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6-27

急に暑くなったり涼しくなったり体調にご注意くださいね。

評価、感想ありがとうございます!

パーセラム国王に会った、と言うか呼び出されていた森山実留です。

何がどうなっているかサッパリわかりません

なんで急に王様なんでしょうか・・・・おりあえず殴りますか・・・いや、嘘ですよ。






「呼び出して悪かったな」


そう言いつつ目の前で笑う王と名乗る人物。

若いとは言えないが老人とまでは行かない年齢だろう。

体は鍛えられ未だ現役なのは雰囲気でわかる。

確かミガの話では結構な年齢だったハズだが種族的なモノなのか

他の要因かは俺は特に聞いていない。


部屋の中には俺の左右に入口に居た騎士居るだけなので

王は1人で待っていたって事なのかね。


「まぁなんだとりあえず座って1杯どうだ?」


グラスを勧めてくるがどうしていいかがわからでいると

「王のお誘いだ気にせず頂くが良い」と隣の騎士が言ってくれたので

とりあえず向かい側に座ると王自らが注いでくる。


「毒なんて入ってねぇから安心しろ

 男2人で華がないのは諦めて貰うしかねぇけどな」


王はずんぐりとした同じボトルから注いだ飲み物をグイグイ飲んで行く。

俺もチビっと飲んでみるが猛烈に強い酒だ。

その割に飲みやすくスッキリしていて仄かな甘みが後を引き

それでいて単調な味わいではなく深く広く華やかさもある。

これって物凄く良い酒なんじゃないか?


「お?いける口か?

 この酒はなこの国の迷宮で取れる高級酒でな

 これが好きなだけ飲めるってだけでも王座に座る価値はあるぜ」


確かに素晴らしく美味しい酒だ、相当な高級品なんだろう。

ついつい口に運んでしまう。

何を話して良いモノか分らずに黙々と飲むだけになってしまった。

俺はチビチビと王はグイグイと。

ボトルが空いた頃に王が口を開いた。


「何で呼び出されたか気になるか?」


「え・・・えぇ、それは・・・はい」


「そんなに硬くなるな

 今日は一応はお忍びって事にしてある

 現に周りに誰も居ないだろ?

 そこの騎士だって俺が気を許してる奴だしよ」


「は、はぁ」


「まぁ急には無理だよな

 要件を言うとなお前の主人だか協力者だかのミガだったか?

 "選定の儀"を突破した」


「え!?本当ですか!」


「あぁ、つい先日な

 今は衰弱してるからこちらで手厚く介護して少しづつ回復している

 あと数日もありゃ歩けるようになるだろう

 話すだけなら大丈夫だろうから後で行ってやれ」


「それを伝える為に呼ばれたんですか?」


「それもあるけどよ

 そこからちっと進んだ話だ」


「と言いますと?」


「お前、俺と戦えよ」


「ちょっと意味が分からないんですが・・・」


「"選定の儀"を突破したって事はよ

 王としての各部族から素質も認められ肉体的にも精神的にも強靭って事だ

 普通はそんな短いスパンで突破出来る奴は出てこねぇから

 先代も良い歳になってる事が殆どで後人に王座を譲っていくんだ

 老衰や怪我や病気で死んだ場合とかはまた別だがな」


「そこでなんで戦うって事になるんですか?」


「ん?あぁ、そりゃ簡単だ

 俺がまだ現役バリバリだからな

 王座に就いて長いんだがな俺はちょいと歳を取るのが遅くてよ

 それでまだまだ譲りたくねぇわけさ」


「それならミガと戦えば良いのでは?

 王座を目指してるのはミガなんだし」


「それも簡単だ

 その本人が言ったんだ「強さだけなら私の従者の方が圧倒的に強い」ってな」


ミガー!何言っちゃってんのよ!

確かに戦力として協力する約束だけどこんな使い方はないんじゃないか?!


「とりあえず俺の要件としてそんなもんだ

 断りたかったらそれでも良いがな」


「断っても良いんですか?」


「構わん

 王座についても評議会の方で調整案が出るだろうしな

 これはあくまでも王としてではなく俺個人の要望というかケジメだ

 だがまぁ・・・戦ってくれる方が俺も嬉しいけどな」


「そうですか・・・」


「まぁ少し考えてくれや

 それにしてもありゃ良い女だな

 向こうが望めば正室に迎えても良いが無理だろうな

 いっそ、王座を譲ったら求婚してみるかな

 上手く行きゃこの酒も飲み続けられんだろ」


ガハハと笑うのを見て妙に違和感を感じた。

どうしてもミガとララから聞いた人物像と差異を感じるんだよな。


ここまで来た手土産だと言って先程の酒を数本渡してきて王は部屋を出て行った。





「そうか、王に会ったか」


あの後、ミガの部屋に案内された。

まだ思うように動けないらしくベットで体を起こしただけだ。


「なんで俺と戦うように仕向けたの?

 ミガが戦えば良かったんじゃない?」


「そもそもは現王と戦うなんて決まり事は無いんだ

 だがどうしてもと言うので最初は私が戦おうと思ったのだけど

 話してる内に何かが違うと思ってね」


「何かが違う?王座を渡したくないだけなんじゃないの?」


「ミノルは話してそう思ったか?」


「いや・・・何か違和感を感じた」


「私もそうだ

 退陣したくないと言うよりはケジメをつけたいという感じか

 ・・・いや違うな

 あれは全力を出してみたい・・・・だろうな」


「全力?」


「王ともなれば全てを掛けた総力戦の戦争でも無い限り

 戦いの場に立つ事なんてないからな

 全力で生きるか死ぬかの戦いに挑むなんてのは許されん」


「最後に譲るとしても全力で戦って諦めたいって事?」


「いや、王座自体を譲る気が無いように感じるな

 相手が死ねば継続し自分が死ねば王になれって所だろうな

 そんな深くまで考えてるようには思えん

 王と言うよりは武人のソレに近いな」 


「随分とわかったような感じだね」


「アイツは毎日、毎日此処に来てずっと話してるんだ

 こっちの体調なんかお構いもなしにな!

 だが色々と話すうちに少しづつ違和感を感じてな

 この国で起きている事、私に起った事がどうにも腑に落ちないんだ」


「俺も少し話しただけだけど正直に言えば

 国に不利益を与える様な事をするようには見えなかったかな」


「そうだな

 そもそも証拠も無いし確信もないから何とも言えないが

 私も実際に話してみると違和感を拭いきれない

 だからミノルに戦って欲しいんだ

 ミノルなら相手が全力を出してきても殺さずに勝てるだろ?」 


「話は受けるが相手の想い通りになる必要はない

 そして王座はちゃんと頂くと」


「その通りだ」


ミガは笑う。

だがその笑みには何時もの明るさはなく何処か迷いがあるように感じた。

とりあえず俺は話を逸らす事にした。


「それで"選定の儀"ってのはどんなだったの?」


「あぁ・・・・それがな・・・・まさに地獄だったぞ」


そこからはミガがいかに苦労したかを聞いたが

完全に突破させる気無いだろうと言う内容だった。

色々と在り過ぎるが重要なポイントだけを纏めると


・入り口からは転送陣で独りだけ送られる

・転送されたのは小部屋で唯一の安全地帯

・迷宮は階段が無いタイプで坂や崖を上り下りする

・丸一日立つと最初の部屋に強制的に戻される

・敵は様々なタイプが居て基本的に単独で行動し種類も多く頻繁に襲ってくるが強いのは少ない

・致命的な罠は殆どないが厭らしい罠が多く発見や解除に物凄く集中力が要する

・迷宮自体は走り続けで頑張れば何とか1日で回れる広さ

・各所にパズルのような謎かけやミッションの様な物があり全てクリアする必要がある


等々だ。

聞いているだけでも辟易する。


「その内に食料も底を尽きてきてな・・・・

 食える奴は結構いたんだがどれも不味くて心が折れそうだった」


「そこもポイントなんだろうね

 体も心も限界まで追い込んだ上に頭も使わせると」


「あぁ、それがわかってるからこそ冷静になれたな

 途中からは長期戦になるのもわかったから何日かに1回はずっと寝てる日を作った位だ」


「でも毎日同じ所からスタートってのも不便だね

 最終地点前で戻されたりしたら大変だよなぁ」


「いや、最終ルートは簡単だぞ

 迷宮の仕掛けを全て解けばボス部屋への通路が開けるんだ

 逆に言えばそこしか出口がないから突破出来なければ死ぬしかないけどな」


どうも迷宮で死ぬと死体が転送陣まで戻されるのでそれで失格と判断され

突破すると別の転送陣から出てくるので合格と。


因みにボスは物理攻撃も魔法攻撃もガンガン仕掛けてくるが一番の問題は耐久性が異様に高い事だったと。

休むことなく戦い続けても倒し切る事が出来なく丸一日経つとボスは消え転送陣が現れたんだそうだ。

本当に挑戦者を試すのが目的の迷宮なんだな。


「最後まで忍耐と粘り強さを試してくる厭らしい試練だよ

 結局は半年以上も掛ってしまったな

 早く良くなってミノルの料理を腹いっぱい食べたいな」


「あぁ早く良くなってくれよ

 皆、待ってるからさ」


お互いに笑うとミガは真顔になり衣を正した。


「ミノル、もう一度お願いする

 王とセンドゥールと戦っては貰えないか?」


「どうしても?

 ミガが自分で戦った方がスッキリするんじゃない?」


俺の言葉にミガは自分の手を、義手を見て握って開いて繰り返す。


「わからない・・・・わからないんだ・・・・

 この国の裏で起きている事、私の過去・・・それは間違いない事実なのに

 あれは本当に心を自分自身の奥底までを試してくる試練だ

 "選定の儀"を突破した者がそんな事をするのか・・・・」


「自分が如何して良いか迷ってるの?」


「今迄もこれからも迷いはない・・・・

 いや・・・違うな・・・そう迷っているんだろうな・・・

 今の私じゃ満足に刃を届かせる事は出来ないだろうな」


「ミガは俺が戦って良いの?

 それで気持ちがハッキリとするの?」


「わからない・・・・だが相手の燃え尽きる寸前のような心構えを感じるんだ

 武を求め武に狂った者だけが最後に散ろうとするような何かをね

 私が戦えばギリギリでの戦いとなるだろうし間違いなくどちらかの命は散るだろうな」


魔眼を持ち辛い過去を乗り越えて目的の為に走り続けてきたんだ。

それが揺らぐ程のな。

俺にはわからない何かをミガは感じたんだろう。


「わかった、戦うよ

 でも全力を出すなら誰も居ない所の方が良いんだけどね

 人外スキルを使うかどうかはわからないけどさ」


「恩に着る

 此方からの要望はある程度飲んでくれるようだから伝えておこう」


俺は戦う事に了承し幾つかの条件を伝え部屋を後にした。




数日後、城からは了承した旨の手紙が届いた。

お互いの立会人と評議会の代表者以外は一切の人気を排除し

戦う場所も周囲に被害が出ない場所を用意出来るとの事。


こちらからの立ち合い人はミガ、キリル、リース、ミリーの4人で許可も貰った。

ミガは当然として3人は聖女絡みとしてOKが出てたが「あくまでも私は裏方」とララは辞退した。

王側の立会人は2名で評議会からも2名が選ばれた。


さて、成り行きで王と戦う事になってみたが情報が殆どない。

と言うのも現王体制になってから長いので実際に王が戦う姿を見た物は少ない。

昔は演武等で表に立つ事もあったらしいが近年ではやらなくなったそうだ。


当時は驚異的な身体能力と武力を評議会に高く評価され"選定の儀"も突破した人物だ。

会った感じでは今でも鍛錬は怠っていないだろうし覇気も凄かった。

間違いなく弱いハズは無いだろうしミガもそう判断している。


相手に全力を出させたうえで致命傷を与えずに勝つね。

本当に全力を出して良いなら可能だとは思うけどなぁ。

新しい王が誕生するって戦いの代理人が明らかに人外な事したら駄目だよなぁ。

全くミガも難しい事を言ってくれるぜ。

実留君のフルボッコタイムだー!ヒャッハー!

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