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評価&感想嬉しいです。

成り行きで王と戦う事になった森山実留です。

何故こうなったのでしょうか?

とりあえず勝つしかないので頑張ろうとは思いますが・・・。





ガギィィィィン。

切り結ぶ剣が発する甲高くも重い音が響きわたる。

次々と襲い掛かる剣撃を躱し逸らしカウンターで攻撃を行い

膠着状態になれば拳や蹴りが繰り出され

少しでも距離があけば苛烈に魔法が飛びかう。


「ハハ、ハハハ良いぞ!良いぞ!

 期待通りだ!いや!それ以上だ!」


出し惜しみなく攻撃を繰り出してくる王は心底嬉しそうに笑う。


センドゥールは王となった後も絶え間ない修練を続け身体能力や戦闘技術は極めて高い。

獣人は魔法制御が苦手なのでそこを突く予定だったのだが魔法も普通に扱える。

いや寧ろ通常レベルを遙かに超えていると言えるだろう。

単純な魔法だとしてもあの密度で連発してくる獣人族を他に見た事が無いぞ。

それでいて威力はあるし魔力切れの気配もない。


しんどい戦いになりそうだ。






戦いを了承しお互いの準備が完了した数日後、城に向かうと

部屋に通されて歩けるようになったミガと合流した。

お茶や軽食を用意され少し待つと王の待つ部屋へと呼ばれた。


「はは、やっとこの時が来たな

 こんなに待ち望んだのは随分と久しぶりだぞ」


入ってきた俺を見るなり物騒な笑顔で出迎えてくれた。

部屋の中には以前に居た騎士が2名と向こうの立ち合い人と評議会から選出された者だけだ。

小声でミガに確認したが立会人に面識はなく評議会の方は見知った顔だそうだ。


お互いの立会人が見守る中で王とミガがルールの最終確認をしていく。

事後に問題が出ない様に評議会の方で細々とした所も確認し決めていく。

これを書面化し評議会の方で丸1日掛け再検討し問題が無ければ

魔道具で正式に契約を交わし両陣営に再交付される。

それを了承すれば2日後の朝には死闘開始だ。


「俺かお前のどちらかが死ぬまで愉しむとしようじゃないか

 終わるまでは城からは出れんが高待遇は保障しよう 

 酒も食事も好きな物を好きなだけ用意するが体調だけには注意してくれよ」


最後に王はそう言うと部屋を出て行った。

まるで楽しみで楽しみで仕方がない子供のようだったな。


突き詰めれば王と戦い俺が勝てばミガが王座を手に入れて

俺が負ければ王座は継続となるだけのシンプルな条件なんだが

王は負ける時は死ぬ時だと思ってるし俺を殺す気で来るようだ。

それでいて王が勝ってもミガは命を奪われる事はない。

途中でこれって圧倒的にミガが有利じゃね?と思ったが気にしないでおこう。

誰も何も言ってこなかったしさ。


案内された部屋は城内でも別棟のような独立した作りで全てが要足りる作りになっていた。

多分、要人を迎え入れる為のエリアなんだろうな部屋の内装等も明らかに質が高い。

部屋数も多いのでそれぞれに個室を割り振った。


翌日に評議会から呼び出されミガと立会人である3人が赴き確認し

起こされた書面では詳細は詰められ問題ないと確認し正式に契約の魔道具へと記録した。


因みにその場に俺が呼ばれないのは不正が発生しないようにだそうだ。

俺が代理人と言う立場なので責任感が2人に比べて軽いからとの措置なんだとさ。

城に入った瞬間からずっと監視されているのは分ってはいるし

害はないんだから気にしなければ良いんだけど気分が良いもんじゃないよね。

命を賭けているのは俺なんで軽いも何も無いと思うのだが・・・。

気は進まないが明日は王座を賭けての戦いは決まってしまった。

体の調子を整える為に軽い運動と軽い食事だけをして過ごし睡眠もしっかりと取った。


翌朝も軽い朝食を取り少し経った頃に呼ばれ移動する。

王を先頭に複雑に入り組む通路を進み幾つかの扉を通り抜ける。

途中の扉は厳重に封印されているらしく王が手をかざして解除していた。

辿り着いた場所は小さな部屋で中には転送陣があった。


「この先の事は他言無用とする

 まぁ話した所でここまでは来れないけどな」


どうも途中の扉やこの部屋は王にならないと通過したり使用出来ないような作りで

他にもそう言った作りが各所にあるらしく転送陣を使う以前に辿り着くのも難しいだろう。

転送陣の先は迷宮のような場所だった。 


「ここは・・・・・"選定の儀"の・・・・?」


「あぁ、そうだな

 俺は修練場って呼んでる

 まぁ同じ場所かはわからんけどな」


ミガが驚いているので聞いてみると"選定の儀"で潜ってた迷宮のボス部屋に似ていると。

唯一の安全地帯だった隣の小部屋にはベッドや風呂やトイレなんかもあるし

基本的な食料が自動補充される保存機能付きの箱まであった。


「作りは同じようだし迷宮側にも出れるようだが・・・」


「ここはな王となった者だけが使える場所って言うか機能でな

 先程の転送陣で来ると小部屋から色々と設定が出来るんだ

 今は普段、俺が使っている状態になってる

 隣の部屋が違ってただろ?」


「そうだな

 私の時はあんな設備は無かった」


「この国の王として何時でも強者で居る事が求められるが

 外で限界ギリギリまで戦ったり訓練する訳にはいかんしな

 こんな場所が用意されているとんだと思うが誰が作ったか何時からあるかは分らん」


「迷宮と同等な場所なら被害は出ないし部外者が出てくる事も無いか」


「それに体力と魔力の回復速度も変更出来るから思う存分戦えるぞ

 但し、怪我等はそのままだから注意しろよ」


何処までバトルジャンキーなんだよ。

だがまぁ戦う条件は悪くない。

王曰く今回の勝敗の有無は生き残った方が勝ちだからな。

立会人等も全て隣の小部屋に居れば余波に巻き添えになる事も無いしな。


センドゥールをボスとして設定しておく事で俺が勝つ、つまり王が死ねば帰還の転送陣が現れる。

俺が負ける、つまり死ねば小部屋で転送陣をセンドゥールが操作する。

小部屋に迎えに行った者が勝利者って訳だ。



準備が整い俺はセンドゥールと戦闘に突入した。


幅広で長い長剣を軽々と小枝のように扱いながらも

軸がブレる事なく休みなく連撃を叩きこんでくる。

それを捌くも隙を見せれば体術を距離を取れば魔法をと手札は多い。


「良いぞ!ゾクゾクくるな!

 こんな戦いは何年・・・何十年ぶりだ!」


「褒めて貰っても嬉しくないけどね!」


切り返しでタイミングをズラしカウンタ-を狙うも尽く修正され防がれる。


身体能力的には魔力を潤沢に使い極限まで高めている。

これ以上は負荷が強すぎて体に影響が出るってレベルだ。

それをセンドゥールは上回ってくる・・・信じられない位の能力値だな。

これでも世界神の加護持ちで数回の転生で底上げされた基本能力値を更に増幅させてるんだぜ。

相変わらず上には上が居る世界だよここは。


身体能力で僅かに劣り戦闘経験は圧倒的に劣っているのを

≪軌道予測≫≪見切り≫≪知力向上≫等の補助スキルでカバーしているの状態だ。

今の体がもう少し成長していてくれたら強化レベルを上げれるし

≪身体魔補≫≪闘気錬纏≫なんかも出力をあげれるんだけどな。


今の魔力量と制御力で体が1つ前であれば状況を打破できたの・・・とは言っても仕方がないが

転生で能力値を引き継いだと言っても耐久性や作りの強さなんかは種族や年齢の影響を実感する。


実際の所、センドゥールと俺の戦力は拮抗している。

但し現状では・・・・だけどな。

少しづつだがセンドゥールは俺の動きに馴れてきている。

≪聖神流スキル≫や≪重撃≫によるタイミング外しや死角外からの魔弾。

それら全てにすこしづつだが対応しだし僅かではあるが余裕を生み出してきている。

全くなんて戦闘センスだよ。


このまま行けばジリ貧だ。

少し、また少しと体への負荷を感じながら安全パイを削ってスキル出力を上げていく。

体への負担は≪自動回復≫を稼働させ続け無理矢理誤魔化す。

増えた魔力に比例して≪魔力回復向上≫も効率が上がっているし

この場所では回復が早くなっているのも有難い。


「ハッハー!乗って来たな!

 思う存分殺りあおうじゃねーか!」


「そんなに戦う事が好きなのかよ」


「あぁ、好きだな

 好きで好きで戦いたくて戦いたくて狂ってしまいそうだった

 そんな状態のまま死ねるかよ!」


「何も死ぬことは無いだろう!

 王が代替わりすれば自由になれるんだろ」


俺達は剣を魔法を叩きつけながら会話を続ける。


「お前にはわからんさ

 王と成った者の環境等な!

 その後の自由とやらがどの程度の事なのかも!」


「だから先代の家族を皆殺しにしたのか?」


「ハッ?何を言っていやがる

 アレは他国からの妨害だ」


「お前の指示でやった事だろうに!」


「はぁ?何の事だ?」


僅かに動揺したのを見計らい袈裟切りに来た剣を一瞬だけ出力を上げた≪重撃≫で迎え撃け弾き返す。

しかし追撃出来る程こちらにも余裕が無く距離が出来た、がそこでセンドゥールは止まる。

警戒は緩めず体勢を維持したまま俺に問う。


「お前は何かを知っているのか?

 先代が亡くなったのはお前が生まれるずっと前のハズだが」


「詳しくは知らないが証人が居るし証拠も有る

 この国の手の者から襲われたって言うな」


「それは本当か?」


「あぁ、嘘はついていない」


「何分、何十年前の事になるから明確には言えんが

 俺は他国絡みだと考えている

 いや、当時はそう判断したってのが正しいがな」


「その考えは今でも変わらない?」


「・・・・正直に言おう

 今の今迄、既に過去の事件として忘れていた事だ

 だが国としても先代が殺されると言うのは重大事件でもある

 勿論、国を上げての調査をし首謀者も捕え処刑されている

 これは正式に国としての判断と行動で記録も残されている」


「それが正しい保証は?」


「ないな

 それでも国として正式発表した内容だ

 先代の殺害等と言う重要案件で首謀者も処刑が終わっている

 たとえ間違っていたとしても今更覆る訳でもない」


「どうしても?」


「あぁ、どうしてもだ

 それが国でもあり王としての判断でもある

 万が一間違いだろうが何だろうが認める訳には行かないのさ」


「間違いを認めるのも王としての器量なんじゃない?」


「俺がもっと若ければそれもありうる話だろうがな

 それを認めるにはいかんな

 そもそも間違いだと言っているのはお前、いやお前達だけなんだろ?

 ・・・・その証人とやらは先代の血筋の者か?」


「あぁ、そう聞いている」


「なるほど・・・な

 あの女は先代に連なる者か・・・・その割には特徴的な面影が少ない

 他の部族に匿われ時を待ったと言った所か」


おっとミガがそうだってのはバレてるようだ。

まぁ普通は分るか。

連なるって言うか娘なんだけどさ。

センドゥールも小さい頃に見ているだろうが繋がらないって事は

ミガとララが言う通り本当に外見は全然違うんだな。


「となると王になるのは俺への復讐か?」


「どうだろうね

 そこまでは拾われた俺にはわからないよ

 ただ他にも色々とマズイ事に手を付けているんじゃないの?」


「俺がか?この国に対して不利益な事をしていると?」


「そんな疑惑も出ているってだけだ

 詳しくはしらないけどな」


「俺は王座を奪った憎い奴で家族を殺した怨敵で国を惑わす極悪人って事になるのかね

 そんな相手を気にいっちまうとは俺も老けたもんだ」


力なく笑う姿は一瞬だが老人のソレだった。


「・・・・・・前王の件はもう何十年も前の事だ

 資料は残っているが当時の事を直接知ってる奴はもう僅かだろう

 今が全てを知る最後の機会かもしれんな」


「今から協力して当時を詳細に洗い出す事は出来ないの?」


「代変わりを認めて再調査に協力しろってか?

 そこで何かが見つかれば俺は悪王として国を追われるか・・・冗談じゃねぇな

 それを知りたきゃ俺を殺して王になり好き勝手に調査すれば良い

 そうすりゃ死んだ俺に罪を擦り付ければ良い」


「なんでそんなに死にたがるんだよ

 別に死ななくても良いだろ」


「わかってねえな

 俺はな命を賭けた限界ギリギリまでの戦いを望んでるんだ

 最後の最後まで絞りつくした戦いをな!

 それを何十年も待ったんだ!」


「じゃぁ殺さずにボコボコにぶちのめしたら協力してくれるんだな?」

 

「ハハ、本当に面白いな

 俺を相手にそんな事が出来るとは思えんがな

 お前の外見で騙されるが中身は別物じゃないのか」


「どうだろうな?

 それに答えるとでも?」


「それが既に答えになっちまってるけどな

 さぁ最後の戦いだ全力を出せ!

 お前の本気を!全力を見せて見ろ!

 答えは此処にあるぞ」


センドゥールは両手を広げて誇示する。

俺は此処に居るぞ!さぁ倒してみろ!と。

その目は狂う寸前の様に燃えて俺を見ている。


「約束を忘れんなよ

 御望み通りにしてやるよ」


俺は全てのスキルを全力発動する事を決めた。

今が全力だと誰が言った?

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