7-9
ギリギリですいません。
またもや魔王城の地下にいた森山実留です。
ん?と言う事は此処は元居た世界って事ですかね?
☆
ここは魔王城の地下だ。
確かに入口に見覚えがある。
「此処も細工がしてあるな」
入口に施されている仕掛けをルエラが読み解く。
「こちらは魔力を循環させつつ余剰分を何処かに供給し
内部にエネルギーが貯まらない作りにしてあるのか」
「この上に都市があって其処に魔力を供給してるって話だよ
それにこの迷宮の存在を隠すように隠蔽されてるみたい」
「ふむ、知ってる場所なのか?
最低限の機能だけ解放しつつ存在を隠蔽をしているのか」
「そうだね
殆ど知られていないようだし」
「情報を隠し迷宮自体を隠蔽する
万が一訪れる者が居ても最終地点が実際には途中の階で帰路に着かされると言う事か
随分と手の込んだ細工をするものだ」
「やっぱり封印されていた後半部分を隠す為だよね
何か目標があったんじゃないかな」
「ここはミノルが知っている場所なのだろう?
それに此処を使う者も知っているようだが
その手によるモノではないのか?」
「確かに力はずば抜けて強いけど迷宮を改竄できるかと言えば
難しいとしか言えない感じだと思う」
「・・・・・ミノルよ、休憩も兼ねて一度引くぞ
どうにも状況が読めぬ」
「そうだね、ちょっと情報が混乱してるから其処の小部屋で休憩しよう」
幸いにして迷宮内部の事は外からは隠蔽されているので
小部屋で休憩していても魔王に気付かれる心配はないだろう。
念の為に入口に結界を張っておいた。
食事を食べ仮眠をとり身体を回復させてから状況を話し合った。
今迄の認識だと此処は俺がいた世界とは別世界でルエラが
作り出された世界だと思っていたが2人の世界は同じようだ。
だがそうすると色々と齟齬も出てくるんだよな。
世界を作った神の話とか迷宮の存在理由とか色々とさ。
「ミノルと我の世界が同一とはな
これはまた面白い事よ」
「そう?異変が起きてるなら焦らないの?」
「我は元より世界を知る為に出てきた身だ
異変は出来る限り解消したいが使命などではないのだ
焦る必要はあるまい」
「そんなもんなの?」
「他の迷宮も同様の事になっている可能性は高い
だが世界に直ぐに影響が出る訳でもあるまい
その間に世界を回って様々な経験をし楽しむのも悪くない」
「ルエラがそれで良いなら良いんだけどさ・・・」
「所詮は仮初の身なれば出来る事なぞ限られよう
それよりもこの上に居るのであろう?
この世の強者が」
「あぁ、うん居るかはわからないけど
此処は魔王と呼ばれてる者の住処の地下だからね」
「魔の王か・・・・この世の最強種の一角、楽しみではあるな」
「ちょっと!いきなり戦うのは止めてよ」
「興味はあるがそこまで節操無しでもないぞ
相手の出方次第ではあるがな」
体調と心の準備を整えた俺達は魔王の住処へと続く階段に足を踏み入れた。
~
以前も通った階段で魔王の私室に出る以外に通路はない。
魔法で壁をブチ破ったりすれば出れなくもないだろうけど。
ルエラ曰く城の強化自体にも迷宮の魔力は注がれているらしいので
通常であれば穴を開けるのもソコソコの威力が必要になるだろうとの事。
「この先に居るな」
「この魔力の感じは魔王だと思う」
「魔力を隠そうともせずに
我らを待ち構えていると言う訳か」
「話し合い!話し合いだからね!」
「では魔王とやらの出方に期待するとしよう」
不敵に笑うルエラがズンズンと先を歩く。
階段を登り切り魔王の私室を通り過ぎて広間に出る。
ここも懐かしいな・・・・良い思い出はないけど。
通路から広間をコッソリと覗くと王座に座る人物の後ろ姿があった。
「やっと来たか
そこは私以外は殆ど使わない・・・いや、知らないハズの通路なんだけけどね」
そう呟いて立ち上がったのはやはり魔王だ。
妖艶とも言える雰囲気を醸し出しているののにアンバランスな少女のような姿は変わらない。
いや、少し成長したような年齢な気がする。
と言っても幾つかの年齢を使い分けれる魔王だから良くわからないけどな。
「ひょっとしたら久方ぶりに懐かしい者と会えるかと思ったが違うようだ
問おう、君達は何者だい?」
何時ものように気さくに話しかける魔王ではあるが
明らかに此方を警戒しているのがわかる。
以前に見た本気の武具を装備しているし空気がピリピリと震える程の威圧感だ。
そして俺の事を認識していないようだ。
世界神の加護を持つ者同士ならわかるって言ってた気がするんだけどな。
隣のルエラを見ると魔王を直に見て出方を伺っているようだ。
ここで俺の正体を明かして信じて貰えるかはわからないが
誤魔化すと後々が面倒になりそうだしな。
「魔王よ、俺だミノルだ!
この地下迷宮に転生したんだ!」
「ほう・・・・・その名を聞くのは十数年振りか・・・・・
そして私を魔王と知っている上でその名を出すかよ
何処で聞いたか分からんが余程死にたいと見える」
魔王の体から嵐のような魔力が噴き出てくる。
それを感じルエラがスッと俺と魔王の間に入る。
「そちらの女性が私と戦うって事なのかな?
女性を戦わせるとは男としての面子はないのかね
名前を伺っても?」
「我の名はルエラ」
「ルエラ・・・君ね・・・・
君が戦うのかい?」
「我も手は出したくないのだが
そなたがミノルの言う事を信じないのであればな
致し方が無いだろう」
「ま、まて!本当に俺だ!ミノルだって!
ルエラも楽しそうに笑うな!」
「ふふ、あくまでもそう言うならそれでも良いさ
ルエラ君とやらが戦ってくれるんだ
私も最近は少々運動不足でね
相手をして貰おうか!」
俺が止める間も無く戦闘に突入する2人。
あれ?魔王ってこんなに切れ易いってか好戦的だったかな?
そんなに親しくなかったけど違和感を感じる。
・・・・・いや、良く考えれば挑発的な態度は魔王そのままな気もする。
魔王の戦い方は莫大な魔力を元に圧倒的な火力で敵を殲滅するタイプで
どちらかと言えば多数を相手取る広域戦闘型。
ルエラもどちらかと言うと魔王と同タイプではあるが攻撃よりも防御や回復が得意。
余談ではあるが勇者の魔力は魔王程ではないと言っても常人レベルよりは遥かに上だし
魔力の操作や制御等の技術面がずば抜けており身体能力も高く個人戦向きらしい。
まぁ勇者本人には会った事がないから本当かどうかはわからんけどね。
それはさておき戦闘は魔王の一方的な攻撃をルエラが受けると言った状況が続いている。
強化した身体能力で近接戦闘を仕掛けた上に魔法を織り交ぜていく。
その戦闘技は熟練のソレだ。
俺じゃその戦闘速度に反応がついて行かないだろう。
その攻撃はルエラは両手に魔力生成した
籠手を装備して剣と魔法を最小限の動きで捌いていく。
「どうしたのかな?
先程から防戦一方では面白くないだろう?」
「そなたは接近戦が得意ではないだろう?
無理して我に合す必要もないぞ?
自分の得意な戦い方をするがよい」
魔王が挑発するもルエラはどこ吹く風の有様だ。
「ハハッ、良いだろうそこまで言うならやらせて貰うとしよう
捕縛」
空間から現れた黒い鎖がルエラの全身に巻きつき拘束された。
魔王は距離を取り魔力を練り初め魔法式を構築する。
「どうだね?身動きが出来ないのは?
君が言うとおり剣で戦うのはどうも苦手でね
この剣も実は魔法発動体としての性能を重視しているのさ」
「ふ・・・む・・・・この・・・・拘束は・・・」
「ほう?ソレを受けて僅かでも話せるとは自信があるだけある
ではコレを食らっても問題ないかな?
降参するなら今のうちだぞ?」
「かま・・・わん・・・・や・・れ」
「その心意気は気に入ったぞ、爆縮」
ギンッと音と共に空間が縮んだように歪み・・・・爆発した。
「ちょっ!」
ギリギリで防御魔法を展開し障壁を張るも爆風が凄まじく吹き飛ばされた。
「イテテテ・・・・ルエラは無事か・・・」
爆煙が晴れるとそこは陽光溢れる世界に変貌していた。
単純に魔王の魔法で壁と天井の一部が吹き飛んだだけなんだけどね。
「ふむ、中々の威力よ」
ルエラは涼しげにそこに立っていた。
差し込む光が照らしだす姿は天上の絵画とも思わせる図だ。
「な、なんだとっ!
私の魔法が直撃したのだぞ!」
「そなたの魔法より我の方が上回っただけであろう?
それで全力なのか?」
「ハハ、ハハハハハッ!
面白い!面白いぞ!こんなに面白いのは久方ぶりだ!
良いだろう、私の全力を見せようじゃないか
コレを耐えれるのであれば話を聞いてやってもいい」
魔王の姿が大人の女性に変わって行く。
見る者を全て魅了するような得も言われない色気が漂う。
以前に神を抑え込む為になった姿だ。
高まり渦巻く魔力を身に纏い笑う魔王と受けて立とうと笑うルエラ。
美しい女性同士の戦いってのも良いモノだが雰囲気は最悪過ぎる。
どうあっても止まらないだろう流れを見て俺は気合を入れて上級の防御魔法を使用する。
「さぁ受けてみよ!私の全力をな!
深淵」
ルエラの周囲を光をも通さぬ闇が覆い空間を軋ませ耳障りな高周波を
撒き散らしながら少しづつ縮んでゆく。
「ハハハ、私の最強の魔法の1つだ
深淵に捉えられて潰れ飛ばされてしまうがいい」
闇が縮むと共に引き寄せられる力が発生しているのか周囲の物がドンドン吸い込まれていく。
これって小さなブラックホール的な?
闇が小さくなるにつれて空間の軋みが酷くなり魔王城の崩壊も酷くなる。
放たれる衝撃等は一切ないが内に向かう力に崩れる瓦礫が吸い込まれてゆく。
キイィィィィンと鳴り響く音が耐えきれない程になる。
バリン。
ガラスが割れるような音がしかたと思うと闇が崩れ落ち無傷のルエラが立っていた。
「先程は歪めた空間が戻る反動を使い今度は空間自体を縮小させるか
見事な技だ」
「馬鹿な・・・何故あの状態から出て来れる!」
「先程も言ったであろう?
内側から空間を押し戻して正常化させた
そなたより我が上回っただけよ」
「わ・・・私の全力だぞ・・・」
「なに、技術の差と言うよりは単純に出力の差に過ぎん
それに全力を出せていないであろう?」
「何を言っているんだ?」
全力の魔法を簡単に打ち破られた上に謎の言葉を投げかけられて
魔王の意識が僅かに逸れる。
「ふむ・・・・少し寝ておれ」
「ガッ」
ルエラは一瞬で間合いを詰め魔王に腹パンした。
意識の間を突かれたとはいえ魔王は一瞬で意識を刈り取られた。
「今のどういう事?」
「説明は後にしたほうが良かろう
コレからどうする?」
魔王城の最上階は天上が吹き飛び壁も半分以上崩れている。
でこれだけ派手にやらかしておいて周囲が気付かない訳もなく
大広間の外からは大勢の声が聞こえてきてはいるが通路や階段が崩れて到着はしていない。
「とりあえず逃げよう」
意識が無い魔王を担ぎ崩れた壁から見下ろして足場を見つけ飛び降りた。
感想ありがとうございます!!




