6-31
連続更新2日目です。
神も居なくなりどうすっかなーと思い部屋を振り返ると
何時の間にかテーブルの上に飲み物とPCが置いてあった。
そしてまた例の空間に現れる扉を潜って行く女性の後ろ姿。
「あ、ちょ!」
扉は女性が潜ると消えてしまった。
今の誰なんだろうか・・・・妙に俺を毛嫌いしてる例の秘書さんだろか・・・。
とりあえず幾ら念じようが言葉に出そうが扉は現れなかったので
俺がここから移動するのは不可能っぽい。
特段、やる事もないのでPCを立ち上げると
スキル欄がズラズラっと表示された。
「でもまだポイントもわからないしなぁ
とりあえず候補だけでも上げてくか」
この剣と魔法のファンタジー世界では戦闘能力は重要だ。
今の俺のビルドと言うか構成は基本的には魔力ありきとなっている。
神謹製スキルで増えたとはいえ継戦能力は高いとは言えない。
と言うのも俺よりも高魔力の相手だと出力で負けるし魔力で勝っても
技術面で対処されたりしてしまうからだ。
上を見ればキリがないが攻撃や防御に使えるスキルや
戦闘技術のようなスキルがあれば戦闘にも幅が増えるだろうしな。
今回は能力系ではなく技能系を選んでいこう。
なるべく応用が効きそうで相手の予想を外せるような・・・。
まずはポイントを考えずに説明を読んで検討リストに入れていく。
新しく増えたスキルも多いので気になったのを片っ端からだ。
絞り込みはポイントを聞いてからにしよう。
神器のコーナーも更新されているようだ。
ここらへんも便利かつ強力ではあるのだが死亡時に手元に無いと持ち越せないという欠点がある。
それに物理的な制限もあるので難しい所だな。
今回は全て持ち越せえるハズ・・・・あっ!黒鍋がなくなるのかぁ・・・・。
とりあえず必要ポイントが低くて調整に使えそうなのを幾つか選んでおく。
ふぅ・・・・一段落するとお腹が空いてきたな。
時間の流れがわからないけど数時間はやってた気がする。
どうも此処は変な空間だ。
意識しなければ睡眠も食事も取りたいと思わないし
集中すれば数時間も数十時間も没頭してしまう。
確か精神体に擬似身体を付加した世界の狭間に作った場所だったけな。
身体の方がオマケだとかも言ってたな。
と、PCが置いてある大き目のテーブルの上にはホカホカと湯気があがる
暖かい食事が色々と用意されていた。
「い・・・・何時の間に・・・・・?
ま、まぁ良いか」
絶妙な味付けの食事をモリモリと食べてると今回の転生について色々と思い出す。
うーん、今回は何か変な事が多かったよな。
最初からある程度成長した人族の体に入ったのが変だしな。
そういや魔王の子孫なんだっけか?
そこら辺も神が帰って来たら聞いてみるか。
あぁそう言えば途中で猛烈な頭痛とかもあったな・・・あれも気になるよな。
「うーん、腹も一杯になると眠くなってきたな
まぁ時間なんて関係ないしガッツリと寝てみるか」
ハンモックに包まれてユラユラと暖かな部屋で吹き抜ける風に身を任せるのは気持ちが良い。
「南国風ってのも良いもんだな
確かにこれは気持ちが良い」
何時しか俺はグッスリと寝入っていた。
物凄く深い眠りだったようで目を開けると神が目の前に居た。
「うお!なんだよ!ビックリするじゃねーか!」
【ごめんごめん
随分と深い眠りだったからさ邪魔するのも悪いから近くジッと見てたよ】
「きめーよ!」
【こっちの用事は終わったけど何かあった?】
「スキルとか神器を確認してただけだよ
あ、あと幾つか聞きたい事を思い出したかな」
思いついた幾つかの事柄を伝える。
【うーん、システム的には問題は無いんだけどなぁ
君の精神的な何かが働いたんじゃないかな
又は本当にただの体調不良って線もありうるけどね】
「神なのにわからないものなのか?」
【前にも言ったけど君を見てはいるけど監視やモニターしてるわけじゃないからね
僕は君自身と言うよりも君が起こす事柄に興味があるわけだしさ】
「なんか嘘くせーな」
【あはは
君には嘘は言わないよ
まぁ信じてもらうしかないんだけどさ】
「じゃぁ、魔王の事も教えてくれよ」
【そこら辺を話しちゃうのは魔王君にフェアじゃないからなぁ
ただ魔王娘君の言う事は正しいね
薄くはなってるけど魔王君の血は引いてる身体だよ
それが魔王君との魂のリンクの影響で引かれちゃったんだね】
「それで人族の・・・言葉は悪いが死体に入ったと」
【あれは僕も想定外でね
物凄く面白かったよ
でもあんな奇跡的な事は2度とは無いと思うよ】
「そうなのか?」
【魂のリンクが残ってたのは良いとしてシステム化された転生にどう影響が出るかなんてね
でも人族だと≪早期自立行動可能≫に当てはまらないし良かったんじゃない?】
「奴隷スタートだから人族の利点をまるで生かせなかったけどね」
【そう?
転生の事を知った上で協力してくれる一国の王が居て今後の生活も安定するんだよ?
それに各所に知り合いや知人も増えてきてるし今迄の転生の家族だって居るんだし
最悪の場合でも≪転生強制認識≫させちゃえば良いだけでしょ?】
「うーん、そんなもんなのかなぁ」
【この世界はさ神の力の恩恵を実際に受けてるし
様々な種族が居て色々な存在が混在して世界を作ってる
だから君のように転生をする存在も他に居るかもしれないよ
他の世界から来る存在だって居る位だしさ】
「転生してるのが他にも居るの?」
【君のような転生をしているのは多分居ないとは思うけどね
僕以外の神が同じようなシステムを構築してコッソリと運用してるかもしれないから
ハッキリとは言い切れないけどさ】
「でも転生をシステム化するのはとんでもなく難しいとか言ってなかったか?」
【そりゃ僕でも完璧にコントロール出来てる訳じゃないしね
それに単神では無理でも複数神なら可能かもしれないしね
後は現世に元からあるのを利用するとかね】
「え?元から転生っぽい事してるのが居るの?」
【似た様な事をしてる種族や特定の者は居るよ
自分の複製や幼生体を作って身体を変えて行ったりね】
「・・・・なんかあまり出会いたいタイプじゃないのは気のせいかな」
【あはは、癖が強い者達ってのは否定できないかな
会おうと思って会えるような存在でもないけどね】
「超常の存在の神には会えるのに?」
【あははは
普通はそんなに神に会うなんて無理なんだけどね
まぁ君ならそんな存在達にも会えるかもね】
「会っても碌な事にはならなそうだけどな」
そこで話は一区切りし茶を飲みながら雑談する。
サエリアの事やリュードラルやディズの事なんかもネタに出たけど
裏話や出生等を教えてくれる辺りに神からの興味の無さを感じる。
【よーし、じゃぁそろそろ今回の神MVPって事で
例の迷宮神君に何かお礼をしようかな】
「MVPって言うかラバリオにしか会ってねーけどな
今回は他の神の世話になってないし」
【君が気が付かないだけで魔眼神君と闘心神君にはお世話になってるよ】
「魔眼神ってミガに加護を与えてる神でしょ?
俺に目を付けてくれたって事ならそうだけど闘心神って誰?」
【パーセラム王国の全体に加護を与えている神だよ
君がその体に入れたのもそうだし城の地下のシステムを作ったのもそうだよ】
聞くと"死に戻り"が多いのもその加護のお陰らしい。
能力値と言うよりも機会を与えてくれる系の神なんだそうだ。
「へぇ、そうだったんだな
そうなると感謝しとかないとな
でも国自体に加護を与えるなんて事もあるんだな」
【パーセラム王国の初代の事を物凄く好きだったみたいだからね
初代亡き後も見守りたいみたいだよ
なんだったら直に話してみる?】
「いや・・・・うん・・・遠慮しておくよ
前も思ったけど神って此処に呼べるの?」
【うーん、難しい問題だね
会えるか?話せるか?なら僕の配下の神なら誰でも大丈夫なんだけどね
此処に呼べるか?って事なら殆どの者は難しいかな
僕が君用に作った世界だから神でも存在が難しいのさ】
「そんなもんなのかね
神ってのも意外に面倒なんだな」
【あはは、面倒なんだよ
よし、じゃぁ今回は迷宮神君に直に会おうか!】
唐突に言い放ち指をパチンと鳴らすと一瞬にして俺達は移動した。
ラバリオの真後ろに・・・。
作りとしてはワンルームのマンションに似ているだろうか。
何処か迷宮を感じさせるも明るく整頓された部屋だった。
窓から光は射すが何も見えず置いてある雑誌のような物も読めない。
まぁ読めないと言うかハッキリと見えないと言うかピントが合わない感じだ。
現在、ラバリオはテーブルで食事中のようだ。
「うぅ・・・・もう・・・これが・・・・これが実留さんの最後の食事っス」
俺が作ったと思われる残り僅かなご飯の前で項垂れている。
そんなに有難がってくれるのは嬉しいんだけどさ・・・ちょっと行き過ぎじゃね。
君、下級神と言えども神だよね?ねぇ?
【呼ばれて無いけど飛び出たよジャジャジャジャジャーーーーーーーーンッ!】
「ヒッ!ヒグゥ」
唐突に真後ろから何処からか流れた大音量のファンファーレと共に叫ぶ神。
それに驚き変な声を上げて息が詰まるラバリオ。
おい、お前達って本当に神様なんだろうな?
「だ、誰っすかー!
ここは自分の部屋っすよ!
か・・・鍵も掛けてあったっすよ!」
まさか!この料理を狙ってきた輩っすか!」
【お、そういえば僕はまだ食べた事が無かったね
現物を見たのは初めてだしね
・・・・・ここなら大丈夫かな?迷宮神君、ちょっと分けてよ】
「やっぱり!何処の刺客っすか!
渡さない!これだけは渡さないっすよ!」
動揺してパニックになってるラバリオは世界神相手にヤル気だ。
神気を全開で立ち上がらせながら完全にヤル気だ。
「ラバリオ!俺だ!実留だ!」
「あぁ?テメェも敵っすか!」
ヒィ、怖い。
こんなに怖いラバリオは最初の時以来だ。
と言うかそれ以上に怖い・・・見た目が完全にヤンキーだしな。
つうかどんだけ料理に固執してんだよ。
その後も何とか宥めて落ち着かせて俺を認識して貰った。
「ふぅーふぅー、大丈夫っす
落ち着いたっす」
「それは良かったよ」
「ん?そう言えば何でミノルさんがコッチに居るっすか?
それに隣の方は誰っすか?後ろで叫ぶから驚いたんすけど
神って言った割には力を感じないっすね
まぁここに居る時点で神ではあるろ思うっすが・・・・」
隣を見ると案の定、ニタニタ笑ってる。
明らかに力を抑えて騙そうとしてる気満々だ。
「ラバリオの事を騙す気みたいだから先に言っておくけど
こいつ俺に加護を与えてる世界神ね」
【ちょっ!ここからが面白いのに何で先に言っちゃうのさ!】
「だからだよ!
絶対に面白がってるだろ!」
【つまんないな~
まぁバレちゃったら仕方がないけどね
改めましてこんにちわ!神ですよ!】
「・・・・・」
何も感想が無いんだなーと思ったらラバリオは目を開けたまま気絶していた・・・。
「よくわかんないっすが自分がミノルさんの力になったので
それに対して何か褒美のような物を頂けるって事っすか?」
その後、何とか再起動を果したラバリオがアイツと向き合うも汗がダラダラだ。
そりゃ下っ端の部屋に一番上の者が急に来たわけだしな。
【うんうん・・・モグモグ・・・そうなんだよねー・・・・モグ・・・
君にはさ・・・ゴックン・・・期待して・・・・モグモグ・・・】
「食いながら話すなよ・・・・
欲しければ後で作ってやるからよ」
【あはは、でもコレは確かに美味しいね!
でもまぁ・・・・うん、もう十分だよありがとうね
それでどうしようかねー】
ラバリオが最後の食事を取られた上に微妙な評価だったのか
ギリギリと歯ぎしりをしそうな顔をしている。
流石にその顔は不味いと思うぞ・・・・また現世で作ってあげるからさ。
と言うかこっちに料理持って来れるんだな。
ラバリオに縁がある神器で作ったってのも関係あるのかな?
【君は迷宮神だからねー
それに関する神力を与えるか格を上げて権限を与えるか
それとも別の神になるもも面白いかもね】
「そ、そんな事もいいんっすか?」
【僕が気にかけてる子を助けてくれたってのは大きいよね
あ、でも】
とそこでチラっと料理を見る。
【現世の物を勝手に持ち帰って来たのはどうかなぁ
間違いなく正式な手順や申請を踏んで無いよね?
多少は迷宮神君の力が含まれてるから言い訳は幾らでも出来るだろうけど・・・】
「う・・そ・・・それ・・・いや・・」
【あはは、嘘だってそんなに焦らないでよ
持込については僕は何も言うつもりはないよ
その為に僕にも分けて貰ったんだしね】
「ほ、本当っすか?」
【うんうん、だから迷宮神君は好きな報酬を言えばいいよ
僕の権限を使って出来る限りの事は叶えちゃうよー
滅多にないよこんな事】
ニヤニヤとする神と真剣な顔で悩み始めるラバリオ。
なんだったら現世から料理のやりとり出来る神器でも作ってあげようかー?
等と色々と茶化しも入るがラバリオの反応は薄い。
「・・・・・本当に何でもいいっすか?」
【あはは、良いよ言ってごらん
料理を何時でも届けて貰える神器でも作るかい?】
「それは凄く本当に欲しいっすが・・・・・
でも・・・自分は・・・迷宮・・・・そう・・・
自分だけの迷宮が欲しいっす」
【あはは、そうくるか】
ラバリオの覚悟を決めた眼差しと言葉に神は楽しそうに
本当に楽しそうに笑った。




