔族自体も一種族として認められ融和が進んでいる。

但し、魔王領の奥の未開拓部分については正式に分割し

他種族と関わりたく無いような者達が住まう広大な未開の地として扱う事になった。

その為、魔王領の役目として未開部分との境界管理及び国境維持が追加された。


上記の事により魔王領を魔族を抑える名目で建国されたグリンバーグは役目を終えたとも言える。

そんな流れで勇者と魔王の戦いは一旦終息した。

どっちかが死んだとか倒れたってな幕引きじゃないのが何ともリアルだ。


魔族の脅威や魔族への迫害が消えたわけでも無いし魔王領自体が全ての国と交流がある訳でもないが

武力としての象徴である勇者と魔王の立場は一国の王と変わらなくなったって事だ。

なのでぶっちゃけ魔王は暇らしい。


「今回の転生は10年以上も先になっちまったのか・・・・

 聖女はどうなった?」


「先程も説明したが魔族も種族として認められてね

 聖女君も各地を回って助けてくれていたが

 最近では聖女君は聖神教のシンボルとして今は本庁に居る事も多い

 君の事を慕っていた2人は今も各地を飛び回っているハズだ」


「そっか・・・・あの2人は元気か・・・良かったよ」

 

「ミノル君の子供であるミリーの事は気にならないのかい?」


「なんだ?ミノルは子供が居るのか?」


瞑想状態からピクリとも動かなかったルエラが妙なタイミングで戻ってくる。


「あぁ、私とのね」


「え?何言ってんの?」


「ふふ、身近にそんな魅力的な女性が居れば私等は必要ないか

 ・・・・・一時はあんなに深く繋がりあったのに」


「誤解を招くような言い方をするな!」


「ミノルは我に欲情するのか?

 ふむ?それはそれで興味があるな

 どうだ?試してみるのも面白いと思うのだが?

 ・・・子孫を作る機能も確かめる良い機会かもしれぬな」


「試さないからね!

 つうか二人とも面倒だな、おい」


この後も説得は続けたのだがなんだかんだで魔王が付いて来る事になった。

そもそも俺達の目的が世界を旅するだけだが

正直に言えば今の知識を持つ魔王の存在は有難い。


ミリガンテは行方が分からないそうだが

危険な感じもしないし生命が脅かされてるような感じも受けないので

何処かで無事に過ごしているんだろうとの事だ。

なんとなく漠然とそう感じるだけらしいってだけなんだけどな。


魔王は分体を作って帰すそうな。

数日間程度の不在は時折あるようなので問題ないだろうとの事。

「優秀な部下が居ると楽なんだ」とは言うが

魔王城の最上部が半壊してるし本当に大丈夫なんだろうか。


にしたって、実里には会いに行くつもりだけど10年以上か・・・・。

そもそも俺は会ってどうしたいんだろうな。


 ~


翌早朝に魔王は何処かに出かけ夜に分体を連れて帰ってきた。

力の大半も渡してしまったそうだ。

それには神の加護も含まれるとの事。

なんとここ数年で神の加護の分離に成功したんだそうだ。


詳細内容も研究場所も魔王直下の事なのに教えて貰えなかったが

例のロイラを含めた研究の結果なんだそうで適応条件も厳しいし

必要な触媒も秘蔵してある神器を利用して作りだすしかないし

莫大な費用と手間が掛かるので気軽に試す事は出来ない方法との事。


どちらかと言えば力も加護も渡したらこっちが分体っぽいけどな。

一応、意識はこちらが上位だから向こうが分身体なんだそうだ。


神の加護が外れた事によって神からの監視と言うか覗かれる事も無くなる。

残った魔王は何時もの姿ではなく健康的で小奇麗な年頃の一般市民といった風だ。

立場も役割も関係なく旅を楽しみたいんだそうだ・・・・って楽しむのかよっ!

魔力を大幅に明け渡したから戦闘力自体はそんな高くはないとは本人談だが信用は出来ん。

名前はロージーで行くそうだ。


ルエラは色気を醸し出す妙齢な美女で魔王は健康的な美がある年頃の娘で

俺がヒョロッとした冴えない男。

なんとなく変なフラグが立った気がするけど気のせいだよね。


サイラスを数日見て回り、次の目的地は勇者が治めるグリンバーグに決めた。

まぁ魔王領から行けるのがグリンバーグか未開地しかないってだけなんだけどね。

他の国に行けなくはないけど街道が有る訳じゃないので面倒だ。


「勇者君には会っていくのかい?」


「うーん、会わなくても良いんじゃない?

 だって魔王、じゃなくてロージーと仲悪いんでしょ?」


「和解もしたのだし気にする事はない

 今の私は魔王ですらないのだから

 入国すれば向こうは間違いなく気が付くだろうけど」


「何か気になる事でもある?」


「ここ数年の勇者君は少し様子が変でね

 ひょっとしたら私と同じ状況なのかもってね」


「出来れば様子を見たいと?

 嫌いなんじゃなかったの?」


「私は嫌いではないんだけどね

 勇者君が一方的に私側を攻め続けたから反発しただけさ」


何か以前に聞いた話では魔族が勇者の妹を殺したとか何とかだったよな。

でも話しを聞く限りでは魔王が即位して魔族を纏めた際に

反発した魔族の一部が先走って手を出したって事だ。

魔王に罪が無いとは言わないが一方的に攻めるってのも違う気がするな。


戦争なんてどっちが正義って訳でもないが魔族が各地で暴れてたのが原因だからなぁ。

その魔族だって魔獣や魔物と同じ扱いで恐れられ狩られ迫害されて来たって過去があるし。

俺にはどっちが正しいか何て判断出来ないしするつもりもないけど。


「その勇者とは何者だ?」


「えーと、魔王を食い止める為に神に選ばれた?で良いのかな?

 魔王と同じ世界神の加護を受けてるんだよね」


「同じ神の加護を受けた者同士が戦っているのか?」


「そうなると言えばそうなるのかな

 他にも乗っかってる神が結構いるみたいだけど」


「世界神とやらはこの世の最高神と言っているのであろう?

 他にもその世界神とやらの加護を持つ者は居るのか?」


「俺が知りうる限りでは4人だね

 魔王と勇者の他には聖女と呼ばれてるのが1人

 この3人は世界的にも有名かな

 後は俺なんだけど今は加護があるかは分らん」


「聖女とやらも争っているのか?」


「いや、聖女は寧ろ争いを無くそうと動いていたハズだよ」


「本来、神の加護とは司る事柄や神の力を上げる為に与えるモノだ

 それは神の使徒になると言っても過言ではない

 同じ加護者同士を戦わせると言う事は無駄に神の力を消費する事になる

 争う者達と止める者か・・・・・意図が掴めぬ」


「ロージーの話では今は争ってはいないらしいけどね

 俺には世界の活性化だとか何だとか言ってたよ

 動きが停滞してるから面白くして欲しいって」


「なるほど世界を活性化させると言う意味では正しいと取れるか

 神ならではの大きな考えがあると見るべきか」


「因みに聖女は俺の前世界での妹なんだよね

 あっちも転生で記憶を引き継いでる

 魔王と勇者は落ち人なんだっけ?」


「私はそうだな

 勇者君もそうだと聞いている」


「異世界を渡る事は近い世界であれば極稀に起こる事象ではあるな

 そんなに頻繁に起こるような事象ではないのだが・・・

 そういえば、この世界の最初の住人も成熟した異世界の者をベースに作られているハズだ」


「そうなの?」


「正確には分らぬが

 そうした方が環境に適応させやすい等の利点があるようだ

 世界が近いと言う事は環境も近いと言う事でもあるしな」


「なるほどね・・・・転生も同じような感じ?」


「別世界から魂を引き込み記憶を持たせたまま転生させる

 そんな事が可能なのは魂を無から創れるほどの力が無ければ出来ぬハズだが・・・」


ルエラの知識を元にしてもやっぱり違和感と言うか異常な事態なのか。

やっぱり勇者にも会ってみた方がいいのだろうか。

そうは言っても一国の長に簡単には会えないだろうけど。


魔王領から街道沿いにグリンバーグへと足を進めた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] お帰りなさい! [気になる点] 変なプラグが立った気が ↓ 変なフラグが立った気が グリーンパークへと足を進めた ↓ グリンバーグへと足を進めた (自然公園の名前みたいな間違いだな) […
[一言] 生きとったんかワレェ(歓喜)
[一言] 長いローディングだったな。ともかく続きが出てよかった
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