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7-6

5月間に合った・・・・よね?

ついに隔離された世界から脱出した森山実留です。

来たよ!表世界に来たよ!

・・・・・って来たんだよね?辿り着いたんだよね?

おーい!おーい!



 ☆



ルエラの詩で転移した先は小さな小部屋だった。

部屋の中には転送陣以外に何も無い。

迷宮は自浄機能があるのにも関わらず埃っぽく淀んだ空気が漂い

人の訪れが無いのを物語っている。


それよりも先程から気分が良くないし眩暈や動機もする。

空気自体が重いと言うか魔力が濃い・・・濃すぎる・・・が、それだけじゃない気がする。

転送の影響なんだろうか?


「ルエラは大丈夫?」


振返るとゲロを盛大に戻しながら床でのたうち回るルエラが居た。


「お、おい大丈夫か?」


白い肌に全身の血管が浮き出て汗だくで吐き続ける。

プリセットされた魔法構築式から回復魔法を掛ける。

淡い光がルエラを包むが苦しそうなのは変わらない。


「ち・・・ちが・・・う・・・しゃ・・・・遮断・・・拒絶・・の・・・結界・・・を・・・」


結界?

遮断と拒絶と言えばルエラ本体から設定して貰った中でも最上級の結界魔法だ。

有効範囲は狭いが結界内は全ての外的要因を拒絶し遮断するって奴だ。


「わ、わかった」


プリセットされた中から最上級の結界を選択。

魔力がごっそりと減るが構わずに展開速度優先で発動し

ルエラを中心に白く輝く透明な半円が出来上がる。

これで外的要因からは全て遮断されたはずだ。


ルエラは未だに息は荒く苦しそうではあるが少しは楽になったようで

そのまま寝息を立て始めた。

うーん、どうするべきか?

一度展開すると効果時間が切れるまでは結界内に手は出せないだよな。

とりあえずルエラが目を覚ますまで周囲を探索するか。

結界内なら安全は確保されてるんだしな。

俺も妙に体調がおかしいが少しなら大丈夫だろう。


「ん?そういえばパラスは問題ない?」


「快適」


「そうか・・・・ルエラだけってなんかあるのか?」


「力が強い」


ルエラの力強さが問題なのか?

よくわからん。


「本体との交信は出来てる?」


「制限付で可能」


「現在の状況を確認出来る?」


「先程のがそう」


「・・・・・むぅ、俺じゃさっぱりわからん」


パラスは交信は出来てるようだが

その意味合いを理解するには俺じゃ無理っぽい。

ルエラなら調整の甲斐もあって少しだけど送受信の内容を

パラスと共有出来るらしく汲み取り易いんだけどな。

そもそも基礎知識が俺と段違いだから理解力もあるし。


「此処でルエラの様子を見ててくれる?

 俺はちょっと外の様子を見てくる」


パラスは口少なく自ら発する事は少ないが言われた事はちゃんと理解している。

戦闘力も皆無だが存在感は薄く物理攻撃は受け付けないので連絡役や見張り役には優秀だ。

後は頼んだと言い残して部屋を出た。


 ~


小部屋の先は通路が続き行き止まりは重厚な扉が待ち構えていた。

慎重に少しづつ押して様子を伺うと・・・・そこは地獄だった。


「グォォォォッォ」

「グルアァァァァァァァ」

「キケケケケケケ」


体中から角の様なモノが飛び出した熊のような魔物が半分体が腐ったような大蛇に襲い掛かり

その大蛇も他の魔物に噛付き牙からの毒で腐敗させていく。

狂ったように魔法を放ち続ける明らかに狂気に染まったようなローブ姿のミイラが居たり

大型の剣で周囲を手当たり次第に切りつける鎧姿も見える。


様々な魔物が殺し合い潰し合う地獄だ。

数も百や二百じゃ利かないだろう。

元々は大きな広間でこの迷宮の最終地点なのだろうが

神聖さや厳かな感じは一切なく獣と血と腐敗の匂いが充満している。

数が減って来ると続々と奥の扉、本来は入口なんだろうが

そこから魔物が押し寄せてくる。

そして殺し合いは続く。


俺の居る扉周辺には一切魔物は居ない。

多分、少し離れた所にある玉座・・・で良いのかはわからないが

そこにいる者の所為だろう。

其処には白いフードを被った人物が座っていて

そこから後ろには魔物は進入しないようで俺の方には来ない。


「クッ・・・・しかし・・・・これは・・・・」


扉を1歩でも出ようものなら白フードが襲ってくる気がして踏み出せない。

そして多分、この感覚は間違ってない。

ここは所謂セーフエリア内なんだろう。

更に言えば今の俺じゃ白フードに呆気なく殺されると言う事も。

感じる圧力が尋常じゃない。

あれと真正面から戦うならまだ広間の地獄に放り出される方がマシだろう。


「一旦、戻るか」


セーフエリア内であったからかアイツは此方の存在に気が付いていなかった。

以前もそうだったけど迷宮機能では設定でそうなってるのだろう。

あの惨状では迷宮がマトモに機能してるとは思えないが。


 ~


念の為に扉2つに施錠の魔法を掛け通路は壁で塞いでおいた。

どちらも簡易的な気休めだけど何かをしておかないと安心できないんだ。

幸いな事に食料は十分にあるから籠城は出来る。


小部屋に戻るとルエラは意識を取り戻していた。

顔は赤く息も絶え絶えではあるが意識はハッキリしているようだ。

気怠く発熱するなんて風邪の症状に近いかな。


「大丈夫?」


「心配かけたな

 少し落ち着いたがまだ辛いな」


「原因は転送の影響?」


「それもあるが一番の原因は

 この迷宮の状態だな」


「確かに魔力が凄く濃いし他にも変だと言うのはわかるんだけど・・・」


「神の力だ」


「神?」


「我が創造主であり世界の創造神である

 ラカリスティン様の力が満ちている

 ・・・・いや満ち過ぎているのだ・・・・異常なまでにな」


どうもルエラの状態異常は過剰な神の力による暴走状態だったようだ。


「あぁ、それで遮断結界なのか」


「うむ・・・・多少は影響が減っているが

 まだ濃密過ぎる故に影響が大きいがな

 体の制御が上手く出来ぬ」


「神の力って・・・・目に見えて影響が出る程に現れるものなの?」


「これ程に強く濃密な神の力が存在する場所等はありえん

 創造主自らが作られた我でもこの有様なのだ

 現世の者では真面では居られんだろう

 いや・・・寧ろ我のような肉体を持った存在ほど辛いかもな」


「なるほどね

 だからあの地獄絵図だったのか」


「地獄絵図とはなんだ?」


ルエラに先程見た事を出来る限り詳細に伝える。

それを聞いたルエラは少しの間、黙り込み・・・。


「迷宮が暴走している可能性が高い」


「暴走?」


「広間の状況から考えると過剰な神の力により

 迷宮が暴走状態になっていると考えられる

 ミノルが見た白いローブとやらもこの迷宮の管理者であろう

 ほぼ間違いないだろうが通常状態ではあるまい」


「神の力が充満する迷宮か

 俺の体調が優れないのもその所為なのかな?

 軽く興奮状態と言うか酒が深く入ってるような感じだけど」


「ミノルがその程度で済んでいるのは不思議ではあるがな

 半実体のパラスは我とは逆に調子が良いようだが何時までも続くとは思えん

 寧ろ許容量を越え影響が出た場合は深刻化しかねん」


「俺の場合は前の世界で神が魂を強化したって言ってたからその影響とか?」


「かもしれんが我に魂の操作知識等は無いのでな

 断言は出来ぬゆえミノルも心しておいた方が良いだろう」


「裏迷宮からの脱出の次は狂った迷宮からの脱出か

 しかも時間制限があるかどうかもわからないってオマケつき」


「幸いなことに転送自体は上手く行ったのだ

 後は邪魔者を蹴散らして行けば良いだけではないか」


「ルエラはあの光景を見てないからだよ・・・

 あの中に飛び込む勇気は俺にはないよ

 白ローブと戦うのも遠慮したいけど」


「此処の魔法陣を読むに我が迷宮に進むか上層部に戻るかを選べるようだ

 迷宮管理者、つまり迷宮ボスを討伐すれば起動するであろう

 さすれば一息に表で出れるかもしれぬぞ」


「雰囲気を感じただけだけど勝てる想像が出来ない・・・

 ルエラの迷宮の魔物よりも軽く数段は強いと思うよ」

 

「それはそうであろう

 我が迷宮の魔物が此処よりも数段上ではあるが

 流石に創造主自らが作り出した迷宮管理者程とはいかんよ

 そこは質と量の違いと言うものだ」


「あの白ローブもルエラと同じって事?」


「我が迷宮に通じる迷宮を管理する者はラカリスティン様が自らお作りになったハズだ

 もっとも我よりも格は落ちるが能力は最高位であろう」


「勝てるの?」


「我、本体であれば造作でも無い事だが今の身ではどうだかな

 管理者自体の知性は狂っていても身体能力は向上しているであろうし

 正面から堂々と戦える状況でもないのだろう?」


確かに現状ではあの中に突撃するには厳しいだろう。

白ローブだけ、あるいは魔物だけであればどうにかなったかもしれない。

又は俺にルエラ程の強さがあれば。

俺も戦闘力だけで言えばかなりのモノだ。

それでもルエラには及ばないし白ローブにも勝てないだろう。

広間の魔物郡を相手取るだけでもギリギリで勝率は高くない。


「・・・・・前みたいに安全圏から強烈なのをぶっ放すか」


ボソッと呟いた俺の言葉にルエラが反応する」


「ふむ、それは面白い考えだな」


「え?それってどうなの?

 ルエラ的には良いの?」


「構う事はあるまい

 管理者を討伐すれば迷宮が再生し神の力も幾分消費されるだろう」


「え?いいの?本当に?」


「ククク、そうだな管理者が認識出来ない場所から極大魔法を叩きこむか

 いいぞ!面白い!」


神の力と言う毒に侵されながらもルエラは面白そうに笑う。


「本当に良いの?同じ管理者として?」


「今の状況が濃密になり過ぎた神の力が原因だとすれば

 管理者を一度元に戻すと言った意味でも討伐する事は良い

 そこに手段は問わんよ

 寧ろ迷宮を多少壊した方が修復で力を削れる分、丁度良いだろう

 それに我らは力試しに攻略しに来てるのではないのだからな」


「ルエラが・・・・本当に良いならやっちゃう?

 トコトンまで思いっきりさ」


ルエラはニヤっと笑うと「寝てからだな」と一言いって横になった。


 ~


それから数日、ルエラは自分に神の力で過剰反応が起きぬように

封印を掛け調整し行動出来るようになった。

と言っても転送陣の小部屋と広間までの通路だけだけどね。

それでまぁ本当に広間にデカいのをブチかますって事になったんだけどさ。


「ミノルよ、準備は良いか?」


「俺が言い出した事ではあるけど本当に出来ると思う?」


「元々、最高位の極大魔法はお主にも使えるようになってるいるではないか」


「使えるようにはして貰ったけど制御できる自身も無ければ魔力も全く足りないぞ

 術式も結構弄ったから更に難易度上がってるし」


「魔力供給は我が受け持つので心配はない

 と言うよりも今の封印術式の維持で他の構築式なんぞ処理出来ぬ

 魔力の提供程度しか力になれんだけだがな」


ルエラは現在の異常な環境で封印の為に絶えず高度な処理をし続けている。

その為に処理速度も身体能力も全て落ちていて通常行動程度しか出来ない。


「その体とミノルの制御力は相当なモノだぞ

 構築から展開、実行までは意識せずとも最低限は勝手に行ってくれる

 ミノルは暴走しない様に抑え込めば良いだけだ」

 

「それは分ってるんだけどさ・・・・

 今回元にしたのって城塞破壊用の大規模な奴でしょ?

 迷宮内で使って大丈夫なの?」


「心配するな構築式には術者への影響を及ばぬよう保護も組み込んであるし

 我も身体の防護程度なら展開出来る、それに迷宮の安全圏への隔離保護もある

 それに前にも言ったが迷宮にもある程度の損害を出した方が都合が良いのだ」


「本当にそれだけ?」


「迷宮内で大規模破壊魔法を使うのも興味はある」


「・・・・あくどい顔するなぁ」


魔法自体の保護、ルエラの防御、迷宮機能による影響の隔離。

確かに強固な守りだけど・・・これで・・・大丈夫なのか・・・・ねぇ?

感想いつもありがとうございます。

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