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7-5

新年度になってしまいましたが頑張ります。

裏迷宮からの脱出に着手した森山実留です。

と言うか外の世界ってどんな所なんでしょうか?

ルエラは大昔の事しか知らないし元居た世界とも違うようだし・・・。



 ☆



部屋に入ってきた俺をジッと見てくるが敵意は無いようだ。

とりあえず話しかけてみるか。


「何方様で?」


「作られたから来た」


「えーと何?作られた?」


「作られた、来た」


「作られたって誰に?」


「貴方がルエラと呼ぶ者」


「ルエラ?本体のほう?」


「そう、だから来た」


「だからってのが全然わからんのだが・・・・」


状況が掴めない状況でどうしたもんかと思っているルエラが帰ってきた。


「それは何者だ?」


「わからん

 俺も帰って来たら居たんだよね」


「作られたから来た」


「あぁ・・・・なるほど本体が作ったのか

 連絡手段が構築出来たと言う事だな」


「そう」


精霊は片言だがルエラは意思疎通が出来る様だ。


「どうやら本体が作った連絡用の精霊だな」


「精霊と言うと水とか火とかの元素を司る?」


「それは世界の管理用に調整された者達だな

 コレはその大元となった存在に近い」


ルエラによると本体が寄越した連絡用の半精霊だそうな。

通信機能に全振りした能力で本体からの通信を受信する事に特化してるらしい。

この迷宮を抜け出し結界も通り越して通信可能なスペックらしいのだが

実際には行ってみないとわからないんだそうだ。


「丁度良くはあるな」


「と言うと目処が着いた?」


「対策案の構築が完了した

 後は準備と実施だな」


転送陣の起動には莫大な魔力が必要となる。

魔力自体は裏迷宮自体が無尽蔵とも言える保有量ではあるが

本来であれば表側の迷宮からの供給と合わせて使用されので

裏迷宮からのみの供給だと性質が異なる為にそのままでは使えない。

なので一旦、専用に調整された僕達を通して転送陣のシステムを誤魔化す必要がある。


それと合わせて擬似起動キーの設定もしないと転送先が無い事になる。

ルエラが言うには「宥めて騙してたらし込む」と言った内容らしい。

最初の段階として魔力変換専用僕を配置し供給を始めた。

要は暖気運転のようなものだ。


「キー設定をしていないのに一気に流し込むと反応が出てしまうからな

 最初は微量の魔力でシステムを慣れさせる必要がある」


「迷宮が生きてるみたいだね」


「迷宮はそれ自体が大きな生物と言っても過言ではあるまいよ」


「じゃぁ俺達は迷宮っていう大きな生物から無理矢理出て行こうとしてる訳だ

 生物なら時間が経てば勝手に外に出される物もあるのにね」


「排泄とは言い得て妙だな

 何処に流されるかは不明なのが問題ではあるが」


「排泄とかハッキリ言うなって」


「駄目なのか?」


「ルエラの外見はパッと見でも相当な美人だからね

 直接的な言い方は控えた方が良いかな」


「我は世界を見守る龍ぞ

 外見なぞに影響されたりはせん」


「ルエラはそうじゃなくても周りはそうじゃないって事

 外見が目立つ分注意しないとね」


「ミノル達の言う機微とは良くわからんな

 まだまだ学ぶべき事は多い」


転送陣側が受け付けれる魔力量が想定よりも少なかったので

魔力を馴らすのは予定よりも時間が掛った。

ルエラは空いた時間はずっとパラスと調整を行っていた。


あ、パラスってのは例の半精霊ね。

これも俺に頼まれたんだけど命名してみた。

精霊と言いつつ目視できる部分は触る事が出来るから半精霊。

ヒンヤリと言うかフワフワと言うか濡れない水に手を突っ込んでるような感触だ。


パラスは通信に能力を全振りしているので戦闘力は皆無だそうだ。

その代わりに物理攻撃は基本的に効かないし機動力も高い。

ルエラから魔力を貰い糧にしているので食事等は必要がないので楽ではある。


魔力の充填に数日掛り魔法陣の準備が整った所でルエラが接続先の検索に入った。

内部を探り無起動状態のラインから細い魔力を這わせていくのだが

魔力が強すぎれば弾かれるし弱いとトレース仕切れない。


適切に魔力を調整しても細心の操作で手繰って行く。

ルエラが細心の注意を払っても上手く行かず酷く難航した。

そもそもルエラは元の魔力が膨大な為、極細かい魔力操作が得意ではないしな。


じゃぁ俺がってなるが俺だとサポート僕達とリンク出来ないし

ルエラに比べると魔力量不足で作業継続に難がある上に超精密な構築式を制御出来ない。

苦手でも何でもルエラしか条件を満たしてる者が居ないんだ。

俺は日々疲れ果てたルエラを癒す為に居住空間の改善や料理の品質向上に専念し頑張った。

お陰で加工技術や料理技術はグッと上手くなった。


そんな日々が続く中、パラスへの魔力供給も俺が引き受けた。

少しでもルエラの負担を減らしたいからな。


「パラスのご飯はルエラの魔力じゃなくても良いの?

 俺のとか」


「問題ない」


「他の人は?」


「ダメ」


「俺とルエラだけ?

 本体に連なるから?」


「そう」


まぁ基本はルエラで俺が予備って事なら大丈夫か。

出来れば他でも魔力供給が出来ると良いんだけどな。


「今はルエラが大変だから俺から吸ってよ

 指先からで良いんでしょ?」


頷くとパラスはフワッと指先に触れると魔力を吸いだした。

魔力を吸われるこの感覚は不思議だ。

体から力が抜けるような感じではあるが痛みも何もない。


ルエラが魔力を吸わせるときは数分で終わったんだが妙に長い。

それどころか指先じゃなくジワジワと手首から二の腕と包み込まれていく。

比例してズンドコ魔力が吸われていく。

魔力量が豊富な身体ではあるが急激に吸われ過ぎて意識が遠のいていく。


「クッ・・・・パラス・・・ちょっと・・・・」


既に肩まで覆われた状態でパラスを見ると物凄く笑顔だった。


「あ・・・もう・・・・ダメ・・・かも・・・・」


最後に見た光景は頭を包み込もうとするパラスのフワフワした体だった。


 ~


「ハッ!

 ここは何処だ?大丈夫か?」


「安心しろ急激な魔力低下での気絶だ

 少し寝れば直ぐに治る」


どうやら寝台に寝かされていたようだ。

幾分怠いがそこまでじゃない。

隣には申し訳なさそうな顔をしたパラスがフワフワしていた。


「どうもミノルの魔力が美味しくて吸うのを止めれなかったようだ」


「え?魔力に美味しいとかあるの?」


パラスを見ると嬉しそうに微笑み。


「ある」

 

あるんかいっ!魔力に味があるんかいっ!

ってもまぁ本人があるって言うなら仕方がないんだけどさ。

その後は色々と話し合いはあったもののパラスが全く譲歩してくれず

1日1回だけで食べ過ぎ(吸い過ぎ)に注意してくれとお願いした。

因みにパラスは普段はルエラと同化と言うのかはわからないが

ルエラの体内に居るらしい。

本体から連絡が来た場合に起きるとかなんとか。

ルエラの体内に居るならルエラから魔力を貰ってくれよ・・・。

まぁその負荷を減らそうとしたのは俺だけどさ。


「ミノルは寝たままで良いから聞いて欲しい

 何とか転送先を掴む事が出来た」


「おお!やったね」


「かなり苦労したがな

 これほど難解な作業に集中するのも久方で楽しめたぞ」


「ルエラにとっちゃ何でも楽しみか」


「体験する事が全て新鮮で楽しいのだ

 長き時をあの場で過ごしたが如何に刺激が無かったかを実感するな」


「外の世界に出たらもっと色々体験すると思うよ

 どんな所なんだろうな・・・・俺が生きていけると良いけど」


「我も最初期の情報しか知らぬゆえな

 ミノルの元となった人間は居ると思うが

 何かしらの変質や進化をしておらぬとも限らん」


「ひょっとすると滅びた場合とかもある?」


「うむ、他種族に淘汰された可能性は否定できんし自然災害もあるだろう

 それに我の迷宮に辿り着く者が居なくなったのも気になるな」


「出てみないと何とも言えないか」


「そういう事だ

 接続した先は我らでも生命活動は可能と思われる場所を選択した」


「と言う事は幾つかは選べたの?」


「海深くや空に浮かぶ島や溶岩地帯等は避けた・・・ハズなのだがな

 そもそもが接続先情報は幾つか見つかるのに接続先自体が見つからんのだ

 大規模な変動があった可能性もある」


なるほど。

その判断も接続に成功した際に入手出来た少ない情報での判断と言う事か。


「少なくとも転移先で行き成りヤバい事にはなりそうもなければ良いよ」


「それは問題ないだろう

 選択した先は深層型の迷宮だ

 階層が随分と深く数十層はあると思って良い」


「・・・・それはまた何とも」


「付け加えるのであれば此方よりも魔物の強さは落ちるハズではあるが

 それも不確定でどれだけの数が居るかもわからんのでな」


いくら弱くても数が多ければそれが脅威だ。

この迷宮まで辿り着けた者居なくなった今では

転送先の迷宮内部もどうなってるかはわからない。

魔物が溢れ返ってる可能性だってあるんだ。

閉鎖空間の迷宮では準備も無く大規模な魔法を使うのは自身にも被害が及びかねないし

そうポンポン使えるものでも無いしな。


「正式に起動するのはもう少し先だ

 出来る事と言えば心して準備をしておく事ぐらいだな」


「結局はそれしかないか・・・・」


転送陣がキチンと稼働するまではもう少し掛る。

今は細く繋いだラインを徐々に太くし安定領域に達すれば起動出来ると。

その作業は僕主体で行いルエラは調整だけとなったので

空いてる時間は戦闘訓練や料理や工作等の時間となった。

少しでも準備を少しでも戦力をと時間を惜しんで作業に取り掛かった。


 ~


それから幾ばくかの時間が経ち転送陣の状況が安定し起動準備が整った。


「転送陣の起動準備は終了した

 準備は良いか?」


「うん、最近は戦闘訓練位しかしてなかったしね

 準備って準備は特にないよ」


「此方もパラスとの調整も出来る限り行った

 後は転送先で交信出来るかと言った所だな」


お互いに頷き合うと荷物を手に仄かに淡く光る転送陣の中に入る。

転送時の不具合が怖いのでパラスは外に出て俺の頭にしがみ付いている。

こっそり魔力を吸われては居るが・・・まぁ少しだから良いだろう。


「覚悟はいいな?」


「あぁ此処まで来たらやるのみ

 ずっとこの迷宮に居ても仕方がないし」


「そうだな

 我も此処を出れた時の事を想像すると興奮するな」


「興奮し過ぎて無茶するなよ」


「ふむ、心しておこう

 では行くぞ」


ルエラは何語か分らないが言葉を口にしだした。

その声は高く舞うように美しいのに重く世界を震わす。

言葉と共に莫大な魔力が放出され絡みあい詩となり世界を変えてゆく。

その言葉は古代の龍種、あるいは神々が使う言語なのかもしれない。

俺には到底解読できないレベルで濃密で美しい構築式が紡ぎだされる。


この世の理そのものと言える甘美な詩の紡ぎに身をゆだね

俺は世界を隔てる壁を渡った。

返信出来ていませんが感想は全て読んでおります。

後日返信致しますので・・・・・すみません。

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