7-4
お待たせしました。
裏迷宮の最深階がスタートの迷宮攻略ってどんな無理ゲーだよ!
そんなのに凶悪縛りプレイ中の森山実留です。
これ攻略って言うより脱出ゲーじゃね?
☆
ルエラが転移系の魔法や技術を駆使しても神の力で張られた結界は突破は出来ない。
その為、裏迷宮から表迷宮に出る為には入口の転送陣を使うしか方法がない。
俺の知識では迷宮は最奥のボスを倒せば大抵は迷宮外に出れる転送陣が現れる。
だがこの迷宮ではそう言ったモノは存在しないとの事。
転送陣以外での移動方法があるのかも不明でルエラ本体もわからないんだそうだ。
因みに表迷宮からの此方への移動方法や
表の迷宮ボスを討伐した際にどうなるか等の知識も無いそうだ。
確かめるにはルエラ本体の討伐をしてみるしかないが
それは完全に無理なので諦めるしかない。
ルエラ曰く迷宮の基礎部分の事なので読み取りも管理も出来ないし
帰還機能があるかどうかも不明なので試す訳にはいかない。
もしあったとしてもルエラを殺さなきゃいけないし
どんな影響が出るかわかったもんじゃないしな。
そんな訳で俺達は徒歩で地道に上を目指す。
裏迷宮だけあって魔物は非常識の強さを誇り通常であれば強敵だ。
だが分身体と言えどもルエラは守護者でもあるし
俺の体も迷宮管理者なので殆どは戦わずして進む事が出来る。
だが独自生態を築いたからかは不明だが時折、襲い掛かってくる奴も居る。
それでも俺達が上位者と言う立場なので能力制限が掛り対処する事は出来た。
一番上層階にある転送陣までの道順は明確になってはいるのだが
直接向かう事はしなかった。
「焦る旅ではないのだ
少しこの迷宮を見て回っても良いだろうか?」
「そりゃ全然良いけど自分が管理してるんでしょ?
何か問題点でもあるの?」
「この迷宮は長い時を経て独自の生態系が出来ている
情報は僕達から入ってはくるが自分自身で見て感じてみたいのだ
それに我の本体は色々と迷宮での行動は制限されるしな」
「確かにデカかったな
あれだけのサイズだと通路を進むのにも一苦労だろうし」
「大きさだけであれば変更も可能ではあるがな
決まった範囲外から出るには様々な制限があるのだ
我自身が迷宮の重要な部品なのだからな」
「迷宮の核って言うのは自身が核自体って事なのかね」
「うむ、その考えで概ね間違いないだろう
なのでこのように自由に動けることは本当に嬉しいのだ
二度とはないかもしれない機会に色々と見たくてな」
そう言われては駄目とは言えない。
此処から出れるかどうかもわからないんだ焦る必要はない。
それに途中で手に入れた素材や宝箱の中身は旅費の足しにしても
良いと言う事なので俺にもメリットはある。
因みに俺達が動く事で迷宮の環境に変化が起きるのは喜ばしい事で
寧ろガンガンかき回して欲しいんだそうだ。
・・・・まぁ、実力的に掻きまわすってのは無理だけどな。
裏迷宮は全20階で各階はかなり広い。
最短距離で向かえばそこまで攻略に時間は掛らないようだが
それぞれの作りや広さには意味があるとの事。
迷宮の存在意味として世界維持の機能が優先されているので
魔物の強さという問題はあるが通常の迷宮のような罠や仕掛け等は無い。
そんな迷宮を俺とルエラは進んで行く。
本当にこの迷宮は広大で様々な環境があるので時間は掛かるが飽きる事はない。
火山もあれば氷河もあり砂漠も海も何でもありだ。
「この迷宮の各階は1つの世界なのだ
様々な環境と適した種族を作る上での実験場とも言える」
「となるとここの魔物や亜人種は表の世界の原種って事?」
「そうとも言えるが違うとも言えるな
ここは環境に特化した種族が多く表の種族はそれらを元に
更に調整し創造されたハズだ」
「環境特化型ね・・・だから互いの生活圏が重ならないから独自の生態系って事か」
「言い方は悪いが実験場が一番近かろう
その分、良くも悪くも能力は高く強靭だ
創造主の手により直接作られた存在でもあるしな」
会話や武力で色々な種族と関わりながら
気になる所を観察し調整や補修をしながら進む。
そこには独自の調味料や食材等もあったり役に立ちそうな魔道具も幾つか入手出来た。
そうして迷宮をウロウロとしながら上層を目指す。
ルエラは時折、配置されているマネキン達や
俺よりも以前に作り出された管理者達と出会い指示を出していた。
「やはり現地を直接見れると言うのは良いな
各所でバランスが崩れているのがわかる」
「迷宮内って完成された世界なんでしょ?
バランスが崩れるものなの?」
「うむ、本来であれば外部からの者達が訪れる事で
ある程度は環境が動く予定だったのだ」
「それが想定していたよりも来ないから
迷宮内で独自の生体系が出来た上にバランスが崩れてきてると」
「概ねその理解で良いだろう
完全に崩れる訳でもないし崩れた所で迷宮機能に害は殆ど無いのだがな」
「あ、そうなんだ」
「バランスが崩れるとエネルギーの循環が滞ったり過剰になったりするが
核への供給や管理に必要な分が不足するような事にはならんよ」
「なら何が困るの?」
「このまま放置すれば魔物や迷宮自体が我の管理から外れる事になりかねん
現に我らの存在を知って襲ってくる者達が現れてるのだしな」
「なるほどね
管理者の思惑を外れるようになったら不味いか」
「エネルギー供給量は下がるが全てを滅ぼしてしまえば
初期の状態に戻るだけではあるがな
但し現状でそれは出来るだけ避けたいのだ」
「それはまたなんで?」
「我が生まれてからの今迄の時が無駄になるからな
言うなれば我の存在を否定する事だ
それに独自に生活圏を作り上げた者達を無かった事にするには余りにもな」
確かにルエラの役割と言うか生み出された目的は迷宮の管理だ。
今の迷宮はその結果とも言えるだろう。
そりゃ無かった事にはしたくないよな。
それに自分の目で見て行動するルエラは凄く楽しそうだ。
念の為に聞いてみた所、迷宮の自浄機能を大きく超えてバランスが崩れると
世界の環境に様々な異変が起りうるらしい。
~
結局、迷宮の入り口に辿り着くまでに結構な時間が掛った。
様々な食材や調味料、酒なんかも大量に手に入ったのは有難かったし
相変わらずスキルの恩恵は無いが料理の腕も確実に上がった。
戦闘についてもスキルは使えないが元々は迷宮管理者として作られた体だ。
幾度も戦う内に戦闘力も上がったし武具はも使い込んだので馴染んできた。
魔法も簡単な構築式なら組めるようになったし幾つかのオリジナルも作った。
ルエラの方は基礎能力値が俺と違い過ぎる。
こっちは大量生産品の1体だが急増とは言え向こうはハンドメイドで作り上げた1体だ。
魔力量も身体能力も桁違いに上だ。
戦闘スタイルは魔力を形にして戦うスタイルで
何となく魔剣士や魔拳士なんて言葉が似合いそうな感じと言えばわかるだろうか。
魔力を身体に纏わり付かせて拳を叩き込んだり剣状にして切り刻んだり
槍にして投擲したりと何でもありだ。
防具の方も着ている物に魔力を通して強化するので防具が必要ない。
着てる服自体が最高級品で魔力伝導率も高くそこらの鎧よりも性能は上なんだけどね。
若干・・・・いやかなり薄手の服ではあるのが問題と言えば問題だが・・・・。
そうそう例のガウン、もとい神器のマントはルエラが使っている。
どうも気に入ったようだ。
長身で妙齢の美女がスケスケに近く布地が少ないドレス風の服装に豪華なマントは
明らかに旅をする格好ではないと何回も言ってるんだけど
どうも俺の好みから外れたく無いようで頑なに拒否している。
そりゃドストライクですよ!でもねぇ・・・・。
ルエラは魔法に関してはそれほど使わない。
使えないじゃなくて使わないだ。
どうも魔力量が多過ぎて小さな魔法を使うのは制御が難しいんだそうだ。
高威力や広範囲な魔法であれば良いんだけどな。
本体自体が小さな魔法を使う事に馴れてない影響なんだとか。
あと使う魔法で言えば治癒や守りなんかの方が得意なのも本体と同じだ。
そうは言っても攻撃魔法が苦手な訳じゃないみたいだけどね。
今は暴発とかも多いけど訓練は続けているのでその内に制御も出来るようになるだろう。
~
多少の危険はあったが無事に辿り着いた場所は小さな部屋だった。
簡易的なベットがあって休む事が出来る作りだ。
水場と食材が入っている箱まで置いてあった。
まぁ食材とは言ってもそのまま食べるには相当な勇気が必要だけどな。
この迷宮素材だから質は高いんだけどね・・・味がさ。
隣の部屋の床に転送用と思われる魔法陣があった。
勿論、魔法陣は稼働していない。
「コレが迷宮に来る為の転送陣?」
「うむ、我も初めて見るゆえ詳細がわからんがな
僕達の能力では解読できまいが我ならばなんとかなろう
少し時間は掛るが起動は出来るはずだ」
「なら俺は隣の部屋を掃除して使えるようにしてくるよ
ついでに食事も何か作っとく」
僕達がワラワラと入ってきて色々と調べ出したのを後に隣の部屋をチェック。
迷宮の機能なのか僕達の仕事のお陰なのかは不明だが
部屋はソコソコ綺麗にはなっているが長期に渡って使われなかったのでそれなりだ。
ざっと確認して使える物とそうでない物を大雑把に判断してマネキン君に交換品をお願いする。
マネキン君達はカクカクしながら頷いて何処かに物を取りに行った。
多分、管理関係者しか入れないような倉庫的な場所があるんだろう。
俺もその1人ではあるが場所は知らないけどな。
待っている間に掃除開始だ。
と言ってもマネキン君が持ってきた箒で掃くだけだけどな。
魔法で強制換気を行えば埃も立たないので楽だ。
水場はチョロチョロと水がでて大きな壺に溜まっている。
水浴びが出来る様なスペースも有り排水も問題ないだろう。
念の為に溜まっている水を一度捨てて中を洗う位だ。
竈の隣には丁寧に薪が置いてあるし
鍋などの簡単な調理器具も備えられていたので直ぐに使える。
此処は軽く払ってお仕舞だ。
一通りの掃除が終わるとマネキン君達が頼んだ品を持って来てくれたので
ベットを使える状態にして終了だ。
カクカクと隣の解析班に合流していったマネキン君達を見送り食事の用意に取り掛かる。
あ、因みにマネキン君はルエラの言う僕達の1種類で他にも用途別に何種類か存在する。
汎用的な能力で意志のやり取りが可能なマネキン君を筆頭に
補修作業を専門に行う者や戦闘を専門に行う者もいる。
珍しい所では徘徊型のチェック担当や栽培物収穫担当なんかだろうか。
現在、ルエラが率いて分析をしているのは処理能力に特化した事務タイプで
普段は迷宮の奥底で迷宮システムの処理を行っているそうだが出張って来たらしい。
下ごしらえした肉を備え付けの鍋で煮込む。
一緒に根野菜と香草を入れ調味料で味を調える。
これらは途中で入手した食材で調味料は醤油と味噌の中間のような味がする。
少しだけエグみと臭さもあるが独特なモノで気に居ると妙にハマる。
勿論、俺とルエラは気に入ったので大量に分けて貰った。
メインは途中の湖で釣り上げた大型の魚に熟してない果実を詰めて焼いた物だ。
この魚はサッパリとした身なのに適度に脂ものっておりホクホクして美味しい。
流石は迷宮産だけあって質は高い。
まぁ、地上に居たら魔物指定される位に凶悪だけどな。
ご飯が出来た頃にルエラが戻ってきた。
「大体の構造と原理は把握した
詳細分析はこれからだが起動には時間が掛るな」
「そうなんだ
どれくらい掛りそう?」
「しばらくは此処に居る事となるだろう」
起動条件が向こう側からの起動になっているのが問題だな
此方側からの起動と転移設定を行う必要がある」
起動自体は無理矢理出来るようだが転送先が決まってないままだと
何処かの空間に飛ばされる羽目になりかねないんだとか。
転移直後に即死出来ればまだ良い方で
最悪の場合は空間の狭間に閉じ込められて何も出来ずに永遠の時を彷徨う事になる。
転送元が起動すると相互リンクを開始するタイプなので
此方側だけで起動させたらリンク先が何もない状態になる。
なのでどうにかして転送先を設定する必要があるって訳だ。
俺にはさっぱりわからないのでルエラにお任せだ。
こんな時に≪構造解析≫≪魔法陣の理≫≪創造魔法≫等があれば一発なのになぁ。
物凄く魔力が必要になりそうではあるけどな。
しばらくの間、ルエラは分析と対策の構築。
俺は家事・・・だけだと時間が余るので戦闘訓練を続ける事にした。
迷宮の魔物は強力な奴らばかりだがここは迷宮内でも一番の表層で
一応は俺の管理者扱いなので相手が全力を出せないし念の為に戦闘担当も後ろに控えてくれてる。
俺だけでもギリギリで何とかなる。
全力で好き勝手出来るから訓練には丁度いい。
そんなこんなで活動する日が少し経った頃に何時もの戦闘訓練兼補修作業後に
部屋に戻るとフワフワと半透明な何かが浮いていた。
俺が部屋に入ると気が付いたのかコチラをチラっと見てくる。
全体的に半透明な薄い青で小さい子供のように見えるが手足はなくフワフワしている。
物語で良く出て来るような精霊って感じが近いと思う。
敵意は無いようで襲ってくる感じはない。
元から此処は安全地帯だから害意がある奴は入れないらしんだけどさ。
「えっと・・・・どちら様で?」
返信出来ていませんが感想ありがとうございます。
物凄く嬉しいです。




